事例内容 | 相談事例 |
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求職・復職 | 育児休業 |
担当した事務所 | ALG 東京法律事務所 |
事案の概要
弊社では、就業規則上、入社1年目の社員の育休取得を「拒むことができる」と規定されていますが、育児休業の取得を若手新入社員から(入社後1年未満)、取得に関する問い合わせを受けている中で、現代においてはこの「1年未満」とする制限を撤廃すべきなのか、昨今の社会的な動きや法的側面から、ご見解をいただけますと助かります。
特に「拒むことができる」という表現から、例えば部門の上司から「取らせてあげたい」と強く要望があった場合は、そのチームの社員だけが1年未満でも取得でき、それを良しとしない上司の下では取得できないなど、社員間の不公平が生じてしまいます。
“絶対に取得できない”というニュアンスではないことも、会社側の態度が曖昧になりうる要因になってしまうかと思います。就業規則への記載方法として、より適切とされる文言など、併せてご見解をいただければと思います。
弁護士方針・弁護士対応
まず、法的な有効性の観点から申しますと、労使協定を締結しておられるため、入社1年未満の社員については、育休取得の対象外とすることができます。また、ご理解のとおり、会社の裁量で対象外とすることができるということにとどまり、拒否しなければならないわけではありません。
(なお、令和4年改正により、それまでは申出ができなかった、入社1年未満の有期雇用労働者についても、育休の申出ができるようになったことから、改正前に、労使協定で有期・無期を問わず、入社1年未満の社員を育休の対象から除外していたとしても、 改正後に改めて、労使協定により、入社1年未満の有期雇用労働者を除外する旨締結する必要があります。)
その上で、法的観点を離れて、当該条項を撤廃するかという点につきましては、現状、撤廃を急ぐ必要はないのではないかと考えます。
上場企業を含め、比較的大きな会社においても、現状、入社1年未満の社員については育休の対象外としている会社が多い印象です。
今後、社会的に育休取得に対する考え方が変わっていくことはあり得ますが、入社して間もない社員に長期休業を認めるのは、 育休だけ取得して転職するなどの悪用のリスクもあるため、認めていないというのが現状であるように思います。
もっとも、ご指摘のとおり、「拒むことができる」という文言は、柔軟な対応が期待できる一方で、 上司によって結論が異なる事態が想定され、社員間で不公平感が生じるおそれがあるほか、 運用が恣意的になってしまうと、均等待遇の原則にも抵触するおそれがあります。
そのため、他社事例では、一律に、入社1年未満の社員には育休を認めない旨を規定している会社が多いように思われます。
この場合、不公平感は生じにくくなりますが、一方で、育休を与えることが基本的にできなくなります。
その他の対策としては、文言は維持したまま、社内全体に適用される、育休取得の判断における内部基準を作成するという方法が考えられます。
たとえば、人事評価等の一定の客観的基準を満たすような人材については、入社1年未満についても育休を認めることとし、 できる限り、その客観的基準の中身を具体的に列挙し、上司によって結論が異ならないようにするという方法が考えられます。
形式的な見方をすれば、内部基準の内容が合理的であり、運用が恣意的なものにならなければ、 育休を取得できる社員と、育休を取得できない社員が出たとしても、違法になるおそれは低いと考えられます。
(ただし、このようにする場合、一度、就業規則の中身にしてしまうと、基準の変更を機動的にできなくなるため、 判断基準の内容は育児休業規程には記載せずに、あくまで社員には公表しない形で、内部基準にしたほうがよいかと存じます。)
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