【2023年4月1日施行】育児休業取得状況の公表について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

残念ながら、まだ、特に男性においては、育児休業の取得率が高いとはいえない状況のようです。そこで、育児休業の取得率を向上させることを目的として、一部の企業について、育児休業取得状況を公表することが義務化されます。以下では、この制度について、弁護士が解説します。

目次

【2023年4月1日施行】育児休業取得状況の公表を義務化

2023年4月1日より、労働者が1000人を超える企業は、育児休業等の取得状況を年に1回公表することが義務付けられることになりました。これは、前事業年度の育児休業等の取得率が公表の対象となるため、早めの対応が必要です。

育児介護休業の改正については以下の記事でより詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。

育休の取得状況を公表する目的・背景とは?

職場の雰囲気等もあり、日本においては、特に、男性が、育児休業を取得する割合が低くなっています。

そこで、特に従業員数の多い一部の企業、具体的には、「常時雇用する労働者」の数が1000人を超える企業においては、育休の取得状況を公表することを義務付け、育休の取得率の向上を目指す法律が施行されます。

育児休業取得状況の公表における実務上のポイント

ここから、育児休業取得状況の公表における実務上のポイントについて解説していきます。

「常時雇用する労働者」とは?

「常時雇用する労働者」とは、雇用契約の形態を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者を指すものであり、次のような者は常時雇用する労働者であると考えられています。

  • ①期間の定めなく雇用されている者
  • ②一定の期間を定めて雇用されている者又は日々雇用される者であってその雇用期間が反復更新されて事実上期間の定めなく雇用されている者と同等と認められる者。すなわち、過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者又は雇い入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者

「育児休業取得状況」とは具体的に何を公表するのか?

①育児休業の取得割合、又は、②育児休業等と育児目的休暇の取得割合、のいずれかの割合を公表する必要があります。

①男性の育児休業等の取得率

育児休業等の取得率は、以下の計算で算出ができます。

「公表前事業年度においてその雇用する男性労働者が育児休業等をしたものの数」÷「公表前事業年度において、事業主が雇用する男性労働者であって、配偶者が出産したものの数」

②育児休業等と育児目的休暇の取得率

育児休業等と育児目的休暇の取得率は、以下の計算で算出ができます。

「公表前事業年度においてその雇用する男性労働者が育児休業等をしたものの数及び小学校就学の始期に達するまでの子を養育する男性労働者を雇用する事業主が講ずる育児を目的とした休暇制度を利用したものの数の合計数」÷「公表全事業年度において、事業主が雇用する男性労働者であって、配偶者が出産したものの数」

取得率の算定期間は?

公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度(公表前事業年度)が算定期間となります。
例えば、事業年度が4月1日から3月31日までの企業の場合、令和4年4月1日から令和5年3月31日までの状況を公表する必要があるため、同期間の取得状況の把握が必要となります。

育児休業取得状況を公表する方法は?

育児休業取得状況はインターネットの利用等その他適切な方法で、一般の方が閲覧できるように公表する必要があります。

育児休業取得状況の公表の義務化に向けた企業の対応

まず、自分たちが、育児休業取得状況の公表を義務付けられた企業なのかどうかを確認する必要があります。
そして、義務づけられているのであれば、①育児休業等の取得率、又は、②育児休業等と育児目的休暇の取得率を算出し、公表する必要があります。

改正育児・介護休業法に違反した場合の罰則

育児休業取得状況の公表が義務付けられている企業であるにもかかわらず、公表をしていなかった場合には、管轄の労働基準監督署から履行状況の報告を求められたり、それでも改善しない場合には、指導、勧告、さらには企業名の公表などされたりする可能性も否定できないため、注意をする必要があります。

法改正への対応でお困りなら、専門家である弁護士にご相談下さい

法改正は、広く様々な分野で行われており、これに対応をすることは必ずしも容易なことではありません。
対応できていなかったことにより、企業に生じるレピュテーションリスク(評判にかかるリスク)は軽んじることはできないものであるため、不安がある場合には、専門家である弁護士にご相談いただいたほうが安全でしょう。

よくある質問

男性の育休取得率が上がると、企業にはどんなメリットがありますか?

働きやすい職場環境が作り出されていることにより、
・生産性の向上
・優秀な人材の新規獲得
・離職率の低下
・企業の評判上昇
等のメリットがあると考えられます。

中小企業の場合、育児休業取得状況の公表は不要ですか?

常時雇用する労働者の数が1000名以下であれば、育児休業取得状況の公表は義務付けられていません。

育児休業取得状況の公表はどのタイミングで行えばよいですか?

常時雇用する労働者数が1000人を超えた場合に、その時点から育児休業の取得の状況を公表する義務が課されています。

「育児休業等の取得率」と「育児休業等と育児目的休暇の取得率」はどちらも公表しなければなりませんか?

いずれかを公表すればよいとされています。

集計する育児休業等には「産後パパ育休」も含まれますか?

「育児休業等」には以下の理由から、産後パパ育休(出生時育児休業)も含まれます。

【育児休業等とは】
育児・介護休業法第2条第1号に規定する育児休業及び法第23条第2項(所定労働時間の短縮の代替措置として3歳未満の子を育てる労働者対象)又は第24条第1項(小学校就学前の子を育てる労働者に関する努力義務)の規定に基づく措置として育児休業に関する制度に準ずる措置が講じられた場合の当該措置による休業

育児目的休暇に「子の看護休暇」は含まれますか?

「育児目的休暇」とは、目的の中に育児を目的とするものであることが明らかにされている休暇制度を意味し、子の看護休暇は含まれていません。

育児休業を分割して2回取得した場合や、「育児休業」と「育児目的休暇」の両方を取得した場合はどのように集計しますか?

当該休業や休暇が同一の子について取得したものである場合は、一人として数えます。

事業年度をまたがって育児休業を取得した場合はどのように集計しますか?

育児休業を開始した日を含む事業年度の取得のみを計算の対象とします。

企業側が男性の育休申請を断るとどうなりますか?

育児休業は、労働者の権利であり、原則として企業側が育休申請を断ることができません。
これに違反した場合、企業名の公表等の不利益が課される可能性があります。

男性の育休を促進した企業が受け取れる助成金はありますか?

料率支援等助成金(出生時両立支援コース)という助成金があります。

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執筆弁護士

弁護士 アイヴァソン マグナス一樹
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所弁護士アイヴァソン マグナス一樹(東京弁護士会)

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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