事例内容 | 相談事例 |
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問題社員 | 懲戒解雇 懲戒処分 |
担当した事務所 | ALG 東京法律事務所 |
相談内容
社員Aが社内案内として、全社員向けに消防法に関する留意事項をメールで送信したところ、社員Bがこれに対し、社員全員をCCに入れた状態で「社員Aに爆発物を送付する」といったメールを返信し、社内案内を茶化すような行動に出ました。
社員Aも社員Bも、このメールが冗談である認識であり、社員全員をCCに入れたのは社員Bのミスで、本来は社員Aのみに送付するつもりだったとのことです。
会社としては、脅迫文とも取れる文章を全社員に配信したことが懲戒事由に当たるため、訓戒処分とすることを考えています。また、この社員は10年前にも部下への暴力で訓戒処分となり、20年前には同僚との口論で減給処分となっています。
正直、「問題社員」と言わざるを得ない状況なので、「次回懲戒処分となる場合、懲戒解雇とする」とする書面を提示することを考えています。
今回訓戒処分とすることや、懲戒解雇の予告をすることは問題ないでしょうか。
前提となる法制度・助言内容
今回送付されたメールは、社員A及び社員Bのいずれにおいても冗談であるという認識を持っており、社員A以外の社員についても畏怖を感じる内容ではないものと存じますので、これを刑事責任の生じる「脅迫文」と評価することは難しいものと思料いたします。
もっとも、社内案内に対して、これを茶化すような内容のメールを返信すること、過失とはいえ全社員に向けて送信することは、社内案内の社員に向けた威厳を失わせるものであり、貴社就業規則条の懲戒事由に該当すると評価できる側面があるものと考えられます。
ただ、このような行為によって貴社に具体的な損害が生じたわけではなく、単発的に生じた過失によるミスであることも加味すれば、強度の懲戒処分を行うことは社会通念上の相当性を欠くものと存じますので、取り得る懲戒処分としては、訓戒とするのが限界であると考えられます。
懲戒解雇の予告については、問題があるために控えることをお勧めします。
まず、有効に懲戒解雇等を行うためには、行われた非違行為が貴社就業規則上の懲戒事由に該当し、かつ懲戒解雇等とすることについて客観的に合理的理由があり、処分が社会通念上相当であることが必要となります。
そのため、次に行われる非違行為の内容が分からないうちに諭旨退職又は懲戒解雇とすることを予告するのは不適切であり、実際に諭旨退職又は懲戒解雇処分とした際に、「実際に行われた行為を評価しないまま下された処分である」と判断されてしまう要素となりかねません。
また、二重処罰の禁止の観点からは、これまでに処分された事情を懲戒解雇の理由とすることも不適切といえます。(注意しても改善しないという事情を懲戒処分の考慮要素とすることは可能ですが、過去の懲戒歴を見るに、10年に一度程度の処分しかされておらず、処分の理由もそれぞれ異なることから、「注意しても改善しない」と判断できるだけの事情もないものと存じます。)
そのため、次回行われる非違行為の軽重を判断することなく、諭旨退職又は懲戒解雇を予告することは許されないものといえますので、「このような問題行為を繰り返す場合には、より重い処分を検討せざるを得なくなる場合があります。」といった表現にとどめるのが良いものと考えられます。
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