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未成年(年少者)の雇用に関する保護規定や就業制限について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

労働者を雇用するに際して、高校生をアルバイトとして採用したり、未成年者を採用したりすることもあるかと思います。労働基準法では、成年に達していない者の労働に関して、特別の保護規定や制限を設けています。違反すると罰則を受けることもありますので、使用者は、未成年者や年少者を雇用する際にはこれらを知っておかなければなりません。

このページでは、未成年者、年少者を雇用する際の概要を解説します。

労働基準法における年齢区分

未成年

民法上、満20歳未満で「成年」に達していない者を「未成年」と定義しており、この定義は労働基準法においても適用されます。そして、労働基準法上、未成年者は労働契約締結について特別の保護を受けます。

なお、2018年の民法改正によって成年年齢が18歳に引き下げられたため、「未成年」は2022年4月1日より18歳未満に改められますので、使用者は注意しなければなりません。

年少者

「未成年」とは成人に達していない者のことをいい、さらに、「年少者」とは労働基準法上、満18歳未満の者をいい、特別の保護を受けます。次項の「児童」とはまた区別されますが、保護を受けること、労働させることに対して制約がある点に変わりはありません。

児童

「児童」とは、労働基準法上、「満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの者」のことをいい、さらに特別の保護を受けます。義務教育が修了するまでの児童は、原則、労働者として使用することはできません。

なお、未成年者・年少者雇用における「児童」の扱いについては、以下のページで詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

児童の雇用について

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雇用可能な最低年齢

労働基準法では、「使用者は、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない(56条1項)」と定めています。つまり、満15歳に達していても、義務教育(中学校)を修了していない児童は基本的に労働者として使用してはならないということです。

以前は「満15歳に満たない児童は、労働者として使用してはならない(旧56条1項)」と定められていましたが、1998年に労働基準法が改正され、ILO(国際労働機関)の条約に則るかたちで、現行のように改められました。

例外的に児童が就労できる場合

原則として、児童を労働させることはできません。ただし、2つの例外が設けられています。

まずは、非工業的事業(製造業、鉱業、土木建築業、運送業、貨物取扱業以外の事業)にかかわる職業で、健康及び福祉を害することがなく、かつ、労働が軽易なものです(労基法56条2項)。これに該当する職業については、行政官庁の許可を受け、満13歳以上の児童を修学時間外に限って就労させることが可能です。

2つ目は、映画の製作、又は演劇の事業については、満13歳に満たない児童でも1つ目の例外と同様に、就労させることが可能です(労基法56条2項)。

例外として児童が就労できる職業については、以下のページで詳しく解説していますので、ご参照ください。

児童の使用禁止とその例外

年齢区分による保護規定の適用

年齢区分による保護規定の適用

労働基準法では、「成年」、「未成年者」、「年少者」、「児童」、それぞれによってそれぞれ保護規定が異なり、表のように範囲が定められています。

それぞれの区分において、心身の健全な成長や教育機会を保護することを鑑み、健康及び福祉の観点からこのような保護規定が設けられています。

労働条件の明示

労働基準法15条では、使用者は、労働契約を結ぶ際、労働条件を明示しなければならないと定められています。これは、未成年者、年少者、児童を雇用する際も変わりません。

明示しなければならない具体的な事項は、以下のとおりです(労基法施行規則5条1項)。

  • (1)労働契約の期間に関する事項
  • (2)就業の場所及び従業すべき業務に関する事項
  • (3)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
  • (4)賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  • (5)退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
  • (6)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項
  • (7)臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項
  • (8)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  • (9)安全及び衛生に関する事項
  • (10)職業訓練に関する事項
  • (11)災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  • (12)表彰及び制裁に関する事項
  • (13)休職に関する事項

なお、このうち(1)~(5)に関して((4)の昇給に関する事項を除く)は、原則、書面として交付しなければなりません。

未成年者・年少者の労働条件について

労働基準法では、現行、20歳未満の者は「未成年」とされますが、満18歳以上の者には就業制限がありません。

労働基準法の区分のうち、義務教育を修了した満15歳以上~18歳未満の「年少者」に関しては、就業制限がありますので、留意が必要です。

未成年者、年少者の労働条件に関して、詳しくは以下のページで解説していますので、ぜひご一読ください。

未成年・年少者雇用の労働条件について

未成年者の労働契約締結について

労働基準法58条では、親権者や後見人が、未成年者に代わって労働契約を締結することを禁止しています。民法では親権者・後見人による労働契約の締結を可能としていますが、労働基準法は民法の特別法であるため、労働基準法の規定が優先されます。

未成年者の労働契約締結に関しては、以下のページで詳しく解説しています。ぜひご一読ください。

未成年・年少者との労働契約

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未成年者・年少者の加入保険

健康保険・厚生年金保険

未成年者・年少者の社会保険(健康保険・厚生年金保険)に関しては、要件を充たしている場合、加入義務が発生します。要件は、以下のとおりです。

①労働契約・就業規則で定められている所定労働時間及び所定労働日数が一般労働者の所定労働時間及び所定労働日数の4分の3以上である者

②上記①に該当しない場合でも、次の5要件をすべて充たす労働者

  • (1)1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • (2)1年以上の雇用期間が見込まれること
  • (3)月額8万8000円以上の賃金を得ていること
  • (4)学生ではないこと(ただし、夜間、通信制、定時制の学生は加入対象となります)
  • (5)常時501人以上の従業員を雇用している企業(特定適用事業所)で就労していること

以上の要件を充たしている場合は未成年者・年少者でも社会保険への加入義務が発生しますので、注意が必要です。

労災保険

労災保険に関しては、労働者を1人でも雇用している場合、加入の義務があります。ここでいう「労働者」とは、事業主や幹部役員以外の、期間の定めのない者(いわゆる“正社員”)、パートタイマー、アルバイト、契約社員のことをいいます。1日単位のアルバイトや外国人労働者であっても、雇用している以上は労災保険への加入義務が発生します。

よって、未成年者、年少者においても、雇用するならば、その年齢に関係なく労災保険へ加入しなければなりません。

雇用保険

雇用保険は、未成年者・年少者であっても、その年齢に関係なく、以下の要件を充たす場合、加入義務が発生します。

  • ①1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • ②同一の事業場において、31日以上継続して雇用される見込みがあること
  • ③学生ではないこと(ただし、夜間、通信制、定時制の学生は例外的に加入対象となります)

その他未成年者・年少者雇用時の留意点

労働基準法には未成年者・年少者に関する保護規定がありますが、それがない部分に関しては、成年である通常の労働者と変わらずに法令が適用されます。

以下で、未成年者・年少者を雇用する際の留意点について解説します。

就業規則

常時10人以上を雇用する使用者には、就業規則の作成義務と周知義務があります(労基法89条、106条)。就業規則には、始業・終業時刻、休憩・休日、賃金に関しての定め等を記載しなければならず、使用者、労働者の双方に適用されるルールを定めなければなりません。

就業規則に関しては、未成年者・年少者の労働者に関しても、成年労働者と同様に適用されます。

就業規則の概要に関して、詳しくは以下のページで解説していますので、ご参照ください。

就業規則とは

労働時間・休日・休暇等

未成年者・年少者の労働時間、休日に関しては、成年労働者とは別途、労働基準法に定められています。例えば、年少者に関しては、変形労働時間制、フレックスタイム制、時間外・休日労働の規定等が適用されません。また、深夜労働に就かせることも禁止されています。

未成年者・年少者の労働時間や、休憩等に関しては、以下のそれぞれのページで解説しています。ぜひご一読ください。

 
労働時間について
年少者における時間外・休日の制限

賃金

労働基準法59条では、未成年者は独立して賃金を請求することができること、また、親権者・後見人が代わって賃金を受け取ってはならないことを定めています。未成年者であっても請求権は本人に帰属しますので、使用者は直接賃金を支払わなければなりません。

雇入れ時の安全衛生教育

労働安全衛生法59条では、事業者は労働者を雇い入れた際には、安全衛生教育を行わなければならないと定められています。未成年者を雇い入れる場合も、例外ではありません。また、雇入れ時以外で、作業内容の変更がある際にもこの安全衛生教育を行う必要があります。なお、一定の危険有害業務の際にも安全衛生教育を行わなければならないことも定められていますが、労働基準法62条では未成年者・年少者を危険有害業務に就かせること自体は制限されています。

安全衛生の概要に関しては以下のページで解説していますので、ご参照ください。

労働安全衛生法

退職に関する事項

労働基準法64条では、年少者が解雇の日から14日以内に帰郷する場合、使用者が必要な経費を負担しなければならないと定められています。ただし、解雇の理由が当該労働者の責任によるもので、この事由について労働基準監督署などの認定を受けた場合には、負担する必要はありません。

退職及び解雇の概要に関しては以下のページで詳しく解説しています。ご参照ください。

退職・解雇
ちょこっと人事労務

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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