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障害者職業生活相談員とは|役割や講習、選任報告書について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

障害者の社会参加の現状を改善すべく、2021年3月より障害者の法定雇用率が引き上げられるなど、企業における障害者雇用の促進が求められています。

企業は、障害者を積極的に雇用するだけでなく、障害者及び一般の従業員の双方が“働きやすい”職場環境を整えなければなりません。

このページでは、その調整役、相談役を担う「障害者職業生活相談員」について詳しく解説していきます。

障害者職業生活相談員とは

障害者職業生活相談員とは、採用した障害者の職業能力の開発・職業適応の向上を図るためのサポートを目的として選任される担当者です。

障害者の雇用の促進等に関する法律(以下、「障害者雇用促進法」とします。)の保護の対象となる常時雇用する障害者が5人以上働いている事業所では、厚生労働省が定める資格要件を満たす従業員の中から選任しなければなりません(障害者雇用促進法79条2項)。「企業」単位ではなく「事業所」単位でカウントするのがポイントです。

なお、国・地方公共団体についても同様に、障害者職業生活指導員の選任が必要となります。

障害者職業生活相談員とジョブコーチの違い

障害者職業生活相談員と似た役割を有する者として「ジョブコーチ」が挙げられます。障害をもつ従業員を職場で支援するという点では、「ジョブコーチ」も「障害者職業生活相談員」も同じ役割を担っているといえます。

ただし、下の表のような違いもあります。

障害者職業生活相談員 従業員の中から選任する企業内部での支援であり、仕事だけでなく障害者の生活に寄り添ったサポートも行う
ジョブコーチ 外部から得られる支援であり、障害者の就職や就労後の仕事に関するサポートをメインに行う

障害者職業生活相談員の役割

障害者職業生活相談員は、障害者の職業生活全般の相談・指導を行う役割を担っています。相談・指導の柱となる次の5つの事項について、順にみていきましょう。

  • 障害者の適職の選定、能力開発など職務内容に関すること
  • 障害に応じた施設整備の改善など作業環境の整備に関すること
  • 職場生活に関すること
  • 余暇活動に関すること
  • その他の事項

障害者の適職の選定、能力開発など職務内容に関すること

個々の障害の特性、持っているスキルに配慮した職務の選定や、仕事に必要なスキルが向上するよう、資格取得などの支援を行うとともに、職場の関係各所との連携をとる役割も担います。

障害に応じた施設整備の改善など作業環境の整備に関すること

  • 車いすや視覚障害の方などが通りやすいよう通路の幅を確保する
  • 掲示物やコピー機の高さ、設置場所を工夫する
  • トイレを、障害者に対応したものに変更する
  • パソコン入力の補助装置等、業務遂行に必要な機器の導入を検討する

これらの、障害がある方が極力不便なく就労できるような施設設備・作業環境の整備をする役割もあります。

職場生活に関すること

  • 精神障害・適応障害等で朝早い時間の出勤が難しいが、勤務時間を変更することはできるか?
  • 職場にうまく馴染めないが、どうしたら円滑な交流ができるか?

これらのような、労働条件や職場の人間関係に関する相談を受け、調整する役割もあります。

余暇活動に関すること

  • 食事や休息の取り方に関する相談
  • 体調管理の方法に関する指導

これらの、仕事以外の時間についてサポートする役割も担います。

その他の事項

サポート対象となる従業員に対する直接的な支援だけでなく、一般の従業員にも障害者雇用について理解を深めてもらえるように研修の場を設ける等、障害や必要とするサポートの内容等を伝えるといった、障害のある方が職場に適応できるような活動を行う役割も並行します。

障害者職業生活相談員の資格要件

障害者職業生活相談員は、次のいずれかの資格要件を満たしている従業員の中から選びます。

  • 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が実施する障害者職業生活相談員資格認定講習の修了者
  • 厚労省が定める要件のいずれかに該当する者

これらの資格要件について、以下で解説します。

障害者職業生活相談員資格認定講習の修了者

『独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構』が全国で毎年実施している「障害者職業生活相談員資格認定講習」を受講するだけでなく、修了していることが資格認定の要件となります。

なお、障害者職業生活相談員の選任が、対象障害者を5人以上雇用している事業所に求められていることから、「障害者職業生活相談員資格認定講習」は個人での受講申請を承認していません。あくまでも障害者職業生活相談員として選任される予定がある方を対象とした講習となっています。

その他厚労省が定める要件

以下にあげる学歴や一定の実務経験がある従業員は、「障害者職業生活相談員資格認定講習」を受講しなくても、障害者職業生活相談員の資格要件を満たしていると認められます。

  • (ア)職業能力開発総合大学校の長期課程の福祉工学科に関連する指導員訓練の修了者等
  • (イ)次の①~④のいずれかに該当し、かつその後1年以上対象障害者である従業員の職業生活に関する相談・指導の実務経験がある者
    • ①大学または高等専門学校(旧専門学校を含む)の卒業者
    • ②職業能力開発総合大学校の長期課程の福祉工学科に関連する以外の指導員訓練の修了者
    • ③特定専門課程または特定応用課程の高度職業訓練の修了者
    • ④職業能力開発大学校、または職業能力開発短期大学校の専門課程の高度職業訓練、または職業能力開発大学校の応用課程の高度職業訓練の修了者等
  • (ウ)高等学校または中等教育学校の卒業者(学校教育法施行規則150条に規定する者またはこれと同等以上の学力を有すると認められる者を含む)で、その後2年以上対象障害者である従業員の職業生活に関する相談・指導の実務経験がある者
  • (エ)(ア)~(ウ)以外の者で、3年以上対象障害者である労働者の職業生活に関する相談・指導の実務経験がある者
  • (オ)(ア)~(オ)に準ずる者

障害者職業生活相談員選任報告書の届出

障害者職業生活相談員を選任したときには、「障害者職業生活相談員選任報告書」を提出する必要があります(障害者雇用促進法施行規則40条2項)。
提出先は、事業所を管轄するハローワークです。また、電子申請も可能です。

届出の期限

障害者職業生活相談員の選任は、選任の義務が生じた日から3ヶ月以内、つまり、対象障害を持つ従業員の雇用が5人以上になった日から“3ヶ月以内”に行わなければなりません(障害者雇用促進法施行規則40条)。選任の届出は、その後滞りなく提出する必要がありますので、この“3ヶ月”がおおよその目安となるでしょう。

報告書の記入例

「障害者職業生活相談員選任報告書」には、主に次のような内容を記載します。

  • 事業所の名称、所在地、事業の種類
  • 労働者数、障害者数(身体障害者・知的障害者・精神障害者である各労働者の数)
  • 障害者職業生活相談員の氏名、生年月日、選任年月日
  • 障害者職業生活相談員の職歴等
  • 障害者職業生活相談員の職務権限や職務区分(同じ事業所に相談員が2名以上いる場合)
  • 障害者職業生活相談員の新任、改任の理由

「職歴等」の欄には、資格認定講習を受講していなければ、「障害者である職員又は労働者の職業生活に関する相談及び指導の実務経験(3年以上)」等を記入します。

選任後の留意点

障害者職業生活相談員に選任された者は、次のことに留意しながら障害者の支援にあたる必要があります。

  • ①ハローワークとの連携
  • ②組織的対応

これらの留意点について、以下で解説します。

ハローワークとの連携

障害者職業生活相談員は、障害者の職場適応、作業環境、障害者からの相談及び対応といった状況をハローワークに報告するとともに、状況に応じた然るべき指導・助言をハローワークに求めるなどして適宜連携を図り、障害者がより職場になじめるように努める必要があります。

組織的対応

障害者の職場適応等の妨げとなる問題が生じた場合、その内容によっては相談員だけでなく、組織全体で対応策に取り組むことも必要となってきます。そのために有効な手段として、以下のようなことが考えられます。

《事業所内》
障害者職業生活相談員をはじめ、事業所の代表者や障害者の採用担当者、障害者が所属する部署の責任者等、関係者で構成した“障害者職場定着推進チーム”の設置・運営。

《事業所外》
ジョブコーチ、障害者就業・生活支援センター等の外部支援を活用し、障害者の“仕事”及び“生活”のサポートの強化。

障害者職業生活相談員を選任しなかった場合の罰則

少なくとも現在は、障害者職業生活相談員を選任しなかったことに対する罰則は定められていません。しかし、選任することは義務とされているため、必ず選任しましょう。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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