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インターンシップ制度とは|給料の支払い義務や企業側のメリットについて

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

インターンシップは、在学中の学生を対象とした「就業体験」のことです。学生・企業どちらにもメリットがあるため、実施する企業が増加しています。
ただし、インターンシップにはさまざまな類型があり、実施期間も定められていません。場合によっては、社員と同じように扱う必要があるため注意が必要です。

本記事では、インターンシップの概要や制度を導入する際の注意点などを解説していきます。採用活動で活かせるよう、ぜひ参考になさってください。

インターンシップ制度とは

インターンシップ制度とは、学生が将来のキャリア形成のために行う「就業体験」です。興味のある企業で実際に働き、就職活動などに役立てることを目的としています。

インターンシップを実施する企業は増加傾向にあり、2022年2月時点で「約7割」の企業が導入しています(DISCO「2023年卒・新卒採用に関する企業調査-採用方針調査」)。
また、実施期間は1日~数日が多く、職場見学やグループワークが中心となります。また、数ヶ月にわたり“有給”で行われるケースもあります。

インターンシップの類型

インターンシップは以下表のような類型があります。

職場体験型 職場の見学や簡単な業務体験を行うケースです。説明会だけでは伝わらない職場の雰囲気を理解してもらうのに有効です。
課題解決型 業務に関連したテーマを与え、解決策を考案させるケースです。グループディスカッションやプレゼンテーションが中心となります。
実務実践型 職場に通い、実際に業務に従事するケースです。社員と同じように業務を行うため、学生のスキルを十分発揮してもらうことができます。
採用直結型 採用活動の一環としてインターンシップを行うケースです。グループワークやプレゼンテーションを通し、採用候補となる学生を見極めます。

インターンシップ生は労働者となるのか

企業との間に使用従属関係が認められる場合、インターン生も労働者とみなされます。具体的には、以下のような要件を満たす場合です。

  • 使用者から業務遂行に関する指示命令を受けている
  • インターン生に対して報酬が支払われている
  • インターン生の作業によって、企業に利益・効果がもたらされている
  • 見学型や体験型ではない

労働者にあたると、インターン生にも労働基準法などの労働関係法令が適用されます。そのため、通常の社員と同じく、労働時間の管理労働条件の通知などが必要となります。

労働者性の判断基準については、以下のページでも詳しく解説しています。

労働者性の判断基準

インターンシップ制度のメリット・デメリット

インターンシップ制度を導入することで、企業にはどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。以下でみていきましょう。

メリット

【人材の発掘】
グループワークやプレゼンテーションを通し、自社が求める優秀な人材を発見できる可能性があります。
通常の採用試験や面接だけでは把握できないスキルや能力も見極めることができるでしょう。

【学生と交流できる】
少ない時間と費用で、学生と接点を持つことができます。
新商品などを考案する「課題解決型インターンシップ」では、学生の斬新なアイデアに刺激を受けることもあるでしょう。

【離職防止】
職場の雰囲気や業務内容を知ってもらうことで、入社後のミスマッチを減らすことができます。また、入社後の流れをイメージしやすいため、早期の離職防止につながります。

デメリット

【社員に負担がかかる】
実際に業務を行う「実務実践型インターンシップ」などでは、社員が学生のフォローを行わなければなりません。そのため、本来の業務遂行に支障をきたす可能性があります。

【手続きや費用が発生する】
大学との連携や就職サイトへの掲載など、インターンシップ実施に向けた事前準備が必要です。
また、インターン生が使用する備品の費用や、交通費・宿泊費などがかかるケースもあります。

【志望度を下げるリスクがある】
短期の「職場体験型インターンシップ」などでは、学生のニーズにすべて応えるのが難しいといえます。そのため、学生が十分な満足感を得られず、かえって志望度を下げてしまうおそれがあります。

インターンシップにおける給料の支払い義務

企業の間に「雇用関係」が成立すれば、インターン生にも賃金を支払う必要があります。

雇用関係とは、当事者の一方が労務を提供する代わりに、もう一方が報酬を支払うと約束することをいいます。
実際に雇用契約書を交わしていなくても、インターン生が“労働者”にあたる場合、雇用関係が成立しているとみなされる可能性があるため注意が必要です。

労働者にあたるかは、「企業がインターン生に指揮命令が行っているか」、「学生の作業によって企業に利益や効果がもたらされているか」などを考慮して判断されます。

インターン生の賃金の相場は、時給1,000~2,000円程度となっています。また、営業職では、売上や契約件数に応じてインセンティブが支給されるケースもあります。

なお、賃金の支払いルールについては、労働基準法で明確に定められています。詳しくは以下のページをご覧ください。

賃金の支払いに関する労働基準法の定めについて

最低賃金法の適用

インターン生に労働者性が認められると、最低賃金法が適用されます。
そのため、都道府県別の最低賃金を下回る報酬額を取り決めることは違法であり、無効となります(最賃法4条)。また、企業には罰則が科せられるおそれがあります。

以下のページでは、最低賃金の概要や、違法とされた場合の罰則について詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。

最低賃金制度

割増賃金の発生

インターン生に労働者性が認められる場合、労働時間によっては割増賃金が発生します。
具体的には、1日につき8時間、1週につき40時間の法定労働時間を超えて労働させた場合正規の従業員と同じく一定の割増賃金(残業代)を支払わなければなりません(労基法37条)。

割増賃金の計算方法などは、以下のページで詳しく解説しています。

割増賃金とは|割増賃金率や基礎となる賃金の計算方法について

インターンシップ中の安全配慮義務

インターン生が労働者にあたるかどうかにかかわらず、受け入れ企業はインターン生への安全配慮義務を負います。
そのため、例えば企業側の設備点検が不十分だったために事故が起き、インターンシップ生が怪我を負う等した場合、企業に損害賠償責任が生じます。

安全配慮義務の詳細は、以下のページをご覧ください。

労働安全衛生法

労災保険の適用について

インターン生が労働者にあたる場合、労災保険が適用されます。そのため、インターン中の事故によって怪我を負ったり、後遺症が残ったりした場合、労災保険から補償を受けることができます。
一方、賃金が支給されない1日限りのインターンシップなどでは、労働者性が認められず労災保険は適用されないのが基本です。

ただし、大学の正課としてのインターンシップでは、大学を窓口とする「学生教育研究災害傷害保険」から補償を受けられる可能性があります。
これに未加入の場合、企業及び学生個人が加入する一般の傷害保険等で対応することになるでしょう。

労災に関する注意点などは、以下のページでも解説しています。

労働災害

インターンシップ生の社会保険の加入義務

次の条件にあてはまるインターン生は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入させる必要があります。

労働時間が通常雇用の従業員の4分の3以上であること

例えば3ヶ月間の有給インターンシップで、通常の所定労働時間が8時間のところ、1日6時間以上労働させる場合、社会保険に加入させる必要があります。

雇用保険法の適用

雇用保険の加入条件は、以下のとおり定められています。

  • 週の労働時間が20時間以上であること
  • 雇用見込みが31日以上であること

もっとも、学生の本業は“学業”であり“仕事”ではないので、基本的に雇用保険に加入させる必要はありません(雇用保険法6条4項)。
ただし、以下に該当するインターン生については、学業が本業とは限らないため、雇用保険への加入が必要となる可能性があります。

  • 休学中
  • 夜間、定時制、通信制学校の学生
  • 卒業後もインターン先で継続して働くことが予定されている者

外国学生へのインターンシップ

海外の大学に在学中の学生を日本の企業で受け入れる際は、先方の大学と企業との契約に基づき、“大学の教育課程”の一環としてインターンシップを行うことになります。
“教育課程の一環”のため、インターンシップによって単位を取得させなければなりません。

また、日本の企業で働くには「在留資格」が必要となります。
在留資格は、受け入れ企業が、インターンシップの職務内容、滞在期間、賃金支給の有無に応じたものを取得する必要があります。

必要な在留資格の種類や滞在期間については、以下のページで解説しています。

外国人研修・技能実習生について

インターンシップ採用時の注意点

2019年には、政府から企業へ「採用直結型インターンシップの禁止要請」が行われています。これは、就職活動の長期化や早期化、学生の混乱を防ぐための方針とされています。

そのため、インターンシップの応募者には、「インターンシップが本採用に繋がる」などと伝えるのは控えるべきでしょう。

また、インターンシップ生の採用時は、通常の採用活動と同じく、応募者の人種や国籍、信仰する宗教、性別、家柄等を選考基準としてはいけません。

採用時の差別の禁止については、以下のページで詳しく解説しています。

雇用における差別について

インターンシップによる企業への損害とリスク対策

インターンシップによって損害が発生した場合に備え、リスク対策を講じることが重要です。
例えば、インターン生が会社の設備やソフトを壊した場合や、機密情報を漏えいした場合、事故を起こして社員に怪我を負わせた場合などが考えられます。

これらのケースでは、企業がインターン生に対して損害賠償請求できるのが基本です。しかし、損害額などによっては、学生が個人で賠償できないこともあるでしょう。
そのため、インターン生にはインターンシップ開始前に十分な研修を行い、注意を促すことが重要です。

また、インターン生が企業や社員に負わせた損害をカバーできる「インターンシップ保険」にも加入しておくと安心です。

契約書の作成

インターンシップでは、契約書の作成が法律で義務付けられているわけではありません。

ただし、雇用契約が認められる場合、企業は学生に労働条件を通知する義務があるため、「雇用契約書」又は「労働条件通知書」を交付する必要があります(労働基準法15条1項)。
また、雇用契約がない場合も、インターン中のトラブルを防止するため、契約書を取り交わしておくことをおすすめします。

  • インターンシップを行う時間や場所、期間
  • インターンシップの内容
  • 期間中にインターンシップを終了する事由
  • インターンシップ中に発生した事故の取扱い
  • インターン生が生じさせた損害の賠償義務
  • 秘密保持義務
  • 遅刻や欠勤の連絡方法

誓約書の必要性

トラブルを回避するために、契約書とは別に誓約書を取得することも一つの対策といえます。

例えば、誠実にインターンシップに参加することや、インターンシップ中に知り得た情報の不正使用を禁ずること、成果物は受け入れ企業に帰属することといった内容を記載します。
誓約書によって、研修や実習、秘密保持義務等に対してより高い意識を持たせることができるでしょう。「誓約」させることで義務感が生まれ、トラブルの発生防止にもつながります。

また、もしトラブルが発生しても、誓約書を根拠に損害賠償などを求めることができます。

インターンシップ中のハラスメント対策について

インターン生へのハラスメントを未然に防ぐため、社内教育や研修を徹底しておくことが重要です。

具体的には、ハラスメントにあたる行為を明確化し、全社員に周知する必要があります。
また、ハラスメントを行うことで、懲戒処分や損害賠償責任を負う可能性があることも周知しましょう。

さらに、インターン生がハラスメント被害についてすぐに相談できるよう、相談窓口を設置するのもひとつの方法です。

ハラスメントが発生すると、インターン生の就職活動に対する意欲を低下させるおそれがあります。また、自社に対して悪い印象を持たれるため、採用活動で不利に働く可能性もあります。
企業にもさまざまなデメリットがあるため、インターンシップ実施前にしっかり対策しておきましょう。

ハラスメントの内容について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

ハラスメント
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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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