会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません 会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

人事・労務・労働問題を法律事務所へ相談するなら会社側・経営者側専門の弁護士法人ALGへ

介護休暇とは|介護休業制度との違いや利用条件など

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

介護休暇制度とは、家族の介護等をするための休暇であり、より使いやすくするために改正されてきました。
2021年1月からは、育児・介護休業法の改正により時間単位での取得が可能となり、1日の労働時間による取得者の制限もなくなりました。

本記事では、介護休暇の概要や介護休業との相違点、利用条件、時間単位での取得等について詳しく解説していきます。

介護休暇とは

介護休暇とは、病気や怪我、高齢等の理由により介護が必要となった家族がいる労働者が取得できる休暇です。
介護休暇は育児・介護休業法によって会社への導入が義務づけられているため、取得条件を満たした労働者が申請した場合には拒絶することができません。

介護休暇は、要介護状態の家族を直接介護する場合だけでなく、間接的に介護を手助けするときにも取得できます。

  • 急な体調不良
  • 病院の入院や通院の付き添い・送迎
  • 介護士・ケアマネージャー等との面談
  • 保険などの介護の手続き
  • 食事、入浴、排せつ、リバビリの介助
  • 買い物
  • 書類等の手続き

年間の取得日数

介護休暇は、労働者1人につき以下の日数だけ取得することが可能です。

対象となる家族が1人の場合 1年度につき5日
対象となる家族が2人以上の場合 1年度につき10日

取得日数は年度ごとに管理します。就業規則に定めがない場合には、4月1日から翌年3月31日までを1年とするのが一般的です。
就業規則によって時期を指定した場合等では、忘れずに付与するようにしましょう。

時間単位での取得の場合

介護休暇を時間単位で取得する場合、取得した介護休暇の合計時間が、1日の所定労働時間に達すると1日分を取得したものとします。
会社は残日数だけでなく残時間数の管理も必要となります。

パート労働者等、所定労働時間が日によって異なる労働者については、1年間における1日平均所定労働時間数を1日分とします。1年間の所定労働時間数が決まっていない場合には、所定労働時間数が決まっている期間における1日平均所定労働時間数を1日分とします。

なお、所定労働時間が1時間単位でないケースでは、端数を時間単位に切り上げます。そのため、1日の所定労働時間が7時間45分である場合には、8時間の介護休暇を取得すると1日分となります。
間違って切り捨てないように注意しましょう。

中抜けなど法を上回る制度の検討

介護休暇を時間単位で取得する場合であっても、始業又は終業と連続する時間の取得を認めれば法令上問題ないため、仕事を中断して休暇を取得し、休暇の後で仕事を再開する「中抜け」を認める義務はありません。

しかし、法を上回る制度として、中抜けによる休暇取得を認めることに問題はありません。また、取得単位についても、15分単位や30分単位等、時間単位よりも細かく認めることができます。

労働者への配慮や会社のイメージの向上等のため、法を上回る制度について検討すると良いでしょう。

介護休暇と介護休業の違い

介護休暇と介護休業の違いとして、次の4項目が挙げられます。

  • 取得可能日数
  • 給料
  • 申請方法
  • 取得条件

これらの項目について、違いを表にまとめたのでご覧ください。

介護休暇 介護休業
取得可能日数 1年度に5日間、対象家族が2人以上ならば10日間 要介護者1人につき、通算93日を限度として3回まで分割取得可能
給料 支払義務はない 支払義務はない(一定の要件を満たすと、休業前の賃金の67%に相当する「介護休業給付金」を申請できる)
申請方法 事業主への申出
当日の申請でも可能
(詳細は企業によって異なる)
開始日の2週間前までに事業主へ申出
取得条件 ●日雇い労働者でないこと
●入社から6ヶ月以上が経過していること
●要介護状態の対象家族を介護していること
●日雇い労働者でないこと
●入社から1年以上経過していること
●介護休業開始予定日から93日経過しても6ヶ月は雇用が続くこと
●要介護状態の対象家族を介護していること

介護休業について詳しく知りたい方は、以下の記事を併せてご覧ください。

介護休業制度の正しい知識と会社が取るべき対応

介護休暇を利用する条件

介護休暇を利用できる条件は、次のものです。

  • ①要介護状態であること
  • ②対象外となる労働者でないこと

これらの条件について、以下で解説します。

要介護度

要介護状態とは、負傷や疾病、身体上又は精神上の障害により、2週間以上の期間にわたって常時介護を必要とする状態のことです。

常時介護を必要とする状態であると判断されるためには、介護の程度が要介護2以上であるか、厚生労働省が定めた条件にいくつか該当する必要があります。
2週間以上の期間にわたって、毎日の暮らしにおける活動に関しての意思決定がほとんどできない等の要件を満たせば介護休暇の対象となることから、うつ病などの病気になった家族等についても介護休暇の対象となる可能性があると考えられます。

要介護状態などの判断基準等について詳細に知りたい方は、以下の厚生労働省のサイトでご確認ください。

対象となる労働者

介護休暇を取得できる可能性があるのは、日々雇用者を除くすべての労働者であり、男女のいずれも含みます。
取得できるのは正社員だけでなく、契約社員や派遣社員、パート・アルバイト等も対象になります。

介護休暇取得の申出の対象外となる労働者と、労使協定で定めることにより対象外とすることができる労働者について、以下にまとめたのでご覧ください。

【対象外となる労働者】
●日々雇用者(1日限りの雇用契約又は30日未満の有期契約で雇われている労働者)

【労使協定を締結している場合に対象外となる労働者】
●雇用期間が6ヶ月未満の労働者
●1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

対象となる家族の範囲

介護休暇は、介護の対象となる家族の範囲が限定されます。
具体的には、介護休暇を取得する従業員から見て、以下の立場に該当する家族です。

なお、以前は同居及び扶養が要件として定められていましたが、現在は削除されているため同居していない家族のためであっても介護休暇を取得できます。

  • 配偶者(事実婚を含む)
  • 父母
  • 子(養子を含む)
  • 配偶者の父母
  • 祖父母
  • 兄弟姉妹

介護休暇の申出方法

介護休暇を取得する旨の申出は、当日の電話や口頭によることが可能です。法律上、書面での申請を強制しておらず、その性質上、突発的に介護休暇を取得する必要が出てくる場面も想定できるため、なるべく簡単に取得できるような配慮が求められます。

会社側では、取得条件の確認が必要なため、一般的には申請書を作成して提出することを労働者に求めています。
申請書の提出は、取得の妨げにならないように、事後でも可能とする等、配慮しながら自社にあった申請方法を検討しましょう。

申請書には、主に次のような事項を記載させるのが一般的です。

  • 労働者本人の氏名
  • 介護する対象家族の氏名及び続柄
  • 介護休暇の取得希望予定日と終了予定日(時間単位取得の場合は、取得開始時間)
  • 対象家族が要介護状態にある事実

申出書は厚生労働省の作成したフォーマットがあります。以下のサイトよりダウンロードできますのでご参照ください。

介護休暇における証明書類の請求

労働者が介護休暇を取得しようとするとき、事業主は、対象家族が要介護状態であることを証明する書類の提出を、申請した従業員に対して求めることが可能です。ただし、証明書類は医師の診断書等に限定されておらず、従業員が提出できる範囲で書類を提出すれば良いとされ、事業主はそれを受け入れる必要があります。

むしろ、医師の診断書等に証明書類を限定して、提出を義務付けるべきではないとされています。また、書類の提出は事後でも構わないとされており、書類が提出されないことを理由に、口頭で申請された介護休暇の取得は拒否できないことに注意が必要です。

介護休暇中の給与

介護休暇の取得日の給与は、会社側に支払い義務がないので無給としても問題ありません。
しかし、有給にするか無給にするかは事業主の裁量に委ねられているため、有給とすることも可能です。
介護休暇を有給とすると、会社のイメージを向上させられる可能性があり、助成金の対象となる場合もあります。

事業主は、介護休暇を付与する条件や期間、申請方法、退職金の算定における扱い等を、必ず就業規則に記載する必要があります。
これは、就業規則について、「休暇」は必ず記載しなければならない事項であると労働基準法で定められており、介護休暇も「休暇」に該当するためです。

介護休暇を運用する際の留意点

介護休暇取得したことによる不利益変更の禁止

介護休暇を取得したことを理由として、労働者を不利益に取り扱うことは禁止されています。

禁止されている不利益な扱いとして、解雇や降格だけでなく、賞与や昇給等についてマイナスの評価を行うこと等も挙げられます。
また、労働者が希望していないのに時間外労働や深夜労働などを制限すること等も不利益な扱いに含みます。

介護を容易にするために講ずる選択的措置

事業主は、要介護状態の対象家族を持つ労働者に対して、働きながら介護ができる措置を講じる必要があります。
次に挙げるものから1つ以上の措置を設けます。

これらの措置は、利用開始から3年以上の期間内に、2回以上は利用できるようにしなければなりません。

所定労働時間・時間外労働・深夜労働の制限

労働者に要介護状態の対象家族がいる場合、労働者の請求により所定外労働、時間外労働、深夜労働がそれぞれ制限されます。
ただし、事業の正常な運営を妨げる場合については請求を拒むことが可能です。

所定外労働・時間外労働・深夜業の制限について、以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

育児・介護休業法|所定外労働・時間外労働・深夜業の制限について
ちょこっと人事労務

企業の様々な人事・労務問題は弁護士へ

企業側人事労務に関するご相談 初回1時間 来所・zoom相談無料

企業側人事労務に関するご相談 来所・zoom相談無料(初回1時間)

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

0120-630-807

平日 9:00~19:00 / 土日祝 9:00~18:00

※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。 ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込11,000円)

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

労働法務記事検索

労働分野のコラム・ニューズレター・基礎知識について、こちらから検索することができます