メンタルヘルスを原因とする自殺者の近況

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

本年(2020年)は、新型コロナウイルスの流行により、世界的に多数の死亡者がでました。
国内における死亡者数も2000人を超え(2020年11月26日現在)、事態の深刻さは増すばかりです。
しかしながら、日本においては、統計がとられ始めた40年以上も前から、年間2万人以上の自殺者が確認されています。
つまり、日本における自殺者の問題は、死亡者の数だけでいえば、新型コロナウイルスの感染拡大と比べても、比にならない程に深刻な問題となっているのです。

そして、その自殺者の中でも、直近10年における自殺者においては、年間2000人程度は「勤務問題」を要因としたものとなっています。
「勤務問題」を要因とする自殺には、様々な契機があるものの、その多くには、「メンタルヘルス」が大きく関与していることは間違いないでしょう。

本稿では、この「メンタルヘルス」による自殺をテーマに、労務管理の切り口から、会社として何をすべきかを考えていきたいと思います。

従業員の自殺で企業が問われる責任

そもそも、会社における従業員が「メンタルヘルス」を原因に自殺してしまった場合には、会社がその責任を問われるケースがあります。

会社は、働く従業員の「生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする」義務(安全配慮義務)を負っています(労働契約法5条)。

つまり、従業員が「メンタルヘルス」不調により自殺してしまったことについて、会社の安全配慮義務違反が認められる場合には、会社は、その遺族に対して多額の賠償をする義務を負ってしまうことがあるということです。

従業員がメンタルヘルス不調になったとき、会社が負う損害賠償責任の詳細については、以下のページをご覧ください。

また、従業員が業務に起因してメンタルヘルス不調となってしまった場合には、「労災」となってしまいます。
どのようなケースが「労災」となるかについては、以下のリンクページで詳しく解説していますので、こちらもぜひご覧ください。

従業員の自殺を予防するために何ができるのか?

では、会社として、従業員の自殺を防ぐために、何をすれば良いのでしょうか。
一般的には、以下の3つの視点からのアプローチが必要と考えられています。

  • メンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)
  • メンタルヘルス不調の早期発見と適切な対応(二次予防)
  • 職場復帰支援(三次予防)
引用元:厚労省『労働者の心の健康の保持増進のための指針』

こちらのリンクページでは、会社が行うべき、従業員がメンタルヘルス不調にならないための対策や、従業員のメンタルヘルス不調への対応等について解説しています。ぜひ併せてご覧ください。

メンタルヘルス不調の未然防止

まずは、従業員にとって働きやすい職場環境を整えることが必要です。

どのような職場環境が働きやすいかについては、職種や実際に働く従業員によりケースバイケースですが、「ストレスチェック制度」を活用し、職場環境が、従業員にとってストレスの大きいものとなっていないかを把握し続けることが重要でしょう。

メンタルヘルス不調の早期発見と適切な対応

次に、メンタルヘルスに不調をきたした従業員を早期に発見することが大切です。
そのためには、①従業員本人が自分の不調に気付くことと、②周りがその従業員の不調に気付くことができる環境を整えなければなりません。

具体的には、従業員が悩みを相談できるような窓口を社内に設置し、従業員からの相談に早急に応じられる体制を整えていく必要があります。

そして、先に紹介した「ストレスチェック制度」を活用するほか、職場で働く従業員が、メンタルヘルスに対する正しい知識と理解を得られるような研修や啓もうを行っていくべきでしょう。

従業員自身やその周りが、「いつもと違う」ということにどれだけ早く気付けるかが、メンタルヘルス不調になってしまった従業員の早期発見のポイントといえます。

メンタルヘルス不調者を発見したら、適切な専門家へ相談させ、配置転換や休職等、ストレスの要因から遠ざける措置を行っていかねばなりません。
メンタルヘルス不調者への対応や、従業員の健康な働き方を支える組織マネジメントついて、詳しく知りたい方は以下のリンクページをご覧ください。

職場復帰支援

メンタルヘルス不調で休業した従業員が職場復帰する際は、円滑に職場復帰できるような措置をとるべきです。
具体的には、時短勤務等を内容とするリハビリ出社を実施したり、軽易作業への転換をしたりするなどして、職場復帰がしやすい状況を整備しましょう。

職場で自殺者が出たときの対応

万が一、職場から自殺者が出てしまった場合には、初動対応が肝心です。
また、自殺が発生してしまった原因を解明し、再発防止へ向けた取り組みをしていく必要があります。

自殺者が出てしまった際の初動対応については、以下のリンクページをご覧ください。

よくある質問

メンタルヘルスによる自殺者が出た場合、厚生労働省のブラック企業リストに掲載されるのでしょうか?

自殺者が出たからと言って、必ずしも公表されるものではありません。
しかしながら、労働基準法に違反する長時間労働を強いた結果、自殺が生じたような場合には、「労働基準関係法令違反に係る公表事案」において、事案の概要とともに公表されてしまうことに注意が必要です。

うつ病で自殺未遂をした従業員に対し、会社はどう接するべきでしょうか?

従業員の個性に応じた対応が必要ですので、ケースバイケースと言わざるを得ません。
しかしながら、従業員が自殺未遂といった具体的な行動に出てしまっている状況においては、慎重に対応しなければならないことは言うまでもありません。
従業員からの要望を汲み取りつつ、専門家の意見を交えて対応していくべきです。

メンタルヘルス不調がみられる従業員に対し、医療機関への受診を勧めることは可能ですか?

医療機関への受診を勧めること自体は問題ありません。
しかしながら、本人が拒絶する場合には、医療機関への受診を強制することはできないと考えられます。

医療機関への受診を勧める際には、従業員のプライバシー等に配慮し、不要なトラブルが生じないように気を付けましょう。
以下のリンクページでは、従業員の健康保持増進のための措置について紹介していますので、ぜひご参考になさってください。

メンタルヘルスによる自殺を防ぐ体制づくりについて、弁護士が最善の方法をアドバイスいたします

メンタルヘルスの問題については、目に見えないものであることから、対応に窮することが多いものです。
また、会社として配慮しなければならない点も多く、会社の担当者だけで体制を構築し、運用することは極めて難しいといえます。

弁護士法人ALGには、これまで数多くの社内におけるトラブル・紛争を解決してきた実績があります。豊富な経験から培った知識やノウハウを活かすことにより、会社にとって適切な体制づくりを提案し、その運用をサポートしていくことができます。

従業員がメンタルヘルスによって自殺してしまうという事態を防げるよう、今後の職場環境づくりにお困りの際は、ぜひとも一度弊所にご相談ください。

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執筆弁護士

シニアアソシエイト 弁護士 大平 健城
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所シニアアソシエイト 弁護士大平 健城(東京弁護士会)

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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