会社都合退職とは|メリット・デメリットや自己都合退職との違い

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
会社都合退職とは、業績悪化による人員整理など、会社側の都合で労働者を退職させることです。労働者本人の意思によるものではないので、手続きを誤ると労働トラブルに発展する可能性が高くなります。
本記事では、会社都合退職の判断基準、自己都合退職との違い、会社都合退職を行う際の注意点などについて詳しく解説していきます。
目次
会社都合退職とは
会社都合退職とは、倒産によるリストラ、業績悪化による人員整理など、会社側の都合で労働者を退職させることです。また、以下のようなケースも会社都合退職となる可能性があります。
- 事務所移転により通勤が困難になったことによる退職
- 雇止めによる退職
- パワハラや社内いじめによる退職
- 希望退職制度を利用した退職
会社都合退職は本人の希望によるものではないので、退職後の収入や生活に大きな影響をもたらす可能性があります。そのため、労働者保護の観点から、失業保険の給付などで一定の優遇措置が設けられています。
会社都合退職のメリット・デメリット
会社側のメリット
会社都合退職のメリットは、比較的穏便に人員整理を図れるという点です。
例えば、希望退職は本人からの申し出が基本ですし、退職金の上乗せといった優遇措置がとられることもあるため、労働者の納得も得やすいといえます。
また、退職勧奨に応じた場合も会社都合退職になりますが、最終的に退職するかどうかは労働者の判断に委ねられるため、後々トラブルになるリスクが小さいといえます。
一方、いきなり解雇処分を下すと“解雇権の濫用”にあたり、不当解雇で訴えられるリスクがあるため注意が必要です。
解雇は法律によって厳しく制限されているため、問題社員を退職させる際も、まずは退職勧奨などで合意を試みるのが基本です。
会社側のデメリット
会社都合退職のデメリットには、以下のようなものがあります。
●雇用関連助成金を受給できない
キャリアアップ助成金や特定求職者雇用開発助成金など、雇用の安定を目的とした一部の助成金を受給できなくなります。
●裁判を起こされる可能性がある
労働者が解雇に納得しない場合や、執拗に退職勧奨を行った場合、不当解雇で訴えられる可能性があります。敗訴すると、退職の無効や損害賠償金の支払いを命じられる可能性があるため注意が必要です。
会社都合退職と自己都合退職の違い
自己都合退職とは、結婚や出産、引っ越し、転職など、労働者自身の都合により退職することです。
また、免職や解雇といった「懲戒処分」についても、本人の違反行為や素行不良が原因のため自己都合退職となるのが基本です。
自己都合退職の場合、会社都合退職と比べて失業保険の受給などで不利になることがあります。
そのため、労働者から「会社都合退職にしてほしい」と求められることもありますが、使用者が応じる義務はありません。
自己都合退職のメリットやデメリット、注意点などは、以下のページでも解説しています。
失業保険給付
失業保険給付とは、離職者の生活の安定を図るために支給されるお金です。正確には、「雇用保険の基本手当」といいます。
失業保険を受給する場合、会社都合退職の方が労働者にとってメリットが大きいといえます。例えば、以下のようなメリットがあります。
- 失業保険を早く受け取れる
- 受給要件(被保険者期間の通算)が緩やかである
- 給付期間が長いため、より高額な手当を受給できる
例えば、失業保険の支給日についてです。
自己都合退職だと7日+2ヶ月の給付制限がありますが、会社都合退職であれば7日の待機期間を経てすぐに支給されます。
ただし、失業保険は労働者の再就職を支援するための制度なので、離職期間中は一定の「求職活動実績」が求められます。求職活動を何もしていない場合、失業保険は打ち切りとなります。
退職金支給
退職金も、退職理由によって金額が変わることがあります。
具体的な金額は会社の就業規則(退職金規定)によって様々ですが、一般的には会社都合退職の方が自己都合退職よりも高額になるケースが多いです。
平成30年の平均調査によると、大学・大学院卒で約650万円、高卒で約900万円もの金額差があるとされています。
なお、企業年金基金や確定拠出年金については、離職理由による減額はありません。
もっとも、確定拠出年金は基本的に定年まで引き出すことができないため、転職先の制度や個人型確定拠出年金に移換するのが一般的です。
会社都合退職の理由・条件
会社都合で退職した場合、「特定受給資格者」となり、失業保険の受給において優遇措置が適用されます。
また、自己都合退職でも正当な理由があれば「特定理由離職者」に区分され、優遇措置を受けられる可能性があります。
| 特定受給資格者 | 解雇や倒産などの理由により、再就職の準備をする余裕なく離職を余儀なくされた者 |
|---|---|
| 特定理由離職者 | 特定受給資格者以外の者で、労働契約が更新されなかったことやその他やむを得ない事情によって離職した者 |
特定受給資格者の範囲・判断基準
倒産等により離職した場合
会社の倒産等により離職を余儀なくされた場合は会社都合退職となり、「特定受給資格者」に該当します。具体的には、以下のようなケースが挙げられます。
- 会社の倒産による離職(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続きの申立てまたは手形取引の停止等)
- 事業縮小に伴う大幅な人員削減
- 事業所の廃止による離職
解雇等により離職した場合
解雇等による離職の場合、会社都合退職となり「特定受給資格者」に該当します。具体的には、以下のケースが挙げられます。
- 解雇による離職(労働者の責に帰すべき重大な事由による場合を除く)
- 労働契約で明示された労働条件と実態に著しい相違があったことによる離職
- 賃金の3分の1を超える額が期日までに支払われなかったことによる離職
- 賃金が85%未満に低下したことによる離職(低下が予見できなかった場合のみ)
- 離職直前に著しく長時間の時間外労働が行われたこと、または適切な健康障害の防止措置が講じられなかったことによる離職
- 妊娠中・出産後・介護中の就業の強制、妊娠や出産を理由に不利益取扱いを受けたことによる離職
- 職種転換等において、適切な配慮が行われなかったことによる離職
- 有期雇用契約が3年以上継続後に雇止めされたことによる離職
- 労働契約の更新が約束されていたにもかかわらず、更新されなかったことによる離職
- パワハラやセクハラ、社内いじめによる離職、またはハラスメントに対して適切な措置が講じられなかったことによる離職
- 退職勧奨による離職
- 使用者の責に帰すべき事由により、休業が3ヶ月以上続いたことによる離職
- 事業者の法令違反行為による離職
特定理由離職者の範囲・判断基準
有期雇用の契約更新がなかった場合
有期雇用契約が更新されなかったことにより離職した者は、「特定理由離職者」に該当します。
なお、以下のケースは会社都合退職となり、「特定受給資格者」に分類されるため注意が必要です。
- 契約更新が1回以上、契約期間が3年以上の状況で雇止めした場合
- 契約の更新を確約していたにもかかわらず、更新しなかった場合
トラブルを防ぐためにも、雇用契約書等では契約更新について確約しないことが重要です。例えば、「契約を更新する場合がある」など断定を避けて表記するようにしましょう。
一方、労働者本人が契約終了を希望した場合や、契約の更新を拒否した場合、特定理由離職者にはあたらないとされています。
有期雇用契約における解雇の注意点は、以下のページで解説しています。
自己都合退職で正当な理由のある場合
自己都合退職でも、正当な理由がある場合は「特定理由離職者」となり、失業保険の優遇措置を受けられる可能性があります。具体的には、以下のケースが該当します。
- 体力の不足、心身の障害、疾病や負傷、視力・聴力・触覚の減退による離職
- 妊娠、出産、育児等による離職で、雇用保険上の受給期間延長措置を受けたもの
- 父母の扶養や介護など、家庭事情の急変による離職
- 配偶者や扶養すべき親族との別居が難しくなったことによる離職
- 結婚に伴う引っ越し、事業所の移転、交通機関の廃止等により、通勤困難になったことによる離職
- 希望退職による離職(特定受給資格者に該当しないもの)
労働者から自己都合退職の申し出があっても、離職理由によっては行政判断で「会社都合退職」となる場合があります。例えば、嫌がらせやいじめ、賃金カットなどによる離職が考えられます。
会社都合退職の手続きにおける注意点
会社都合退職でも、退職時の手続きは通常とほぼ同じです。ただし、自己都合退職と比べてトラブルになりやすいため、以下の3点に留意しながら進める必要があります。
- 解雇予告義務
- 有給休暇の消化
- 離職票の虚偽
会社都合退職のうち「整理解雇」の手続きについては、以下のページで詳しく解説しています。
解雇予告義務
労働者を解雇する場合、解雇日の30日前までに、本人へ解雇する旨を通知しなければなりません(労働基準法20条、解雇予告義務)。
解雇予告期間を空けずに解雇する場合、それぞれの賃金額に応じた解雇予告手当を支払う必要があります。
例えば、即日解雇の場合、“30日分の賃金”を解雇予告手当として支払います。
また、通知から20日後に解雇する場合、30日に満たない“10日分の賃金”が解雇予告手当となります。
解雇予告義務の詳細は、以下のページをご覧ください。
有給休暇の消化
会社都合退職であっても、有給休暇は在職中に消化させる必要があります。よって、退職後に取得させることはできません。
引き継ぎの都合などで退職日までにすべて消化できない場合、退職日の変更や有給休暇の買取りも検討すべきでしょう。法律上、有給休暇の買取りは禁止されていますが、退職時の買取りなどは例外的に認められています。
ただし、有給休暇の買取りは義務ではないので、「買取りに応じるか」「いくらで買い取るか」などは会社の任意で決定できます。
退職時の有給休暇の取扱いは、以下のページでも解説しています。
離職票の虚偽
離職票に虚偽の記載を行うことは違法であり、6ヶ月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金が科される可能性があります(雇用保険法83条)。
例えば、労働者のためを思い、本来自己都合退職だが会社都合退職にした場合も違法となります。
虚偽の申告により失業保険を多く受給することは“不正行為”にあたり、事業主も連帯して責任を負うため注意が必要です。具体的には、受給した失業保険の返還・納付命令や、詐欺行為として処罰を受ける可能性があります。
一方、会社が助成金を受け取るため、本来は会社都合退職のところ自己都合退職と偽るケースもあります。自己都合退職は労働者にとってデメリットが多いため、会社に対して損害賠償請求などを行うことが想定されます。
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この記事の監修

- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

