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労働条件の不利益変更とは|要件や3つの方法、判例などを解説

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

企業が経営難に直面した場合、コスト削減のため“賃金の減額”や“手当の廃止”などを検討することもあるでしょう。しかし、これらは労働契約法上の「不利益変更禁止の原則」に抵触するため、企業が法的なルールを無視して一方的に行うことはできません。

やむを得ず不利益変更を行う場合も、労働者に十分説明した上で同意を得るなど、適切な手順を踏む必要があります。

この記事では、労働条件を不利益に変更する具体的な方法や注意点、不利益変更による企業側のリスクなどについて、わかりやすく解説します。

労働条件の不利益変更とは

労働条件の不利益変更とは、賃金などの労働条件を、労働者に不利な内容に変更することをいいます(労働契約法9条本文参照)。

不利益変更は労働者の生活に大きな影響を与えるため、基本的に労働者本人から個別に同意を得た上で行うことが義務付けられています(労働契約法9条本文)。
同意を得ず一方的に不利益変更した場合、後述する就業規則の変更や労働協約の改訂の方法によらない限り、労働トラブルになったり、変更が無効になったりする可能性があるため注意しましょう。

不利益変更の具体例

以下のようなものは不利益変更にあたる可能性があります。

  • 賃金の引き下げ・廃止:
    基本給の減額、役職手当や住宅手当などの減額・廃止、定期昇給の停止、基本給の額を据え置きつつ、固定残業代を含める
  • 退職金制度の変更:
    退職金を減額する、支給条件を厳しくする
  • 休日の削減:
    年間の所定休日を減らす、夏季休暇や年末年始休暇などを有給休暇扱いにする
  • 労働時間の増加:
    所定労働時間を延長する
  • 雇用形態の変更:
    無期雇用契約から有期雇用契約に転換する
  • 福利厚生の廃止:
    社宅や社員食堂などを廃止する
  • 懲戒事由の追加:
    これまで懲戒対象でなかった行為を新たに懲戒事由として規定する
  • 賃金制度の変更:
    従業員全員に支払う賃金の総額は変えずに、年功序列型の賃金体系を成果主義型に変更する

労働条件の不利益変更が認められるための要件

労働条件を不利益に変更する場合は、原則として労働者の同意が必要です。
ただし、以下の2つの要件を満たせば、就業規則の変更による不利益変更が認められる可能性があります(労働契約法10条本文)。

  • ①労働条件の変更に合理性がある
    就業規則の変更により労働条件の不利益変更を行うには、就業規則の変更が合理的なものである必要があります(労働契約法10条本文)。

    合理性の判断では、労働者が受ける不利益の程度、変更の必要性の内容と程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置、交渉の経緯などが考慮されます。例えば、深刻な経営悪化により賃金を引き下げなければ倒産のおそれがある、代償措置や経過措置を講じているなどの事情は、賃金減額の合理性を肯定する事情となり、不利益変更が認められる可能性があります。
  • ②変更した就業規則を労働者に周知している
    不利益変更の効力を生じさせるには、変更後の就業規則を社内掲示など適切な方法で、労働者に周知する必要があります(労働契約法10条本文)。

就業規則の周知義務については、こちらの記事をご覧ください。

就業規則の周知義務とは│従業員への周知方法や違反時の罰則など

労働条件の不利益変更を行う3つの方法

不利益変更を行う方法は、以下の3つがあります。

  • ① 労働者の同意を得て不利益変更する
  • ② 労働組合と労働協約を締結して不利益変更する
  • ③ 就業規則の変更により不利益変更する

①のように個別同意を得る方法だけでなく、②③のように個別同意を得ずに不利益変更を行う方法もあります。

①労働者の同意を得て不利益変更する

個々の労働者から、不利益変更の同意を得る方法です。
この場合、まずは労働者と個別面談を行い、変更の内容や不利益の程度を詳しく説明することが重要です。例えば、賃金を引き下げる場合、変更後の計算基準を提示したうえで、「具体的にいくら減るのか」を明示すると良いでしょう。
また、経営状況の悪化など変更に至った背景も伝えると、労働者も納得しやすくなります。

労働者の同意を得たら、説明を受けた事実や変更内容を記載した“同意書”を取り交わします。トラブルを避けるためにも口頭での合意は避けた方がよく、書面で残すのが基本です。

なお、個別の同意を得た場合でも、その内容が就業規則の基準を下回ることはできません(労働契約法12条)。労働者の同意を得たら、それと合わせて就業規則を変更し、社内で周知することも忘れずに行いましょう。

ただし、労働者の自由な意思に反すると認められるような同意にならないよう注意が必要です。そのため、執拗に不利益変更の受諾を迫ったり、威圧的な態度をとったりすると、同意が無効と判断される可能性があります。

就業規則の周知方法についての詳細は、こちらの記事をご確認ください。

就業規則の周知義務とは│従業員への周知方法や違反時の罰則など

②労働組合と労働協約を締結して不利益変更する

労働組合がある場合、個々の労働者と交渉する前に組合と協議するのが一般的です。労働組合との協議を行わない場合、不当労働行為とされる可能性もありますので、無用なトラブルとならないよう注意しましょう。

労働組合と不利益変更について合意し、労働協約を締結した場合、組合員に関しては個別同意を得ずに変更後の内容を適用することができます(労働組合法14条)。

また、労働組合が、一つの事業場の労働者の4分の3以上で構成される場合、原則として当該事業場の同種の非組合員にも労働協約が適用されます(労働組合法17条)。

ただし、一部又は特定の組合員だけを狙った不利益変更は、労働組合の趣旨に反するため無効となる可能性があります。そのため、意図せずとも一部の組合員が犠牲になるような場合、当該労働者の意見を踏まえたうえで不利益を緩和するのが賢明でしょう。

労働協約については、以下のページで詳しく解説しています。

労働協約とは?労使協定との違いや就業規則との関係について

③就業規則の変更により不利益変更する

就業規則を変更して労働条件を不利益に変更する場合は、次のような流れで手続きを進める必要があります。

  1. 変更内容の検討
    労働条件の変更の必要性や合理性、労働者が受ける不利益の程度などを十分に検討します。会社側の都合だけを優先し、労働者に過度な負担を強いる変更は、無効と判断されるリスクが高いです。代償措置を設けるなど、十分に配慮することが大切です。
  2. 労働者側からの意見書の提出
    就業規則を変更する場合は、労働者の過半数代表者または労働組合の意見を聴取し、その内容を意見書として提出してもらう必要があります。
  3. 就業規則の変更と労働基準監督署への届け出
    労働者の意見を踏まえて就業規則を変更します。常時10人以上の従業員がいる会社であれば、変更後の就業規則と意見書を労働基準監督署へ届け出なければなりません。
  4. 就業規則の周知
    変更した就業規則は、作業場への備え付けや社内システムでの共有など、労働者がいつでも確認できる方法で周知します。

労働条件の不利益変更による企業側のリスク

不利益変更は、企業側にも悪影響をもたらす可能性があります。経営悪化などやむを得ない事情があったとしても、労働条件を変更すべきか慎重に判断しなければなりません。

労働者の合意を得ず、一方的に労働条件を不利益に変更すれば、労使紛争に発展し裁判を起こされる可能性があります。不利益変更の無効を主張する労働者が、未払賃金や慰謝料を請求するケースもあり、解決には多くの時間とコストがかかります。また、不利益変更が認められても、労働者のモチベーション低下により生産性が落ち、退職者が増えることで業績が悪化するリスクも否定できません。

さらに、裁判による企業名の公開や、SNSでの拡散により社会的信用を失い、売上減少や採用難など経営に悪影響を及ぼすリスクがあります。

労働条件の不利益変更に関する罰則はあるのか

労働者の同意なく不利益変更を行っても、罰則を受けることはありません。

ただし、労働者から損害賠償請求され、訴訟に発展するリスクはあります。具体的には、変更後の労働条件の無効、未払い賃金や慰謝料の支払いを請求されることが想定されます。

なお、損害賠償請求訴訟には発展しなくとも、労使紛争の解決には手間も時間もかかるため、誠実な協議を通じて解決することが得策といえます。

労働条件の不利益変更をめぐる判例

【平23(ワ)3774号 京都地方裁判所 平成26年11月27日判決、中野運送店事件】

〈事件の概要〉
Y社で運送業務を担うXが、就業規則の「手当明細表」の改定により賃金が減額されたことを受け、当該不利益変更には合理性がないとして無効を訴えた事案です。
XはY社に対し、変更後に支給された賃金と変更前の賃金との差額を支払うこと等を求めました。

〈裁判所の判断〉
裁判所は以下の点を根拠に、当該不利益変更には合理性がなく、無効であると判断しました。

  • Y社は経営状況を改善するために人件費の削減を行ったが、賃金を引き下げなければならないほどの高度の必要性は見当たらない
  • 労働者への説明が変遷しており、不利益変更が必要な客観的な証拠も提示していないことから、労働者に十分な説明を行ったとはいえない
  • 労働者の受ける不利益の程度が少ないとは言えない
  • 不利益変更に対する代替措置が何も講じられていない

最終的にY社は、対象労働者13名に対して総額約3000万円超を支払うことが命じられています。

従業員が不利益変更に同意しない場合の対処法

不利益変更について従業員の同意が得られない場合は、その理由を丁寧に聞き取り、話し合いを重ねることが重要です。しつこく同意書への署名を求めたり、威圧的な態度で同意を迫ったりすると、同意が無効と判断されるリスクがあるため避ける必要があります。

説明にあたっては、自社の経営状況や、不利益変更を行わない場合のリスクを、客観的な経営資料を用いて具体的に示し理解を得るよう努めましょう。内容を持ち帰り、従業員に十分に検討する時間を与える配慮も求められます。

また、従業員の理解を得やすくするためには、代償措置や経過措置を講じることが有効です。例えば、給与減額の代わりに特別休暇を付与する、労働時間を短縮する、賃金の引き下げを段階的に行うといった方法が考えられます。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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