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職務発明制度とは|要件や定義、法改正などわかりやすく解説

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

職務発明制度は、社内で発明がなされた際、発明者と企業双方の利益を保護するための制度です。発明者本人だけでなく、企業の利益も守ることで、積極的な研究開発につながると期待されています。

ただし、発明に関する権利は本来発明者が有するので、企業が利益を受けるには適切な流れを踏む必要があります。また、企業は発明者に対価を支払うなど、さまざまな対応が求められます。

本記事では、職務発明の要件や権利の取扱い、付与すべき利益などについて詳しく解説していきます。事業主の方は、ぜひご覧ください。

職務発明制度とは

職務発明制度とは、業務内で行われた発明について、“発明者”と“使用者”が公平に利益を受けるための制度です。
具体的には、発明を行った従業員がその使用権限などを企業に譲渡する代わりに、使用者から従業員へ相当の利益を支払うことで、当事者双方の利益を図っています。

利益としては「金銭」が一般的ですが、昇格や社外研修などを与えることもできます。
また、職務発明制度のルールについては、就業規則や社内規程で定めておくのが基本です。

職務発明制度の目的

職務発明制度の目的は、発明者と使用者それぞれの利益を調整し、日本の研究・発明をより活発化させることにあります。

発明者へのインセンティブを確約することで、従業員は意欲的に発明に取り組むと期待できます。また、企業も高度な発明の実施を促すため、積極的に研究開発資金を投資することが見込まれるでしょう。

この循環により、国内の研究開発体制の発展を後押ししています。

業務発明や自由発明との違い

職務発明と似たものに、「業務発明」や「自由発明」があります。
職務発明は従業員の業務・職務に関連する発明ですが、それぞれ以下のような違いがあります。

業務発明 企業の業務に関する発明のうち、従業員の職務の範囲外で行われた発明
(例)
・食品メーカーの営業部員が、レトルト食品を発明した
・自動車メーカーの総務部員が、燃費のよいエンジンを発明した
自由発明 企業の業務や従業員の職務いずれにも無関係な発明
(例)
・食品メーカーの営業部員が、切れ味の良いハサミを発明した
・自動車メーカーの総務部員が、省エネ効果が高い家電を発明した

職務発明の3つの要件

職務発明の要件は、特許法35条1項に規定されています。

  • ①従業員等が行った発明であること
  • ②発明が企業の業務範囲に属すること
  • ③発明に至った行為が、従業員等の現在または過去の職務に属すること

上記のうち1つでも欠けている場合職務発明とは認められません。

また、職務発明者は雇用形態を問わないため、パートやアルバイト、契約社員、出向者などであっても、要件を満たせば職務発明制度の対象となります。
正社員にのみインセンティブを支払うと、違法とみなされる可能性があるため注意が必要です。

発明者の法的地位

「発明者」とは、実際に発明を行った主体を指します。
また、発明者は発明完成時より「特許を受ける権利」を有します。基本的には、この権利が企業や法人に譲渡されることで、使用者も特許の出願が可能となります。

以下で具体的にみていきましょう。

発明者の定義

発明者は、発明完成時より「特許を受ける」権利を有します。
発明者とは、技術的アイデアを生み出した本人のみを指します。よって、以下のような者は基本的に発明者に該当しません。

  • 管理者:研究テーマを与えた者、過程について一般的な指導をした者 など
  • 補助者:文書の作成やデータの整理、実験の手伝いを行った者 など
  • 後援者:資金提供を行った者、設備利用の便宜を与えた者 など

特許を受ける権利

特許を受ける権利とは、発明完成後から特許が認められるまでの、発明者の権利を守るための権利です。具体的には、発明の使用や処分、また収益を得る権利などを発明者に限定することで、第三者による窃取や不正利用を防止し、以下のようなケースもあります。

  • 特許を受ける権利を有しない者が特許出願を行った場合
    冒認出願として無効となる
  • 誤って特許が認められた場合
    本来の権利者(発明者)は冒認出願者に対し、特許の移転を請求できる

特許を受ける権利の移転

特許を受ける権利は財産権ですので、他者に移転することが認められています(33条1項)。
そのため、職務発明者から使用者等に移転することや、譲渡、または相続等の一般承継により移転することも可能です。

特許権の移転については、以下のページで詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。

職務発明における特許権の移転について

発明者への対価・報酬について

企業から発明者に支払う「相当の利益」については、法的な定めがありません。よって、使用者と発明者の間で協議して決めることになります。
ただし、特許法では「相当の利益=金銭や経済上の利益」と定められているため、単なる表彰や掲示だけでは足りません。報奨金や海外留学、昇給の機会などを付与する必要があります。

具体的な内容は、就業規則の定めがあればそれに従うのが基本です。
就業規則の内容が不合理な場合や、そもそも規定がない場合、最終的には裁判所が下した判断に従うことになります。

利益の金額の定め方などは、以下のページで詳しく解説しています。併せてご覧ください。

職務発明制度における「相当の利益」について

職務発明制度における法改正のポイント

2015年の法改正により、職務発明に関する権利やインセンティブの取扱いが変更されました。

法改正の背景は、かつて権利の二重譲渡が横行していたことや、対価をめぐる紛争が多発していたことなどが挙げられます。
また法改正にあたり、政府は職務発明の取扱いに関するガイドラインを公表しています。企業はガイドラインの内容を十分理解し、適切に運用していくことが重要です。

法改正のポイントについて、以下で具体的にみていきます。

権利の帰属

企業は、あらかじめ契約や就業規則に定めることで、特許を受ける権利を発明完成時から所有できるようになりました(原始的帰属)。
例えば、以下のような規定があれば、企業は従業員からの譲渡手続きを踏むことなく、発明に関する一定の権利を有することができます。

従業員が職務において発明を行った場合、特許を受ける権利等はすべて会社に帰属する。

改正前は、特許を受ける権利等は発明者(従業員)に帰属していたため、従業員が一連の権利を第三者に譲渡してしまうケースが多くみられました。
また、発明が「共同発明」の場合、特許を受ける権利等も発明者間で共有されるため、企業が権利の譲渡を受けるには発明者全員の同意を得る必要がありました。
原始的帰属が定められたことで、これらの問題が解決されたといえます。

権利の帰属については、以下のページも併せてご覧ください。

職務発明制度における、「権利の帰属」について

発明者に対するインセンティブ

発明の特許を受ける権利等を企業が取得した場合、企業は発明者(従業員)へ「相当の利益」を付与する必要があります。
以前、相当の利益は「金銭」に限られていましたが、法改正により「その他経済上の利益」の付与も可能となりました。
例えば、以下のようなものです。

  • 海外留学の機会
  • 給料アップを伴う昇進や昇格
  • ストックオプション
  • 規定を超える有給休暇
  • 発明の特許権に係る専用実施権の設定または通常実施権の許諾

また、職務発明ガイドラインでは、利益の内容が不合理なものにならないよう、企業に対して適切な手続きを求めています。
具体的には、従業員との十分な「協議」、決定事項の「開示」、従業員からの意見「聴取」の3つの手順が重視されています。

利益の内容が不合理な場合、労働トラブルや訴訟につながる可能性があるため注意が必要です。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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