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労働安全衛生法上の危険物・有害物・機械等に関する規制

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

機械や有害物などの「危険物」を扱う職場では、労働災害を防ぐため厳格な規制が設けられています。

2025年の法改正では、表示義務のある物質の追加や保護対象の拡大などが行われ、事業者には、より一層の安全管理が求められるようになりました。本記事では、最新の改正内容を含め、危険物に関する規制を一覧表やリストでわかりやすく解説します。

労働安全衛生法による危険・健康障害の防止義務

労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を守り、快適な職場環境を実現するための法律です。

特に、機械や有害物質などの“危険物”を扱う職場では、重大な労働災害や健康障害のリスクが高まるため、事業者には厳格な安全対策が求められます。これには、機械の検査や化学物質の危険性表示、作業環境の管理などが含まれます。これらの措置は、労働安全衛生法およびその施行令により詳細に定められています。

違反した場合は行政処分や刑事罰の対象となることもあるため、事業者は法令を正しく理解し、漏れなく対応することが重要となります。

危険物・有害物に関する規制

危険物・有害物を取り扱う事業場の場合、知らず知らずのうちに人体に健康障害を生じさせているおそれがあります。そのような事態を防止するために、労働安全衛生法では、化学物質の取扱いや調査等が規制されています。

本項では、危険物・有害物に関する規制について説明します。

製造禁止物質

以下の物質は、労働者に重度の健康障害をもたらすため、製造・輸入・譲渡・提供・使用が基本的に禁止されています(労安衛法55条本文、同法施行令16条1項)。

  • ①黄りんマッチ
  • ②ベンジジン及びその塩
  • ③4-アミノジフェニル及びその塩
  • ④石綿
  • ⑤4-ニトロジフェニル及びその塩
  • ⑥ビス(クロロメチル)エーテル
  • ⑦ベータ-ナフチルアミン及びその塩
  • ⑧ベンゼンを含有するゴム糊(5%以上含有するもの)
  • ⑨②、③若しくは⑤から⑦の物をその重量の1%を超えて含有し、または④に掲げる物をその重量の0.1%を超えて含有する製剤その他の物

ただし以下の要件を満たせば、これらの「製造禁止物質」を試験研究目的で製造・輸入・使用することができます。

  • 所轄の都道府県労働局長の許可を受けること
  • 禁止物質の製造における基準(予防規則)を満たすこと

製造の許可

以下の物質は健康障害を及ぼすおそれがあるため、製造するには厚生労働大臣の許可が必要となります(労安衛法56条、同法施行令17条、別表第三第1号)。

  • ①ジクロルベンジジン及びその塩
  • ②アルファ-ナフチルアミン及びその塩
  • ③塩素化ビフェニル及びその塩
  • ④オルト-トリジン及びその塩
  • ⑤ジアニシジン及びその塩
  • ⑥ベリリウム及びその化合物
  • ⑦ベンゾトリクロリド
  • ⑧①から⑥の物をその重量の1%を超えて含有し、または⑦の物をその重量の0.5%を超えて含有する製剤その他の物(合金にあっては、ベリリウムをその重量の3%を超えて含有するものに限る。)
  • ⑨石綿分析用試料等

危険有害性の表示義務

一定の有害物質の容器や包装には、その危険性や取扱い方法をラベルで表示することが義務付けられています。

【ラベル表示が必要な物質】

  • ①爆発性、発火性、引火性の物その他の労働者に危険が生ずるおそれのある物
  • ②ベンゼン、ベンゼンを含有する製剤その他の労働者に健康障害を生ずるおそれのある一定の物
  • ③製造に厚生労働大臣の許可を要する物

【ラベル表示が必要な項目】

  • 製剤の特定名(名称、成分、含有量等)
  • 絵表示
  • 注意喚起語
  • 危険有害性情報
  • 注意書き
  • 供給者の特定 他

また、これらの有害物質を譲渡・提供する際は、SDS(安全データシート)に以下の項目を記載し、相手方に交付しなければなりません。

【SDSに記載する項目】

  • 化学製品中に含まれる化学物質の名称
  • 物理化学的性質
  • 危険性
  • 有害性
  • ばく露した際に行うべき応急措置
  • 取扱方法
  • 保管方法
  • 廃棄方法 他

なお、厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」では、ラベル表示やSDSの交付が必要な物質が一覧化されています(2025年4月1日時点で1628物質)。また、物質名やCAS番号での検索も可能です。

 

化学物質の有害性の調査

政令で定められていない化学物質(新規化学物質)を製造・輸入する場合、厚生労働省の基準に沿って有害性の調査を行い、その結果を厚生労働大臣に届け出なければなりません。
この“有害性の調査”では、新規化学物質が労働者の健康にどのような影響を与えるのかを調べます。

また事業者には、調査結果をもとに、労働者の健康障害を防ぐために必要な措置を速やかに講じることが義務付けられています。
さらに、調査結果や講じる措置の内容については、関係労働者へ周知し、記録を残すことも必要です。

一方、厚生労働省は、必要に応じて事業者へ安全対策の実施を勧告する場合があります。具体的には、安全設備の整備や保護具の装備などの措置を促します。
このように化学物質を調査し、必要な対策を講じることは、「リスクアセスメント」と呼ばれます。

化学物質に関する2025年4月の改正点

2025年4月1日に施行された労働安全衛生法の改正では、化学物質の管理に関して以下の3つの重要なポイントが追加・強化されました。

①表示・通知対象物質の追加
新たに約700種類の化学物質が、ラベル表示・SDS(安全データシート)交付・リスクアセスメントの対象に追加されました。対象は、政府がGHS分類で「区分1」に該当する有害性を確認した物質です。
一部の物質では「裾切り値(濃度基準)」の変更も行われています。

②保護対象範囲の拡大
改正前は、危険箇所等で作業を行う場合には、自社の労働者に対してのみ健康障害を防止するための措置が義務化されていましたが、改正により、請負業者や協力会社の作業員など、現場で作業に従事するすべての人が保護対象となりました。

③請負人への周知義務化
危険箇所等で一人親方等の請負人に作業の一部を請け負わせる場合には、保護具の必要性等を周知する義務を負うことになりました。
特に重層請負構造の現場では、情報伝達の徹底が求められます。

化学物質におけるリスクアセスメントについて、詳しくは以下のページをご覧ください。

 
化学物質におけるリスクアセスメントの実施手順

機械等に関する規制

事業者は労働災害を防止するため、事業場の機械・設備等に不備がないか、定期的に検査等をして安全を確保する必要があります。
また、危険な作業を行う機械等は、製造や検査等に関する規制が設けられているため、本項で紹介していきます。

製造の許可

特定機械等といわれる危険な作業を必要とする一定の機械等の製造には、都道府県労働局長による事前の許可が必要となります(労安衛法37条)。
ここでいう特定機械は以下に挙げるものです。

  • ①ボイラー(小型ボイラーを除く)
  • ②第一種圧力容器(小型圧力容器を除く)
  • ③つり上げ荷重が3トン以上(スタッカー式のクレーンにあっては、1トン以上)のクレーン
  • ④つり上げ荷重が3トン以上の移動式クレーン
  • ⑤つり上げ荷重が2トン以上のデリック
  • ⑥積載荷重が1トン以上のエレベーター(簡易リフトおよび建設用リフトを除く)
  • ⑦ガイドレールの高さが18メートル以上の建設用リフト(積載荷重が0.25トン未満のものを除く)
  • ⑧ゴンドラ

製造時等の検査・検査証の交付

特定機械等を下記のように取り扱うには、都道府県労働局長又は労働基準監督署長による検査を受け、検査証の交付(または裏書)を受けることが義務付けられています。

  • ①製造
  • ②輸入
  • ③設置
  • ④主要部分の変更
  • ⑤使用休止後の再開

また、検査証には、特定機械等の種類に応じて有効期限があり、期限は次のとおりです。

種類 有効期限
ボイラー及び第一種圧力容器 1年
エレベーター及びゴンドラ 1年
クレーン及び移動式クレーン 2年

譲渡等の制限

検査証の交付を受けていない特定機械等の使用は禁止されています。検査証を受けた特定機械等は、検査証付きに限り、譲渡または貸与が許可されています(労安衛法40条)。

また、特定機械等以外の機械での危険・有害な作業や、危険な場所で使用する機械等に関しては、厚生労働大臣が定める規格または安全装置を備えていなければ、設置・譲渡・貸与を行うことはできません。(労安衛法42条)。

個別検定・型式検定

「危険な場所で使用する機械」や、「危険防止のために使用する用具」については、厚生労働大臣が定める規格・安全装置を備えている必要があります。
また、そのうち17種類については、「個別検定」または「型式検定」に合格したうえで設置する必要があります。

【個別検定】
機械1台ごとに、または製品1つずつ、個別に行う検定のことをいいます。型式が同じ機械でも、それぞれ検定を受ける必要があります。
合格証は交付されず、機械や製品の明細書に「合格印」を押されるのが基本です。

【型式検定】
同じ型式の機械や製品ごとに行う検定のことです。合格すると「型式検定合格証」が発行され、記載された有効期間内であれば、その型式の機械や製品を何個でも製造・輸入することができます。

個別検定が必要なもの
  • ゴム、ゴム化合物又は合成樹脂を練るロール機の急停止装置のうち電気的制動方式のもの
  • 第二種圧力容器
  • 小型ボイラー
  • 小型圧力容器
型式検定が必要なもの
  • ゴム、ゴム化合物又は合成樹脂を練るロール機の急停止装置のうち電気的制動方式以外の制動方式のもの
  • プレス機械又はシャーの安全装置
  • 防爆構造電気機械器具
  • クレーン又は移動式クレーンの過負荷防止装置
  • 防じんマスク
  • 防毒マスク
  • 木材加工用丸のこ盤の歯の接触予防装置のうち可動式のもの
  • 動力により駆動されるプレス機械のうちスライドによる危険を防止するための機構を有するもの
  • 交流アーク溶接機用自動電撃防止装置
  • 絶縁用保護具
  • 絶縁用防具
  • 保護帽
  • 電動ファン付き呼吸用保護具

労働者への特別教育の実施について

労働災害の発生を防ぐには、危険物を取り扱う労働者に対して十分な教育を行う必要があります。労働者に危険物の知識や技能があれば、防げていたであろう事故も多く発生しているためです。

具体的には、まず雇入れ時に「危険物の扱い方」や「作業手順」、「事故発生時の応急措置」などを説明します(労働安全衛生規則35条)。なお、作業内容が変更したときは、その都度教育を行う必要があります。

また、新たに職長や指導・監督者になる者には、就任前に教育を行う必要があります(職長教育)。
そのため、職長や監督者になる可能性がある者には、計画的に教育を実施しておくようにしましょう。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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