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在宅就業障害者支援制度の活用

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけとして、在宅ワークが広がりました。これにより、障害者の在宅就業も受け入れやすい環境が整ってきています。

障害者の在宅ワークによる就業を推進するために、「在宅就業障害者支援制度」があります。この制度は2006年から導入されており、在宅就業障害者に業務委託契約などで仕事を発注した企業は金銭的な支援を受けることが可能です。

このページでは、在宅就業障害者支援制度について解説します。

在宅就業障害者支援制度とは

在宅就業障害者支援制度とは、自宅などで働く障害者の就業機会拡大を目的とした制度です。

この制度では、雇用契約を結ばない点が重要です。雇用ではないので、働き手である障害者の心身のコンディションが良い日・時間を選んで、無理なく仕事に取り組むことができるメリットがあります。

また、仕事の発注を行った企業としても、雇用ではないので、社会保険料や残業代などのコストをかけることなく、必要なときに必要な量の業務を発注することができる等のメリットがあります。

仕事の発注方法には、次の2つがあります。

  • 企業から在宅就業障害者へ発注する
  • 企業から在宅就業支援団体を仲介して、在宅就業障害者へ発注する

これらの方法で障害者に仕事を発注すると、2種類の助成金を受け取れる可能性があります。

特例調整金 常時100人を超える従業員を雇用している事業主に対する助成金
特例報奨金 常時100人以下の従業員を雇用している事業主に対する助成金

これらの助成金は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に対して、在宅就業支援団体から発行された業務の対価等の証明書などを提出して申請します。

特例調整金の支給条件

在宅就業障害者に仕事を発注することによって特例調整金を受け取るための要件として、次のものが挙げられます。

  • 常時100人を超える従業員を雇用していること
  • 法定雇用率を達成していること
  • 在宅就業障害者及び在宅就業支援団体に、年間35万円以上の仕事の発注をしていること

なお、法定雇用率に達していない場合には、「特例調整金」の金額によって「障害者雇用納付金」が相殺される仕組みとなっています。

特例報奨金の支給条件

在宅就業障害者に仕事を発注することによって特例報奨金を受け取るための要件として、次のものが挙げられます。

  • 常時100人以下の従業員を雇用していること
  • 法定雇用率を達成していること
  • 在宅就業障害者及び在宅就業支援団体に、年間35万円以上の仕事の発注をしていること

なお、法定雇用率に達していない場合には、「特例調整金」の金額によって「障害者雇用納付金」が相殺される仕組みとなっています。

対象となる障害者

“在宅就業障害者”とは、企業との雇用関係がない者で、次の①~③の条件を満たす者のことをいいます。

  • ①対象となる障害を抱えている
  • ②自宅など、対象となる勤務場所で働いている
  • ③対象となる業務を行っている

これらのうち、①の「対象となる障害」は、障害者雇用率の算定対象となる「障害者」と同様であり、身体障害者・知的障害者・精神障害者に該当する者が対象となります。

ただし、在宅就業者支援制度における精神障害者は、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者に限られていることに注意が必要です(障害者雇用促進法37条2項)。

身体障害者

在宅就業障害者支援制度の対象となる身体障害者とは、身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)の1級から6級までに掲げる身体障害がある者等のことです。
これに該当する主な障害は、以下になります。

  • 視覚障害や聴覚障害
  • 平衡感覚障害
  • 肢体不自由、心臓や呼吸器などの臓器の障害
  • ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害

知的障害者

在宅就業障害者支援制度の対象となる知的障害者とは、判定機関によって知的障害があると判定された者です。
判定機関には、児童相談所や知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医、障害者職業センターが該当します。

精神障害者

在宅就業障害者支援制度の対象となる精神障害者とは、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者であり、かつ、症状が安定し就労が可能な状態にある者のことです。

対象となる勤務場所

在宅就業障害者支援制度は、障害者が自宅等の対象となる勤務場所で働いていることが条件とされています。
対象となる勤務場所として、次の場所が挙げられます。

  • 自宅
  • 対象障害者が仕事をするために必要な施設・設備が備わっている場所
  • 仕事に就くために必要な知識や能力を磨くために必要な訓練などが実施される場所※1
  • 障害の種類や程度に合わせて必要な職業準備訓練が実施される場所
  • そのほか、上記に類似する場所

※1:障害者総合支援法に基づく「就労移行支援事業」が実施される施設

調整金の算出方法

特例調整金の算定式

特例調整金は、次のような式で計算します。

調整額(2万1000円)×年間の就業者への支払い総額÷評価額(35万円)=特例調整金の金額

例えば、常時300人を雇用する事業主が、前年度に3人の在宅就業障害者に仕事を発注し、合計350万円(2人には100万円ずつ、1人には150万円)の報酬を支払っている場合の「特例調整金」はいくらになるのか、上記の式にあてはめて計算してみましょう。

2万1000円×(100万円+100万円+150万円)÷35万円=21万円

以前は、評価額が105万円となっていたため、105万円以上の発注でなければ特例調整金を受け取ることができませんでした。
しかし、金額が35万円に引き下げられたため、より少額の発注でも特例調整金を受け取ることが可能となりました。

特例報奨金の算定式

特例報奨金は、次の式で計算します。

調整額(1万7000円)×年間の就業者への支払い総額÷評価額(35万円)=特例報奨金の金額

例えば、常時200人を雇用する事業主が、前年度に4人の在宅就業障害者に仕事を発注し、合計420万円(3人には100万円ずつ、1人には120万円)の報酬を支払っている場合の「特例調整金」はいくらになるのか計算してみましょう。

1万7000円×(100万円+100万円+100万円+120万円)÷35万円=20万4000円

在宅就業支援団体の利用

在宅就業支援団体を介して仕事を発注しても、特例調整金・特例報奨金の支給を受けることができます。

在宅就業支援団体とは、在宅就業障害者と企業を仲介する組織であり、厚生労働大臣に申請して登録された法人のことです。
この団体の主な業務は次のとおりです(障害者雇用促進法74条の3第1号)。

  • 在宅就業障害者の希望に合わせた就業機会を組織的に提供する
  • 在宅就業障害者が業務を適切に遂行するために必要な知識・技能を身に着けるための職業講習や情報を提供する
  • 在宅就業障害者が業務を適切に遂行するために必要な助言・援助を行う
  • 企業等に雇用される就労形態を望む在宅就業障害者に必要な助言・援助を行う

在宅就業支援団体が扱っている業務の内容(データ入力、DTP等)はさまざまで、団体によって異なります。

なお、在宅就業支援団体の一覧は、厚生労働省の以下のサイトで確認することができます。

障害者の在宅就業の対象業務・実例

在宅就業障害者支援制度の対象業務は特に限定されていません。在宅就業障害者に発注されやすい業務として、主に次のようなものが挙げられます。

  • ホームページの制作
  • ウェブデザイン
  • データ入力作業
  • パソコン等の解体
  • 部品の組み立て
  • 書類の作成・発送

実際に行われている業務の事例は表のとおりです。

業種 業務内容 障害
ホームページ制作、デザイン制作、システム開発等 ホームページ制作、デザイン制作等 肢体不自由、内部障害
データ入力代行等に関する業務、オフィスサービス等に関する業務等 IT関連ヘルプデスク受付 身体障害(両下肢機能障害)1級
ソフトウェア開発、ソフトウェアサービス及びソリューションの販売 各種集計・分析(グラフ作成など)、ポスター制作、社内HPデザイン等 二分脊推による両下肢対麻痺(1級)
銀行文書の保管・管理業務、銀行用度品の取扱業務等 用度品取扱業務(小分け作業、セット作業) 知的障害

障害者在宅勤務の事例は以下のサイトで詳しく紹介されているのでご覧ください。

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※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。 ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込11,000円)

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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