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外国人雇用の適切な人事管理・教育訓練・福利厚生

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

2019年の入管法改正により、外国人労働者の受け入れがさらに促進されました。また、令和3年10月における外国人労働者の数は約173万人となっており、過去最高を記録しています。

政府は、増加する外国人労働者の雇用安定を図るため、さまざまな措置を講じています。
例えば、外国人雇用に関する厚生労働省の「外国人労働者の雇用管理等に関して事業主が適切に対処するための指針」(以下、「指針」)では、事業主に適切な人事管理・教育訓練・福利厚生などを実施するよう求めています。

また、適切に外国人労働者の就労環境の整備を行った企業は、国から「助成金」を受給できるケースもあります。

本記事では、外国人労働者を雇用する際の注意点や求められる対応、受け取れる助成金などについて解説していきます。ぜひご覧ください。

外国人労働者の雇用管理における重要性

外国人労働者の雇用管理を改善することは、事業主の努力義務とされています。また、外国人労働者の離職時は、適切な再就職支援を行うことも同様に努力義務として求められています(労働施策総合推進法第28条第2項第2号)。

 

これらを実現できるよう、厚生労働省は「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」を策定し、事業主が講じるべき措置などを具体的に定めています。

事業主は、指針に沿った適切な対応をとり、外国人労働者が安心して働ける職場環境を整備することが重要です。

適切な人事管理・教育訓練・福利厚生等について

指針では、外国人労働者の人事管理・教育訓練・福利厚生などについて定められています。
これらを実施することで、多様な外国籍の人材がそれぞれの能力を十分に発揮し、社会に貢献してもらうことができると考えられています。

また、外国人労働者の生活の質を向上させ、安心して長く働いてもらうことも指針の目的のひとつといえます。

では、具体的にどのような対応が求められるのか、以下でみていきましょう。

適切な人事管理

1 適切な人事管理

事業主は、その雇用する外国人労働者が円滑に職場に適応できるよう、社内規程その他文書の多言語化等、職場における円滑なコミュニケーションの前提となる環境の整備に努めること。

また、当該職場での評価や待遇に納得しつつ就労することができるよう、職場で求められる資質、能力等の社員像の明確化、評価・賃金決定、配置等の人事管理に関する運用の透明性・公正性の確保等、多様な人材が適切な待遇の下で能力発揮しやすい環境の整備に努めること。

その際、公共職業安定所の行う雇用管理に係る助言・指導を踏まえ、適切に対応すること。

事業主に求められる対応

人事管理では、賃金や労働時間などの労働条件を書面等で明示しなければなりません。また、人事評価制度や配置についても説明する必要があります。

しかし、日本で働き始めたばかりの外国人労働者にとって、それらを日本語で理解するのは困難といえます。また、認識に相違があると、労働トラブルにつながるおそれもあるため注意が必要です。

そこで、事業主は、外国人労働者の母国語を使うなど労働者が十分理解できるよう配慮することが求められます。また、就業規則や雇用契約書を作成する際も、外国人労働者が理解しやすいように、漢字にふりがなを付したり、簡易な日本語で記載するなどの工夫をすることが望ましいでしょう。

外国人労働者に向けた就業規則作成のポイントは、以下のページで詳しく解説しています。

外国人雇用の就業規則

生活支援等

2 生活支援等

事業主は、外国人労働者の日本社会への対応の円滑化を図るため、外国人労働者に対して日本語教育及び日本の生活習慣、文化、風習、雇用慣行等について理解を深めるための支援を行うとともに、外国人労働者が地域社会における行事や活動に参加する機会を設けるように努めること。

また、事業主は、居住地周辺の行政機関、医療機関、金融機関等に関する各種情報の提供や同行等、外国人労働者が、居住地域において安心して日常生活又は社会生活を営むために必要な支援を行うよう努めること。

事業主に求められる対応

外国人労働者は、文化や生活習慣の違いに戸惑うことも多いでしょう。
労働者が日常生活でのトラブルにも対処できるよう、企業としては十分なサポートを行うことが求められます。

例えば、企業向けの語学研修プログラムを導入したり、市区町村による日本語教室などの公共サービスを紹介したりする方法があります。

また、在日外国人をサポートするボランティア団体も増えています。企業がこれらの団体と提携することで、不安や悩みを抱える外国人労働者が気軽に相談できる職場環境を整えることができるでしょう。

苦情・相談体制の整備

3 苦情・相談体制の整備

事業主は、外国人労働者の苦情や相談を受け付ける窓口の設置等、体制を整備し、日本における生活上又は職業上の苦情・相談等に対応するよう努めるとともに、必要に応じ、地方公共団体が情報提供及び相談を行う一元的な窓口等、行政機関の設ける相談窓口についても教示するよう努めること。

事業主に求められる対応

外国人労働者が安心して働けるよう、社内に相談窓口を設置するなどの対応が求められます。設置後は、労働者が気軽に相談できるよう、利用方法などを十分に周知・説明する必要があります。

また、外国人労働者から相談を受けた際は、外国人だからこその配慮をするなど手厚いケアを行う心構えが必要です。日常生活から仕事に関することまで幅広く対応することで、労働者との信頼関係も高まるでしょう。

ただし、「会社に対しては相談しにくい」という外国人労働者もいるでしょう。その場合、地方公共団体や行政機関が実施する外国人向け相談窓口などを案内することも求められます。

教育訓練の実施等

3 教育訓練の実施等

事業主は、外国人労働者が、在留資格の範囲内でその能力を有効に発揮しつつ就労することが可能となるよう、教育訓練の実施その他必要な措置を講ずるように努めるとともに、苦情・相談体制の整備、母国語での導入研修の実施等働きやすい職場環境の整備に努めること。

事業主に求められる対応

外国人労働者に教育訓練を行うことで、人手不足の解消人材定着につながります。少子高齢化が加速し、労働力不足が深刻化する中、高いスキルを身に付けた外国人労働者は貴重な労働力となることでしょう。

また、外国人労働者の中には、日本の技術やノウハウを身につけようとする意欲が高い人材も多く見られます。教育訓練を通し、専門知識を身に付けることで、生産性の向上企業利益の増加も期待できるでしょう。

教育訓練をスムーズに進めるためには、母国語での研修プログラムを準備するのが望ましいといえます。

なお、厚生労働省が指定する教育訓練を修了した場合、受講費用の一部が給付される「教育訓練給付制度」を利用することができます。
教育訓練給付制度は外国人労働者も対象となるため、積極的に活用しましょう。

福利厚生施設

4 福利厚生施設

事業主は、外国人労働者について適切な宿泊の施設を確保するように努めるとともに、給食、医療、教養、文化、体育、レクリエーション等の施設の利用について、外国人労働者にも十分な機会が保障されるように努めること。

事業主に求められる対応

外国人労働者にも、日本人労働者と同じ福利厚生を受ける権利を保障する必要があります。また、福利厚生施設や各種サービスの利用方法などを丁寧に説明し、利用を促すことも重要です。

日本人と外国人とで、国籍を理由に福利厚生の面で差を設けることは、各種法令等によって禁止されている差別に当たる可能性があるため注意しましょう。

帰国及び在留資格の変更等の援助

5 帰国及び在留資格の変更等の援助

イ 事業主は、その雇用する外国人労働者の在留期間が満了する場合には、当該外国人労働者の雇用関係を終了し、帰国のための諸手続の相談その他必要な援助を行うように努めること。

ロ 事業主は、外国人労働者が在留資格を変更しようとするとき又は在留期間の更新を受けようとするときは、その手続を行うに当たっての勤務時間の配慮その他必要な援助を行うように努めること。

事業主に求められる対応

外国人労働者の帰国にあたり、支給要件を充たす者には、「脱退一時金」が支給されます。
脱退一時金とは、外国人労働者が離職して帰国する際、それまで納めていた年金保険料の一部が返金される制度です。ただし、請求には条件や期限があるため、帰国前に企業が助言・指示してあげるのが望ましいでしょう。

 また、帰国の準備や在留資格の変更に時間がかかる場合、有給休暇の取得勤務時間の短縮などの配慮を行うことも求められます。トラブルを避けるため、どのような配慮を行うかはあらかじめ就業規則などで定めておくと良いでしょう。

その他、外国人労働者が、病気等やむを得ない理由により一時帰国する際に、旅費を用意できない場合には、企業が当該旅費を負担することに努めるよう求められています。

労働者派遣又は請負を行う事業主に係る留意事項

近年、外国人労働者を「派遣」又は「請負」で受け入れる企業が増加しています。

ただし、業種によっては派遣労働自体が禁止されていたり、在留資格の内容と従事する職務が乖離している場合が想定されたりと、さまざまな注意点もあります。

外国人労働者が安心して働けるよう、事業主は適切なルールを十分理解しておくことが重要です。
以下で詳しくみていきましょう。

派遣元事業主の留意事項

6 労働者派遣又は請負を行う事業主に係る留意事項

労働者派遣の形態で外国人労働者を就業させる事業主にあっては、当該外国人労働者が従事する業務の内容、就業の場所、当該外国人労働者を直接指揮命令する者に関する事項等、当該外国人労働者の派遣就業の具体的内容を当該外国人労働者に明示する、派遣先に対し派遣する外国人労働者の氏名、労働・社会保険の加入の有無を通知する等、労働者派遣法の定めるところに従い、適正な事業運営を行うこと。

派遣元は、あらかじめ「派遣先の業務」と「外国人労働者の在留資格」を照らし合わせることが重要です。在留資格に適合しない業務に派遣した場合、違法就労となる可能性もあるため注意しましょう。

また、派遣業務自体が禁止されている業種(建設業務、警備業務等)に労働者を派遣した場合も、不法就労助長するものとなり、違法となるおそれがあります。

請負事業主の留意事項

6 労働者派遣又は請負を行う事業主に係る留意事項

請負を行う事業主にあっては、請負契約の名目で実質的に労働者供給事業又は労働者派遣事業を 行うことのないよう、職業安定法及び労働者派遣法を遵守すること。

また、請負を行う事業主は、自ら雇用する外国人労働者の就業場所が注文主である他の事業主の事業所内である場合に、当該事業所内で、第六で選任する雇用労務責任者等に人事管理、生活指導等の職務を行わせること。

請負事業において、外国人労働者と雇用関係にあるのは雇用主である「請負事業主」のみとなります。よって、業務の指揮や命令を行うのも請負事業主となります。
一方、「注文者」の指揮命令によって業務に従事させた場合、偽装請負とみなされ職業安定法ないし労働者派遣法に違反する可能性があるため注意が必要です。

さらに、注文者の事業場で業務にあたるような場合は、現場の責任者に適切な人事管理・生活指導などを行わせる必要があります。

さらに、請負事業主は、外国人労働者の希望により、労働契約期間を可能な限り長期のものとし、労働契約期間中に従事させることができない期間が生じた場合にも教育訓練を実施して労働契約を継続する等、安定的な雇用確保に努めることも求められます。

外国人雇用管理アドバイザー制度の利用

外国人雇用管理アドバイザー制度とは、外国人労働者の採用や雇用管理に関する悩みやトラブルを専門家に相談できる制度です。各都道府県に設置されており、事業所のある地域のハローワークに申し込むと無料で利用することができます。

本制度は、年々増加する外国人労働者の雇用の安定を図るとともに、事業主が適切な雇用管理を行えるようサポートすることを目的に設けられました。

主な相談内容は、以下のようなものです。

・採用や雇用方法
→募集の方法、労働契約の結び方、労働条件、社会保険への加入、退職時や解雇時の手続きなど

・育成や教育
→日本語教育の方法、業務指示の方法など

・職場環境への配慮や生活支援
→人員配置、福利厚生、ゴミの出し方、病院のかかり方、アパートで生活する際の注意点など

外国人労働者の雇用管理に関する助成金

外国人労働者の雇用安定を図るため、厚生労働省はさまざまな助成金を設けています。
具体的には、適切な教育訓練を行った企業や、外国人労働者に向けて職場環境の整備を行った企業には、一定の助成金が支給される可能性があります。

なお、雇用調整助成金及び人材開発支援助成金については、本来、日本人労働者を対象としたものですが、外国人労働者も対象となります。

以下でいくつかみていきましょう。

雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定)

概要 経営悪化による事業縮小にあたり、労働者に対して一時的に休業、教育訓練等を行ない、労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当、賃金等の一部を助成する制度
受給要件 ・雇用保険に加入していること
・直近3ヶ月の売上高又は生産量の月平均値が、前年同期に比べ10%以上減少していること
・休業等が労使協定に基づくものであること
受給金額 ・教育訓練(事業所内訓練)を実施した場合
大企業は1人あたり1,000円、中小企業は1人あたり1,500円
・教育訓練(事業所外訓練)を実施した場合
大企業は1人あたり2,000円、中小企業は1人あたり3,000円

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

概要 外国人労働者に向けて職場環境の整備を行った事業主に対し、その費用の一部を助成するもの(通訳費、翻訳機器の導入費用、弁護士や社労士等への委託料、社内標識の設置・改修費など)
受給要件 ・外国人労働者を雇用していること
・雇用労務責任者の選任
・就業規則などの社内規定の多言語化

また、以下のうちいずれかを実施していること
・苦情・相談体制の整備
・一時帰国のための休暇制度の整備
・社内マニュアルの多言語化
受給金額 ・生産性要件(生産性向上の程度)を満たす場合:支給対象経費の2/3(上限72万円)
・生産性要件を満たさない場合:支給対象経費の1/2(上限57万円)

人材開発支援助成金(特定訓練コース)

概要 職務に関連した訓練を実施した事業主に対し、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成するもの
受給要件 以下のいずれかの訓練を実施すること
・労働生産性向上訓練
・若年人材育成訓練
・熟練技能育成・承継訓練
・認定実習併用訓練
受給金額 ●生産性要件(厚労省の「生産性要件算定シート」をご参照ください)を満たす場合
 ・OFF-JT:経費助成60%(45%)、賃金助成960円(480円)
 ・OJT:1人1コース当たり25万円(14万円)

●生産性要件を満たさない場合
 ・OFF-JT:経費助成45%(30%)、賃金助成760円(380円)
 ・OJT:1人1コース当たり20万円(11万円)

※()内は中小企業以外の助成額・助成率

外国人雇用における指針のその他の事項について

指針では、適切な人事管理・教育訓練・福利厚生以外にも、さまざまな事項が定められています。例えば、安全衛生に関する措置や労働・社会保険の適用、解雇等の予防及び再就職支援なども実施することが求められます。

指針を踏まえた外国人雇用の概要は、以下のページでも詳しく解説しています。

外国人の雇用について
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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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