【2023年4月施行】児休業取得状況の公表義務化について解説

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

2023年4月より、育児休業取得状況の公表が義務となりました。
これは、男性の育休取得を促進するのが主な目的です。男女がともに仕事と育児を両立し、柔軟に働けるよう、企業も積極的に育児休業の取得を促すことが求められます。

本記事では、公表義務の対象企業や公表のルール、育児休業取得状況の計算方法などを詳しく解説していきます。対応に悩まれている方は、ぜひ参考にしてみてください。

育児休業取得状況の公表の義務化とは?

2023年4月に施行された改正育児・介護休業法により、一定規模以上の企業は、年1回「育児休業の取得状況」を公表することが義務付けられました。
また、公表内容や算定期間、公表方法なども決まっているため、事業主はルールを理解したうえで適切に対応することが重要です。

なお、育児・介護休業法では他にもさまざまな措置を企業に義務付けています。
詳しくは以下のページで解説していますので、併せてご確認ください。

公表する目的・効果

育児休業の取得状況を公表する目的は、男性の育児休業取得率を上げることにあります。

日本の男性の育児休業取得率は、女性と比べてまだまだ低いのが現状です。そのため、女性に過度な負担がかかり、離職率の増加や人手不足を招きやすくなっています。
そこで、男女ともに育児休業を取得しやすい環境を整備し、育児による離職を防止するため、取得状況の公表が義務付けられることとなりました。

また、育児休業取得率の公表は企業にもさまざまなメリットがあります。
例えば、育児休業の取得に前向きな従業員が増えると期待できます。また、企業のイメージアップや優秀な人材の獲得なども期待できるでしょう。

なお、厚生労働省の令和5年度の調査によると、公表義務がある企業の男性の育児休業取得率は「46.2%」となっています。対象企業では取り組みが進み、取得率が向上したとみられています。

対象となる企業

育児休業取得状況の公表義務があるのは、「常時雇用する労働者が1000人を超える企業」です。
“常時雇用する労働者”とは、正社員や契約社員、アルバイト、パートなどの雇用形態を問わず、以下のいずれかに該当する者をいいます。

  • ①期間の定めなく雇用されている者
  • ②雇用期間の定めはあるが、事実上“①”と同視できる者
    例:過去1年以上雇用が継続している者、雇用契約が反復更新されている者など

一時的に従業員数が減っても、常態として1000人を超えていれば義務の対象となります。
また、現状1000人以下でも、常時雇用する労働者が1000人を超えた時点で公表義務が課されるため注意しましょう。

※2025年4月より、対象企業は「常時雇用する労働者が300人を超える企業」に拡大される予定です。

公表しない場合の罰則はあるのか?

育児休業の取得状況を公表しなくても、罰則を受けることはありません。

ただし、公表義務を怠ると“育児・介護休業法違反”になり、厚生労働大臣から報告を求められたり、助言・指導・勧告を受けたりする可能性があります。
また、勧告に従わない場合や虚偽の報告をした場合、企業名を公表されることもあります。

企業名が公表されればイメージダウンは避けられませんので、対象企業はしっかり義務を守りましょう。

育児休業取得状況公表のルール

育児休業取得状況の公表では、以下の事項についてルールが定められています。

  • 公表する内容
  • 公表する方法
  • 公表する時期

それぞれ次項から具体的にみていきます。

公表する内容

事業主は、以下2つのうちいずれかを公表する必要があります。

公表内容 算定に含むもの
①男性の育児休業等の取得率 ・育児休業
・産後パパ育休
・3歳未満の子供がいる労働者に関する代替措置(育児・介護休業法23条2項)
・小学校就学前の子供がいる労働者に関する措置(同法24条1項)
②男性の育児休業等と育児目的休暇の取得率 育児休業等のほか、「育児を目的とすることが明らかな休暇制度」
・配偶者出産休暇制度
・子の行事参加のための休暇
・育児参加奨励休暇制度
・子供の通院や予防接種のための外出 など

ただし、育児目的で取得した年次有給休暇や、子の看護休暇は含みません。

なお、事業年度をまたがって取得した場合、休業を開始した日を含む事業年度の取得とします。
また、複数回に分割して取得した場合、それぞれ取得した事業年度でカウントします。

 

公表する方法

育児休業の取得状況は、社外の一般人も閲覧できる方法で公表する必要があります。

  • 自社のホームページ
  • 厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援ひろば」

などに掲載するのが一般的です。

公表する時期

公表時期は、「公表前の事業年度の終了後、おおむね3ヶ月以内」とされています。
例えば、対象事業年度が2024年4月1日から2025年3月31日の場合、公表の期限は2025年6月末です。

1年間の取得状況を公表することになるため、毎月きちんと管理することが重要です。

育児休業取得状況の計算方法

公表内容のうち以下のいずれかを選択し、取得率を算定します。

  • ①男性の育児休業等の取得率
  • ②男性の育児休業等と育児目的休暇の取得率

それぞれの計算方法について、次項から具体的に解説します。

①男性の育児休業等の取得率

“育児休業等”の取得率は、以下の計算式で算出します。

育児休業等をした男性従業員の数 ÷ 配偶者が出産した男性従業員の数

当該事業年度に対象者がいない場合、計算できないため公表時は「-」と記載します。

②育児休業等と育児目的休暇の取得率

“育児休業等”と“育児目的休暇”の取得率は、以下の計算式で算出します。

(育児休業等をした男性従業員の数+小学校就学前の子供の育児を目的とした休暇制度を利用した男性従業員の数)÷ 配偶者が出産した男性従業員の数

どの休暇をカウントすれば良いか迷われる場合、一度弁護士に相談することをおすすめします。

育児休業取得状況の公表義務化における対応については弁護士にご相談ください

従業員数が1000人を超える企業は、育児休業取得状況の公表が義務付けられています。また、2025年4月には改正育児・介護休業法が施行され、対象企業が大きく拡大される予定です。そのため、中小企業でも早めの対応が求められるでしょう。
また、取得状況の公表は企業にもさまざまなメリットがあるため、必ず実施しましょう。

しかし、従業員数が多いと管理や計算は複雑になります。また、日数にカウントする休暇としない休暇の区別についても、判断に悩むでしょう。
弁護士であれば、取得状況を適切に計算したり、漏れがないかチェックしたりと、幅広いサポートが可能です。また、法改正時も安心して任せることができます。
弁護士法人ALGは、企業問題の知識や経験豊富な弁護士が多く在籍しています。お悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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執筆弁護士

弁護士 アイヴァソン マグナス一樹
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所弁護士アイヴァソン マグナス一樹(東京弁護士会)

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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