会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません 会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。

人事・労務・労働問題を法律事務所へ相談するなら会社側・経営者側専門の弁護士法人ALGへ

有期労働から無期転換への導入手順|注意点などわかりやすく解説

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

無期転換ルールは、有期雇用労働者の雇用の安定を図ることを目的とする制度です。すでに多くの有期雇用労働者に適用されているため、制度の運用が不十分な企業は早急な対応が求められます。

そこで本記事では、無期転換ルールの概要、無期転換制度の導入手順、導入する際の注意点などについてわかりやすく解説していきます。

無期転換ルールとは

無期転換ルールとは、契約期間が通算5年を超える有期雇用労働者から無期雇用契約の申込みがあった場合、期間の定めのない無期労働契約に転換される制度です。2013年の改正労働契約法の施行によって導入されました。

なお、企業は対象者からの無期転換の申込みを拒否することはできません。

無期転換ルールの目的は「有期雇用労働者の雇用の安定」ですが、企業にも以下のように様々なメリットがあります。

  • 会社の実務や事情等に精通する無期労働契約の労働者を比較的容易に獲得することができる
  • 長期的な視点に立って社員育成を実施することができる

契約社員やパートが多い企業では、すでに多くの従業員に無期転換申込権が発生していると考えられるため注意が必要です。

無期転換申込権が得られる条件

無期転換申込権が発生するのは、以下の3つの条件を満たす有期雇用労働者です。

  • 同一の使用者との有期雇用契約が通算5年を超えること
  • 契約更新の回数が1回以上であること
  • 現在同一の企業との間で契約を締結していること

ただし、契約と契約の間に6ヶ月間の空白期間(クーリング期間)がある場合、クーリング期間前の契約期間は通算年数から除外されます。

また、A支店からB支店のような人事異動があっても、雇用主が同一であれば契約期間は通算されます。

無期転換制度の導入手順

無期転換制度を導入する際は、以下の手順で対応します。

  1. 有期雇用労働者の就労実態を把握する
  2. 社内の仕事を整理し、社員区分ごとに任せる仕事を考える
  3. 労働条件を検討して就業規則を作成・変更する
  4. 無期転換制度の運用・改善

➀有期雇用労働者の就労実態を把握する

自社で雇用する有期社員をリストアップし、以下のような点を整理します。

  • 有期社員の人数
  • 職務内容
  • 週や月の労働時間
  • 契約期間
  • 更新回数
  • 通算契約期間
  • 無期転換申込権の発生時期
  • 今後の働き方やキャリアに関する考え

併せて、就業規則などで有期社員の定義が明確になっているかどうかを確認する必要があります。

なお、契約期間に定めのある者であれば、契約社員やパート、パートナー社員など、名称を問わず無期転換ルールの対象になります。

②有期雇用労働者の転換後の役割を考える

有期雇用の従業員が無期雇用に切り替わった後の仕事内容や責任があいまいなままだと、後々トラブルにつながる可能性があります。
そのため、まずは社内の業務を「中心的な業務か補助的な業務か」「一時的な業務か継続的な業務か」といった視点で整理し、無期転換後にどのような役割を担ってもらうかをはっきりさせておくことが大切です。

また、仕事内容に応じて、以下の表のように無期転換の方法もいくつかのパターンが考えられます。

転換方法 内容
①正社員への転換 ●長期的に中核的な役割を担う労働者が活躍可能
●転換の要件や転換後の職位も明確にすること
②多様な正社員への転換 ●職務限定、勤務地限定、時短勤務など、労働条件を一部限定した正社員に転換すること
●育児や介護により通常の正社員と同じ働き方ができない者や、特定職務を希望する労働者が活躍可能
③契約期間の変更 ●職務や責任はそのままに、契約期間のみを「無期」に変更すること
●転換後の処遇は、基本的に転換前と同じものを適用する

③労働条件を検討して就業規則を作成・変更する

無期転換後の労働条件は、就業規則に特段の定めがない限り、転換前と同一のものが適用されます。
転換後の労働条件を別途設ける際は、「無期転換者用の就業規則」を作成し、転換後の労働条件の内容を明確化しておく必要があります。

また、無期転換者用の就業規則を作成した場合、通常の(正社員用の)就業規則は適用されません。そのため、正社員用の就業規則についても見直しを行い、適用対象から無期転換者を除外する手続きが必要となります。

なお、職務内容や責務は以前と同じであるにもかかわらず、無期転換後に労働条件だけを引き下げることは、制度の趣旨からして適切ではないとされています。

④無期転換制度の運用・改善

無期転換制度を円滑に運用するためには、制度の設計段階から労働者と企業側がしっかりと話し合い、共通理解を持つことが重要です。
労働組合や労働者の過半数代表などと協議を持ち、労使双方に納得性のある制度を作っていくことが無期転換制度のスムーズな運用につながります。

この際、労働者側から不満や反発が出ることのないよう、丁寧な説明を心がけるとともに、円滑に転換が行われているかを把握し、必要に応じて改善を行うことが望まれます。

また、労働者が無期転換制度について不満を抱いたり、トラブルに発展したりする可能性もあります。そのような事態に備え、相談窓口などを整備しておくと安心です。

無期転換ルールの特例

無期転換ルールには“特例”があり、対象者は無期転換申込権の発生時期などが通常と異なります。

  • ①専門的知識等を有する有期雇用労働者
    →5年を超える一定期間内に完了予定の業務(プロジェクト等)に従事している場合、当該業務に就いている限り、無期転換申込権は発生しません(ただし、上限は10年となります)。
  • ②定年後引き続き雇用されている労働者
    →定年後の雇用期間については、無期転換申込権が発生しません。

※これらの特例を受けるには、適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受ける必要があります。

また、上記の他にも、大学や研究開発法人の研究者、教員などは、無期転換申込権が発生するまでの期間が「5年」ではなく「10年」となる特例があります。

企業が無期転換制度を導入する際の注意点

  • 無期転換の申込みは拒否できない
    有期雇用労働者から無期転換の申込みがあった場合、企業は基本的に拒否することができません。よって、必ず無期雇用に切り替える必要があります。
  • 無期転換前の雇止めは避けるべき
    無期転換ルールの適用を免れるため、無期転換申込権が発生する前に雇止めを行うケースもあります。しかし、これは「有期労働契約の濫用的な利用を抑制し労働者の雇用の安定を図る」という労働契約法第18条の趣旨に照らして望ましいものではありません。
  • 無期転換後の解雇は要注意
    無期転換後の労働者を解雇する場合、正社員と同じ条件が適用されます。つまり、労働契約法第16条に照らし、解雇に客観的合理性と社会的相当性がない限り、解雇権濫用に当たると判断される可能性があります。
ちょこっと人事労務

企業の様々な人事・労務問題は弁護士へ

企業側人事労務に関するご相談 初回1時間 来所・zoom相談無料

企業側人事労務に関するご相談 来所・zoom相談無料(初回1時間)

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

0120-630-807

平日 9:00~19:00 / 土日祝 9:00~18:00

※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。 ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込11,000円)

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

労働法務記事検索

労働分野のコラム・ニューズレター・基礎知識について、こちらから検索することができます