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障害者の解雇について|不当解雇とならないための注意点

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

何らかの事情があって会社が労働者を解雇するときには、就業規則等の規定に則り、適正な手続きを経て行われることが求められます。
それは一般の労働者の場合も同様ですが、障害者を解雇する場合には、その理由が“差別”や“不利益取扱い”にあたらないかどうか、より一層慎重に検討する必要があるでしょう。

このページでは、企業が障害者の【解雇】にあたり留意すべき事項を中心に解説していきます。

障害者の解雇について

解雇とは、事業主からの一方的な労働契約の終了のことです。基本的に、そこに従業員の同意はありません。

もっとも、障害の有無にかかわらず、事業主がいつでも自由に従業員を解雇できるというわけではありません。当該従業員の解雇について、客観的にみて合理的な理由がなく、社会一般の常識に照らして認められないような解雇はできません(労契法16条)。

さらに、すべての事業主には、障害者が就業によって社会貢献しようとする努力を支援する責務があります。そのため、事業主が障害者を解雇することは法律によって制限されています。

障害者の解雇が有効になる要件

障害者を解雇したときに、不当解雇と判断されないための要件について次項より解説します。

普通解雇の要件

普通解雇とは、労働者の能力不足や勤務態度不良などを理由として行う解雇のことです。
普通解雇を有効に行うためには、次の要件を満たすことが求められます。

  • 客観的に合理的な理由があること
  • 社会通念上相当であると認められること
  • 法律上、解雇が禁止されている状況でないこと

懲戒解雇の要件

懲戒解雇とは、懲戒処分として行われる解雇のことです。懲戒処分のうち、最も重い処分が懲戒解雇とされています。
懲戒解雇を有効に行うためには、次の要件を満たす必要があります。

  • 就業規則に懲戒解雇の根拠規定があり、それが周知されていること
  • 客観的に合理的な理由があること
  • 社会通念上相当であると認められること

整理解雇の要件

整理解雇とは、会社の経営が悪化した場合等に、人員を削減する目的で行われる解雇のことです。
整理解雇を有効に行うためには、次の要件を満たす必要があります。

  • 人員整理の必要性があること
  • 解雇を回避する努力を行ったこと
  • 解雇する労働者を選ぶ基準に合理性があること
  • 解雇手続きが妥当であること

障害者を解雇する際の禁止事項

障害者を解雇するときには、一般的な労働者を解雇するための要件に加えて、特別な制限が設けられています。
この制限について、以下で解説します。

障害者に対する差別の禁止

障害者雇用促進法では、“障害があること”によって労働者を差別的に扱うことを禁止しています。例えば、次のような例が差別にあたると考えられます。

  • 障害者であることを理由として、障害者を解雇の対象とすること
  • 解雇の対象となる基準について、障害がある者とない者とで分け、障害者に対してのみ不利な条件を設定すること
  • 障害者であるということだけを理由に、解雇基準を満たす労働者の中から障害者を優先して解雇の対象とすること

障害者に対する差別的な取扱いについては、早急に改善を進めていくべきテーマであるため、別途詳しく解説しているページを設けています。ぜひこちらも併せてご覧ください。

障害者への差別禁止

合理的配慮の相談を理由とした解雇の禁止

障害のある労働者が、採用後に合理的配慮について相談したことを理由に、事業主が、当該労働者に対し、解雇など不利益な取扱いをすることは禁止されています。事業主は、その旨を就業規則に定め、社内報やパンフレット、社内ホームページなどで労働者に周知・啓発するといった措置を講じる必要があります。

障害者に対する“合理的配慮”とは、障害者が働くうえでの支障となっている事情(就労機会や待遇、能力発揮)を改善するための措置を指します。障害者から申し出があった場合には、それが事業主にとって“過重な負担”を伴うものであるケースを除き、当該障害者に合理的な配慮を提供する義務があります。

以下のページでは、“合理的配慮”の具体的な内容や、“過重な負担”の判断について詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。

障害者雇用の合理的配慮

虐待の通報・届出を理由とした解雇の禁止

労働者が障害者虐待について通報したこと、あるいは、障害者が虐待を受けた旨の届出をしたことを理由に、解雇などの不利益な取扱いをしてはなりません。

障害者虐待防止法では、事業主から虐待を受けている障害者を発見したときには通報しなければならず、虐待を受けた障害者はその旨を届け出ることができます。いずれの窓口も、市区町村または都道府県となります。詳しくは、こちらのページをご覧ください。

障害者の虐待防止

障害者を解雇する前に確認すべきこと

障害者を解雇する前に、会社の取り組みについて検討しなければなりません。
どのような点について検討すべきかについて、以下で解説します。

合理的な配慮

障害のある労働者について、障害の特性に配慮するための対応や、障害が原因になって生じている不都合を解消するための措置など、合理的な配慮を行わずに障害者を解雇した場合には不当解雇と判断されるリスクがあります。

合理的配慮の具体的な内容として、障害のある従業員が通院するための休暇を与えること、体調に配慮して休憩時間を延長すること、車いすでの作業が可能となるように机の高さを調節すること等の対応が挙げられます。

適切な注意・指導

障害のある労働者について、業務上のミスの改善に取り組む意欲が見られず、ミスを繰り返すといった場合には解雇が有効であると判断される可能性がありますが、その前に適切な注意や指導をしなければなりません。

事業主には、障害者雇用促進法5条に基づいて障害者を支援する責務があります。

他方で、同法4条には、障害者も能力の向上等について自ら努力しなければならないとする旨の規定が定められていることから、事業主が相応の支援や指導を行ったものの、本人に改善の意欲が見られない、改善の見込みがないといった場合には、解雇に合理性が認められ得るでしょう。

なお、一般的な解雇事由などについては、以下のページでご覧いただけます。ぜひこちらもご覧ください。

正当な解雇事由とは

配置転換の検討

障害者を解雇する前に、配置転換などが可能かを検討しなければなりません。それは、障害により可能な業務が限られることや作業に時間がかかることは採用するときから分かっていたことなので、すぐに解雇するのではなく、他の仕事ができないかを検討する必要があるからです。

また、入社後の労働者が障害を負ったケースについては、予定していた業務ができなくなるため解雇事由になり得ます。ただし、他の業務ができる可能性があることから、直ちに解雇するのではなく、配置転換の検討は十分に行うようにしましょう。

障害者を解雇する場合の手続き

障害者を解雇するときには、次のような流れで手続きを行います。

  1. 解雇理由の整理
  2. 解雇通知書の作成
  3. 解雇の通知
  4. 解雇手当の支払い
  5. 障害者解雇届の提出

この流れについて、次項より解説します。

なお、退職と解雇の違い等について全般的に知りたい方は、以下の記事を併せてご覧ください。

退職・解雇

①解雇理由の整理

障害者を解雇するときには、その障害者を解雇しなければならない理由を整理しましょう。
解雇理由を整理するときには、障害への配慮を十分に行ったのに成果が出ないことや、解雇以外に手段がないこと、不当解雇に該当するような状況ではないこと等について確認する必要があります。

②解雇通知書の作成

口頭で解雇を伝えたとしても、基本的に有効とされています。しかし、解雇を通知した証拠が残らないため、なるべく書面を作成して通知することが望ましいでしょう。
労働者を即日解雇する場合には、解雇通知書を交付します。このとき、基本的に30日分の解雇予告手当の支払いが必要となります。

③解雇の通知

労働者に解雇を通知します。
その際、解雇予告は30日前までに行わなければなりません。

解雇予告したのが30日前よりも解雇日に近い日付であれば、予告期限に足りない日数分の解雇予告手当を支払わなければならないとされています。

ただし、解雇予告を受けた状態で労働者が変わりなく働くとは考えられておらず、即日解雇して30日分の解雇予告手当を支払うケースが多いようです。

④解雇手当の支払い

解雇予告手当は、解雇予告を行ったのが解雇を行う日の30日以上前でない場合に、不足する日数分の平均賃金を支払うものです。
解雇予告手当は、次の日に支払う義務があります。

  • 即日解雇するのであれば解雇する日
  • 解雇予告を行うのであれば解雇を予告した日

また、次の労働者については解雇予告手当を支払う義務がありません。

  • 試用期間が始まってから14日未満の労働者
  • 雇用期間が1ヶ月未満の労働者
  • 2ヶ月以内の期間を定めて使用される労働者
  • 季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される労働者

⑤障害者解雇届の提出

障害者に解雇を告知したら、事業主は速やかに「解雇届」をハローワークへ提出しなければなりません(障害者雇用促進法81条1項)。

これは、障害のある労働者の再就職のために、早期の求人開拓、職業指導等のバックアップが必要になるためです。
「解雇届」を提出するときには、電子申請を利用することもできます。

なお、事業者が障害者を雇用するにあたって必要となる届出については、以下のページでご確認ください。

障害者雇用の届出

「事業主が解雇届の提出義務を負う対象となる障害者」とは、身体障害・知的障害・精神障害があり、基本的に障害者手帳の交付を受けている常用雇用労働者を指します。

なお、障害者雇用促進法における障害者の定義等については、以下のページをご確認ください。

障害者雇用

また、「解雇届の提出義務が生じる対象の障害者」には、現状では障害者雇用率の計算対象とされていない「週20時間未満勤務の常用雇用労働者」も含まれています。

障害者解雇届の記載内容

「障害者解雇届」には、以下にあげるような事項を記載します(障害者雇用促進法施行規則42条)。

  • ①解雇を届け出る対象障害者である労働者の氏名・性別・年齢・住所など
  • ②解雇する障害者である労働者が従事していた職種
  • ③解雇理由や解雇する年月日及び理由

詳しくは、厚生労働省のホームページからダウンロードできる「障害者解雇届」のフォーマットをご覧ください。

厚生労働省 事業主の方へ 障害者雇用のルール(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page10.html

障害者を不当解雇した場合のペナルティ

障害者を不当解雇すると、次のようなペナルティを受けるおそれがあります。

  • ①労働基準監督署からの指導・勧告
  • ②労働審判や民事訴訟

これらのペナルティについて、次項より解説します。

労働基準監督署からの指導・勧告

解雇された労働者が、不当解雇されたとして労働基準監督署に相談すると、労働基準監督署から指導や勧告を受けるおそれがあります。

調査の前に予告などは基本的に行われないため、突然の訪問を受けることになります。もしも調査の妨害などをすると、30万円以下の罰金刑に処せられるおそれがあります。

労働審判や民事訴訟

障害者を不当解雇してしまうと、労働審判や民事訴訟を起こされてしまうリスクがあります。

労働審判とは、労働者と会社の間で発生した労働トラブルについて、労働審判委員会が短期間で解決するための手続きです。
また、民事訴訟とは、会社などの法人も含めた民間人の法的な争いを解決する裁判上の手続きです。

労働審判や民事訴訟で不当解雇だと認められてしまうと、労働者を復職させることや、解雇したものとして扱っていた期間の給与を支払うことを命じられるリスクが高いため、金銭的な損失が大きくなるおそれがあります。

障害者の解雇が不当解雇とみなされた判例

【大阪地方裁判所 令和4年4月12日判決】

この事例は、てんかんにより障害等級1級と認定されており、骨盤にボルトが入っているため重い物の運搬などに支障のある労働者が、協調性がなく勤務意欲が低いなどとして解雇されたことについて、解雇の無効などを主張した事例です。

裁判所は、原告に協調性がないという会社側の主張について、原告が自身の障害について理解してもらえないと感じたとき等に他の労働者を委縮させる発言をしたものの、原告の立場ではやむを得ない面があったとしました。

また、口論になるなどしていた職場の派遣労働者に対して見下すような発言をしたものの、指導を受けた後で改善しており、解雇理由になるほど協調性が欠如しているとは認められないと指摘しました。

さらに、原告の勤労意欲が低いという会社側の主張について、障害などによる制約がありながらも作業速度を向上させており、無遅刻無欠勤であったこと等から、解雇理由になるほど勤労意欲が低かったとは認められないと指摘しました。

そして、本件解雇を解雇権濫用により無効としました。

助成金や障害者雇用納付金に関する注意点

障害者を解雇したために、法律で定められている障害者の雇用率を下回ってしまうと、障害者雇用納付金を徴収されるおそれがあります。

常に雇用している労働者が100人以下の会社であれば、障害者雇用納付金の徴収の対象ではありませんが、ハローワークから障害者を雇うように行政指導されることがあります。

また、会社都合で障害者を解雇すると、今まで受け取ることができた障害者雇用の助成金が不支給となるおそれがあります。

障害者雇用率制度について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

2021年3月からの障害者雇用率制度について
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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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