| 事例内容 | 相談事例 | 
|---|---|
| 問題社員 | 戒告 譴責 降格 昇給停止 諭旨解雇 懲戒解雇 懲戒処分 | 
| 担当した事務所 | ALG 東京法律事務所 | 
概要
相手方は、依頼者の従業員で不動産営業を業務としていました。
過去に、相手方は、アルコール呼気チェックを怠っていたことが発覚したため、会社はけん責処分を行いました。
今回は、相手方が免許の更新をしなかったために、免許課失効した期間に社有車を10回ほど運転し、合計257㎞走行していた事実が発覚しました。
相手方は免許失効期間中に無免許運転を行いましたが、免許失効後の運転は、うっかり失効(運転免許証の有効期間が失効した時点において、自動車免許の失効に気付かなかった)であったため、無免許運転に該当しない(無罪)ことになるのでしょうか。
また、会社としては、無免許運転行為を警察に報告等した方がいいでしょうか、報告等した場合のリスク等はありますか。一方で、報告等しなかった場合のリスク等はありますか。
相手方を懲戒解雇として解雇することは可能でしょうか。
弁護士方針・弁護士対応
①無免許運転とうっかり失効について
道路交通法64条1項は無免許運転について規定しています。
運転免許証の有効期間が満了し失効した状態は、「免許を受けないで」運転する状態にあたります。「うっかり失効」後の一定期間内に簡易な手続きで免許を再取得できる制度は、あくまで行政上の特例であり、失効期間中の運転を適法化するものではなく、無免許運転として扱われることになります(道路交通法97条の2第1項3号参照)。
②警察に報告等する場合のリスク
警察による捜査の過程で、貴社の従業員に対する運転免許証の確認体制や運行管理の実態が調査される可能性があります。
その結果、貴社が本件従業員の無免許状態を認識し得たにもかかわらずこれを放置していた等の事実が認められ、無免許運転の幇助犯として、貴社の代表者が処罰の対象となる可能性があります。
なお、道路交通法には、両罰規定があります(道路交通法123条)が、従業員の無免許運転は対象外となっています(道路交通法123条、117条の2の2参照)。
 そのため、本件行為の処罰を理由に、貴社が罰金刑等を負うリスクはないものと考えられます。
③警察に報告等しない場合のリスク
内部告発や別の交通違反等により、後日、無免許運転が公になった場合、「会社ぐるみで違法行為を隠蔽していた」等の厳しい社会的批判を受ける可能性があります。
このような事態は、不動産業を営む貴社の事業の根幹である社会的信用を著しく毀損させる可能性があるものと考えられます。
もっとも、本件無免許運転に対して、貴社が相手方に何らかの懲戒処分を下していた場合は、上記のような社会的批判を受けるリスクは低減するものと存じます。
④懲戒解雇の有効性
懲戒処分が、就業規則上定められている処分である場合でも、権利の濫用に該当するする懲戒処分は、無効とされます。
労働契約法(以下「労契法」といいます。)15条は、懲戒が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は、権利の濫用として無効としています。
また、解雇については、労契法16条に、解雇は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認めらない場合」は、権利の濫用として無効としています。
本件では、無免許運転の回数は10回と少なくないこと、総走行距離も少なくとも257㎞であることから、本件無免許運転は貴社との信頼関係を損なう業務上の非違行為と評価される可能性が十分にあります。また、過去のけん責処分をうけていた事実も懲戒解雇の合理性・相当性を基礎づける事情です。
もっとも、行為が悪質であるからといって直ちに懲戒解雇が有効と判断されるわけではありません。
本件では、幸いにも交通事故等の具体的な損害が発生しておらず、また、警察の介入もなく、現時点で貴社の対外的な信用が毀損される事態にも至っていないものと推察されます。
また、戒告処分の直後に生じているのでなければ、本件従業員については、勤務姿勢に関し今後改善の余地がないとまでは言い切れません。
懲戒解雇の根拠規定である就業規則の文言に形式的に該当し得るとしても、具体的な損害が生じていない状況、本件従業員の改善の余地がないとはいいきれない状況で最も重い処分である懲戒解雇を選択することは「重きに失する」と評価され、懲戒権の濫用として無効と判断される可能性が高いものと考えられます。
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