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外国人雇用状況の届出とは|対象者・届出方法・事業主の注意点など

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

外国人労働者を雇用する事業主は、適切なタイミングで「外国人雇用状況の届出」を行うことが義務付けられています。これは、外国人の雇用安定を図るための重要な手続きなので、対象の事業主は必ず行う必要があります。
届出を怠ると、罰則を受けるおそれもあるため注意が必要です。

本記事では、外国人雇用状況の届出の目的や方法、届出の対象者、必要書類の記入方法等を詳しく解説していきます。

外国人雇用状況の届出義務

外国人雇用状況の届出とは、外国人労働者を雇い入れたときや、外国人労働者が退職したときに、事業主が行う届出のことです。外国人の就労状況等を管理するため、2007年(平成19年)から義務化されました。

届出方法は、厚生労働省が公表する「外国人雇用状況通知書」に必要事項を記入し、事業所を管轄するハローワークに提出します。
記載事項は外国人労働者の氏名や雇用形態、在留資格等ですが、2020年(令和2年)3月からは「在留カード番号」の記入も義務付けられています。

なお、外国人労働者が雇用保険に加入している場合資格取得届出を提出していれば、外国人雇用状況の届出は不要となります。

外国人雇用状況届出を提出する目的

外国人雇用状況の届出の目的は、「外国人の雇用管理の改善や再就職の促進」とされています。具体的には、以下のような役割があります。

  • 外国人労働者の不法就労を防止するため
  • 受入れ企業に労働環境の助言や指導を行うため
  • 離職した外国人労働者へ再就職支援を行うため
  • 厚生労働省が外国人労働者の雇用状況を集計するため

次項からそれぞれ詳しく解説していきます。

外国人労働者の不法就労を防止するため

外国人労働者は、在留資格の範囲内でしか働くことができません。在留資格の範囲外で、または在留資格がない状態で就労した場合、「不法就労」となり強制送還等の対象になります。

外国人雇用状況届出書では、在留資格や在留期間、在留カード番号等を記載するため、不法就労が行われていればすぐに摘発できます。
また、事業主も届出の作成時に在留カードを確認するため、問題がある場合は届出の前に対処が可能です。

受入れ企業に労働環境の助言や指導を行うため

ハローワークでは、事業主に対して、外国人労働者の労働環境等に関するアドバイスを行っています。
これは外国人雇用状況の届出内容をもとに行うため、事業主は正確な情報を届け出ることが重要です。

外国人雇用では、言葉や文化の違いから労働トラブルが発生することも少なくありません。ハローワークの助言や指導を受けることで、企業もスムーズに外国人雇用を進められるでしょう。

離職した外国人労働者へ再就職支援を行うため

外国人雇用状況の届出によって、ハローワークは外国人労働者の離職状況も把握できます。そのため、再就職を希望する労働者がいれば、在留資格の範囲内で再就職支援を行うことも可能です。
また、職業訓練や研修を行うなど、外国人労働者が活躍しやすいよう様々な支援を提供しています。

これらの支援により、外国人労働者の雇用安定や企業の労働力不足の解消につながると期待できます。

厚生労働省が外国人労働者の雇用状況を集計するため

厚生労働省では、年1回、日本国内の外国人労働者の数を集計し、結果を公表しています(「外国人雇用状況」の届出状況まとめ)。

本データでは、外国人労働者の数が国籍別・在留資格別等と細かく分類されているため、どの分野が人手不足なのか、今後どのような人材を呼び込むべきかといった方針も立てやすくなります。

なお、2023年(令和5年)10月の集計データによると、外国人労働者数は前年から20万人以上増加し、過去最高を記録しています。

外国人雇用状況の届出の対象者

以下の者を除く、すべての外国人労働者が届出の対象になります。

※届出が不要な外国人労働者

  • 日本国籍を持つ者
  • 在留資格が「外交」「公用」の者
  • 特別永住者

なお、届出が免除されるのは「特別永住者」であり、「永住者」については届出が必要なため注意しましょう。
また、アルバイトやパート、契約社員などの雇用形態を問わず、すべての外国人労働者が届出の対象となります。

また、雇用保険に加入する者については、雇用保険資格取得届を提出していれば「外国人雇用状況の届出」を行う必要はありません。

外国人派遣社員・派遣アルバイトの場合

派遣社員や派遣アルバイトの場合、外国人雇用状況の届出は「派遣元企業」が行います。よって、派遣先企業が届出を行う必要はありません。

なお、あらかじめ派遣元に登録しておく「登録型派遣」については、派遣先が決まる度に派遣元と雇用契約を締結します。この場合、雇用関係が発生した都度届出が必要になるため注意しましょう。

雇用保険被保険者の場合

外国人労働者でも、一定の要件を満たす場合雇用保険に加入する義務があります。
雇用保険の加入対象者については、「雇用保険被保険者資格取得届」が「外国人雇用状況の届出」を兼ねているため、別途、「外国人雇用状況届出書」を提出する必要はないとされています。

“雇用保険被保険者の外国人”と“被保険者以外の外国人”について、必要な手続きを下表で整理します。

雇用保険被保険者 雇用保険被保険者ではない
様式 雇用保険被保険者資格取得届 外国人雇用状況届出書
届出人 事業主 事業主
届出先 ・ハローワーク
・e-Gov
・ハローワーク
・外国人雇用状況届出システム
提出期限 雇入れ日の翌月10日まで 雇入れ日の翌月末日まで

なお、外国人労働者におけるその他の社会保険の加入手続きについては、以下のページで解説しています。

外国人雇用における社会保険|加入基準や必要な手続きについて

外国人雇用状況の届出方法と記入例

外国人雇用状況の届出方法は、外国人労働者が「雇用保険の被保険者かどうか」によって変わります。
必要書類や提出期限について、以下で具体的にみていきましょう。

なお、届出様式については、厚生労働省のホームページでダウンロードできます。

雇用保険の被保険者である場合

雇用保険の被保険者の場合、雇入れ時は「雇用保険被保険者資格取得届」、離職時は「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出します。これらは外国人雇用状況の届出を兼ねるので、別途「外国人雇用状況届出書」を提出する必要はありません。

届出に記載が必要なのは、以下のような項目です。

  • 労働者の基本情報(氏名や雇用形態等)
  • 国籍や地域
  • 在留資格
  • 在留カード番号
  • 在留期間
  • 資格外活動許可の有無 など

提出方法は、ハローワークの窓口に持参または郵送するか、電子システム「e-Gov」でオンライン申請することも可能です。

雇入れ時

外国人労働者の雇入れ時は、ハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します(別途、外国人雇用状況の届出は不要です)。

資格取得届の前半(項目1~16)は、労働者の基本情報や事業所の概要等を記載します。
後半の項目17~23については、外国人を雇用した場合のみ記載が必要な項目です。在留資格や在留期間、在留カード番号等が求められるため、在留カードを確認のうえ正確に記入しましょう。

また、提出期限は「雇入れ日の翌月10日まで」ですので、遅れないように提出しましょう。

離職時

労働者の離職時は、ハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出することになります。

届出の前半(項目1~13)では、労働者の氏名や離職年月日、資格の喪失理由等を記載します。
後半の項目14~19については、外国人労働者の場合のみ記載が必要な項目です。ローマ字氏名、在留資格、在留期間、在留カード番号等を漏れなく記入しましょう。

なお、提出期限は「雇用保険の被保険者でなくなった日の翌日(離職日の翌々日)から10日以内」と早いため、注意が必要です。

雇用保険の被保険者でない場合

外国人労働者が雇用保険の被保険者ではない場合、“雇入れ時”と“離職時”にハローワークへ「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」を提出する必要があります。
届出書に記載が必要なのは、以下のような項目です。

  • 外国人労働者の氏名(ローマ字)や生年月日など
  • 在留資格
  • 在留期間
  • 国籍・地域
  • 資格外活動許可の有無
  • 在留カード番号
  • 事業所の概要
  • 雇入れまたは離職の年月日

提出方法は、ハローワークの窓口に持参または郵送するか、「外国人雇用状況届出システム」によるオンライン申請も可能です。
また、提出期限は、「雇入れ日または離職日の翌月末日まで」となります。

外国人の雇用状況の届出に関する注意点

届出を怠ると罰則の対象になる

外国人雇用状況の届出を怠ったり、虚偽の届出をしたりした事業主は、1人の外国人労働者につき30万円以下の罰金が科されます(労働施策総合推進法40条1項2号)。

万が一、届け出を忘れたことに気が付いた場合は、すぐに事業所を管轄するハローワークに連絡し、指示に従ってください。

在留資格を確認する

外国人を雇用する前に、必ず在留カードの内容を確認しましょう。

在留カードには、在留期間や在留資格等が細かく定められているため、これらの範囲を超えて就労することは「不法就労」となります。
例えば、在留資格が「技術」であるのに接客業を行った場合や、留学ビザで規定時間を超えて就労した場合等が不法就労に該当します。ただし、「資格外活動許可」を受けている場合は例外なので、その点も確認が必要です。

外国人の不法就労が発覚した場合、企業も「不法就労助長罪」に問われ、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。
また、在留資格の範囲外で就労させた場合だけでなく、在留カードの確認を怠った場合も罰則の対象になるため十分注意が必要です。

※2025年6月からは、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金に厳罰化されます。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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