会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません 会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

人事・労務・労働問題を法律事務所へ相談するなら会社側・経営者側専門の弁護士法人ALGへ

労働者の意見聴取

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

労働者にとって、社内のルールや労働条件の内容にもなる就業規則の規定は、非常に重要です。そのため、労働基準法は、就業規則の作成または変更にあたり、労働者の意見を聴取することを使用者に義務づけています。

今回は、就業規則の作成・変更に際して、労働者に対して行うべき意見聴取の概要について、その重要性にも触れながら解説していきます。

就業規則の作成・変更における意見聴取義務

労働基準法90条1項によると、使用者は、就業規則を作成・変更するにあたって、労働者の過半数で組織する労働組合(これがない場合には労働者の過半数を代表する者)の意見を聴かなければなりません。この意見聴取義務に違反した場合、使用者には30万円以下の罰金が科されます(労基法120条1号)。

当該規定は、就業規則が労働契約の内容にもなり得る重要なものであることを考慮し、作成・変更について、労働者に内容を確認させ、一定の範囲内で意見を陳述する機会を与えることを目的としています。

作成・変更した就業規則は、原則として所轄の労働基準監督署に届け出なければなりませんが、労働者から聴取した意見を記した書面(意見書)を添付して行う必要があります(労基法90条2項)。

詳細については次項以下で解説します。

「労働者の過半数を代表する者」とは

意見聴取の対象となる「労働者の過半数で組織する労働組合」とは、事業所の労働者の過半数が組合員となっている労働組合のことをいいます。

また、このような労働組合がない場合に意見聴取の対象となる「労働者の過半数を代表する者」(以下、「過半数代表者」とします)とは、管理監督者以外から民主的な方法によって選ばれた、当該事業所に在籍する労働者の代表を指します(平成11年1月29日基発45号、平成22年5月18日基発0518第1号)。この“当該事業所に在籍する労働者”には、過半数代表者には選任され得ない管理職も含まれます。また、正社員用の就業規則の作成・変更をするケースでも、パートタイマー・アルバイト・嘱託・契約・出向社員等が労働者の母数に含まれることからもわかるように、これには当該就業規則の対象者以外も含まれるため、注意が必要です。

過半数代表者の選出方法は使用者が決定できますが、労働基準法施行規則で定められた以下の要件を満たす方法でなければなりません。

  • ・選出の目的(就業規則の作成・変更に際して意見聴取をするため)を明らかにしていること
  • ・使用者の意向に影響されない、民主的な方法であること

※管理監督者とは、労働基準法41条2号に規定される者をいいます。

過半数代表者への不利益取扱いの禁止

使用者は、過半数代表者について、労働者の過半数を代表する者であること、もしくは過半数代表者になろうとしたこと、または過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として、解雇や降格等、不利益な取り扱いをすることが禁止されます(労基則6条の2第3項、平成11年1月29日基発45号)。

「過半数代表者としての正当な行為」とは、例えば、法に基づく労使協定の締結を拒否することや、1年単位の変形労働時間制における各労働日の労働時間に関して同意しないこと等をいいます。

「意見を聴く」とは

労働基準法90条にいう「意見を聴く」とは、“意見を傾聴する”ことを指し、同意を得ることまでは意味しません(昭和23年3月15日基収525号)。したがって、前述の労働組合または過半数代表者の意見は、必ずしも賛成意見である必要はなく、たとえ反対意見であったとしても、使用者が当該意見に拘束される等、就業規則の効力に影響が及ぶことはありません。

賛成意見であれ反対意見であれ、労働者代表の署名または記名押印がある意見書が添付されていれば、就業規則の届出は受理されます。

「事業所ごと」の意見聴取について

就業規則は、事業所が複数存在する会社においては、原則として常時10人以上の労働者を使用する事業所ごとに作成し、それぞれを所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。したがって、意見聴取も事業所ごとに行う必要があります

就業規則の作成義務の詳細に関しては、下記の記事をご覧ください。

就業規則の作成・届け出義務について

企業の様々な人事・労務問題は弁護士へ

企業側人事労務に関するご相談 初回1時間 来所・zoom相談無料

企業側人事労務に関するご相談 来所・zoom相談無料(初回1時間)

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

0120-336-709

平日 9:00~19:00 / 土日祝 9:00~18:00

※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。 ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込11,000円)

「意見書」の添付義務

作成・変更した就業規則を所轄の労働基準監督署に届け出る際には、労働者から聴取した意見を記した意見書を添付する必要があります(労基法90条2項)。なお、意見書を作成するのはあくまでも意見を陳述する労働者側であり、聴取する側の使用者が、聞き取った意見を書面にまとめて意見書とすることは認められません。

では、上記のように法律で義務づけられている意見書の提出にあたって、定型の書式や記載が必須とされている事項は存在するのでしょうか?

意見書の書式と必要記入事項

意見書の書式について、特に定めはありません。もっとも、一から作成するのは手間ですから、下記のサイトからダウンロードできる様式を参考にすることをお勧めします。ただし、就業規則のように電子媒体で意見書を届け出ることは認められておらず、書面での提出が義務づけられているため注意してください。

(厚生労働省 東京労働局Webサイトより)

意見書には、次の事項の記入が必須とされています。

  • ・就業規則に対する意見
    (異義がない場合にはその旨を記入すれば足ります)
  • ・意見を陳述する労働組合の名称、または過半数代表者の職名・氏名
  • ・意見陳述者の署名または押印
  • ・過半数代表者を選出した場合には、その選出方法

意見書の提出を拒否された場合

労働者側から意見を聴取したものの、意見書の提出や意見書への署名・押印を拒否された場合でも、使用者が“労働者側から意見を聴取した旨を客観的に証明できる限り“、労働基準監督署は作成・変更した就業規則の届出を受理すべきとされています(昭和23年5月11日基発735号、昭和23年10月30日基発1575号)。具体的には、意見聴取から拒否までの経緯を説明した「意見書不添付理由書」を提出すれば、当該就業規則の届出が受理されます。

意見聴取をしていない場合

使用者が労働者側から意見聴取をしない場合、労働基準法90条1項違反として、30万円以下の罰金が科されます(労基法120条1号)。

しかし、意見聴取をしていないからといって、対象の就業規則は直ちに無効とはなりません。

もっとも、労働者側の意見をまったく聴くことなく就業規則の作成・変更を進めても、労働者の理解は得られないでしょう。労使トラブルを回避するためにも、意見を聴くことは重要です。

派遣期間制限を延長する場合

就業規則に関連する意見聴取義務とは異なりますが、派遣期間制限の延長にあたっても、使用者は労働者に対して意見聴取義務を負います。

一部を除き、派遣労働者は、派遣期間制限の限度である3年を超えて、個人単位で同一の組織単位(いわゆる「課」や「グループ」等)で働いたり、同一の事業所で働いたりすることはできません。ただし、後者に関しては、使用者が当該事業所の過半数労働組合(これがない場合は過半数代表者)に対して1ヶ月前までに意見聴取等をすることによって、延長することが可能です。

派遣期間制限等、派遣労働に関しては、下記の記事をご参照ください。

派遣労働について
ちょこっと人事労務

企業の様々な人事・労務問題は弁護士へ

企業側人事労務に関するご相談 初回1時間 来所・zoom相談無料

企業側人事労務に関するご相談 来所・zoom相談無料(初回1時間)

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

0120-336-709

平日 9:00~19:00 / 土日祝 9:00~18:00

※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。 ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込11,000円)

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

労働法務記事検索

労働分野のコラム・ニューズレター・基礎知識について、こちらから検索することができます