外国人を雇用する際に企業が守るべき法律は?注意点など詳しく解説

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

外国人を雇用する企業は、日本人と同様に労働関係法令を遵守し、在留資格や技能実習制度など外国人特有の制度についても正しく理解することが求められます。

また、国籍を理由とした差別は法律で禁止されており、「外国人だから」という理由で賃金など待遇に差を設けることは違法となります。この点は企業が特に注意すべきポイントです。

この記事では、外国人雇用で守るべき法律や違反したときの罰則、実務上の注意点について解説します。

外国人労働者を雇用する際に企業が守るべき法律

外国人労働者に適用される法律は、以下のようなものです。主に労働者保護や社会保障関連の法律が多くなっています。

労働基準法 企業が守るべき最低限の労働条件を定めた法律
出入国管理及び難民認定法(入管法) 日本への入国・出国の管理や在留資格などを定めた法律
最低賃金法 労働者に支払う賃金の最低ラインを定めた法律
労働施策総合推進法 労働者が生き生きと働ける社会を実現するための法律
労働契約法 労働契約の基本的なルールを定めた法律
労働安全衛生法 労働者の健康と安全を守るための法律
労働者災害補償保険法 労働災害発生時の補償について定めた法律
健康保険法 仕事以外で病気やけがをしたときに、保険給付を行うための法律
厚生年金保険法 老後の所得補償などについて定めた法律
雇用保険法 失業した場合などに、労働者の生活や再就職を支えるための法律

特に「入管法」における在留資格や、「労働施策総合推進法」に基づく“外国人雇用状況の届出”などは、外国人雇用特有のルールのため注意が必要です。

労働基準法

労働基準法とは、賃金や労働時間、休日といった労働条件の最低基準を定めた法律です。
例えば、1日8時間、週40時間の「法定労働時間」を超えて働いた労働者には、日本人・外国人を問わず一定の割増賃金を支払わなければなりません。

また、労働基準法3条では、労働者の国籍や信条、身分を理由とする差別的取り扱いを禁止しています。「外国人だから」という理由で不当に賃金を引き下げたり、残業代を不支給としたりすることは違法になります。

2026年以降に予定されている労働基準法の大改正や、国籍による労働条件の差別禁止について詳しく知りたい方は、以下の各ページをご覧ください。

出入国管理及び難民認定法(入管法)

入管法とは、日本への出入国や外国人の在留を適切に管理するための法律です。外国人が日本で働くときに必要となる「在留資格」についても具体的に定められています。

2019年4月には、新たに「特定技能」という在留資格が創設されました。これは、介護や建設など人手不足が深刻な分野で、専門性や技能を持つ外国人労働者を受け入れるための制度です。企業にとっては即戦力の確保手段として注目されています。さらに、2024年の法改正により、特定技能の対象分野は12分野から16分野へと拡大され、より幅広い分野で外国人材の受け入れが可能となりました。

外国人を雇用するときは、在留カードを確認し、就労が認められている在留資格かどうかや、従事できる業務の範囲などを必ず確認しましょう。

入管法の改正内容は、以下のページでも紹介しています。

最低賃金法

最低賃金法とは、労働者の賃金の最低ラインを定め、安心して生活できるようにするための法律です。
日本で働くすべての労働者に適用されるため、外国人労働者であっても最低賃金を守る必要があります。最低賃金は毎年見直されるため、常に最新の金額を確認することが大切です。

詳しくは以下のページをご覧ください。

労働施策総合推進法

労働施策総合推進法とは、労働者が能力を十分に発揮できるよう、企業にさまざまな取り組みを義務づける法律です。外国人雇用では、以下の対応が必要です。

  • 外国人雇用状況の届出
    外国人労働者の雇入れ時や離職時は、氏名や在留資格などの情報をハローワークへ届け出なければなりません。届出期限は、雇入れ時は翌月10日まで、離職時は離職日の翌日から10日以内です。書面だけでなく電子申請も可能です。
  • 外国人労働者の雇用管理の改善
    外国人が職場にスムーズに適応できるよう、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関する指針」に沿った対応を行うことが必要です。採用時に労働条件をわかりやすく説明することや、解雇を避けるための配慮、離職後の再就職を支援する取組などがあげられます。

外国人雇用状況の届出については、以下の記事でも解説しています。

労働契約法

労働契約法とは、労働者と企業の間で起こるトラブル(個別労働紛争)を未然に防ぎ、労働者の保護を図るため、労働契約の理念や基本ルールについて定めた法律です。

具体的には、以下のような事項について一定のルールが定められています。

  • 安全配慮義務
  • 労働契約の成立や変更
  • 就業規則
  • 出向や懲戒
  • 解雇
  • 有期雇用契約

外国人労働者の場合、文化や慣習の違いから労働トラブルが起こるケースも多いため、特に注意が必要です。適切な対応を怠った場合、企業の“権利濫用”とみなされ、手続きが無効となる可能性があります。

労働契約の基本的なルールや就業規則の効力については、以下の各ページで詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。

労働安全衛生法

労働安全衛生法とは、労働者の健康と安全を守るため、また快適な職場環境を整備するために、事業主が講じるべき措置などを定めた法律です。
具体的には、以下のような事項について一定のルール(義務)を課しています。

  • 安全管理者や衛生管理者の選任
  • 危険または有害な業務への対策
  • 安全衛生教育
  • 健康診断やストレスチェックの実施

外国人労働者に対しても、労働安全衛生法に基づき適切な措置を講じることが重要です。

労働安全衛生法については、以下のページでも詳しく解説しています。

労働者災害補償保険法

労働者災害補償保険法とは、労災保険の内容について定めた法律です。
具体的には、労災認定の基本的な要件、給付内容などが定められています。

労災保険の適用対象は、「労働者として働くすべての人」であり、国籍は問いません。企業との雇用契約に基づいて働いていれば、外国人労働者でも労災保険の補償を受けることができます。

また、雇用契約を締結していなくても、実質的に使用者の指揮命令下で業務を行い、報酬を得ている場合は労災保険が適用される可能性があります。

健康保険法

健康保険法は、労働者とその被扶養者が業務外で病気や怪我をした際に保険給付を行い、生活を支えるための法律です。健康保険に加入する企業の労働者であれば、日本人・外国人を問わず給付を受けることができます。

詳しくは以下のページをご覧ください。

厚生年金保険法

厚生年金保険法とは、会社員や公務員が加入する公的年金制度について定めた法律です。
具体的には、老後の生活を支えるための「老齢厚生年金」、労働者に万が一の事態が起きた場合の「障害厚生年金」、「遺族厚生年金」があります。

厚生年金の加入要件は、以下の4つです。

  • 週の勤務時間が20時間以上
  • 給与が月額8万8000円以上(残業代や通勤手当を除く)
  • 2ヶ月を超えて働く見込みがある
  • 学生ではない

上記の要件をすべて満たす者は、国籍や雇用形態を問わず厚生年金の加入対象となります。

雇用保険法

雇用保険法とは、雇用保険の加入要件や給付手続きなどについて定めた法律です。
労働者が失業した場合に一定の「失業手当」を支給し、再就職までの生活を支援することを目的としています。

雇用保険の加入要件は、以下の2つです。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上、継続して雇用される見込みがある

上記の要件を満たす者は、日本人・外国人を問わず雇用保険の加入対象となります。
ただし、留学生のアルバイトなど一部の外国人労働者は適用対象外となるため注意が必要です。

外国人雇用に関する法律は技能実習生やアルバイトにも適用される?

技能実習生や外国人アルバイトであっても、雇用契約を結んで働く以上、労働基準法や最低賃金法などの労働関係法令が適用されます。日本では国籍や雇用形態に関係なく、日本で働くすべての労働者が保護される仕組みになっているためです。

そのため、最低賃金の保障や労働時間の上限規制、時間外労働に対する割増賃金の支払い、労災保険の適用といった基本ルールは、日本人労働者と同様に守らなければなりません。企業は、外国人であることを理由に不利な条件で働かせることはできず、適切な労働環境を整備することが求められます。

外国人技能実習制度の仕組みや、外国人アルバイトを雇用するときの注意点について知りたい方は、以下の各ページをご確認ください。

外国人雇用に関する法律に違反した企業への罰則とは?

外国人労働者にも様々な法律が適用されるため、労務管理は適切に行うことが重要です。
例えば、以下のような行為は違法となり、罰則の対象となります。

法律 違法行為の例 罰則
労働基準法 時間外・深夜・休日労働の割増賃金を支払わない、国籍を理由に賃金を差別する 6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
出入国管理及び難民認定法(入管法) 在留資格の範囲を超えて働かせる、不法滞在者を雇用する 5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科あり)
最低賃金法 最低賃金を下回る給与で働かせる 50万円以下の罰金
労働施策総合推進法 外国人雇用状況の届出をしない、虚偽の申告をする 30万円以下の罰金
労働契約法 正当な理由なく解雇する 解雇無効・損害賠償請求の可能性(刑事罰なし)
労働安全衛生法 外国人労働者の安全対策や健康管理を怠る 6ヶ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
労災保険法 行政からの報告命令に応じない、虚偽の報告をする 6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
健康保険法、厚生年金保険法 加入義務があるのに、健康保険や厚生年金に加入させない 6ヶ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
雇用保険法 加入条件を満たしているのに雇用保険に加入させない 6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金

こうした法令違反は罰則だけでなく、行政からの指導や是正勧告の対象となり、悪質な場合には企業名が公表される可能性もあります。

企業名が公表されると、社会的信用やブランドイメージが低下し、採用活動や取引にも悪影響を及ぼしかねません。トラブルを防ぐためにも、関係法令を正しく理解し、外国人労働者に対しても適切な雇用管理を徹底することが大切です。

外国人雇用に関して労働基準法違反とみなされた裁判例

事件の概要

【平22(ワ)42153号 東京地方裁判所 平成23年12月6日判決、デーバー加工サービス事件】
技能実習生として働く外国人が、給与からの天引き額が日本人労働者と異なることを理由に、企業の労働基準法違反を訴えた事案です。

企業は労働者に寮を提供しており、住宅費や水道光熱費などを「寮費」の名目で給与から天引きしていましたが、外国人技能実習生の方が日本人労働者よりも多くの金額が天引きされていました。

技能実習生は、企業の対応について「労働基準法3条に定める均等待遇に反する」と主張し、差額分の返還等を求めて裁判を起こしました。
なお、企業側は、天引き額の差は「生活用品の無償提供等の事由を加味したものであり、合理的な根拠に基づく」と反論しています。

裁判所の判断

裁判所は、「企業の対応は労働基準法3条に違反するものであり、認められない」と判断しました。
企業は外国人技能実習生に対して生活用品などを無償提供していましたが、それが寮費に大きな差を設ける理由にはならず、合理的とはいえないと判断されています。

ポイント・解説

外国人労働者にも労働基準法が適用される以上、労働条件は基本的に日本人と同一の取り扱いをすべきとされています。
合理的な根拠もなく、「外国人だから」という理由で待遇に差を設けることは、差別にあたるだけでなく労働トラブルの原因にもなるため、注意が必要です。

外国人雇用の法律を遵守する際の注意点

在留資格を確認する

外国人を雇用する際は、在留カードを確認し、就労可能な在留資格があるかを必ずチェックしましょう。在留資格がないまま働かせると不法就労となり、企業側も処罰の対象となるおそれがあります。

また、在留資格の種類にも注意が必要です。「留学」「家族滞在」「研修」「文化活動」「短期滞在」は、基本的に日本で働くことが認められていません。
ただし、「留学」や「家族滞在」については、資格外活動の許可を得ていれば働くことができます。この場合でも、労働時間は基本的に週28時間以内とされているため、上限を超えないよう適切に管理する必要があります。

さらに、在留期間の更新管理も欠かせません。更新を忘れると不法就労となるリスクがあるため、期限を継続して確認することが大切です。

労働条件を明確化して多言語に対応する

外国人を雇用するときは、日本人と同様に労働条件を明確に伝え、本人が正しく理解しているかまで確認することが大切です。

言葉や文化の違いから認識のズレが生じやすく、説明が不十分なまま雇用すると、後のトラブルにつながるおそれがあります。そのため、採用時には労働条件通知書や雇用契約書を作成し、給与や労働時間、業務内容などを書面でわかりやすく示す必要があります。さらに、日本語の理解が十分でない場合は、英語や母国語で書類を用意したり、通訳を活用したりするなどの工夫も欠かせません。

また、外国人であることを理由に、日本人より不利な労働条件を設定することは基本的に認められていません。この点にも注意し、公平な雇用環境を整えることが求められます。

外国人を雇用する際の雇用契約書の作成方法については、以下の記事をご覧ください。

不法就労させた企業も処罰の対象になる

外国人の不法就労は、日本の法律で厳しく禁止されており、本人だけでなく、雇用した企業側も処罰の対象となります。就労できない在留資格だと知りながら採用するケースはもちろん、知らなかった場合でも、在留カードの確認などを怠った場合には、不法就労助長罪が成立する可能性があります(入管法73条の2)。

2025年6月には不法就労助長罪の罰則が強化され、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科あり)とより重い処分が科されるようになりました。外国人を採用するときは、在留資格や就労の可否を事前にしっかり確認することが必要です。

外国人雇用に関する法律についてのQ&A

外国人雇用の法律で近時の改正はありますか?

技能実習制度が廃止され、2027年4月1日から新たに「育成就労制度」へ移行することが決まっています。制度変更による混乱を防ぐため、3年間の移行期間が設けられており、技能実習制度は2030年までに段階的に終了する予定です。

新たに始まる育成就労制度では、外国人を一時的な労働力としてではなく、長期的に育成し、企業を支える人材として活躍してもらうことが重視されます。さらに、一定の条件を満たせば転職も可能となるなど、より柔軟な働き方が認められる点も大きな特徴です。

外国人労働者にも福利厚生を提供する必要はありますか?

外国人労働者にも、日本人と同様に福利厚生を提供しなければなりません。
国籍の違いを理由に待遇に差を設けることは、労働基準法3条違反などに該当する可能性があります。

外国人雇用では企業に適切な雇用管理が求められますが、具体的な措置については、労働施策総合推進法に基づく指針で以下のように定められています。

〈外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針〉
(福利厚生施設)
適切な宿泊の施設を確保するように努めるとともに、給食、医療、教養、文化、体育、レクリエーション等の施設の利用について、十分な機会が保証されるように努めること。

福利厚生の種類などは、以下のページで紹介しています。

在留資格の期限が迫っていることを理由に雇い止めをしても良いですか?

外国人労働者についても「雇い止め法理(労働契約法第19条)」が適用されるため、合理的な理由がない限り、企業が一方的に雇用契約を打ち切ることはできません。

例えば、すでに複数回契約更新が行われており、今後も雇用が継続することが期待できるような場合、雇い止めの有効性は厳しく判断されます。

在留資格の期限が迫っている場合、雇い止めではなく「在留資格の更新」を促すのが望ましいでしょう。

外国人雇用における法令遵守については弁護士にご相談ください

外国人雇用では、日本人の採用とは異なり、在留資格の確認など特有の手続きが求められます。
さらに、入管法をはじめとする関係法令は頻繁に改正されており、最新のルールに対応できていないと、不法就労の助長といった重大な違反につながるおそれがあります。

弁護士に相談することで、最新の法改正を踏まえた適切な労務管理の方法について、具体的なアドバイスを受けることが可能です。また、雇用契約書などのリーガルチェックは、外国人との労働トラブルの予防にも効果的です。

弁護士法人ALGには、企業法務に精通した弁護士が多数在籍し、外国人雇用に関するご相談にも幅広く対応しています。外国人雇用に不安を感じている場合は、ぜひ私たちにご相談ください。

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執筆弁護士

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、企業法務担当執行役員を務め、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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