IT・情報通信業界は、自由な働き方を推進する一方で、労働時間管理が緩やかであるほど長時間労働を生みやすくなっています。そのため、IT・情報通信業界は、過重な負荷による脳・心臓疾患や、業務における強い心理的負荷による精神障害が多い業界とされます。現に、厚生労働省の調査により、他の業種と比較した場合の年間総実労働時間が約200時間も長いことが分かっています(「毎月勤労統計調査」平成28年)。
長時間労働によって労働者が脳・心臓疾患や精神障害に罹患した場合、企業側は損害賠償責任を負う可能性がありますし、また、その勤怠管理が適切に行われていなかった場合には、多額の未払残業代の請求が行われるおそれもあります。
IT業界において長時間労働が多い要因としては、ソフトウェア開発がプロジェクト・チームで仕事を行うため、作業の進捗管理や製品の品質管理が難しいといった業界の特徴も関連していると考えられますが、労務面から長時間労働を抑制するアプローチとしては以下のような方法が考えられます。
専門業務型裁量労働制 | 日々の労働時間や業務遂行の方法を労働者の裁量に委ね、企業はみなし労働時間に対する対価として賃金を支払う制度。労働者が自らの裁量で仕事の時間や進め方を決定することができるため、業務の効率化に繋がり、時間外労働が減少し得る。ただし、専門業務と認められる働き方は限定的であることには留意が必要となる。 |
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フレックスタイム制 | 一定期間における総労働期間をあらかじめ定めておき、労働者はその枠内で各日の始業及び終業の時刻を自主的に決定し働く制度(実労働時間で賃金の計算が行われる点や出勤自体は必須である点等において裁量労働制とはことなる)。働き方改革に関連する法改正により、最大3ヶ月を限度とする労働時間の清算が可能となった。労働者が効率的に時間配分を行うことで、時間外労働の減少につなげることができる。 |
在宅勤務型テレワーク | 会社とはパソコン等で連絡を取りながら、自宅において働く働き方。通勤時間分の時間等が有効に使用できるため、うまく活用できれば、生産性向上を期待することができる。 |
長時間労働や残業代の抑制に効果がある手法としては、他にも固定残業代制度や時間外労働の申請制の導入等、さまざまなものがあります。
企業の規模や社風等によってもベストなカスタマイズが異なりますので、長時間労働や残業代の抑制に向けた制度の導入にあたってはぜひ一度ご相談ください。