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【働き方改革】待遇に関する説明義務の強化の改正要点

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

働き方改革では、労働者が多様な働き方を選択することができるよう、これまで不十分だった非正規雇用労働者の処遇改善策に力が入れられています。そこで、働き方改革関連法案においては、待遇に関する説明義務が強化されました。
これによって使用者は、非正規雇用労働者と正社員の間にある待遇格差について、合理的な説明を求められることとなりました。

では、合理的な説明とは一体どのようなものでしょうか。また、説明において使用者はどんなことに注意すべきでしょうか。本記事で詳しく解説していきます。

働き方改革により待遇に関する説明義務が強化

働き方改革の一環として、雇用形態による不合理な待遇差をなくし、多様な働き方を選択できる環境作りが進められています(同一労働同一賃金)。

その施策として、非正規雇用労働者への待遇に関する説明義務が強化されました。具体的には、パートやアルバイト、契約社員、派遣労働者といった非正規雇用労働者は、正社員と待遇差がある場合、使用者にその理由や説明を求めることができるようになります。また、非正規雇用労働者から待遇に関する説明を求められた場合、事業主はこれに応じなければなりません。

この点、かつては雇用形態や時期により説明義務に違いがありましたが、働き方改革によって以下のとおり統一が図られました。

【改正前 → 改正後】○:説明義務の規定あり ×:説明義務の規定なし
パート 有期 派遣
待遇内容(雇い入れ時) ○ → ○ × → ○ ○ → ○
待遇決定に際しての考慮事項(求めがあった場合) ○ → ○ × → ○ ○ → ○
待遇差の内容・理由(求めがあった場合) × → ○ × → ○ × → ○

※賃金、福利厚生、教育訓練など

雇い入れ時

働き方改革により、契約社員等の有期雇用労働者に対しても、雇入れ時に待遇の説明をすることが義務付けられました。つまり、労働者から説明を求められていない場合であっても、会社は、不合理な待遇の禁止などに関して講じる措置の内容につき、説明する必要があるということです。雇入れ時に説明すべき項目は、以下のとおりです。

  • 不合理な待遇や差別的取扱いの禁止に関する措置の内容
  • 賃金の決定方法(正社員も含めた賃金制度の内容)
  • 教育訓練の実施に関する事項
  • 福利厚生施設の利用に関する事項
  • 通常の労働者への転換を推進するための措置の内容

上記について、会社がどのような措置をとっているか具体的に説明しましょう。

なお、非正規雇用労働者の労働に関するルールは、パートタイム・有期雇用労働法で定められています。これは、かつてパートタイム労働法と呼ばれ、パートタイマーのみを対象としていましたが、法改正によって有期雇用労働者も含まれることとなりました。説明義務の対象が拡大されたのは、この法改正によるものといえます。

説明の求めがあった場合

非正規雇用労働者から「正社員との待遇差や理由」について説明を求められた場合、会社は必ず説明をしなければなりません。

例えば、正社員との賃金の差や、利用できる教育訓練・福利厚生施設の違いについて説明を求められることがあるでしょう。会社はこれら待遇差の内容を明確にし、その理由まで説明することが必要です。また、説明においては、職務内容や配置変更の範囲、本人の能力や経験を踏まえ、合理的なものにする必要があります。単に「非正規雇用労働者だから」といった理由では不十分ですので、注意しましょう。

不利益取扱いの禁止

会社に対して説明を求めることは、労働者間に不合理な待遇差がないか、差別的な取扱いがないかを確認するために重要です。また、説明義務を明文化しても、実効性が伴っていなければ意味がありません。

なお、使用者は、待遇等に関する説明を求められたことを理由に、当該労働者を不利益に取扱うことは禁止されています。不利益取扱いとは、解雇や降格、降給、不当な配置転換など労働者にとって不利な措置を講じることをいいます。

これによって非正規雇用労働者はその地位が危ぶまれることなく、安心して説明を求めることができるようになりました。なお、以前はパートタイマー・有期雇用労働者・派遣労働者のいずれについても不利益取扱いを禁じる明文はありませんでしたが、働き方改革ではこれらすべての労働者の保護が図られています。

待遇差の内容と理由を説明する検討手順

誰と比較するか

まず、どの正社員と比較して説明するかを検討します。比較対象は、その非正規雇用労働者と職務内容や職務・配置変更の範囲等が最も近い正社員で、使用者が選定することになります。
その正社員との比較をもとに、賃金や福利厚生等で待遇差があるかどうか、ある場合はその理由を明確にする必要があります。

具体例として、店舗で接客業を担うパートタイマーを考えてみます。この場合、同店舗に配属され、業務内容や責任の程度、昇進や役割変化の可能性が同等の正社員が比較対象となります。もっとも、同等の正社員がいない場合、同店舗で事務作業を担う一般職など、できるだけ近い正社員を選定しましょう。

ただし、これは説明の比較対象であり、待遇差が認められる対象ではありません。不合理な待遇差については、すべての非正規雇用労働者と正社員の間で禁じられていると覚えておきましょう。

どのようなことを説明するか

待遇差の内容

待遇差の内容については、以下の2点を説明しましょう。

  • 正社員と非正規雇用労働者の間で、待遇の決定基準に違いがあるか
  • 正社員と非正規雇用労働者それぞれの待遇の具体的な内容、又は待遇の決定基準

待遇の決定基準としては、賃金表の内容等を説明するのが一般的です。また、賞与の有無や通勤手当・地域手当の支給額、利用できる福利厚生に差がある場合も漏れなく説明します。

なお、正社員と非正規雇用労働者の間で不合理な待遇差を設けることは禁止されていますので、それぞれの待遇を決める際には十分な配慮が必要です。

不合理な待遇差の禁止については、以下のページで詳しく解説しています。併せてご覧ください。

不合理な待遇差の禁止の改正要点

待遇差の理由

正社員と待遇差がある理由も説明します。理由については、職務内容や職務・配置変更の範囲、本人の能力や経験といった事情をもとに、客観的かつ具体的に説明する必要があります。

また、待遇差には合理的な理由が必要であり、ただ「非正規雇用労働者だから」という説明では不十分です。例えば、どの要素をどう考慮して賃金を決定したのか、どの要件を満たさないから福利厚生の利用が制限されるのかなど、詳しく説明しましょう。

もっとも、労働者間の不合理な待遇差は禁止されていますので、そもそも合理的な説明ができない待遇差がある場合は是正しておく必要があります。

どのような方法で説明するか

対象労働者がきちんと理解できるよう、資料を見せながら口頭で説明するのが基本です。資料としては、就業規則や賃金規程、賃金表などを用いるのが一般的です。

また、説明すべき事項を全てわかりやすく記載した説明書を作成した際には、その書面を交付する方法による説明でも足りる場合があります。このとき、説明書には、正社員との待遇差や理由を項目ごとに詳しく記載するのがポイントです。なお、厚生労働省の「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル」には説明書のサンプルが掲載されていますので、参考にすると良いでしょう。

また、同じタイミングで入社する労働者がいる場合、各人への個別の説明ではなく、入社者全員を対象にした説明会を開催して説明を行うことも可能です。

派遣先の企業は派遣元へ情報提供義務を負う

派遣労働者の処遇改善に向け、派遣法も改正されました。改正派遣法では、労働者派遣契約を締結する際、派遣先は派遣元に対し、待遇の比較対象となる正社員の情報を提供することが義務付けられました。

具体的には、派遣労働者の待遇の決定方法が「派遣先均等・均衡方式」である場合、比較対象となる正社員の職務内容や選定の理由、待遇の内容といった情報を派遣元に提供しなければなりません。

一方、待遇の決定方法が「労使協定方式」の場合、教育訓練の実施や福利厚生の利用など、決められた待遇に関する情報を提供します。

これは、派遣労働者と派遣先正社員の待遇差を確認し、不合理な格差をなくすための措置です。これまでこの情報提供は配慮義務に留まっていましたが、法改正に伴い義務化されました。
また、適正な情報提供を怠った場合、勧告公表といった行政処分を受けるおそれもあります。

雇用形態に関わらない公正な待遇の確保を目的とした改正

働き方改革では、説明義務の強化以外にも、非正規雇用労働者の処遇改善に向けた様々な法改正が行われています。また、不合理な待遇差をなくすためのガイドライン等も整備されています。
これらはすべて、労働者間における不合理な待遇・差別的な取扱いを解消し、多様な働き方を選択させるための取組みといえます。

法改正や取組みの詳細は以下のページで解説していますので、ぜひご覧ください。

雇用形態に関わらない公正な待遇の確保のための改正要点
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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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