労働者による争議行為に対抗する手段について

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
労働組合の争議行為は、団体行動権として保証されています。よって、使用者が正当な理由なく争議行為を抑圧することは認められません。
とはいえ、使用者も対抗手段がないわけではありません。企業も自社の利益を守るため、一定の対抗措置を講じることが可能です。
では、争議行為への対抗措置とは具体的にどんなものでしょうか。また、どの程度の措置であれば正当性が認められるのでしょうか。本記事で詳しく解説します。
ストライキ中の操業の自由と制限
労働組合がストライキを行っている場合でも、企業は必ずしも業務を停止しなければならないわけではなく、事業を継続することが可能です。例えば、非組合員や管理職を中心に業務を回したり、必要に応じて代替の労働者を確保したりすることで、一定の業務を維持することができます。
これは、企業には事業の運営を自ら判断できる「操業の自由」が認められているためです。ストライキそのものを止めることはできないものの、事業を維持するための対応を取ること自体は可能です。
ただし、この操業の自由には限界があります。労使協定の内容や派遣労働者の有無によっては、対応が制限される場合もあるため、状況に応じて慎重に判断することが必要です。
スキャップ禁止規定
スキャップとは、ストライキ中の職場で不足した人手を補うために、企業が雇用する代替労働者のことをいいます。社外から新たに採用された労働者や、労働組合に加入していない従業員がその役割を担うケースが典型です。
労働協約で「スキャップ禁止規定」が定められている場合、ストライキ期間中に新たに人員を雇うことは協約違反にあたります。また、労働者から損害賠償請求されるリスクもあるため注意が必要です。
新たな派遣社員の雇用禁止
ストライキなどの争議行為が行われている事業所では、人員不足を補う目的で新たに派遣労働者を受け入れることは禁止されています(労働者派遣法24条)。
もっとも、すでに派遣されている労働者については扱いが異なります。ストライキ開始時点で働いていた派遣社員については、引き続き業務に従事させることが可能であり、契約を更改・更新することも可能です。
さらに、公共職業安定所(ハローワーク)も同様に、ストライキ中の事業所に対して求職者の紹介を行うことは認められていません(職業安定法20条)。これは、公的機関として特定の労使いずれかに加担することを避け、中立性と公平性を保つためのルールです。
これらの規制に違反すると、行政指導や企業名公表の対象となるほか、場合によっては損害賠償請求されるおそれがあるため注意が必要です。
使用者の対抗手段としてのロックアウト
争議行為への対抗手段には、ロックアウトがあります。ロックアウトとは、ストライキなどに対抗し、使用者が従業員の就労を拒否する方法で、必要に応じて実行することが認められています。
ただし、ロックアウトの正当性は争いになりやすく、会社に大きな損害が生じるリスクがあるなどの事情がなければ、違法と判断される可能性があります。
なお、対抗手段はロックアウトに限りません。社内の人員配置の変更により操業を続けることや、労働委員会の調整制度を利用する方法などもあげられます。
ロックアウトの意義
ロックアウトとは、使用者が事業所を閉鎖し、労働者を締め出す行為をいいます。これによって労働者の労務提供を阻害し、賃金の支払いを拒否するのが目的です。
また、法律上では作業所閉鎖といわれ、争議行為のひとつとして明確に定められています(労働関係調整法7条)。よって、使用者にはロックアウトを行う権利があり、正当な範囲内であれば不当労働行為の責任を免れることができます。
ただし、ロックアウトの正当性は簡単には認められません。労使交渉における様々な要素を考慮し、相当な必要性を証明する必要があります。
ロックアウトが認められる条件
ロックアウトが認められるためには、労使交渉の経緯や態度、争議行為の規模、使用者が受けるダメージの大きさ等を踏まえ、防衛措置としての相当性を示す必要があります。
具体的には、以下の条件を満たさなければなりません。
- 組合側による争議行為が存在すること、又は争議終了後も相当の圧力が存在すること
- 争議行為によって使用者が大きな打撃を受けること
- ロックアウトが、労使間の勢力の均衡を図るための対抗的防衛手段であること
したがって、争議行為が軽微であり、単に賃金負担を抑えること等を目的としたロックアウトは認められません。
また、組合側の抵抗力が落ちた後もロックアウトを継続した場合、不当と判断される可能性があります。
ロックアウトの予告通知
一般の事業におけるロックアウトは、労使間で特別に予告義務を定めていない限り、基本的に事前の通知なく自由に実施することが可能です。
これに対し、郵便や電気、水道といった公益性の高い事業では、社会生活への影響が大きいため、特別に厳しいルールが設けられています。こうした事業でロックアウトを行う場合には、実施予定日の少なくとも10日前までに、所定の機関へ予告通知しなければなりません。
争議が一つの都道府県内にとどまるときは都道府県労働委員会や知事に対して、複数の都道府県にまたがる場合や全国的な影響が見込まれる場合には中央労働委員会へ通知を行います。この通知は、争議行為の目的や期間、実施場所、具体的内容などを記載した文書で行う必要があります。
ロックアウトの種類と適法性
ロックアウトには先制的ロックアウトと対抗的ロックアウトがあります。争議行為の開始前に企業が行う先制的ロックアウトは、違法とされるのが基本です。一方、争議行為の開始後に行う対抗的ロックアウトは、一定の要件を満たせば適法と判断されます。
ロックアウトを検討するときは、先制的な対応になっていないか、また対抗的ロックアウトの要件を満たしているかを見極めることが重要です。
先制的ロックアウト
先制的ロックアウトとは、まだ争議行為が行われていない状況で行うロックアウトをいいます。
具体的には、以下の2つに分類することができます。
- 攻撃的ロックアウト:使用者が自身の主張を強要するため、圧力手段として行うもの
- 予防的ロックアウト:労働組合の争議行為が予想され、それを事前に阻止するために行うもの
しかし、ロックアウトの本質は争議行為への防衛措置ですので、これら先制的ロックアウトはすべて認められないのが基本です。
対抗的ロックアウト
対抗的ロックアウトとは、労働組合の争議行為が始まってから行うロックアウトのことです。
具体的には、以下の2つに分類されます。
- 防御的ロックアウト:労働組合の業務妨害による損害を軽減するための措置
- 攻撃的ロックアウト:防衛の目的に加え、使用者の主張を労働組合に受諾させるための措置
対抗的ロックアウトは、労使の勢力バランスを回復させる手段です。そのため、防御的ロックアウトのように損害拡大を防ぐための必要最小限の対応であれば、正当性が認められる可能性があります。
一方、攻撃的ロックアウトは、不当と判断される可能性が高いです。例えば、ストライキの規模が小さく事業への影響も限定的であるのに、全面的に操業を停止するケースでは、違法と評価されるおそれがあります。
ロックアウト中の賃金の支払い
ロックアウトの正当性が認められれば、使用者は労働者への賃金支払義務を免れることができます。
法律上、債権者の非がなく債務不履行になった場合、債権者は反対給付の履行を拒むことができるためです(民法536条2項)。
言い換えると、正当なロックアウトによる不就労は使用者に非がないため、賃金の支払いを拒否できるということです。
一方、不当なロックアウトを行った場合、使用者には賃金支払義務が生じます。例えば、一部の労働者がストライキを行ったにもかかわらず、すべての労働者をロックアウトの対象とした場合、スト不参加者には賃金を支払う必要があります。
ロックアウトと賃金に関する判例
【平成15年(受)第723号 最高裁 平成18年4月18日第三小法廷判決、安威川生コンクリート工業事件】
事案の内容
労働組合が短時間のストライキを繰り返す中、使用者がロックアウトを行ったことの適法性が争われた事案です。
コンクリートミキサーの運転手らは賃上げを求めて、業務を一時的に停止するストライキを実施しましたが、使用者が当日の受注を取りやめた後に、ストライキを解除するという対応を繰り返していました。
その結果、安定した業務運営が困難となったため、使用者がロックアウトに踏み切ったというものです。
裁判所の判断
最高裁は、ロックアウトの適法性について、「労働者の争議行為に対する防衛手段として相当かどうか」を基準に判断すべきとしました。
そのうえで本件では、ストライキが直前の通告で繰り返され、会社が終日操業できない状況に置かれていたことや、受注減少や取引先からの信用低下によって大きな損害が生じていた点が重視されました。
これらの事情を踏まえて、使用者は争議行為によって著しく不利な立場に追い込まれていたと評価され、ロックアウトはやむを得ない防衛手段として適法と判断されました。
ロックアウト解雇のリスクと注意点
ロックアウト解雇とは、従業員に解雇を告げると同時に、ただちに職場への立入りを禁止し締め出すことをいいます。この方法自体は直ちに違法となるわけではなく、企業秘密の漏えい防止など正当な目的があれば、適法と判断される可能性があります。
もっとも、解雇が認められるハードルは高く、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当といえる場合でなければ無効となるため注意が必要です。例えば、十分な指導や改善の機会を与えずに、勤務成績が悪いという理由だけで解雇を行うと、解雇が無効と判断されるおそれがあります。
さらに、こうした対応は、他の従業員の反発やモチベーション低下を招き、裁判に発展すれば企業イメージが悪化するおそれもあります。まずは退職勧奨で合意による解決を目指すなど、穏便な方法を選ぶことが望ましいでしょう。
解雇の正当性や手順については、以下のページをご覧ください。
争議行為を早期解決するための事前協定
争議行為に対抗することもできますが、早期解決に越したことはありません。
そこで、争議行為のルールについて労働協約で定めておくことをおすすめします。そうすることで、無用なトラブルを回避し、紛争を早期に収束できる可能性が高くなるためです。
例えば、以下のような規定を設けると良いでしょう。
-
争議予告
予告期間、予告の内容や形式について -
保安協定
施設維持に必要な最低限の保安要員を、争議行為参加者から除外すること -
争議行為中の施設利用
ストライキ参加者は、事業場への立ち入りを禁止すること等 -
争議行為中の団体交渉のルール
争議行為の前に団体交渉を行うこと、労働委員会による調停や仲裁等を利用できる(または行わなければならない)旨の規定を定めること -
スキャップ禁止規定
争議行為中における代替労働者の雇用を禁止すること
労働協約について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
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会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません
※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。 ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込11,000円)
この記事の監修

- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、企業法務担当執行役員を務め、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある
