ハラスメントが他の従業員に及ぼす悪影響

ハラスメントが起こると会社には次のような弊害が生じます。会社としては、ハラスメントが発生しないような体制を整えることが重要になります。

  • 勤労意欲やモラルの低下
  • 職場の生産性の低下
  • メンタルヘルス不調を引き起こすリスク
  • 退職者が増加し、深刻な人材不足に陥るリスク
本記事では、ハラスメントによる他の従業員への弊害について解説していきます。

職場のハラスメントにおける間接的な被害

ハラスメントが存在する職場で働くことの負担

ハラスメントが存在する職場で働くと周囲の従業員に悪影響を与えます。

周囲の従業員の勤労意欲を低下させ、また、モラルを低下させ、職場の生産性を低下させてしまうことになります。

メンタルヘルス不調を引き起こす可能性

ハラスメント行為により周囲の従業員が影響を受けて、周囲の従業員が思い悩んだ結果、メンタルヘルスを引き起こす可能性もあります。

メンタルヘルスについての詳細は、以下のページをご覧ください。

自分が被害者になるかもしれない不安

現に今、ハラスメントを受けている従業員ではない他の従業員としても、いつ自分がハラスメントの被害者になるかもしれないという不安を抱き続けることもあるでしょう。これも生産性の観点からは望ましくありません。

会社や上司に対して不信感を抱く

ハラスメントが発生しているのに会社や上司がこれを放置していると、従業員が会社や従業員に対して不信感を抱くことになります。当然生産性の観点から望ましくありませんし、会社には従業員に対する安全配慮義務もありますから、ただちに対策をとるべきでしょう。

退職者の増加により人材不足に陥るリスク

生産性が低下するのみならず、ハラスメントにより従業員が辞めてしまうということも当然考えられます。今の日本の人口構造をみるとただでさえ深刻な人材不足の状態にあり、将来この状況が改善される見込みも乏しいことに鑑みると退職者の増加による会社のダメージは計り知れないでしょう。

ハラスメントによって及ぼす悪影響については、以下のページをご覧ください。

ハラスメント被害に関する裁判例

事件の概要

裁判例として、Y社はXを整理解雇したところ、Xはこの整理解雇を無効として争うとともに、Xに対する一連の「いじめ」は、Y社代表取締役社長A及び代表取締役専務Bの指示に基づくものであるとして、A及びB個人とY社に慰謝料及び休業損害の支払いを求めた事案があります(東京地方裁判所 平成14年7月9日判決、労判836号104頁)。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

裁判所の判断は次のとおりです。ポイントは、代表者個人の損害賠償も認めているところでしょう。(以下、裁判例の抜粋。)

Xが、他の従業員から繰り返し嫌がらせを受け、Y社からも過重な勤務を強いられたうえ、不合理な座席の移動等の嫌がらせを受け、整理解雇の際にも、再就職のあっせんの希望の有無を問うことなく、あえて他の従業員よりも先に解雇されたことにつき、これらの一連の行為は、Xを会社の中で孤立させ、退職させるための嫌がらせといわざるをえず、このような嫌がらせがXの入社後間もないころから長期にわたり繰り返し行われたこと、Y社の代表者であったA及びBは当初からこのような事実を知りながら特段の防止措置をとらなかったこと、一部の行為は業務命令として行われたことからすると、いずれもA及びBの指示ないしその了解に基づいて行われたものというべきであるから、A及びBは不法行為責任を負うとともに、Y社は、同不法行為につき、代表者らの職務執行と密接な関連があるものとして、損害賠償責任を負う。
引用元:東京地方裁判所 平成12年(ワ)第8149号 賃金等請求事件 平成14年7月9日

ポイントと解説

ポイントは、代表者個人の損害賠償責任も認められていることでしょう。嫌がらせがXの入社後間もないころから長期にわたり繰り返し行われたことについて、会社の代表者が、当初から事実を知りながら特段の防止措置をとらなかったことが考慮されていますので、防止措置の設計は重要なポイントになります。

企業が取り組むべきハラスメント防止措置

企業としては、防止措置を講じるべきですが、どのような措置を講じるべきかについては、次のガイドラインを参考にするべきです。

  • パワーハラスメント防止のための指針(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年1月15日厚生労働省告示第5号))
  • セクシャルハラスメントに関するハラスメント防止のための指針(事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針)
  • 妊娠、出産等に関するハラスメント防止のための指針(事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針)

以下のページでは、ハラスメント防止措置等の詳細となっておりますので、併せてご覧ください。

ハラスメントは周囲の従業員にも大きな影響を与えます。ハラスメント問題でお悩みなら弁護士にご相談ください

ハラスメントは、周囲の従業員に不安を与え、メンタルヘルスに陥らせる可能性があり、生産性を低下させることにもなり、退職者が増加すると深刻な人材不足に悩まされることになります。予防措置を講じておくべきであり、発生の兆候があれば、これを放置するべきではありません。ハラスメント問題でお悩みなら、弁護士に相談することをお勧めします。

執筆弁護士

シニアアソシエイト 弁護士 増谷 嘉晃
弁護士法人ALG&Associates シニアアソシエイト 弁護士増谷 嘉晃

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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