第二種計画認定とは|継続雇用の高齢者の無期転換ルールに関する特例

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
定年後も継続して雇用される従業員に対して、原則として「無期転換ルール」が適用されることをご存じでしょうか。無期転換ルールとは、有期契約で働く従業員が、一定の条件を満たすことで無期契約へと転換される制度です。
ただし、企業が「第二種計画認定」を受けることで、このルールの適用を除外することが可能になります。
本記事では、「第二種計画認定」制度の概要から申請手続き、注意点までを企業の人事労務担当者向けにわかりやすく解説します。
目次
第二種計画認定とは
第二種計画認定とは、定年後に継続雇用される有期契約労働者に対して、一定の条件を満たすことで「無期転換ルール」の適用を除外できる制度です。
通常、有期契約労働者が通算5年を超えて雇用されると、本人の申し出により無期契約へ転換する権利が発生します(労契法第18条第1項)。この「無期転換ルール」は、定年後に再雇用された有期契約労働者にも原則として適用されるため、企業側には、無期契約による長期雇用の義務が生じることになります。
しかし、企業が雇用管理に関する措置の計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けることで、定年後の継続雇用期間中は無期転換申込権が発生しないという特例が認められます。これが「第二種計画認定」です。
対象となるのは、無期契約で定年を迎えた自社の従業員に限られ、有期契約で定年を迎えた者や他社で定年を迎えた者(特殊関係事業主を除く)は対象外です。
無期転換ルールとは
無期転換ルールとは、有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、労働者に無期転換の申込権が生じ、有期契約労働者からの申込みにより原則として無期労働契約に転換される制度です。
この制度は、平成25年4月に施行された改正労働契約法第18条に基づき、有期契約労働者の雇用安定を目的として導入されました。契約社員やパートタイマーなどが対象で、申込みがあった場合、企業は原則として拒否することはできません。
たとえば、1年ごとの契約で5年間継続して雇用された契約社員が、6年目に無期転換を申し出た場合、企業はこれを受け入れ、無期契約として雇用を継続する義務が生じることになります。
有期労働契約の無期転換ルールについて、詳しくは以下のページをご覧ください。
第二種計画認定申請の流れ

第二種計画認定を受けるには、雇用管理措置の計画を作成し、都道府県労働局に申請する必要があります。
申請の流れは以下の通りです。
- 計画の作成
まず、定年後に継続雇用する従業員に対して、職業訓練の実施や健康管理、安全衛生の配慮などの「雇用管理に関する措置」を盛り込んだ計画を作成します。 - 都道府県労働局へ提出
次に、その計画を本社・本店を管轄する都道府県労働局に提出します。提出方法は、窓口持参・郵送・電子申請のいずれも可能です。 - 都道府県労働局長の認定
提出された計画は、労働局による審査を経て、認定が下りると認定通知書が交付されます。 - 特例適用
認定を受けた企業は、対象従業員と締結した有期労働契約について無期転換ルールの特例を適用できます。
なお、当該労働契約の締結及び更新の際には、定年後引き続いて雇用されている期間が、無期転換申込権が発生しない期間であることを書面で明示しなくてはなりません。
雇用管理に関する措置についての計画とは
「雇用管理に関する措置」についての計画とは、定年後も継続して働く従業員が、安心して能力を発揮できるようにするための職場環境整備や人事制度の見直しなどを企業が計画的に実施するために作成するものです。
この計画には、以下のような具体的な措置を盛り込むことが求められます。
- 高年齢者雇用等推進者の選任
- 職業訓練の実施
- 作業施設・方法の改善
- 健康管理、安全衛生の配慮
- 職域の拡大
- 職業能力を評価する仕組み、資格制度、専門職制度等の整備
- 職務等の要素を重視する賃金制度の整備
- 勤務時間制度の弾力化
第二種計画認定の提出先
第二種計画認定の申請書は、企業の本社または本店所在地を管轄する都道府県労働局に提出する必要があります。
提出方法には、労働局の窓口へ直接持参する方法のほか、郵送による提出や、厚生労働省が提供する電子申請システムを利用する方法もあり、事業者の業務形態や利便性に応じて柔軟に選択することができます。
なお、提出先の労働局は、企業の所在地によって異なるため、事前に間違いがないか確認しておくことをおすすめします。
第二種計画認定申請の必要書類
第二種計画認定を申請する際には、以下の書類を原本と写しの合計2部ずつ提出する必要があります。
- 第二種計画認定・変更申請書
雇用管理措置の内容を記載し、該当項目にチェックを入れる様式 - 高年齢者雇用状況報告書等(高年齢者雇用確保措置を講じていることが分かる資料)の写し
- 継続雇用の高齢者の特性に応じた雇用管理に関する措置に関する資料
- 教育訓練の記録、就業規則の抜粋など、計画内容を裏付ける資料
提出後、写しは認定通知書の交付時に返却されます。
なお、これらの書類は事業場単位で作成する必要はなく、本社・本店で一括して作成・提出することが可能です。
詳しくは以下の厚生労働省のホームページをご確認ください。
無期転換ルールの特例に関する明示義務
無期転換ルールの特例が適用される場合には、企業側に対して、契約の締結や更新時にその特例の内容を対象従業員へ書面で明示する義務が課されています。
とくに、定年後に継続して雇用される期間が、無期転換申込権の対象外であることについては、契約書などに具体的かつ明確に記載し従業員に説明しなければなりません。
さらに、契約期間の途中で特例の対象となる場合には、後の誤解や労使間の紛争を未然に防ぐためにも、速やかに「無期転換申込権が発生しない期間」を対象従業員に通知する必要があります。
第二種計画認定申請に関する注意点
第二種計画認定は再発行されない
第二種計画認定通知書や関連書類は、紛失・破損した場合でも再発行されません。これは厚生労働省の運用上、再交付制度が設けられていないためです。そのため、認定を受けた際には、写しを厳重に保管し、社内での管理体制を整えておくことが重要です。
第二種計画認定の有効期限
第二種計画認定には、有効期限の定めがありません。一度認定を受ければ、その計画内容に変更がない限り、更新や再申請の手続きは不要とされています。つまり、認定後は継続的に特例の効力が維持されるため、企業側の負担も軽減されます。
ただし、雇用管理措置の内容に変更が生じた場合には、速やかに変更申請を行う必要がある点には注意が必要です。認定の有効性を保つためにも、制度の運用状況を定期的に見直し、必要に応じて適切な対応を行うことが大切です。
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この記事の監修
- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある