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固定残業制度とは?メリット・デメリットや違法性について

弁護士が解説する【月80時間の固定残業代の有効性】について

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弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

固定残業制とは、給与に一定額の残業代を含める賃金の支払い方法です。労働時間を固定化するのではなく、残業代の支給を固定化することで、時間外労働をしないときにも賃金が減少しないメリットを労働者側に与えることができます。

法的な理解が浅いままコスト削減を目的として固定残業制を導入すると、法律に違反して無効とされることがあるため、結局コストが増大してしまうおそれがあります。

このページでは、固定残業手当がどんな制度又は賃金の支払い方法なのか、導入にあたって会社が気を付けるべき点等を中心に解説します。

固定残業制度(みなし残業制)とは?

固定残業制とは、毎月支払われる基本給にプラスして、事前に決めておいた一定額の残業代を必ず支給する制度をいいます。
この制度の残業代は大きく以下の2種類に分けられます。

  • 基本給に固定残業代を含めて記載する「基本給組入れ型」
  • 基本給と固定残業代を分けて記載する「手当型」

なお、固定残業制のことを「みなし残業制」と呼ぶこともあります。

固定残業制度の有効要件

固定残業制が有効となるためには、過去の裁判例から、以下の要件を備えている必要があると考えられます。

  • ①固定残業代を超える残業代を支払う旨の合意があること(差額支払いの合意)
  • ②通常の賃金と固定残業手当を明確に区別していること(明確区分性)

固定残業制を導入するメリット

固定残業制を導入することについて、企業側と労働者側のメリットは表のとおりです。

企業側のメリット
  • 人件費を把握しやすくなる
  • 業務効率が上がる可能性がある
  • 管理コストを抑えられる可能性がある
労働者側のメリット
  • 残業をしなくても固定残業代が支払われる
  • 業務の効率化をすることで収入を維持しながら時間を確保できる
  • 固定残業代を超えた残業代を受け取ることが可能である

固定残業制を導入するデメリット

固定残業制を導入することについて、企業側と労働者側のデメリットは表のとおりです。

企業側のデメリット
  • 固定残業代の発生で人件費が上昇するおそれがある
  • 管理をおろそかにするとサービス残業が横行するおそれがある
  • 求職者等からマイナスのイメージを持たれやすい
労働者側のデメリット
  • 基本給が低く抑えられる
  • 短時間での仕事の処理を求められる
  • 残業が長時間に及ぶおそれがある

固定残業制が違法になるケース

固定残業制が違法となってしまう可能性があるのは、次に挙げるような場合です。

  • ①固定残業代の金額・時間が明記されていない場合
  • ②固定残業時間を超えた分の残業代を支払わない場合
  • ③実際の残業時間が固定残業時間に満たない場合に固定残業代を支払わない場合
  • ④基本給が最低賃金を下回っている場合
  • ⑤固定残業時間を45時間超に設定している場合

これらの場合について、以下で解説します。

固定残業代の金額・時間が明記されていない

固定残業制を労働者に適用するためには、求人広告に次の事項を明記しなければなりません。
  • 基本給と固定残業代の金額
  • 固定残業代に相当する残業時間
  • 固定残業代の計算方法
  • 固定残業代に相当する時間数を超える残業について残業代を支払うこと

例えば、次のような書き方であれば有効となる可能性が高いでしょう。

月給30万円(基本給24万、固定残業代6万円)

※基礎賃金を1時間当たり1500円、割増率を25%として、固定残業代は32時間分の残業代として支払う。残業が32時間を超えた場合には超過分の残業代を支払う。

一方で、次のような書き方だと、基本給と固定残業代の金額や計算方法が分からないため無効となるリスクが高いでしょう。

月給25万円(固定残業代含む)、固定残業時間20時間(超過分の残業代は支給する)

固定残業代の金額等の明記が求められるのは、説明が不十分だとトラブルになりやすいからです。
また、給与明細についても、固定残業代の金額、対象となっている残業時間、実際に働いた時間外労働時間数等を明記することが望ましいでしょう。

固定残業時間を超えた分の残業代を支払わない

労働者が固定残業手当の対象となる残業時間を超えて働いた場合、その超えた時間分について、会社は固定残業手当とは別に、割増賃金を支払わなければなりません。

固定残業手当を導入した企業の中には、どんなに残業させても残業代が発生しないと誤解している企業や、労働者の残業時間がみなし残業時間を超えていることを把握していない企業もあるようですが、法的な観点からは明らかに誤りです。

固定残業手当の運用を正しく理解し、労働時間を適切に管理して、未払いの割増賃金請求といった労働者とのトラブルを起こさないように注意しましょう。

固定残業時間に満たない場合に残業代を支払わない

固定残業制は、時間外労働が短時間であっても、残業代を「毎月定額で支払う」という制度です。
そのため、実際の労働時間に対する残業代に達していなくても、同じ金額を支払わなければなりません。
仮に残業がまったくなかったとしても、定めた金額を支払う必要があります。

基本給が最低賃金を下回っている

基本給に固定残業代を含めて支払う場合、純粋に基本給にあたる部分が「最低賃金」を下回らないように気をつける必要があります。これを下回ると最低賃金法違反となります。

最低賃金は、最低賃金法によって都道府県ごとに定められている最低限の時給であり、基本給を時給に換算したときに最低賃金を下回ると違法になります。

最低賃金の引き上げは、ほとんど毎年行われているため、引き上げられた最低賃金を下回っていないかについて確認しましょう。

最低賃金制度について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

企業が遵守すべき「最低賃金制度」について

固定残業時間を45時間超に設定している

1ヶ月の固定残業制の対象となる残業時間を、45時間を超える時間で設定している場合には、法律に違反していると判断されるおそれがあります。

会社が労働者に残業をさせる場合には「36協定」を締結する必要があり、36協定における1ヶ月の残業時間の上限は45時間となっています。それを上回るための特別条項の適用は、臨時的な事情がある場合に限られます。

法律では、固定残業代の上限は明確には設けられていませんが、60時間分や80時間分を超える固定残業手当については無効と判断している裁判例があります。
あまりにも長時間に設定してしまうと、固定残業制が無効とされることがあるので注意しましょう。

なお、36協定について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

36協定とは?時間外労働の上限規制や罰則、新様式の協定書について

固定残業代制を導入する際のポイント

固定残業制を導入するときには、次の点に注意しましょう。

  • ①就業規則・雇用契約書に明記する
  • ②労働時間を把握する

これらの注意点について、次項より解説します。

就業規則・雇用契約書への明記

会社は、固定残業制を適用して残業代を支払うことについて就業規則に明記して、適用対象の労働者全員にきちんと知らせるか、雇用契約書に記載して、労働者に個別に合意してもらう必要があります。

固定残業制を導入するときには、固定残業代が給与に含まれることを労働契約書に記載しなければなりません。記載がない場合には、固定残業制が無効になるおそれがあります。

労働時間の把握

固定残業制を導入しても、労働時間の把握をする必要があります。これは、労働安全衛生法により、基本的にすべての労働者について労働時間を把握することが義務化されているからです。

また、固定残業代を超えた部分の残業代の支払いのため、36協定に定めた時間を上回る残業をさせないため等の目的でも労働時間を正確に把握する必要があります。

労働時間を把握するときには、なるべく客観的な記録によって把握しましょう。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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