欠勤の多い社員を解雇できる?減給は?適切な対応方法を弁護士が解説

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

従業員の度重なる欠勤や無断欠勤は、企業の業務遂行に多大な支障をきたします。解雇や減給は可能なのかと悩む経営者や人事担当者は少なくありません。
本コラムでは、欠勤が多い社員に対して企業がとるべき適切な対応方法や法的な注意点について、弁護士がわかりやすく解説いたします。

目次

欠勤が多い社員を解雇できるのか?

正当な理由なく欠勤を繰り返す場合、程度によっては懲戒解雇や普通解雇の対象となり得ます。しかし、単なる勤怠不良のみでの解雇は決して容易ではありません。日頃から的確な労務管理や指導を行っているかが問われ、慎重な対応が必要です。

普通解雇の場合

普通解雇とは、使用者の一方的な意思表示によりなされる労働契約の解消措置の一つで、労働者による契約違反(労働債務の不履行)によって雇用契約を継続するのが困難な場合に行われます。懲戒解雇や整理解雇と区別して普通解雇と呼ばれます。

無断欠勤は労働契約の債務不履行にあたり、普通解雇の事由となり得ます。長期欠勤も、客観的かつ合理的な理由があれば普通解雇の対象となります。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

懲戒解雇の場合

懲戒解雇とは、重大な規律違反をした従業員に対して、制裁として行う解雇のことです。懲戒解雇を行うには、懲戒解雇の要件などを就業規則で明確に定め、会社はそれに従って処分を下す必要があります。長期間の無断欠勤については、就業規則に懲戒解雇事由として定められていれば、懲戒解雇の対象となり得ます。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

就業規則に定めがなければ懲戒解雇はできない

懲戒解雇を行うには、就業規則に懲戒解雇事由の規定が不可欠です。就業規則に規定がない場合、たとえ規律違反があったとしても懲戒解雇を行うことはできません。一方で、普通解雇は、就業規則の定めがなくとも、合理的な理由があれば行うことができます(民法628条)。

欠勤を理由とする解雇が有効とされた裁判例

欠勤を理由とする解雇は、その有効性が慎重に判断されます。一般的に、解雇が有効とされるためには、単なる勤怠不良にとどまらず、その程度が著しく、業務に支障が生じ、かつ、使用者による度重なる注意・指導にもかかわらず改善の見込みがない、あるいは労働者の改善意欲が見られない等といった事情が必要です。

事件の概要(東京海上火災保険事件・平成10年(ワ)第19747号・平成12年7月28日・東京地方裁判所・判決)

損害保険会社に総合職として採用された労働者が、私傷病等により約5年5か月のうち約2年4か月に及ぶ欠勤を繰り返しました。出勤日にも常習的な遅刻や長時間の無断離席が見られ、上司の再三の指導に対しても態度を改めませんでした。会社側は「労働能率が甚だしく低く、会社の事務能率上支障がある」として普通解雇を行い、これに対し労働者側が従業員としての地位確認等を求めて提訴した事案です。

裁判所の判断

東京地方裁判所は、労働者の傷病欠勤が非常に多く、出勤時も遅刻や離席が頻発し、他の従業員が業務を肩代わりするなど会社の業務に支障を与え、労働能率が甚だしく低いと認定しました。

また、雇用契約においては労務の提供が本質的な債務であり、傷病欠勤が多く長期にわたって労務を提供できないことを、従業員としての適格性判断の材料とすることは不合理ではないとしました。

そして、上司らが面接を含めて指導を続けたにもかかわらず勤務実績や態度が変わらず、就労意欲も見られなかったことから、会社が解雇と判断したことには客観的に合理的な理由があり、解雇権の濫用には当たらない(解雇有効)と判断しました。

ポイント・解説

本裁判例は、単なる欠勤日数だけでなく、出勤時の不良な勤務態度(遅刻や離席の多さ、業務遂行能力の低さ)や、会社側の継続的な指導に応じない反発的な姿勢が、解雇の正当性を裏付ける要素と認定しています。

欠勤が多いことを理由に減給はできる?

欠勤が多いことを理由とする減給について

一般に欠勤が多い等の勤怠不良は懲戒事由に該当することとなります。そのため、勤怠不良の従業員に対して懲戒処分としての減給処分を行うことがあり得るでしょう。

なお、欠勤や早退といった労務の不提供を理由としてその部分の賃金を控除することは、原則として懲戒処分としての減給には該当しません。現実に労務提供がなされていない場合にはそもそもその分の賃金は発生しないためです(ノーワークノーペイの原則)。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

欠勤中の賃金は支払う必要がない

ノーワークノーペイの原則とは、働いていない分の賃金は発生しないという考え方です。この原則に基づき、労働者が提供しなかった労働力に相当する賃金は、原則として支払う必要はありません。したがって、欠勤中の賃金を支払う必要は原則ありません。

体調不良の場合は原則として減給処分は認められない

体調不良などの理由で労働者が丸一日仕事を休んだとしてもこれを根拠に懲戒処分を行うことはできません。懲戒処分は労働者の非違行為に対するサンクションとして行うものですが、体調不良は誰にでも起こり得るものですので、これを非違行為と評価することはできないためです。

重すぎる懲戒処分は無効となるおそれ

懲戒処分は、労働者の行為の性質や態様、その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、懲戒権の濫用として無効となるおそれがあります。懲戒権の濫用と評価された場合には、原則として懲戒処分全体が無効となりますが、例えば、6ヶ月の懲戒休職が重すぎるとされた裁判例では、3ヶ月を限度として効力が認められています。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

欠勤が多い社員の適切な対応方法

欠勤が多い社員への対応は、日頃からの的確な労務管理が重要となります。勤怠不良のみを理由とする懲戒や解雇は容易ではなく、本人から様々な言い訳が出ることも多いためです。継続的に問題の指摘や改善指示を行い、注意や指導を重ねて適切に対処していくことが求められます。

欠勤の理由を聞く

まず、社員に対し、無断欠勤の理由等を確認します。社員自身から十分に欠勤理由を説明させ、自己の言い分を表明できる機会を与え、十分に聞くように努めるべきです。確認した状況ややり取りは議事録を作成し、証拠化することが重要です。

欠勤の理由が体調不良の場合は休職を提案する

確認の結果、欠勤の理由が健康上の問題である場合には、医療機関の受診を促し、その診断内容を踏まえて、必要に応じて休職等の対応を検討します。

また、精神的な不調を理由として欠勤が継続している労働者に対しては、精神科医による健康診断を実施するなどした上で、診断結果等に応じ、必要な場合には治療を勧奨し、併せて休職等の措置を検討します。

専門医の受診勧奨に応じない場合には、業務命令として受診を命じることを検討することも考えられます。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

欠勤に正当な理由がない場合は注意指導を行う

欠勤に合理的理由がない場合、会社は社員に対し、今後、同様の欠勤をしないよう改善を促します。指導に際しては、欠勤理由が就業規則などに規定されたルールに照らして合理的でないことを丁寧に説明し、説得して自覚を促し、行動の改善を求めます。この注意指導の過程は記録しておくことが重要です。

改善がなければ懲戒処分や退職勧奨を検討する

一連の改善指導をもってしても無断欠勤の改善が見られない場合には、懲戒処分もあり得る旨の警告を行います。

無断欠勤を改める機会を与える意味で、また、会社が懲戒処分や退職勧奨に至るプロセスを適切に踏んだことを証明する意味で、懲戒処分等があり得る旨を書面で警告し、弁明の機会を付与することは重要です。警告を経ても無断欠勤が続く場合、懲戒処分や退職勧奨もやむを得ません。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

よくある質問

欠勤が多い社員がいると、企業にはどのような影響がありますか?

欠勤の多い従業員がいる場合、その従業員の担当する業務に支障が生じかねません。また、無断欠勤の多い従業員がいる場合には、その従業員の担当業務を他の従業員がフォローしなければならないため、他の従業員の業務にも悪影響が生じる可能性があります。さらに、職場の雰囲気が悪化することで、企業全体に悪影響が生じる可能性もあります。

欠勤が多いとは、どの程度の休みを指しますか?

欠勤の理由にもよります。合理的な理由のない欠勤については一日発生すれば問題です。
他方で、体調不良での連続欠勤や断続欠勤については、あくまで目安ではありますが、連続で5日間、1ヶ月内に断続的に7日間、3ヶ月内に断続的に10日間程度の欠勤があれば、休職命令等の何らかの対応を検討すべきでしょう。

当日欠勤を繰り返す社員を解雇できますか?

当日に欠勤の連絡をする当日欠勤は業務への影響が大きいため、当日欠勤に合理的な理由がない場合には非違行為に該当する可能性があります。会社側の指導・警告にもかかわらず、これが繰り返されるようであれば、解雇事由になり得るため、この場合には解雇について検討することがあり得るでしょう。

無断欠勤が続く社員を解雇できますか?

合理的な理由のない無断欠勤は、労務提供義務の不履行にあたります。就業規則で定められた欠勤の手続きに従わず、会社の許可なく欠勤を繰り返すことは、単なる債務不履行に留まらず、秩序違反行為や重大な職務規律違反とみなされ、懲戒解雇の事由となり得ます。

無断欠勤が続く場合、まず欠勤理由の説明を求め、改善指導を行います。それでも改善が見られない場合は、懲戒処分や解雇を検討します。もっとも、解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

体調不良で欠勤が多く、他の社員に迷惑をかけている場合、解雇は可能ですか?

体調不良で欠勤が多く、他の社員に迷惑をかけていても、傷病からの回復のための休職命令を優先し、医師の診断に基づき治療を勧めるべきです。直ちに解雇は無効の可能性が高く、適切なプロセスが必要です。

欠勤が多い社員にはどのように注意すべきですか?

欠勤が多い従業員には、労働者には労務提供義務があるため合理的な理由のない欠勤は契約違反になること、会社や他の従業員に迷惑が掛かっていること、これが継続した場合には、懲戒処分や解雇を検討せざるを得ないことを伝え、厳しく注意することが考えられます。

妊娠中や子育て中の社員が欠勤する場合、企業はどう対応すべきですか?

産休・育休や子の看護休暇など、妊娠や育児に関する休業は法律で認められた権利です。まずは社員と面談し、産前産後休業や育児休業、子の看護休暇などの法定制度を丁寧に案内します。また、妊娠中の体調不良に対しては、主治医の指導に従って休業や作業軽減といった母性健康管理措置を講じる必要があります。

欠勤が多い新入社員にはどのように対応すべきですか?

欠勤が多い社員には、まず欠勤理由の説明を求め、ルールに照らして説明が合理的でない場合は、丁寧に説明し、今後、欠勤しないよう自覚を促し、行動改善を注意深く観察・記録しましょう。

欠勤が多い社員に対して有給休暇の扱いはどうすべきですか?

労働基準法上、年次有給休暇は前年度に全労働日の8割以上出勤した場合に付与されます。欠勤が重なり出勤率が8割未満となった場合、翌年度の有給休暇を新たに付与する法的義務はありません。

完全月給制の社員が欠勤した場合、給与から控除できますか?

完全月給制とは、「月間の労働日数や労働時間に関係なく、欠勤した場合でもその分を控除せず全額を支払う」仕組みをいいます。そのため、完全月給制の社員が欠勤した場合、欠勤した時間数に相当する金額を給与から控除することはできません。

欠勤が多い社員への対応で不安なことがあれば弁護士にご相談ください

日々の的確な労務管理など専門的な判断を要する場合があります。万が一のトラブル発生時や対応に迷うことがございましたら、労働問題に精通した弁護士へお気軽にご相談ください。専門家の助言により、法的リスクを抑えた適切な解決を図ることが可能です。

弁護士法人ALGでは予防法務から個別トラブルへの対応まで一貫してサポートいたしますので、安心してご相談いただけます。労務管理に不安やお悩みがある場合は、弁護士法人ALGまでお問い合わせください。

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執筆弁護士

弁護士 大額 祥聖
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所弁護士大額 祥聖(東京弁護士会)
弁護士 髙木 勝瑛
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所弁護士髙木 勝瑛(東京弁護士会)

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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