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公正評価義務

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

人事評価は、労働者の処遇に直結する重要な手続きです。上手く運営すれば労働者のモチベーションが上がり、生産性向上も見込めますが、そのためには公正で客観的な評価が欠かせません。

また、評価方法だけでなく、的確なフィードバックやコミュニケーションも求められます。
これらが不十分だと、労働者の不満や離職など様々なリスクを招くため注意しましょう。

本記事では、公正な人事評価を行うためのポイント等を解説します。評価方法でお悩みの方や、評価制度の見直しを検討されている方は、ぜひご覧ください。

使用者の公正評価義務

労働契約上、使用者は人事評価上の裁量権を有していますが、人事評価において使用者の裁量が無制限に許されるものではありません。判例においても、使用者の人事評価が不公正であった事案において、使用者による裁量権の濫用があったものとして、労働者を救済するケースが見られます。

労働法学説には、個別の労働契約の解釈の問題ではあるとしつつも、労働者の関与を伴いながら使用者が公正に査定を行うことを前提として制度が設計・運用されている場合には、使用者は労働契約上公正・適正評価義務を負っていると解するものや、正面から、使用者はすべての労働者を公正・客観的に評価する公正評価義務を負っていると主張するものも現れています。

この、人事考課における「公正さ」が使用者側の人事権を制約するとの結論や、公正評価義務が労働契約上の義務であるとする理論構成を支える法的根拠としては、労働契約法上の以下の規定が挙げられます。

  • 労使対等の原則(同法3条1項)
  • 信義誠実の義務(同法3条4項)
  • 権利濫用の禁止(同法3条5項)

人事評価の公正さとは、簡単にいうと、使用者は、人事評価の目的や基準を客観的かつ明確に定めそれに沿って評価しなければならないということです。また、使用者は、その優位的な立場を利用し、労働者に不利な評価を行ってはならないということです。

人事評価における公正さは、使用者の賃金支払義務に密接に関連します。すなわち、不公正な人事評価が行われたとの司法的判断は、賃金の支払が適正に行われているとする会社の立場を揺るがしかねないため、十分注意が必要です。

特に、成果主義が進んでおり、一定の成果に対する評価が賃金等の額を左右するケースが増加している昨今では、「人事評価の公正さ」が労務管理において占める重要性は、一層高まっているといえるでしょう。

人事評価制度の目的

人事評価制度は、労働者の能力や成績、仕事に対する態度等の評価基準をもとに、個々の労働者の人事上処遇や待遇上の処遇を決定する制度です。
自社の理念や経営目標、求める人材などをもとに評価基準を定め、四半期に1回、1年に1回など定期的に評価を行います。

上手く運用できれば、労働者のモチベーションや生産性アップにつながるというメリットがあります。また、自社の目的に適った人材育成や自己啓発の促進といった効果も期待できます。

この点、さらに詳しく知りたい方は以下のページでご確認ください。

人事評価制度の種類や特徴について

人事評価が公正である必要性

不当な人事評価は、当人の処遇だけでなく企業にも様々なデメリットをもたらします。例えば、以下のようなリスクがあります。

  • 労働者のモチベーションが下がる
    評価基準が不明瞭だったり、評価結果の説明が不十分だったりすると、「なぜこの評価なのか」、「自分の努力や苦労が報われていない」等、従業員に不満が起きやすくなります。
    従業員が評価結果に納得できないでは、従業員のモチベーションの低下、ひいては会社の生産性の低下を招くでしょう。
  • 人材不足になる
    不当な評価によって、離職者が増加するおそれがあります。特に高い能力やスキルがある優秀な人材ほど、より公正に評価してくれる企業へ転職する傾向があります。
    また、「人事評価が不適切な企業」と認識されては、採用の場面で応募者が集まらない可能性もあります。
  • 訴訟リスク
    たとえば、不公正、不当な人事評価に基づく降格・降給を行えば、従業員から、人事評価権の濫用として、降格前の地位の確認を求める訴訟や、降格前の賃金との差額について未払賃金の支払いを求める訴訟が提起されるリスクがあります。

これらの事態を防ぐには、評価基準を遵守し、評価結果の根拠を示すことが重要です。ただ「なんとなく」で評価しないよう、十分注意しましょう。

評価に対する「納得性」

人事評価では、社員の納得度を高めることも重要です。
的確な評価によって自身の長所や改善点が分ければ、自主的にスキルアップに励む者も増えるでしょう。また、企業に対する信頼度も上がるため、生産性の向上や離職防止にも効果的です。

ただし、必ずしも「公正な評価=高い納得度」とはなりません。例えば、公正な審査を行っても、低評価となった社員は不満を抱く可能性があります。
そこで、評価プロセスだけでなく、結果のフィードバック根拠の説明評価基準の見直し等にも力を入れ、より客観的な評価を心掛けましょう。

人事評価を公正に行う方法

「公正な評価」といっても、そう簡単に実行できるものではありません。評価前から評価後の対応まで、ポイントを押さえて進める必要があります。
では、公正さを確保するポイントとはどんなものでしょうか。以下で説明していきます。

評価制度の整備・開示

まず、人事評価の目的とプロセスを定める必要があります。目的としては、公正な評価を行うため・労働者のスキルを把握するため・求める人物像を共有するため等が一般的です。
また、公正な評価プロセスとは、以下のようなものです。

  • 適切な評価基準の整備(営業職は売上目標達成率、事務職は正確性やスピードなど)
  • 労使間の双方向の目標管理
  • 複数の評価者による多面的評価(上司・部下・同僚による評価など)
  • 評価結果を処遇に反映するためのルール作り

評価基準や評価方法が不透明だと、「何を頑張れば良いか分からない」と不満を抱く労働者が増えるでしょう。そこで、評価基準、評価方法を就業規則等の社内ルールにおいて明文化し、社内に開示することも重要です。評価方法が分かれば、労働者が高評価を目指して自主的に行動しやすくなります。

公正な評価の実施

評価を行う過程は特に重要です。労働者が納得できるよう、客観的な評価を心掛けましょう。
そのためには、公正な評価を行うためのベース(適度な目標設定や、能力を発揮できる職場環境の整備など)も必要ですが、評価者の評価スキルも非常に重要です。「どれだけ主観を捨て、評価基準を遵守できるか」がポイントとなるでしょう。

なお、恣意的な判断や、評価基準を逸脱した審査は、前述のとおり人事権の濫用として労働トラブルのもとになるためご注意ください。

評価結果の開示・説明

評価結果の伝え方もポイントです。結果だけでなく、「なぜこの評価結果になったのか」、「どこを改善すれば評価が上がるのか」等も詳しく説明すると、労働者の納得を得やすくなります。

また、1人1人に面と向かってフィードバックするのが望ましいでしょう。使用者が、客観的かつ具体的な根拠を付した上で、直接にフィードバックをすることで、従業員は、自身のレベルや能力、成果を把握し、使用者側の評価基準や要求水準とのミスマッチがあればこれを認識する貴重な機会となるためです。

  

ただし、いくら根拠が明確でも、普段関わりのない上司から評価されても納得しづらいでしょう。そこで、日頃から定期的なコミュニケーションをとり、信頼関係を築いておくことが重要です。従業員との日頃のやり取りの中で問題が見つかれば、評価前に改善を促すことも可能です。

評価担当者に求められる能力

評価担当者は、評価基準に沿って客観的に評価することが求められます。簡単なように思えますが、実際は評価者の心証が混じっていたり、労働者の不満をおそれ中間的な評価に偏ったりするケースも多いです。そのため、評価手順や評価基準、着眼点などを会社内で統一し、評価者に理解させる必要があるでしょう。

また、評価担当者にはフィードバックスキルも求められます。すなわち、評価担当者は、評価基準を適切に理解していることは当然ながら、評価要因等の分析能力・評価基準に照らした適正な評価を行うための判断能力や、改善策の考案・提案力、部下への動機付けや部下との日頃の信頼関係構築のために必要なコミュニケーション能力等、幅広い能力が求められます。

良い評価者を育成するには研修トレーニングが重要です。例えば、評価者の心構えや評価手順の指導、ディスカッション等を通し、評価者の理解を深めましょう。また、実例を用いてトレーニングするのも有効です。
なお、評価者研修やセミナーは外部でも行われているので、活用すると良いでしょう。

「不公正な評価」の違法性

不公正な評価によって労働者に不利益が生じた場合、人事権の濫用にあたります。また、民法上の不法行為が成立し、使用者が損害賠償責任を負う可能性もあります。

では、具体的にどんなケースが考えられるのか、以下でみていきましょう。

公正さに欠ける評価内容

公正な評価とは、客観的かつ明確な基準に従い、労働者の能力や成果を適正に評価することをいいます。これを別の視点からいえば、公正な評価とは、本来誰が評価しても同じ結果になるべきものであり、判断者の主観によって左右されたり、恣意的判断が行われたりしてはならないものといえるでしょう。

そこで、以下のような評価は公正さを欠くと判断されやすいため注意が必要です。

  • 評価項目以外の部分を審査している
  • 評価者の主観や感情が混じっている(印象が悪い、性格が合わない等)
  • 対象期間外の実績やミスを反映している
  • 年齢や学歴、家庭事情などの属人的要素を評価している
  • 目標設定が高過ぎる
  • 能力開発や目標達成の機会を与えないまま、低評価をつける
  • 成果(数字)だけを評価し、作業プロセスや職務行動を一切考慮しない

このような評価に基づく解雇・減給・人事異動などの処分は、人事権の濫用として無効になる可能性があります。
また、当該処分によって労働者に不利益が生じた場合、使用者は損害賠償責任(不足分の賃金支払義務など)を負う可能性があります。

強行法規違反について

人事評価の方法・結果が以下の規定に反する場合、違法行為として無効になります。
  • 国籍や信条、社会的身分による差別的取扱いの禁止(労働基準法3条)
  • 男女同一賃金の原則(労働基準法4条)
  • 性別による差別的取扱いの禁止(男女雇用機会均等法6条)
  • 婚姻、妊娠、出産、又は育児を理由とする不利益取扱いの禁止(男女雇用機会均等法9条、育児・介護休業法10条)
  • 不当労働行為の禁止(労働組合法7条)

これらは「強行法規」にあたるため、使用者がこれに反する行為を行っても、その法的効力が否定されたり、違法行為として損害賠償責任を負う可能性があります。

強行法規や各規定の詳細は、以下のページをご覧ください。

労働法と強行法規の関係性
男女雇用機会均等法とは
不利益取扱いの禁止
不当労働行為
ちょこっと人事労務

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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