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外国人雇用における社会保険|手続きや加入条件などを解説

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

外国人労働者を雇用した際、社会保険は日本人労働者と同じように適用されるのか、疑問を抱く事業主の方も多いでしょう。
外国人労働者についても、一定の加入条件を満たす場合は社会保険の加入義務があり、加入を怠った事業主は罰則を受ける可能性もあるため、注意が必要です。

そこで本記事では、外国人労働者を雇用した際の社会保険の加入基準や手続方法について解説していきます。

外国人労働者にも社会保険の加入が必要

外国人労働者も、基本的に社会保険への加入が義務付けられています。そのため、外国人を雇い入れた事業主は、本人の希望にかかわらず社会保険の加入手続きを行わなければなりません。

外国人労働者の加入が必要なのは、「厚生年金保険」「健康保険」「労災保険」「雇用保険」の4つです。
これらの保険は外国人労働者であっても、条件を満たす場合は日本人と同様に加入が必要です。

社会保険の種類と概要については、下表で整理しています。

健康保険 厚生年金保険 サラリーマンなど会社で働く人が加入する公的年金。国民年金に上 乗せされて給付されます。
健康保険 業務外でけがや病気、死亡したときや、休業、出産したとき等に必要な保険給付を行う公的医療保険
介護保険 介護を必要とする人に費用を給付する保険制度。40歳以上になると介護保険の加入が義務付けられ、保険料を納付します。
労働保険 労災保険 仕事中や通勤中に起きた事故により、ケガや病気、障害又は死亡した場合に保険給付を行う公的保険
雇用保険 労働者が失業したときや、雇用継続が困難となったとき等に保険給付を行う公的保険

在留資格(就労ビザ)について

外国人が日本で働くには、「就労在留資格(就労ビザ)」の取得が必要です。また、就労ビザには有効期限があるため、引き続き日本で働く場合は更新手続きを行わなければなりません。

しかし、就労ビザの更新では健康保険証の提示を求められるため、健康保険に未加入の場合はビザを更新できない可能性があります。つまり、在留資格の審査では、勤務先の社会保険の加入状況も影響するということです。

もっとも、任意適用事業所や適用除外の外国人については例外ですが、加入義務があるにもかかわらず社会保険に未加入だった場合、更新を拒否される可能性が高いため注意が必要です。

外国人労働者の健康保険

外国人労働者も、日本人と同様に「資格取得届」の提出によって健康保険に加入します。また、日本国内に扶養家族がいる場合は「健康保険被扶養者(異動)届」も提出します。
手続き完了後は保険証が発行され、自己負担3割で病院等を受診できるようになります。

ただし、扶養家族が海外に在住している場合、その家族は扶養対象になりません。これは、2020年4月の法改正により、被扶養者の認定基準に「日本国内に住所を有する者」という要件が追加されたためです。

なお、留学や帯同などで一時的に海外に住んでいるような場合は、例外的に被扶養者として認められる可能性があります(海外特例要件)。

加入義務のある事業所

以下の事業所は「強制適用事業所」に該当するため、健康保険に加入する義務があります。

①すべての法人(事業主1人だけでも加入が義務)
②法定17業種に該当し、常時5人以上の従業員を雇用する事業所

〈法定17業種〉
製造業、土木建築業、鉱業、電気ガス事業、運送業、貨物積卸業、清掃業、物品販売業、金融保険業、保管賃貸業、媒介周旋業、集金案内広告業、教育研究調査業、医療保健業、通信報道業、社会福祉更生保護業、士業

強制適用事業所に該当する事業所では、外国人労働者も日本人と同じく健康保険に加入させなければなりません。
一方、上記の①②に該当しない場合は「任意適用事業所」となり、健康保険への加入義務はありません。

適用対象者・適用除外者

適用事業所に該当しても、全従業員に健康保険の加入義務があるわけではありません。
加入が義務付けられている「適用対象者」と、加入の必要がない「適用除外者」の要件について、以下で整理します。

【適用対象者】

  • 正社員などのフルタイム労働者
  • 報酬が支払われている代表者や役員

【適用除外者】

  • 臨時に使用される者であって、以下のいずれかに該当する者
    • 日々雇い入れられる者
    • 2ヶ月以内の期間を定めて使用される者
  • 事業所または事務所で所在地が一定しない者に使用される者
  • 季節的業務に使用される者(4ヶ月以内)
  • 臨時的事業の事業所に使用される者(6ヶ月以内)
  • 国民健康保険組合の事業所に使用される者
  • 後期高齢者医療の被保険者となる者
  • 厚生労働大臣、健康保険組合または共済組合の承認を受けた者 など

外国人労働者にもこれらの条件が適用されるため、事業主は十分理解しておく必要があります。

外国人アルバイト・パートの場合

外国人がアルバイトやパートに就く場合でも、加入要件を充たせば、各種社会保険の加入対象となります。加入対象となるのは、以下の①②いずれかに該当する者です。

  • ①1週間の所定労働時間及び1ヶ月の所定労働日数が、同じ会社で同様の業務を行う正社員の4分の3以上であること
  • ②“①”には該当しないが、以下の5つの要件をすべて満たしていること
    • ア)週の所定労働時間が20時間以上であること
    • イ)2ヶ月を超えて雇用される見込みがあること
    • ウ)月給が8万8000円以上(通勤手当、残業手当、賞与含めず)
    • エ)学生でないこと(休学中や夜間学生等は除く)
    • オ)特定従業員数51人以上の会社で働いていること

なお、在留資格の範囲外で行う「資格外活動」については、労働時間は週28時間以内とされているため、健康保険や厚生年金の加入要件は満たしません。

外国人アルバイト・パートの雇用については、以下のページでも詳しく解説しています。

外国人アルバイト・パートの雇用について

外国人労働者の家族の扶養範囲

日本の健康保険に加入している外国人労働者の家族は、被扶養家族として健康保険に加入することができます。

ただし、2020年4月に施行された改正健康保険法等により、健康保険の被扶養者となる条件に「国内在住者(日本に居住し、住民票のある者)」が追加されたため、海外在住の家族については基本的に被扶養者になることができません。

一方、海外在住が一時的なものであり、今後日本への帰国が予定されている場合は、例外的に被扶養者として認められる可能性があります。

  • (ア)外国において留学をする学生
  • (イ)外国に赴任する被保険者に同行する者
  • (ウ)観光、保養又はボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者
  • (エ)被保険者が外国に赴任している間に当該被保険者との身分関係が生じた者
  • (オ)上記のほか、渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者

外国人労働者の厚生年金

外国人労働者についても、基本的に厚生年金への加入が必要です。加入時は、事業主が「被保険者資格取得届」を作成し、日本年金機構に提出します。

厚生年金は、労働者が日常生活のリスク(怪我や死亡、老齢など)に備えるための保険なので、会社勤めで加入要件を満たす者は、国籍に関係なく加入対象となります。
また、厚生年金の保険料は毎月の給与から天引きされるため、事前に本人に説明しておくと良いでしょう。

なお、健康保険に加入している者は、併せて「介護保険」への加入も必要です。介護保険は40歳以上65歳未満の労働者が対象なので、該当する外国人労働者がいる場合は必ず手続きを行いましょう。

「社会保障協定」の締結について

海外で働く場合は、働いている国の社会保障制度へ加入しなければなりません。しかし、それでは日本と母国の年金保険料を二重で負担しなければならないという問題が生じてしまいます。

また、日本や海外の年金を受給するためには、一定期間その国の年金に加入する必要があるため、その国で年金保険料を負担しても、加入期間が足りず結局は年金が受け取れなくなるおそれもあります。

「社会保障協定」は、これらの問題を解消するために日本と海外の両国間で締結された協定のことです。基本的に以下のような内容が盛り込まれています。

・二重加入の防止
相手国への派遣期間が5年を超えない見込みの場合、派遣期間中は相手国の社会保障の加入は免除され、自国の社会保障のみに加入することができます。
一方、派遣期間が5年を超える見込みの場合は、相手国の社会保障のみ加入します。

・年金加入期間の通算
加入期間の不足により、年金の受給資格が得られないという事態を防ぐため、両国の年金加入期間を通算する方法です。通算期間が受給要件に達していれば、その国のルールに従い年金が支給されます。

※2023年2月現在、日本は以下の国と協定を結んでいます。
ドイツ、英国、韓国、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド、ルクセンブルク、フィリピン、スロバキア、中国、イタリア、スウェーデン、フィンランド

厚生年金の脱退一時金制度

日本で厚生年金保険料を支払っていた外国人労働者が帰国する場合、それまでに支払っていた保険料が掛け捨てになってしまう可能性があります。

このような事態を防ぐため、日本の企業で厚生年金保険料を支払っていた期間に応じて、一時金が支払われる制度があります。これを「脱退一時金」といいます。

脱退一時金の請求手続きは、出国前か出国後2年以内に、“外国人労働者本人”または“代理人”が行う必要があります。請求が認められると、「厚生年金の被保険者であった期間の平均標準報酬額×支給率」の金額が支給されます。

外国人労働者がしっかり保障を受けられるよう、事業主は「脱退一時金が請求できること」「本人又は代理人が請求手続きを行うこと」「年金事務所等の窓口」等について丁寧に説明するのが望ましいでしょう。

支給要件

脱退一時金は、以下の要件をすべて満たす者が、出国前または出国後2年以内に請求した場合に支給されます。

  • ①日本国籍を有しないこと
  • ②公的年金制度の被保険者でないこと
  • ③厚生年金保険等の被保険者期間の合計が6ヶ月以上あること
  • ④老齢年金の受給資格期間(10年間)を満たしていないこと
  • ⑤障害厚生年金等の年金を受ける権利を有したことがないこと
  • ⑥日本に住所を有していないこと(日本を出国後に受給可能)
  • ⑦最後に公的年金制度の被保険者資格を喪失した日から2年以上経過していないこと

なお、脱退一時金を受け取ると、日本で厚生年金保険料を支払っていた期間は、社会保障協定に基づく年金加入期間に通算されなくなります。よって、その期間分は将来の年金の加入期間が減ることに注意が必要です。

外国人労働者の雇用保険

外国人労働者も、要件を満たす場合は本人の希望にかかわらず雇用保険に加入する義務があります。
加入対象となるのは、以下の2つの条件を満たす者です。

  • 31日以上継続して雇用する見込みがあること
  • 週の所定労働時間が20時間以上であること

また、留学生であっても、以下に該当する場合は雇用保険への加入が必要です。

  • 通信教育を受けている者
  • 大学の夜間部の学生
  • 高等学校の夜間または定時制課程の学生

外国人労働者の中には、「なぜ雇用保険に加入しなければならないのか」と疑問に思う人もいます。
外国人が納得して働けるよう、社会保障の仕組みや加入義務についてしっかり説明しておきましょう。

雇用保険の適用除外

雇用保険法6条は、雇用保険の適用除外について定めています。次のいずれかに当てはまる場合、雇用保険の加入適用者からは除外されます。

  • ①1週間の所定労働時間が20時間未満の場合
  • ②同一の事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれない場合
  • ③季節的に雇用される場合で、次のいずれかに該当する場合
    • 4ヶ月以内の期間を定めて雇用される
    • 1週間の所定労働時間が30時間未満
  • ④学校教育法で規定される学校・専修学校・各種学校の学生または生徒(昼間学生)である場合

また、大学や専門学校、その他の全日制教育機関の留学生であって資格外活動の許可を得ている外国人や、在留資格「特定活動(ワーキングホリデー)」で就労する外国人も、雇用保険加入の対象外となります。

加入手続きにおける注意点

雇用保険の加入手続きは、事業主が雇用保険被保険者資格取得届を作成し、雇入れ日の翌月10日までにハローワークへ提出する必要があります。
記載事項は以下になります。

  • 労働者の基本情報(氏名や雇用形態など)
  • 国籍や地域
  • 在留資格(在留カード番号)
  • 在留期間
  • 資格外活動許可の有無

雇用保険の加入対象ではない外国人を雇い入れた場合は外国人雇用状況の届出を行います。

外国人雇用状況の届出については、以下のページで詳しく解説しています。

外国人雇用状況の届出

外国人労働者の労災保険

労働者を1人以上雇用している企業は、労災保険に加入する義務があります(労働者が5人未満の農林水産業を除く)。

労災保険は、パートやアルバイト等の雇用形態にかかわらずすべての労働者に適用されるため、外国人労働者も例外ではありません。また、在留資格に応じて働く外国人労働者だけでなく、資格外活動の許可を得て働く外国人労働者にも適用されます。

外国人労働者を雇い入れた場合は、雇入れ後10日以内に「保険関係成立届」を労基署に提出し、労災保険の加入手続を行う必要があります。
事業主が加入手続きを怠っていた状況で労災が発生した場合、労働者または遺族に給付される“労災保険金”は、事業主から全部または一部の費用が徴収されます。

さらに、労基署から指導を受けていたのに未加入だった場合は保険給付額の全額が、また、指導は受けていないが雇入れから1年以上未加入だった場合は、保険給付額の40%が事業主から徴収されます。

不法就労者の労災適用

日本への不法入国者、在留期限の切れた就労者、就労資格に適合しない就労者など、いわゆる不法就労者であっても、労災の給付の対象となり、労災保険は適用されます(外国人の不法就労等に係る対応について・昭和63年1月26日基発50号)。

なお、不法就労が発覚した場合は、不法就労者の退去強制等の処分が下されます。
また、これらの不法就労者を雇い入れた事業者も不法就労助長の罪に問われ、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処せられるため注意が必要です。

厚生年金や健康保険の加入基準を満たさない場合

厚生年金・健康保険の適用事業所でない場合や、外国人労働者が加入要件を満たさない場合は、在留資格や滞在期間にもよりますが、多くの場合、本人が住んでいる地域の「国民年金」と「国民健康保険」への加入が義務となります。

例えば、日本での在留期間が3ヶ月を超える者等については、国民健康保険への加入が義務付けられています。また、日本国内に住所をもつ20歳以上60歳未満の者であれば、基本的に国籍に関係なく、国民年金に加入する必要があります。

事業主は外国人労働者に対してこの旨を説明し、加入手続きについて必要な支援を行うようにしましょう。

外国人労働者の離職時に必要な社会保険の手続き

外国人労働者が退職する際は、日本人労働者と同じ以下のような手続きが必要です。

  • 雇用保険の離職票の交付
  • 源泉徴収票の交付
  • 健康保険の被保険者証の回収
  • 住民税で支払うべき残高手続き(残高がある場合)
  • 労働保険や社会保険の資格喪失手続 など

また、事業主は失業手当等の受け取り窓口となるハローワークを案内するなど、必要な支援を行うよう努めなければなりません。

雇用保険被保険者資格喪失の届出

外国人労働者が退職する場合は、「雇用保険被保険者資格喪失届」を記入し、退職の翌日から10日以内にハローワークに届出をしなければなりません。

なお、外国人の退職時に必要な「外国人雇用状況の届出」は、「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出すれば届け出る必要はありません。
一方、雇用保険に未加入の外国人が退職する場合は、「外国人雇用状況の届出書」を退職日の翌月末日までに、ハローワークに提出する必要があります。

退職証明書の交付

退職した外国人労働者から請求があった場合、事業主は遅滞なく退職証明書を交付しなければなりません(労働基準法22条1項)。

退職証明書とは、労働者が退職したことを企業が証明するための書類で、在籍期間、業務の種類、役職、賃金、退職の事由(解雇の場合はその理由も含む)等を記載します。

外国人の場合、転職や起業に際して、地方出入国在留管理局での在留資格の変更や、就労資格証明書の交付申請において添付する必要がある書類なので、請求された場合は遅滞なく交付するよう努めましょう。

退職する外国人本人が行う手続き

入管法19条の16では、就労ビザで働いていた外国人労働者が離職した際には、所轄する地方出入国在留管理局へ、原則として当該外国人労働者本人が「契約(所属)機関に関する届出」を提出することを義務づけています。

この届出を怠ったまま転職等をすると、在留資格の更新等で在留可能期間が短くなる等、不利になってしまうおそれがあります。外国人労働者本人がこの制度を十分に知らないケースも考えられるため、退職する際にはこの手続について事業主から説明することが望ましいでしょう。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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