事例内容 | 相談事例 |
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人事 | 配置転換(配転) |
労働 | 労働条件の不利益変更 賃金減額 |
担当した事務所 | ALG 東京法律事務所 |
事案の概要
当社にて、新規事業の立上げに当たり、高い報酬で契約社員として登用した社員がいます。
当該従業員の報酬は、年俸制で月収を決定しているところ、労働条件通知書においては、新規事業の立ち上げの業務に対し、「2023年1月1日から2026/3/31までは月収800,000円に固定する」との記載があります。
ところが、2025年3月末をもって、この新規事業を終了する方針となり、この方には、既存の部門を案内して継続雇用を打診する方針です。
ここで、労働条件通知書における報酬固定の定めは、別部門へ配置転換された場合でも適用され、2026年3月31日までは、従前と同様の賃金を支払わなければならない、ということになるのでしょうか。
弁護士方針・弁護士対応
まず、配置転換(異動)と賃金とは別個の問題であり、法的には相互に関連していないため、労働者が配転することを理由として、直ちに賃金の減額が認められるわけではないと考えられています(東京地方裁判所平成9年1月24日決定参照)。
そして、異動による賃金の変更(減額)が認められるためには、労働者の同意(労働契約法8条)があるか、異動に伴う賃金の変更(減額)が、労働契約上有効に制度化され、賃金引下げ措置が正当なものと認められる場合に限られると考えられます。
本件では、労働条件通知書において、「2023年1月1日から2026年3月31日までは月額800,000円に固定する」との記載があることからすると、貴社と相手方との契約においては、少なくとも2026年3月31日までは賃金を変更しないという合意があると考えられます。
そうすると、たとえ就業規則上の規定があったとしても、賃金を減額することについて相手方による個別の同意がない限り、貴社において一方的に相手方の賃金を減額することはできず、2026年3月31日までは従前と同様の賃金を支払わなければならないと判断される可能性が高いでしょう。
なお、賃金の減額は、重要な労働条件に関する不利益な変更となるため、労働者の個別の同意の存否について、裁判例上、「労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点」も踏まえて慎重に判断する必要があると考えられています。
具体的には、労働者から同意を得るにあたっては、単に同意書を取り交わすだけでなく、具体的な不利益の内容や程度について情報提供や説明を充実させることが必要となると考えられます。
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