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裁量労働制の導入方法|2024年4月の改正点や注意点

専門業務型裁量労働制の改正概要についてYouTubeで配信しています。

専門業務型裁量労働制を導入するにあたっては、これまでは本人の同意を得る必要はありませんでした。しかし、2024年4月1日以降は本人の同意を得る必要があります。また、本人の同意は撤回することもできます。加えて、このように本人の同意を得ることや、同意の撤回の手続等については、労使協定に定める必要があります。

動画では、このような専門業務型裁量労働制の改正概要について、解説しています。

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弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

裁量労働制は、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間を働いたと「みなす」制度です。

多様な働き方を実現するシステムであり、働き方改革では適用範囲の拡大が検討されました。制度が濫用される懸念から、現時点では見送られていますが、今後も利用が促進されると考えられるため、注目するべき制度です。

このページでは、裁量労働制の対象業務や導入方法、2024年4月の改正で新たに必要となる手続きなど、導入時に注意したいポイントについて解説していきます。

裁量労働制の概要と導入要件

裁量労働制とは、労働時間と成果との関連性が低い業務等について、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた「みなし労働時間」だけ労働したとみなす制度です。

この制度のメリットとして、以下のことが挙げられます。

  • 従業員が時間に縛られずに議論や調査ができるため、より良い成果を出せる可能性がある。
  • 使用者側にとっては、人件費を予測しやすくなる。

一方で、この制度のデメリットとして、以下のことが挙げられます。

  • 従業員が過重労働に陥るリスクがある。
  • 社内でのコミュニケーションをとりづらくなる。

裁量労働制は「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類に分けられます。これらは、対象業務や導入要件(労使協定の締結・労使委員会での決議)が異なります。

裁量労働制について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

裁量労働制について

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制とは、専門性の高い職種に適用される、あらかじめ決めた時間働いたとみなす制度です。仕事の仕方について細やかな指示が難しい、以下の19業務に限り、導入することが可能です。

  • 研究開発
  • システムエンジニア
  • 取材・編集
  • デザイナー
  • プロデューサー、ディレクター
  • コピーライター
  • システムコンサルタント
  • インテリアコーディネーター
  • ゲーム用ソフトウェア開発
  • 証券アナリスト
  • 金融工学による金融商品の開発
  • 大学教授、助教授、講師
  • 公認会計士
  • 弁護士
  • 建築士
  • 不動産鑑定士
  • 弁理士
  • 税理士
  • 中小企業診断士

専門業務型裁量労働制を導入するには、労使協定を結び、労働基準監督署への届け出が必要になります。
本制度が適用されると、労働時間の長さではなく、労使協定で取り決めた時間働いたとみなされます。使用者は、仕事の仕方や時間配分などについて具体的な指示をすることはできません。

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制とは、事業運営上重要な決定を行う本社などで、企画・立案・調査・分析を行う労働者に適用される、あらかじめ決めた時間働いたとみなす制度です。該当職種として、経営企画、人事・労務、営業、広報、生産管理等が挙げられます。

労使委員会で「労働時間は1日8時間とみなす」と決議することによって、実際に働いた時間にかかわらず、1日8時間労働したとみなされます。使用者は、仕事の仕方や時間配分などについて具体的な指示をすることができません。

企画業務型裁量労働制は、専門業務型よりも業務内容が明確でないことから、導入するときには厳格な手続きを要求されます。労基法で、対象となる「業務」「事業場」「労働者」が、次のとおり定められています。

【対象業務】
●会社やその拠点の事業運営に関する業務
●企画、立案、調査、分析の業務
●業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務
●業務の遂行手段および労働時間の決定などに関して使用者が具体的な指示をしない業務

【対象事業場】
●本社・本店
●事業運営に重要な影響を及ぼす決定がなされる事業場
●独自に事業運営に重要な影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行う支社・支店等

【対象労働者】
●業務を適切に遂行する知識、経験等を有し、その業務に常態として従事する労働者(大卒後実務経験3~5年以上)

「専門業務型裁量労働制」の導入手続き・流れ

専門業務型裁量労働制を導入するためには、一定の手続きが必要です。

①労使協定で決議
②労働基準監督署長へ届出

上記の手続きについて、以下で解説します。

①労使協定で決議

専門業務型裁量労働制を導入するときには、対象とする業務を労使協定で決定しなければなりません。
労使協定は、事業場ごとに、過半数労働組合又は過半数代表者の同意を得て、以下の事項を書面で定めます。

  • (1)制度の対象とする業務(法令等に定められた19業務の中で該当するもの)
  • (2)業務遂行の手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと
  • (3)みなし労働時間(労働者の1日あたりの労働時間として算定する時間)
  • (4)労働者の健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
  • (5)労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容
  • (6)協定の有効期間(3年以内とすることが望ましい)
  • (7)(4)及び(5)に関し労働者ごとに講じた措置の記録を協定の有効期間及びその期間満了後3年間保存すること

なお、専門業務型裁量労働制を導入しても、休憩、休日、年次有給休暇に関する規定は適用除外されません。

労使委員会を設置した場合

専門業務型裁量労働制を導入するときに、労使委員会を設置して決議を行えば、労使協定の代わりとすることが可能です。労使委員会とは、使用者側の代表者と従業員の代表者が集まって行われる委員会です。

また、労働時間等改善設定委員会を設置し、多数による決議(5分の4以上)が行われた場合も、それを労使協定に代えることが可能です。労働時間等改善設定委員会とは、労使が話し合い、協力して労働時間を削減していくための委員会です。この委員会で決議すれば、裁量労働制だけでなくフレックスタイム制等の労使協定についても代替することが可能です。

②労働基準監督署長へ届出

締結された労使協定は、「専門業務型裁量労働制に関する協定届」(様式第13号)として、使用者がその事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に届け出なければならず、その内容を労働者にも周知する必要があります。

なお、裁量労働制を導入すると、始業時間や終業時間に影響を与えるため、就業規則についても規定を改正し、労働基準監督署長に届け出て、従業員に周知しなければなりません。

「企画業務型裁量労働制」の導入手続き・流れ

企画業務型裁量労働制を導入するためには、専門業務型裁量労働制よりも厳格な手続きを要します。
具体的には、以下のような手続きが必要です。

  1. 労使委員会を設置
  2. 労使委員会で決議
  3. 労働基準監督署長へ届出
  4. 対象労働者の同意を得る

それぞれの手続きについて、以下で解説します。

①労使委員会を設置

企画業務型裁量労働制を導入する手続きでは、労使協定は認められず、労使委員会を設置しなければなりません。設置にあたっては、まず労使間で設置自体について話し合うことが望ましいでしょう。

労使委員会は、労働者の代表と使用者の代表に分けられます。そして、少なくとも委員の半数は、労働者側の代表である必要があります。労働者側の代表は、労働者の過半数で組織される労働組合、又は労働者の過半数の代表者によって指名されます。

また、招集、定足数、決議事項などの運営に関することは、委員会の同意を得て策定します。議事録を作成して3年間は保存し、労働者に周知することも定められています。

②労使委員会で決議

労使委員会が設置されたら、委員会は以下の事項について決議します。決議は委員の5分の4以上の多数による議決であることが必要です。

  • 対象となる業務の具体的な範囲
  • 対象労働者の具体的な範囲
  • 労働したものとみなす時間
  • 使用者が対象となる労働者の勤務状況に応じて実施する健康及び福祉を確保するための措置の具体的内容
  • 苦情の処理のため措置の具体的内容
  • 本制度の適用について労働者本人の同意を得なければならないこと
  • 同意しない労働者へ不利益取扱いをしないこと
  • 決議の有効期間(3年以内とすることが望ましい)
  • 企画業務型裁量労働制の実施状況に係る労働者ごとの記録を保存すること(決議の有効期間中及びその満了後3年間)

③労働基準監督署長へ届出

労使委員会で決議されれば、専門業務型裁量労働制の場合と同様の対応が求められます。具体的には、以下のとおりです。

  • 「企画業務型裁量労働制に関する決議届」(様式第13号の2)を、使用者が労働基準監督署長に届け出る。
  • その内容を労働者に周知する。
  • 就業規則を改正し、労働基準監督署長に届け出て、従業員に周知する。

④対象労働者の同意を得る

企画業務型裁量労働制を適用するためには、適用される従業員から個別の同意を得る必要があります。個別の同意を求めた際に、従業員からの同意が得られなかったとしても、解雇や降格等の不利益な取扱いを行うことは禁止されています。

また、企画業務型裁量労働制の導入を就業規則に定めたとしても、ここでいう「個別の同意」を得たとはみなされません。

2024年4月の改正で新たに必要となる手続き

2024年4月1日より、裁量労働制が改正され、裁量労働制の導入・継続に新たな手続きが必要となります。以下で、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制、それぞれ具体的に対応すべき事項についてご説明します。

専門業務型裁量労働制の場合

2024年4月からの、専門業務型裁量労働制の主な改正点は、以下の通りです。

①対象業務の追加
対象業務に「銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく合併及び買収に関する考案及び助言の業務」(M&A業務)が新たに追加されます。

②労使協定事項の追加
これまで企画業務型のみの要件であった「本人の同意」が、専門業務型にも適用されます。
これに伴い、以下の事項を労使協定に追加する必要があります。

  • 労働者本人の同意を得ること
  • 同意しない場合の不利益取扱いの禁止
  • 同意の撤回の手続き
  • 同意や同意の撤回に関する記録の保存(協定の有効期間中及びその期間満了後3年)

2024年4月1日から、新たに、または引き続き「専門業務型裁量労働制」を適用する場合は、上記の②の事項を労使協定に追加し、裁量労働制を適用するまで(継続は2024年3月31日まで)に、労働基準監督署に届け出る必要があります。

企画業務型裁量労働制の場合

2024年4月1日より、企画業務型裁量労働制を新たに、又は引き続き導入するには、労使委員会の運営規程に下記の②③④を追加し、さらに決議に①②を追加し、裁量労働制を導入するまで(継続では2024年3月末まで)に労働基準監督署に決議届を届け出る必要があります。

①同意の撤回の手続きの定め、撤回に関する記録を保存すること
これまで同意後の撤回については定めがありませんでしたが、改正後は同意後に撤回する場合の手続きを定めることや、撤回に関する記録の3年間の保存が必要となります。

②労使委員会に、対象労働者の賃金・評価制度や変更内容を説明する
③労使委員会は制度の実施状況の把握と運用改善を行う
④労使委員会は6ヶ月以内ごとに1回開催する
⑤定期報告の頻度の変更

労使委員会の決議の有効期間の始期から起算して初回は6ヶ月以内に1回、その後1年以内ごとに1回に変わります。

裁量労働制の導入における注意点

裁量労働制を導入するときに注意するべき事項について、以下で解説します。

労働者保護のための措置を講じる必要がある

裁量労働制を導入するには、以下の措置が必要になります。

労働者の健康や福祉を確保するための措置
労働者の勤務状況及び健康状態に応じて休日や休暇を与えること、健康診断を実施すること、年次有給休暇をまとめて取得させること等。

苦情処理のための措置
苦情を申し出やすい仕組みにして、評価制度や賃金制度等の幅広い事項に関する苦情を受け付けることに留意する。

労働時間は正しく管理しなければならない

裁量労働制では労働時間が長くなりがちです。使用者は労働者の健康と安全を守るべき「安全配慮義務」を有し、裁量労働制を導入しても、この義務を免れるわけではありません。
そのため、勤怠管理システム等を活用して、労働時間を正しく管理し、長時間労働や過労による健康障害を防止する必要があります。

また、裁量労働制では、みなし労働時間を法定労働時間内に抑えれば、割増賃金は生じませんが、法定休日に働く「休日労働」や22時~5時に働く「深夜労働」に対する割増賃金は発生します。よって、休日・深夜労働を把握し、適正な割増賃金の支払いをしなければなりません。

なお、みなし労働時間が法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える場合や、休日労働をさせる場合は、36協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。また、みなし労働時間を定める場合は、36協定の上限時間「月46時間、年360時間」を超えないよう注意しなければなりません。

導入手続きや運用に不備があると無効になる

裁量労働制の導入手続きや運用に不備があれば、裁量労働制は無効となります。
裁量労働制が無効になると、実際の労働時間に応じた割増賃金の支払いなどが必要になる場合もあります。

裁量労働制に不備が生じる原因としては、主に以下のことが挙げられます。

  • 労使協議や労使委員会の設置にあたって適切な労働者側の代表や委員が選出されていないこと
  • 労働者の業務がそもそも裁量労働制の対象業務ではないこと
  • 労働者に業務遂行の裁量権が実質的に与えられていなかったこと

裁量労働制が無効と判断された事例

ここで、裁量労働制の適用が無効となった事例をいくつか紹介します。

①ゲーム開発会社でのイベント・宣伝業務への専門業務型裁量労働制の適用が無効とされた事例(渋谷労働基準監督署による裁量労働制無効の是正勧告)
従業員の業務が専門業務型裁量労働制の対象とはみなされず、無効とされた事例です。専門業務型裁量労働制は、法令等で定められた19の業務にのみ適用されます。

②税理士法人での税理士補助業務が専門業務型裁量労働制の対象と認められず無効とされた事例(東京高等裁判所 平成26年2月27日判決、レガシィほか事件)
税理士補助の業務が、専門業務型裁量労働制の対象とは認められなかった事例です。裁量労働制の導入にあたっては、対象とする予定の従業員の業務内容が適用対象であるか、慎重に見極める必要があります。

③労使協定における代表者の選出過程に不備があり専門業務型裁量労働制が無効とされた事例(京都地方裁判所 平成29年4月27日判決)
会社において、労使協定で代表となる従業員を選出するための会合や選挙を行った事実はないとして、労使協定の効力そのものが無効となりました。労働者側の代表者・委員の選出等は、法令に則ったものである必要があります。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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