賞与(ボーナス)とは|種類や決め方、社会保険料や所得税の計算方法

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
賞与(ボーナス)は、社員の仕事へのモチベーションにかかわる重要な事柄です。
そもそも賞与を支給するかどうか、いつ支給するかといったことは企業が自由に決定できますが、労働トラブルを避けるため、支給ルールを明確にしておく必要があります。
本記事では、賞与の決め方や労務手続きなどを詳しく解説しますので、ぜひご覧ください。
目次
賞与(ボーナス)とは
賞与(ボーナス)とは、毎月の給与とは別に、企業が従業員へ特別に支給するお金のことです。
ボーナスという言葉は英語の「bonus」に由来し、日本では賞与と同じ意味で使われています。
夏と冬に年2回支給するケースが一般的ですが、業績達成があった際に支給される臨時ボーナスがある企業もあります。支給額は企業によって異なりますが、基本給の1ヶ月〜数ヶ月分となるのが通常です。
賞与は、企業が得た利益を従業員へ還元する目的や、社員のモチベーション向上を図るための制度として位置付けられています。
もっとも、賞与の支給は法律で義務づけられているものではありません。そのため、支給の有無や時期、金額などは企業ごとに大きく変わります。
賞与の支給義務
法律上は、賞与を支払う義務はありません。「賞与を支給するかどうか」「賞与の金額」「支給対象者」などのルールは、企業ごとに自由に決めることが可能です。
ただし、就業規則や労働契約に「賞与を支給する」と明記されている場合、企業にとって拘束力を持ち、記載どおりに支給する義務が生じます。
規定に反して一方的に不支給や減額を行うと、契約違反として争われる可能性があります。そのため、賞与について決定したルールは、従業員にしっかり周知したうえで適切に運用しなければなりません。
また、ルールを変更する場合も、労使間の合意が求められます。
給与との違い
給与とは、労働者が働いた対価として、毎月決まった日に支給される基本的な報酬のことです。
基本給や残業代、各種手当などを含む総支給額が給与にあたり、生活を支える安定した収入として位置付けられています。
給与は労働基準法により、毎月1回以上・決まった日に支払うことが義務づけられています。
一方で、賞与は、企業の業績や従業員の成果に応じて支給される特別な報酬です。支給時期は年2回が一般的ですが、年1回や臨時支給もあります。
賞与額は業績に左右されるため、給与のような安定性はありません。まとめると、以下の明確な違いがあります。
- 給与:働いた分を定期的に受け取る収入(支払義務あり)
- 賞与:業績や成果に応じて支給される追加報酬(支払義務なし)
賞与の種類
賞与には、以下の3種類があります。
- 基本給連動型賞与
- 業績連動型賞与
- 決算賞与
基本給連動型賞与
基本給連動型賞与とは、「基本給の◯ヶ月分」といった計算方法で支給される賞与です。
一般的には夏と冬に支給され、年功序列型の賞与制度として広く浸透しています。
勤続年数が長くなるほど、賞与額も大きくなるのが特徴です。一方で、毎年支給されることが当然と思われやすく、賞与を減額した際に従業員の不満が生じやすいという注意点もあります。
基本給連動型賞与を導入するメリット・デメリットは、次のとおりです。
| メリット |
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|---|---|
| デメリット |
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業績連動型賞与
業績連動型賞与とは、企業全体または部門ごとの業績に応じて、支給額が変動する賞与です。
一般的には、組織の業績だけでなく、従業員個人の成果も反映して支給額を決定します。企業の利益や目標達成度に連動して金額が決まるため、成果主義の賞与制度といえます。
従業員のモチベーション向上につながる一方、業績が悪化すると賞与が大きく減り社内が不安定になりやすいため、フォローが不可欠です。
業績連動型賞与のメリット・デメリットは、次のとおりです。
| メリット |
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|---|---|
| デメリット |
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決算賞与
決算賞与とは、企業の決算期前後に支給される臨時のボーナスを指します。個々の従業員の成果ではなく、会社全体の業績を基準に支給額が決まる点が特徴です。
業績が好調な年度に、得られた利益を従業員へ還元する目的で支給されるケースが多く、年1回の業績ボーナスとして活用されています。
通常の賞与が比較的安定して支給されるのに対し、決算賞与は会社の業績が良い年だけに支給される点が大きな違いです。
決算賞与には、次のようなメリットとデメリットがあります。
| メリット |
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|---|---|
| デメリット |
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賞与の対象者
誰に賞与を支給するかは、会社が任意で決めることができます。よって、アルバイトやパート、契約社員などの非正規労働者、派遣社員などについても、賞与を支給するかしないかは会社が自由に決定できます。
また、支給要件に、「賞与の支給日時点で在籍していた者を対象とする」などと記載すれば、支給対象者が明確となり、労働トラブルが起こりにくくなります。
なお、企業の状況などによっては、賞与を支給するのが難しいこともあるでしょう。そこで、「会社の業績や個人の勤務実績によっては、賞与を支給しないことがある」など、不支給の要件も定めておくと安心です。
どのような要件を定めるにしても、就業規則にはしっかり記載しておくことが重要です。
中途採用者の賞与支給
中途採用者の場合、入社日によって賞与の支給の有無が変わります。入社日が査定期間内の場合、在籍期間によって満額を日割りまたは月割りで支給するのが一般的です。以下の例をご覧ください。
賞与の査定期間が4月1日~9月30日で、入社日が6月1日の場合
→在籍期間に応じて、満額の3分の2を支給
ただし、査定期間に在籍がなくても、「寸志」程度の支給は行うというケースも多いです。日頃の働きに感謝の意を示すことで、労働者のモチベーションアップにつながるでしょう。
もっとも、在籍期間にかかわらず、一律で全額を支給することも可能です。
退職者の賞与支給
退職者については、支給日在籍要件を定めているかがポイントです。支給日在籍要件とは、賞与の支給日時点で在籍している者を、支給対象とするという規定です。
これにより、支給日前に退職した者については、賞与を支給する必要がなくなります。
支給日在籍要件の詳細は、以下のページでも解説しています。
休職者への賞与支給
休職者についても、賞与を支給するかどうかは就業規則によることとなります。もっとも、査定期間に在籍がある場合、在籍期間に応じて金額を決定し、支給するのが良いでしょう。
特に産休育休中の人については、育児を理由に不利益な取り扱いをすることが禁止されています。そのため、支給対象日に在籍していないからといって不支給にすることは、違法と判断される可能性があるので注意しましょう。
賞与はいつ支給するのか
賞与の支給時期も、会社が自由に決定できます。一般的には、以下のスケジュールで、年2回支給されるケースが多いでしょう。
【査定期間】
- 夏の賞与:10月~3月
- 冬の賞与:4月~9月
【支給時期】
- 夏の賞与:6月~7月
- 冬の賞与:12月
金額の決定にはある程度時間がかかりますので、査定期間の数ヶ月後に支給するケースが多いようです。
もっとも、これらは一例ですので、年3回支給したり、年度末にまとめて支給したりするケースもあります。
賞与の決め方
賞与額を決めるときは、まず就業規則や労働契約に定められた支給基準や計算方法に従うことが原則となります。賞与は企業に一定の裁量が認められているため、会社の業績や従業員の評価に応じて金額を調整することも可能です。
ただし、賞与を決定する際には「同一労働同一賃金のルール」に注意する必要があります。この制度は、雇用形態の違いだけを理由に不合理な待遇差をつけることを禁止するもので、2021年4月から全企業に適用されています。
そのため、正社員とアルバイトであっても、仕事内容や責任の範囲が同じであれば、賞与も同水準の金額を支給しないと不合理であると判断される可能性があります。
一方で、これらに違いがあれば、その差に応じた支給額とすることに合理性が認められます。
賞与の計算方法
賞与の金額は、社員の基本給をベースに、「基本給×〇ヶ月分」で計算することが多いです。平均をみると、基本給の1~2ヶ月分とする企業が多いようです。
ここでの基本給とは、社会保険料や住民税などが差し引かれる前の金額をいい、残業代や定期代などの手当は含みません。
また、個人の成果や貢献度によっては、計算式で求めた金額から減額することもあります。
一方、「業績連動型」の場合、あらかじめ賞与の原資(総額)を設定し、個人の成果や貢献度によって分配率を決定することになります。
賞与の原資(総額)については、「売上高の〇%」「営業利益の〇%」などとするのが一般的です。
賞与の査定方法
賞与の査定は、あらかじめ賞与の支給対象者、査定対象期間等を定めたうえで、主に以下の3つの観点から対象者を評価し、支給額を決定する運用が一般的です。
- 業績評価
- 能力評価
- 行動評価
また、対象者の上司のみならず、同僚や部下からの評価も査定の対象とする360度評価を採用する会社も増えています。
査定方法に関する詳しい解説は、以下のページをご覧ください。
賞与の平均額
賞与の金額は、業種や企業規模、職種などによって大きく異なりますが、全体の平均をみると一定の相場があります。
2025年のdoda調査によると、夏季賞与の平均支給額は約57.7万円、冬季賞与は約56.7万円で、年間の平均賞与額は約120.7万円です。
また、年間のボーナス支給額は月収の平均2.7ヶ月分に相当するという結果も出ています。こうしたデータから、1年間で月給の約2.5~3ヶ月分程度の賞与が支給されていれば、平均的な水準といえるでしょう。
賞与にかかる社会保険料と所得税
賞与からは社会保険料と所得税が控除され、控除後の金額が手取り額となります。なお、賞与から控除される社会保険料は健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、介護保険料(40歳以上65歳未満のみ)です。
つまり、賞与の手取り額は、下記の計算式で求めることができます。
賞与の手取り額=賞与の総額-(社会保険料+所得税)
社会保険料の計算方法
社会保険料は、それぞれ次の式によって計算します。
| 健康保険料 | 標準賞与額×健康保険料率(都道府県別などで定められている)×1/2 |
|---|---|
| 厚生年金保険料 | 標準賞与額×厚生年金保険料率(18.3%)×1/2 |
| 雇用保険料 | 賞与支給額×雇用保険料率(一般的な企業では0.55%) |
| 介護保険料 | 標準賞与額×介護保険料率(1.62%)×1/2 |
健康保険料や厚生年金保険料、介護保険料を計算するときに用いる「標準賞与額」とは、賞与総額から千円未満を切り捨てた金額です。ただし、上限は健康保険では年間573万円、厚生年金保険では月間150万円とされています。
なお、雇用保険以外は労働者と企業で折半するため、企業も同額を支払うことになります。一方、雇用保険については、企業の雇用保険料率は0.9%とされています。
所得税の計算方法
所得税の金額は、次の式によって計算します。
所得税額=課税対象額×税率(5%~45%)
課税対象額は、賞与の金額から社会保険料額を差し引いた金額です。
また、税率は、国税庁が発表する「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から確認することができます。
賞与の支給に伴う労務手続き
従業員に賞与を支払うときは、以下の労務手続きを適切に行う必要があります。
- 賞与明細書の発行
- 賞与支払届などの提出
- 就業規則の規定
これらの手続きは、従業員への情報提供義務を果たすだけでなく、税務・社会保険手続きの正確性を保つうえでも欠かせないプロセスです。
賞与明細書の発行
賞与明細書とは、賞与の支給額や控除額を記載した書類のことです。賞与を支給する際、必ず労働者へ発行しなければなりません。
賞与明細書では、以下の控除項目を明記するのが一般的です。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 所得税
賞与支払届等の提出
労働者に賞与を支給したときには、支給日より5日以内に、被保険者賞与支払届などを管轄の年金事務所等に提出しなければなりません。
また、賞与を支給しなかった場合にも、『賞与不支給報告書』を提出する必要があるため、手続きに漏れがないよう注意しましょう。
提出が必要な書類や行うべき手続きについて、下の表にまとめたのでご覧ください。
| 申告・届出の種類 | 内容 | 提出先 | 提出期限 |
|---|---|---|---|
| 被保険者賞与支払届 | 被保険者へ賞与を支給した際に支給額を記して提出する書類 | 日本年金機構又は加入している健康保険組合 | 賞与を支給してから5日以内 |
| 70歳以上被用者賞与支払届等 | 70歳以上の被用者へ賞与を支給した際に支給額を記して提出する書類 | 日本年金機構又は加入している健康保険組合 | 賞与を支給してから5日以内 |
| 労働保険の年度更新 | 年に一度見込み給与を基に雇用保険料と労災保険料を算定し、会社が前払いする制度 | 銀行や郵便局等の金融機関、都道府県労働局、労働基準監督署 | 6月1日から7月10日までの間 |
| 賞与不支給報告書 | 日本年金機構に登録している賞与支払予定月に、被保険者や70歳以上の被用者に賞与を支給しなかったときに提出する書類 | 日本年金機構又は加入している健康保険組合 | 翌年の1月31日まで |
就業規則の規定
賞与を支給する場合、就業規則に支給ルールを定めなければなりません(相対的必要記載事項)。特に、以下の項目については具体的に定めておきましょう。
-
支給目的や支給要件
支給または不支給となる要件を記載します。このとき、業績などによっては賞与を支給しない可能性もある旨も記載しておくと安心です。 -
支給対象者
正社員のみ支給するのか、アルバイトや契約社員も支給対象に含めるのか、などを定めます。また、「いつの時点で在籍していた者を対象にするのか」もポイントです(後ほど解説します)。 -
支給回数や支給金額
年に何回支給するのか、金額は一律にするのかどうか、などを定めます。具体的な計算方法がある場合、それも記載すべきでしょう。
なお、一度定めた就業規則は遵守する必要がありますので、慎重に作成しましょう。
就業規則の作成については、以下のページでも詳しく解説しています。
賞与を減額・なし(不支給)にする場合の注意点
企業の業績が悪化した場合、賞与の支払いが難しくなることもあるでしょう。
しかし、支給ルールの定め方によっては、一方的に賞与を減額・不支給とすることは、「労働条件の不利益変更」にあたり違法となり得るため注意が必要です。
具体的には、就業規則に以下の記載がある場合、賞与の減額・不支給が違法とみなされる可能性があります。
- 賞与を必ず支給する旨
- 「基本給の〇%」「○○円」など、賞与の具体的な金額を定めている場合
このようなケースで賞与を減額・不支給にするには、就業規則の変更手続きを踏むか、労働者から個別に同意を得る必要があります。
一方、「業績や成果によっては賞与を支給しないことがある」などの不支給要件が定められている場合、企業の業績などを理由に賞与をカットしても基本的に問題ありません。
賞与の減額や労働条件の不利益変更については、以下のページもご覧ください。
企業の様々な人事・労務問題は弁護士へ
企業側人事労務に関するご相談 初回1時間 来所・zoom相談無料※
企業側人事労務に関するご相談 来所・zoom相談無料(初回1時間)
会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません
※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。 ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込11,000円)
この記事の監修

- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、企業法務担当執行役員を務め、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある
