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外国人のアルバイト雇用|在留資格の確認や注意点などを解説

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

少子高齢化が加速する中、外国人労働者を雇用する企業が増加しています。また、外国人アルバイトやパートも増えており、店舗などで働く姿も日常的になりました。

ただし、外国人雇用では通常と異なる手続きが必要です。また、アルバイトやパートについては労働時間などの制限もあるため、事業主はしっかり確認しておく必要があります。

そこで本記事では、外国人アルバイト・パートを雇用する際に必要な手続きや注意点、違反した場合の罰則などについて詳しく解説していきます。

日本企業における外国人アルバイトの雇用状況

日本で働く外国人労働者の数は年々増加しており、厚生労働省によれば、2024年10月には230万人を超えています。
また、外国人留学生などによるアルバイトも活発化しています。日本学生支援機構の調査によると、留学生の7割以上が何らかのアルバイトをしており、飲食店やコンビニでは近年欠かせない存在となっています。

外国人アルバイトを雇うメリットは、人手不足の解消や多言語対応です。
募集をかけても人手が集まりにくい業種では、外国人を採用することで効率的に労働力を確保できます。また、訪日外国人が増えるなか、多言語対応が可能な企業は有利になるでしょう。

外国人雇用における事業主の義務

外国人の雇入れ後、事業主はどのような責務を負うのでしょうか。適切に対応しないと労働者とトラブルになったり、違法になったりする可能性もあるため注意が必要です。

人事管理・教育訓練・福利厚生の実施

「労働施策総合推進法に基づく外国人指針」では、事業主に以下の努力義務を課しています。

  • 適切な人事管理
    言葉や文化の壁をなくし、多様な人材が能力を発揮できる職場環境を整備する必要があります。
  • 教育訓練
    外国人が業務内容を十分理解できるよう、母国語での研修や個別相談を実施します。
    また、日本の文化や雇用慣行に関する指導や教育も有効です。
  • 福利厚生
    日本人の社員と同様の福利厚生を提供する必要があります。また、必要に応じて社員寮や宿泊施設の提供も検討すべきでしょう。

詳しくは、以下のページでも解説しています。

外国人雇用の適切な人事管理・教育訓練・福利厚生

就業規則の適用

外国労働者にも、就業規則は適用されます。
ただし、従来の就業規則をすべて理解するのは難しいでしょうから、母国語に翻訳するなどの配慮が必要です。もっとも、全体を翻訳するのは手間や時間がかかるため、まずは就労時の基本ルールや賃金、解雇などの重要事項から翻訳していくと良いでしょう。

また、初めて外国人を雇用する場合、就業規則の変更が必要になることもあります。
ただし、“国籍による差別”など不合理な内容(外国人というだけで賃金が低いなど)は認められません。

その他、就業規則の変更後に個別で教育・指導するなどの配慮も求められるでしょう。

就業規則の作成の流れについては、以下のページをご覧ください。

外国人雇用の就業規則

外国人をアルバイト・パート雇用する際の手続き

外国人アルバイトやパートについても、基本的に日本人と同じ労務手続きが必要です。

例えば、一定の要件を満たす場合は社会保険の加入手続きが必要です。これは法律上の義務であり、本人が拒否したとしても必ず加入させなければなりません。また、所得税や住民税も日本人と同じように課税されます。
さらに、労働基準法や最低賃金法といった労働関係法令も適用されるので、これらに抵触しない労働条件を定める必要があります。

一方、外国人雇用特有の手続きには、在留資格の確認や外国人雇用状況の届出などがあります。以下で具体的にみていきましょう。

外国人労働者の社会保険の加入手続きについては、以下のページで詳しく解説しています。

外国人雇用における社会保険

在留資格の確認

出典:在留資格一覧表(法務省)

外国人を雇用する際は、在留カードの「在留資格」や「在留期限」などを確認する必要があります。
在留資格が「就労不可」の場合、基本的にその外国人を雇用することはできません。また、就労可能な資格でも、在留カードの期限が切れている場合は無効となります。

ただし、「就労不可」の場合も、「資格外活動許可」が認定されていれば、アルバイト・パートとして雇うことが可能です。資格外活動許可とは、本来就労が禁止される留学生や家族滞在者に対し、報酬を得ながら働くことを認めるものです。

外国人が資格外活動許可を得ずに応募してきた場合、まずは法務省に資格外活動許可申請をしてもらい、必ず許可が下りてから採用するようにしましょう。

外国人雇用状況の届出

外国人労働者の雇入れ時および離職時は、ハローワークへ「外国人雇用状況届出」を提出することが義務付けられています。提出期限は、雇入れ・離職ともに翌月末日までとなります。

なお、外国人が雇用保険に加入する場合、「雇用保険被保険者資格取得届(または喪失届)」の提出によって、外国人雇用状況届出の提出を兼ねることができます。よって、別途届出を提出する必要はありません。

外国人雇用状況届出の記入例などは、以下のページで解説しています。

外国人雇用状況の届出とは|対象者・届出方法・事業主の注意点など

外国人アルバイト・パートを雇用する際の注意点

外国人アルバイト・パートは、労働時間や業種に制限があるため注意が必要です。また、在留資格だけでなく、日本語能力や労働条件の内容などにも留意しなければなりません。

これら企業が注意すべきポイントについて、以下で解説していきます。

労働時間に制限がある

「留学」「家族滞在」「特別活動」などの在留資格は、「資格外活動許可」が認定されれば就労可能ですが、労働時間には一定の制限がかかります。
例えば、当該外国人の在留資格が「留学」や「家族滞在」の場合、就労は1週28時間までと決められています(包括許可)。

アルバイトを掛け持ちしている場合や、残業が発生した場合も、労働時間の合計を28時間に収める必要があります。
ただし、留学生の長期休暇(夏季休暇や冬期休暇)中については、1日8時間、週40時間まで働くことが可能です。

なお、「文化活動」の在留資格においては、活動の内容によって労働時間の上限が異なります(個別許可)。そのため、勤務地や事業内容を定めたうえで個別に就労許可を得る必要があります。

在留資格 1週間の就労可能時間 長期休業
留学 28時間以内 1日8時間以内、1週間で40時間まで
家族滞在 28時間以内
文化活動 個別に決定

業種によってはアルバイト雇用が禁止されている

資格外活動許可では、以下の業務に就労することが禁止されています。

  • 風俗営業
  • 風俗特殊営業(店舗型性・無店舗型性、映像送信型)
  • 特定遊興飲食店営業
  • 電話異性紹介営業(店舗型・無店舗型)

例えば、キャバレーやナイトクラブ、バー、パブなどが挙げられます。また、パチンコ店やゲームセンターでの就労も認められません。

なお、この規定は、留学生アルバイトだけでなく「家族滞在」や「文化活動」の在留資格にも該当します。

採用時に日本語能力を確認する

入社後のミスマッチを防ぐため、採用時に日本語能力をチェックしておくことが重要です。チェック方法としては、日本語能力試験の等級が参考になります。

日本語能力試験は、文法や読解、リスニング問題を通し、外国人の日本能力を測るための試験です。難易度によってN1~N5の級に分けられています。
日本で就職を希望する外国人の多くが日本語能力試験を受けるため、採用時の判断基準として有効です。

また、職種によって必要な日本語能力も異なりますので、どの程度の等級を求めるかあらかじめ検討しておくと良いでしょう。

N1レベル 幅広い場面で使われる日本語を理解することができる
N2レベル 日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる
N3レベル 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる
N4レベル 基本的な日本語を理解することができる
N5レベル 基本的な日本語をある程度理解することができる

国籍による差別の禁止

労働者の国籍・人種・信条・性別・社会的身分などによる差別は、労働基準法によって禁止されています。

例えば、外国籍だから日本人社員よりも低賃金にする、人種の違いを理由に不利な労働条件を設定するなどの行為は違法となります。
また、社内での差別的発言に苦しむ外国人労働者も少なくありません。特に、同僚や上司、取引先から差別的な発言を受けると、その後の業務に支障をきたすおそれもあるでしょう。

外国人を雇用する際は、あらかじめ社内で周知し、差別的行為をしないよう教育・指導しておくのも良いでしょう。

外国人アルバイトの雇用に関する罰則

外国人アルバイトの雇用を適切に行わなかった場合、事業主は罰則を受けるおそれがあります。罰則の対象となるのは、以下のようなケースです。

在留資格のない外国人を雇用した場合

就労が認められていない外国人を雇用した場合、「不法就労助長罪」にあたり、事業主は3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はその両方が科せられます。
※2025年6月より、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はその両方に厳罰化されます。
罰則の対象は、以下の外国人を雇用した事業主です。

  • 不法入国者:入国許可を得ず、違法に入国した者
  • 不法滞在者:在留期間が切れている者、退去強制されることが決まっている者
  • 就労資格がない者:在留カードが「就労不可」の者(資格外活動許可を除く)、就労資格の範囲を超えて就労している者

事業主は、雇用前に在留カードの提出を求め、在留期間・就労資格・資格外活動許可などを必ず確認しましょう。たとえ不法就労だと知らなかったとしても、確認不足などの過失により処罰の対象となるためご注意ください。

外国人雇用状況の届出をしていない場合

雇入れ時や離職時に「外国人雇用状況の届出」の提出を怠ると、行政指導や勧告の対象となりますし、外国人雇用状況の届出をせず、又は虚偽の届出をした場合は、事業主に30万円以下の罰金が科されることがあります(労働施策総合推進法40条1項2号、同条2項)。

短期アルバイトや「資格外活動許可」で雇用する場合も届出が必要なため注意が必要です。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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