子の看護等休暇とは|2025年4月の改正内容や有給・無給の取り扱いなど

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
子の看護等休暇は、病気や怪我を負った子を看病するなど、子の世話をするための休暇です。法律で定められた制度ですので、申請があれば使用者は必ず取得を認めなければなりません。
また、2025年4月の改正法施行により、子の看護等休暇の取得要件が大幅に緩和されました。取得対象者や取得事由、除外対象の範囲などが大きく変更されているため、使用者は十分理解する必要があります。
本記事では、子の看護等休暇の概要、2025年4月の改正点、制度運用における注意点などをわかりやすく解説していきます。
目次
子の看護等休暇とは
子の看護等休暇とは、怪我や病気を負った子を看病するなど、子の世話をするために従業員が取得できる休暇です。看病だけでなく、予防接種や健康診断の付き添いでも取得できます。
子の看護等休暇は育児・介護休業法で定められた制度であり、有給休暇とは別に付与されます。また、従業員から取得の申し出があった場合、使用者は基本的に拒否できません。
2025年4月に施行された改正法では、子の看護等休暇の取得対象が大幅に拡大されました。それに伴い、従来は「子の看護休暇」と定められていた名称は「子の看護等休暇」に変更され、仕事と家庭の両立支援対策が強化されています。
介護休暇との違い
介護休暇は、同居家族の“介護”を目的とした休暇制度です。対象となる家族には、子のほか、父母・配偶者・配偶者の父母・祖父母・孫・兄弟姉妹などが含まれます。
子の看護等休暇と同じく育児・介護休業法で定められた制度で、従業員から申し出があれば、会社は基本的に拒否することができません。
2つの休暇制度の違いについて、下表で整理しておきましょう。
| 子の看護休暇 | 介護休暇 | |
|---|---|---|
| 対象労働者 | 小学校就学前の子供がいる社員 | 要介護状態(2週間以上にわたり常時看護が必要な状態)の家族がいる社員 |
| 取得目的 | ・病気やケガをした子供の看護 ・通院の付き添い ・予防接種や乳幼児健診 ・健康診断 |
・自宅での介護 ・通院の付き添い ・介護サービスの手続き代行 ・ケアマネージャーとの打ち合わせ |
子の看護等休暇を規定している法律
子の看護等休暇は、育児・介護休業法16条の2で定められています。
育児・介護休業法とは、育児や介護を行う従業員が安心して働けるよう、様々な支援を行うため法律です。
育児や介護のために退職を余儀なくされる、という問題は以前から存在していましたが、それでは従業員のキャリアが途切れたり、会社が人手不足に陥ったりと従業員及び会社の双方に不利益があります。
そこで、仕事と家庭を両立し、長く働ける社会を実現するため、1991年に育児・介護休業法が制定されました。
なお、本法は時代に合わせて何度も改正されているため、使用者は注意が必要です。近年の改正のポイントは、以下のページでご覧いただけます。
【2025年4月施行】子の看護等休暇の改正内容
2025年4月の法改正の背景には、共働き世帯の増加や少子化、子育て支援ニーズの高まりなど、様々な要素があります。これらの問題を社会全体で支え、仕事と育児の両立支援を強化するため、制度の大幅な見直しが行われました。
子の看護等休暇に関する改正点は、下表のとおりです。
| 改定前 | 改定後(2025年4月~) | |
|---|---|---|
| 名称 | 子の看護休暇 | 子の看護等休暇 |
| 対象となる子の範囲 | 小学校就学の始期に達するまで | 小学校3年生修了まで |
| 取得事由 | ①病気や怪我 ②予防接種や健康診断 |
改正前の①②に加え、 ③感染症に伴う学級閉鎖等 ④入園(入学)式・卒園式 |
| 労使協定の締結により除外できる労働者 | ①週の所定労働日数が2日以下 ②継続雇用期間が6ヶ月未満 |
①週の所定労働日数が2日以下 (②を撤廃) |
対象となる子の範囲の拡大
子の看護等休暇を取得できるのは、「小学校3年生が修了するまでの子」を育てる従業員で、男女問わず取得可能です。また、正社員だけでなく、アルバイトやパート、契約社員などの非正規社員も対象となります(ただし、日雇い労働者は対象外です)。
小学校低学年の子供は体調を崩しやすく、突発的に仕事を休むケースも珍しくありません。法改正によって取得対象が拡大されたことで、従業員が子の看病等に専念しやすくなったといえます。
取得事由の追加
子の看護等休暇の取得事由は、改正前まで「病気や怪我」「予防接種や健康診断」のみでしたが、法改正によって以下の2つが追加されました。
- 感染症に伴う学級閉鎖等
- 入園(入学)式・卒園式
それぞれの詳しい要件について、次項から解説します。
感染症に伴う学級閉鎖等
感染症の流行により、学校・保育園・幼稚園などが臨時休校や休園になった場合も、子の看護等休暇が取得できるようになりました。
例えば、インフルエンザや新型コロナウイルスの感染拡大で学級閉鎖となった場合、保護者が自宅で子を看なければなりません。この場合、以前は有給休暇や欠勤で対応する必要がありましたが、法改正によって子の看護等休暇の利用が可能となりました。
また、子の看護等休暇は当日申請も可能なため、突然の休校や休園でも対応することができます。
入園(入学)式・卒園式
子供の入園式や入学式、卒園式などへの参加でも、看護等休暇を取得できるようになりました。子供の行事については有給休暇で対応するのが一般的でしたが、今後は有休を消費せずとも参加が可能です。
また、会社によっては、PTA活動や授業参観も取得事由に含めるケースもみられます。取得事由を拡大することで、従業員はより気兼ねなく子供の学校行事に参加できるようになるでしょう。
労使協定による対象外労働者の見直し
労使協定を締結している場合、以下の従業員については子の看護等休暇の取得対象外とすることができます。
●週の所定労働日数が2日以下の従業員
改正前は、上記に加えて「継続雇用期間が6ヶ月未満の従業員」も対象外にできましたが、改正によって撤廃されています。これにより、入社後間もない従業員でも子の看護等休暇を申請できるようになりました。
取得日数・単位(変更なし)
子の看護等休暇の“取得日数”や“取得単位”は、以下のとおりです。なお、これは法改正前後で変化はありません。
【取得可能日数】
1年間で5日間(子が2人以上の場合は10日間)
【取得単位】
1日または1時間単位(中抜けはなし)
上記の日数は最低限の基準なので、会社でこれよりも多い日数を付与することや中抜けを認めることは問題ありません。
また、対象の“1年間”の期間については、就業規則に定めがあればそれに従います。特段定めがない場合、4月1日~翌年3月31日となります。
子の看護等休暇の有給・無給の取り扱い
子の看護等休暇取得時の賃金の取扱いについては、法律上の定めがありません。よって、有給・無給どちらにするかは会社が決定できます。
令和3年度の調査によると、子の看護等休暇を有給とする会社は全体の「27.5%」、一部有給とする会社は全体の「7.4%」、無給とする会社は「65.1%」となっており、無給扱いが多数を占めています。
なお、有給の子の看護等休暇制度を導入した会社は助成金を受給できることがあるため、活用するのもおすすめです。
子の看護等休暇における注意点
子の看護等休暇を運用する際は、以下の点に注意が必要です。
- 就業規則への規定
- 時季変更権の対象外
- 休憩時間の取扱い
- 不利益取扱いの禁止
- 申請時の対応
就業規則への規定
子の看護等休暇は、就業規則に明示しなければならない「休暇」に含まれるため、あらかじめ就業規則に必要事項を記載して、従業員に周知しておく必要があります。
就業規則には、以下の項目を記載する必要があります。
- 付与要件(対象となる労働者の範囲など)
- 取得に必要な手続き
- 期間
就業規則の記載事項や作成手順については、以下のページで解説しています。
時季変更権の対象外
子の看護等休暇は、時季変更権の対象外となります。
時季変更権とは、従業員が申請した休暇の日程を、業務に大きな支障が出る場合に限り、別の時季に変更するよう命じる権利のことです。
子の看護等休暇は“看護が必要な日”に取得するものなので、会社の都合で時季を変更しては意味がありません。そのため、たとえ業務に遅れが出るおそれがある場合や、子の看護等休暇が有給である場合も、会社が時季変更権を行使することはできません。
休憩時間の取扱い
子の看護等休暇を「時間単位」で取得する場合、休憩時間に被ることがあります。この場合、休憩時間を除いた労働時間のうち、連続する時間単位での取得が可能です。これは、労働義務がない休憩時間に“休暇”を申請するのは、矛盾していると考えられるためです。
【具体例】
・勤務時間:9時~18時
・休憩時間:12時~13時
・9時から5時間分看護等休暇を取得したケース
→この場合、休憩時間を除いた9時~12時、13時~15時の計5時間が、子の看護等休暇の取得時間となります。
休憩取得のルールなどは、以下のページでも詳しく解説しています。
不利益取扱いの禁止
子の看護等休暇を申請・取得したことを理由に、従業員を不利益に扱うことは禁止されています(育児・介護休業法16条の4、同法16条)。
例えば、
- 解雇
- 降格
- 減給
- 自宅待機命令
- 人事考課での不利益な評価
などの行為は無効となります。
なお、子の看護等休暇は無給でも問題ありませんが、通常の欠勤とは区別して扱う必要があります。
通常の欠勤であれば「勤怠不良」として査定に反映することも可能ですが、子の看護等休暇は法律で定められた休暇ですので、ペナルティとして扱うことは認められません。
子の看護等休暇以外にも、不利益取扱いが禁止されるケースは多数あります。詳しくは以下のページをご覧ください。
申請時の対応
子の看護等休暇は、当日の電話・メール申請も可能とされています。子供の体調不良は予測が難しく、突然取得が必要なケースが多いためです。
会社は“申請書”や“診断書”の提出を義務付けることもできますが、提出は後日、子供の体調が落ち着いてから求めるようにしましょう。
なお、従業員が必要書類の提出を拒否しても、子の看護等休暇の取得自体は認める必要があります。未提出を理由に欠勤扱いにしたり、不利益取扱いをしたりすることは認められません。
これらの申請・取得のルールは就業規則に明記し、社内で周知しておきましょう。
公務員の子の看護等休暇について
公務員の子の看護等休暇も、取得可能日数や取得事由は民間企業とほとんど同じです。また、子が小学校3年生を終了するまで取得が可能です。
大きな違いは、民間企業は有給・無給を任意で決められるのに対し、公務員の子の看護等休暇は基本的に有給となります。そのため、民間企業よりも取得を促しやすいといえるでしょう。
子の看護等休暇を導入する事業主への助成金
中小企業における有給の子の看護等休暇は、両立支援等助成金の「柔軟な働き方選択制度等支援コース」の支給対象となる可能性があります。
助成金の支給要件は以下のとおりです。
- ①育児を行う労働者の柔軟な働き方を可能とする制度(柔軟な働き方選択制度)の内容及び利用の手続について、労働協約または就業規則に規定していること
- ②「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」により、育児を行う労働者の柔軟な働き方に関する制度の利用及び制度利用後のキャリア形成を円滑にすることを支援する方針を全労働者へ周知していること
- ③対象制度利用者と面談を実施し、「面談シート」に記録した上で、当該面談結果を踏まえて対象制度利用者のための「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」を作成すること
- ④対象制度利用者が、柔軟な働き方選択制度のうちの1つを、利用開始から6か月間で一定の基準以上利用したこと
- ⑤対象労働者を、制度利用期間中及び支給申請日において、雇用保険被保険者として雇用していること
- ⑥育児休業制度などを労働協約または就業規則に定めていること
- ⑦次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、労働局に届け出ていること
上記の要件を満たした場合、30万円の助成金が支給されます。
なお、支給回数は1事業主1回限りとなります。
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この記事の監修

- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある
