育児・介護休業法における時短勤務「短時間勤務制度」とは

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
育児・介護休業法は、労働者が育児や介護をしながらでも安心して働けるよう、さまざまな支援を行うための法律です。その中でも、「短時間勤務制度(時短勤務)」はメジャーな制度で、多くの企業で導入されています。
なお、育児・介護休業法は毎年のように改正されており、短時間勤務制度の内容も年々変化しています。直近では2025年10月に改正法が施行されたため、事業主の方は注意が必要です。
本記事では、育児・介護休業法における短時間勤務制度の対象者や実施方法、2025年の改正のポイント、労務管理の注意点などを詳しく解説していきます。
育児・介護休業法の短時間勤務制度(時短勤務)とは
育児・介護休業法における短時間勤務制度(時短勤務)とは、幼い子供を育てている労働者や要介護状態の家族を介護している労働者が希望したときに、労働時間を短縮しなければならない制度です。
これは、「育児か仕事」「介護か仕事」といった二者択一の状態を解消して、“育児や介護”と“仕事”を両立できるようにすることを目的としています。
対象労働者から時短勤務の申し出があった場合、企業は基本的にその申し出を拒否することはできません。
育児のための時短勤務の制度
育児休業を取得せずに、3歳未満の子供を養育する労働者から時短勤務の申し出があった場合、事業主は時短勤務の実施に応じなければなりません(育児・介護休業法23条1項)。
具体的には、当該労働者の1日の所定労働時間を「5時間45分から6時間まで」とする必要があります。
また、労働者の選択肢が多くなるよう、以下のように柔軟に対応するとなお良いとされています。
- 「1時間だけ時短にしたい」という労働者の希望に応じて、1日の労働時間を7時間とする
- 隔日勤務で所定労働日数を短縮する など
時短勤務の対象者
育児のための時短勤務を利用できるのは、以下の要件をすべて満たす労働者です。
- 3歳未満の子どもを養育していること
- 1日の所定労働時間が6時間以下でないこと
- 日々雇用される者(1日限りの雇用契約または30日未満の有期契約で雇われている労働者)でないこと
- 短時間勤務制度が適用される期間に現に育児休業をしていないこと
- 労使協定により定められた適用除外者ではないこと
これらの要件を満たせば、契約社員等の“有期雇用労働者”でも時短勤務の対象となります。
なお、労使協定による適用除外者に関しては、次項で解説します。
労使協定により対象外となる労働者
次の労働者に関しては、あらかじめ労使協定で定めることにより、所定労働時間の短縮措置の対象外とすることができます。
- その事業主に継続雇用されている期間が1年未満の者
- 1週間の所定労働日が2日以下の者
- 業務の性質または実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する者
適用除外者への代替措置
労使協定によって短時間勤務制度の対象外となる労働者については、「当該労働者が働きながら子供を育てることを容易にするための措置」を講じなければならないとされています(育児・介護休業法23条2項)。
具体的には、以下の代替措置のうちいずれかを講じる必要があります。
- 育児休業に関する制度に準ずる措置
- フレックスタイム制度
- 時差出勤制度(始業・終業時間の繰り下げ・繰り上げ)
- 保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与(ベビーシッターの手配や費用の援助等)
- 在宅勤務等の措置
時短勤務制度の努力義務
育児による短時間勤務制度の対象期間は、基本的に労働者の子供が3歳に達するまでとされています。
もっとも、小学校就学前の子供(その子が6歳になる誕生日を含む年度の3月31日まで)を持つ労働者も、制度を利用できるようにすることが事業主の「努力義務」とされています。
企業によっては、子供の小学校3年生の年度が終わるまで、あるいは子供が小学校を卒業するまで時短勤務ができる制度を設けているケースもあります。
育児時間との併用について
育児時間とは、1歳に満たない子供を養育している女性が、1日2回、少なくとも30分ずつ、子供の養育のために時間を使うことができる制度です。育児時間を利用している労働者が、同時に短時間勤務を取得する申し出をした場合も、事業主はそれに応じなければなりません。
これは、「育児時間」と「育児のための短時間勤務」は主旨および目的が異なることから、別の制度として措置を講じるべきであると考えられているためです。
育児時間に関しては、以下のページでさらに詳しく解説しています。
【2025年10月】短時間勤務制度に関する改正
2025年10月には「改正育児・介護休業法」が施行され、育児期の柔軟な働き方を実現するための措置を講じることが事業主の義務となりました。
具体的には、3歳~小学校就学前の子供を持つ労働者に対し、以下4つの措置から2つ以上を選択し、実施しなければなりません。労働者は事業主が講じる措置のうち、いずれか1つを選んで利用することができます。
- ①始業時刻等の変更(フレックスタイム制、始業時刻や終業時刻の繰り上げまたは繰り下げ)
- ②テレワーク(月10日以上)
- ③企業内保育所の設置その他これに準ずる便宜の供与をするもの(ベビーシッターの手配や費用負担等)
- ④養育両立支援休暇の付与(年10日以上)
- ⑤短時間勤務制度
上記のうちどの措置を講じるかは、過半数労働組合等の意見を聴取したうえで決定します。
また、子供が3歳になるまでの適切な時期に、事業主は労働者に対して、「講じる措置の内容」「措置の申出先」「残業免除や時間外労働の制限」等について個別に周知しなければなりません。同時に、制度利用の意向についても確認が必要です。
介護のための時短勤務制度
事業主は、要介護状態の家族を持つ労働者についても、家庭と仕事を両立できるよう様々な措置を講じることが義務付けられています(育児・介護休業法23条3項)。
具体的には、労働者からの申し出により、以下4つのうちいずれかの措置を2回以上利用できる制度を設ける必要があります(④については、1回の利用でも可)。
- ①所定労働時間の短縮
- 1日の所定労働時間を短縮する制度
- 週または月の所定労働時間を短縮する制度
- 隔日勤務や、特定の曜日のみの勤務
- 労働者に個々に勤務しない日または時間を請求することを認める制度
- ②フレックスタイムの制度
- ③時間差出勤の制度(始業・終業時間の繰り下げ・繰り上げ)
- ④労働者が利用する介護サービスの費用の助成、その他これに準ずる制度
時短勤務の対象者
介護のための時短勤務の対象は、「要介護状態」の「対象家族」を介護している労働者です。
ここでいう「要介護状態」とは、負傷、疾病、身体上・精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態のことをいいます。
また、「対象家族」とは、労働者の配偶者(事実婚を含む)、父母、子ども、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫のことを指します。
なお、この制度は、日々雇用される者(1日限りの雇用契約または30日未満の有期契約で雇われている労働者)を除く、すべての男女労働者が対象となります。有期雇用契約の労働者やパート・アルバイトの労働者も対象となるので注意しましょう。
労使協定により対象外となる労働者
以下の労働者については、あらかじめ労使協定で定めることで、時短勤務の対象外とすることができます。
- 事業主に継続して雇用された期間が1年未満の労働者
- 1週間の所定労働日が2日以下の労働者
時短勤務の対象期間と回数
事業主は、対象家族を介護する労働者に対して、所定労働時間の短縮等の措置を講じなければなりません。
これに関して、以前は「介護休業と通算で93日までの取得」と定められていましたが、平成29年1月施行の育児・介護休業法の改正によって、介護休業とは別に、「連続する3年以上の期間」で2回以上利用できるようになりました。
「連続する3年以上の期間」とは、労働者が短時間勤務等を利用すると申し出た日から起算します。また、制度において2回以上利用することが可能であれば問題なく、1回の期間制限も定められていません。したがって、3年以上の連続した期間について1回だけ時短勤務を行うことも認められます。
介護休業に関しては、以下のページで詳しく解説していますので、ご参照ください。
時短勤務の申請手続きと就業規則への規定
時短勤務の申請方法は、就業規則の定めに従います。申請先や提出書類、申請期限等を明確に定めておきましょう。
また、労働者との認識の相違を防ぐため、時短勤務中の待遇(給与や手当、賞与、勤務時間等)についても記載し、周知することが望ましいとされています。
時短勤務労働者の労務管理と注意点
時短勤務労働者の労務管理では、以下の点に注意が必要です。
- ①賃金・社会保険料の扱い
- ②有給休暇付与の扱い
- ③残業命令の可否
- ④不利益取扱いの禁止
- ⑤プライバシーへの配慮
賃金・社会保険料の扱い
【賃金】
短時間勤務中は、短縮された分の賃金を払う義務はありません。ただし、賃金については就業規則の絶対的必要記載事項とされているため、短時間勤務中の賃金の取扱いに関しては必ず就業規則に記載しましょう。
【社会保険】
労働時間の短縮措置によって賃金が下がる場合は、標準報酬月額を改定し、社会保険料の負担額を変更することが可能です。そのためには、労働者から申し出を受けた事業主が、日本年金機構に書類を提出して申請しなければなりません。
【将来受け取る年金】
年金に関しては、賃金が低下した場合も、短時間勤務利用前の標準報酬月額に基づいて将来の年金を受け取れる「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」という制度があります。この手続きも、事業主が日本年金機構に書類を提出して申請しなければなりません。
事業主が行わなければならない社会保険、年金等の手続きについては、以下のページで詳しく解説しています。
有給休暇付与の扱い
時短勤務労働者であっても、全労働日の8割以上出勤していれば有給休暇は付与されます。また、有給休暇の付与日数にも変わりはありません。
有給休暇取得日の賃金については、短縮後の労働時間に基づく金額を支給します。例えば、時短勤務時の所定労働時間が6時間の場合、有給休暇1日当たりの賃金も6時間分に換算します。
なお、時短勤務労働者の有給休暇取得日の賃金については、有給休暇を付与された時点での労働時間ではなく、有給休暇を取得した日(実際に休暇をとった日)の労働時間を基準として計算します。
つまり、フルタイム期間中(時短勤務を申請する前)に会社から付与された有給休暇でも、時短勤務に変わってから有給休暇を取得した場合、短縮後の労働時間に基づく賃金を支給すれば良いことになります。
年次有給休暇については、以下のページで詳しく解説していますのでご参照ください。
残業命令の可否
時短勤務労働者に残業をさせること自体は、育児・介護休業法で禁止されてはいません。ただし、毎日のように残業させてしまっては、短時間勤務を利用している意味がなくなるため望ましくありません。
そこで、育児・介護中の労働者を支援するために、次の制限が設けられています。
| 所定外労働の制限 | 所定労働時間を超えて労働させてはならない |
|---|---|
| 時間外労働の制限 | 1ヶ月24時間、1年150時間を超えて労働時間を延長してはならない |
| 深夜業の制限 | 深夜(午後10時から午前5時まで)に労働させてはならない |
育児・介護をしている労働者が求めた場合には「所定外労働の制限」が適用されるため、残業をさせることは禁じられます。
育児・介護休業法で定められている所定外労働等の制限について、さらに詳しく知りたい方は以下のページも併せてご覧ください。
不利益取扱いの禁止
事業主は、労働者が育児や介護のための休業、休暇、所定労働時間の短縮等を申し出たことや、これらの制度を利用したことを理由に、不利益な取扱いをすることが禁じられています。具体的には、解雇、降格、減給等がこれに当たります。
不利益取扱いに関しては、以下のページで詳しく解説していますのでご参照ください。
プライバシーへの配慮
妊娠や出産、家族の介護について、他の社員に知られたくないという労働者も大勢います。そこで、事業主は労働者のプライバシーが十分守られるよう、適切な情報管理を徹底することが求められます。
例えば、労働者から「あまり人には知られたくない」といった意向が示された場合、情報共有の範囲を最小限に絞るなどの配慮が必要です。意向に沿うのが難しい場合は、その旨と理由を本人にしっかり説明しましょう。
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この記事の監修

- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある
