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法律で定められる手当と会社が任意で支給できる手当の種類

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

基本給と併せて支払われる「手当」には、様々な種類があります。そこで、本記事では、それぞれの種類ごとに手当について解説していきます。

なお、名称が法律等で定められていない手当もあり、会社が独自に定めた手当については、その会社によって名称が異なる場合があることにはご留意ください。

手当の種類について

諸費用として基本給と併せて支払われる賃金である「手当」は、「法律で定められている手当」と「法律で定められていない手当」に分けられます。前者は、法律で支給要件等が定められている手当であり、後者は、法律の定めはないものの、会社が独自に要件等を設けて任意に支給している手当です。次項以下でそれぞれについて解説していきます。

なお、手当の概要については、下記の記事で説明しています。

会社が支給する給与の諸手当について

法律で定められている手当

法律で定められている手当には、労働基準法37条第1項、第4項で定められている「時間外手当」「休日手当」「深夜手当」といった割増賃金が該当します。法定の支給要件に該当した場合、会社は当該手当の支給義務を負います。

それぞれの割増率等、詳細については下記の記事をご覧ください。

割増賃金請求

法律で定められていない手当

法律で定められていない手当について、会社は支給義務を負いません。また、支給要件等も定められていないため、会社は独自に要件等を設けて任意に支給することができます。

こうした手当のうち、毎月固定して支払われるものを「一律手当(固定手当)」といいます。一律手当の内容は、会社によって異なります。もっとも、対象者へ一律に支払われる手当(住宅手当や職務手当、皆勤手当等)や勤務時間と無関係に毎月一定額を支給する手当(通勤手当等)を内容に含む例が多くみられます。

法律で定められていない手当について、種類ごとに列挙したので次項以下をご覧ください。

仕事給的手当

仕事給的手当とは、仕事を物差しに金額を算定する手当をいい、主に次の4つに分類されます。

  • ・職務に関する手当:役職手当、営業手当等
  • ・能力に関する手当:技能手当、資格手当等
  • ・勤怠に関する手当:精皆勤手当等
  • ・成果に関する手当:歩合給、達成手当、無事故手当等

役職手当

役職手当とは、職務に関する手当の代表的なものであり、管理・監督者等、役職のある者に対して、その責任の大きさに応じて支給する手当です。次のような理由で支給することが多いようです。

  • ①役職のない人と比べて、一般的に職務内容が複雑かつ責任が重いため
  • ②管理者は労働基準法に定める労働時間の規定の適用から除外されている(労基法41条2号)ことから、時間外労働について、あらかじめ一定時間分を定額で支給しておくため
  • ③部下の指導や人間関係に関する問題について、責任をもたせる場合に対価とするため
  • ④社内外における、役職者としての体面を保持するために出費する必要があるため

なお、時間外手当の支払対象から除外しようとして、社内では役職者とされていても、実際には労働基準法41条2号に規定する「監督若しくは管理の地位にある者」に該当しない者に役職手当を支給するケースがあります。しかし、監督若しくは管理の地位にある者でない以上、時間外手当の法的な支払義務を免れることはできないため、注意しましょう。

営業手当

営業手当とは、営業職にある者に対して、社外の営業活動に必要な金銭的負担を補填するために支給する手当をいいます。また、この意味合いに加えて、営業業務に対する奨励として金額を上乗せする例もあります。

なお、みなし残業(あらかじめ一定時間分の残業をしたものとみなし、相当する金額を手当等に含めておく制度)を導入し、みなし残業代を営業手当に含める企業もあります。しかし、昨今の営業業務の場合、労働基準法38条の2に規定されている「みなし労働時間」に該当しないケースも多く、実際の残業時間に相当する、あるいはそれ以上の時間外手当を支払う必要性が生じる場合があるため、注意が必要でしょう。

技能手当・資格手当

技能手当と資格手当は、どちらも能力に関する手当であり、企業が必要とする技能や資格を持っている者に支給するものをいいます。このように手当を支給して優遇することで、技能や資格保有者の退職を防ぎ、技能・資格の取得を奨励することに繋がります。

なお、基本給の算定にあたり、技能の程度や資格の有無を考慮している場合は、改めて手当を支給する必要はありません。

精皆勤手当

精皆勤手当とは、勤怠に関する手当であり、労働者の勤務を奨励し、出勤を促進するために支給するものです。無遅刻無欠勤だった場合に支給する「皆勤手当」と、欠勤が少ない等会社が定めた基準を達成した場合に支給する「精勤手当」に分けられます。

精皆勤手当は、労働者が有給休暇を取得した場合にも支給しなければなりません。なぜなら、労働基準法136条によって、使用者(会社)は、有給休暇を取得した労働者を不利益に取り扱ってはいけないと規定されているからです。有給休暇取得日を欠勤日として取り扱うことは、労働基準法136条で禁止する不利益取扱いにあたります。

成果に関する手当

成果に関する手当とは、純粋な仕事の成果に対して支給する手当をいい、歩合給や達成手当、無事故手当等がこれに当たり ます。

歩合給とは、業績に応じて金額が変動する手当であり、達成手当とは、会社が定めた目標等を達成したときに支給する手当です。また、無事故手当とは、運送業等に携わる労働者で、一定期間無事故無違反だった者に対して支給する手当をいいます。

こうした手当を支給することにより、労働者のモチベーションを向上させることができます。

生活給的手当

生活給的手当とは、労働者の生活を保障することを目的に、支給対象者の生活を基準として金額を算定する手当をいい、主に次の2つに分類されます。

  • ・私生活に関する手当:家族手当、住宅手当等
  • ・転勤等に関する手当:地域手当、単身赴任手当等

家族手当

家族手当とは、私生活に関する手当のひとつであり、扶養家族がいる労働者に対して、基本給とは別にその生活費に配慮して支給するものをいいます。

もっとも、「一家の大黒柱によって家族を支える」という前時代的な考えに基づく手当であり、労働者のライフスタイルの多様化や女性の社会進出、独身者の増加といった近年の社会情勢の変化により、見直されつつある制度です。実際に、家族手当を支給している企業は減少しています。

特に配偶者手当に関しては、配偶者の年収を扶養控除内で抑えることの弊害等が問題視され、国家公務員の配偶者手当が2020年度までに段階的に削減されることになりました。一方で安心して子育てができるようにするために子供手当は割増されました。一般企業でも、同様に共働き世帯を想定した手当の変更 が行われるものと考えられます。

住宅手当

住宅手当とは、労働者が本人名義の住宅に住んでいる場合に、住宅ローンや家賃の一部を補助する目的で支給する手当であり、住宅の状況によって支給金額が決定されます。

寮や社宅等がある会社で、社宅等に居住する労働者とそれ以外に居住する労働者との均衡を図る、または社宅等の有無に関係なく住居費による生計費の圧迫を緩和することを目的としたり、住宅事情の悪い地域に事業所がある会社で、人材の確保や転勤等を円滑に行ったりすることを目的に支給することが多いようです。

支給額を決めるにあたっては、住居の種類や世帯主であるか否か、扶養家族の有無等を考慮するケースもあれば、役職・資格・勤続年数等を考慮するケースもあります。

また、住宅手当の支給条件も企業によって異なりますが、家賃の金額、自宅から会社までの距離、家族の人数、雇用契約の内容(正社員であるか否か)等を考慮し、支給の有無を決定するケースがみられます。

地域手当

地域手当(都市手当、寒冷地手当等とも呼ばれます)とは、離れた位置に勤務地が複数ある会社で、各勤務地においてかかる生計費の差を調整することを目的に支給する手当です。

地域事情の特殊性に配慮することで、人材の確保と転勤等を円滑に行うことを目的とするもので、一般的に現地採用者には支給されません。地域手当は、地域による給与の差異を調整する措置として設けられているため、会社の方針により支給が取りやめになる可能性も十分考えられます。

単身赴任手当

単身赴任手当とは、転勤命令によって単身赴任して働いている労働者に支給する手当で、別居手当と帰省手当の2つに分けられます。

別居手当とは、子供の受験や持ち家の管理、介護等の理由で、転勤時に家族との別居を余儀なくされたことを理由に支給する手当で、生計を補助するものです。一律に金額が決まっているケースが多くみられますが、転勤先や家族が住む自宅との距離、役職等を考慮して金額を決める場合もあり、会社によって異なります。

他方、帰省手当とは、単身赴任後に自宅へ帰るための交通費を補助するものです。自宅と単身赴任地の距離に応じて金額が決まるケースもあれば、往復にかかる交通費に応じて決められるケースもあります。

実費弁償的手当

実費弁償的手当とは、勤務にあたり様々な形で発生する費用を補填することを目的に支給する手当です。例として、次のようなものが挙げられます。

  • ・通勤手当
  • ・マイカー手当

通勤手当

通勤手当とは、通勤にかかる必要経費を補填するために支給する手当です。交通手段や距離、時間、ガソリン代等から、実際に通勤にかかる費用を計算して金額が算定されます。なお、通勤定期券等を現物支給する会社もあります。

また、一定額以下であれば非課税とされます。 詳細については下記の記事で説明しています。

課税される手当と非課税の手当について

マイカー手当

マイカー手当とは、私物を業務で使用する場合に支給する、BYOD(Bring Your Own Device)手当の一種で、自家用車を業務内で使用した場合に支給するものです。BYOD手当の支給対象となるその他のケースとしては、労働者が保有するスマホやパソコンを業務に使用するケースが考えられます。

なお、自家用車に伴う費用(ガソリン代、メンテナンス費用、保険代等)をどこまで手当に反映させるかという点が 課題とされます。

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