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【働き方改革】法改正スケジュール|2023・2024年

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

働き方改革とは、正社員と非正規社員間の待遇差や長時間労働の是正などにより、誰もが働きやすい環境を作り、生産性を向上させようとする取り組みのことです。

この改革にもとづき、いくつもの労働に関する法律が改正され、新たな制度が設けられています。
すでに施行されている法律もあるため、会社は自社の現状を確認し、速やかに適切な措置を講じなければなりません。

本記事では、2019年~2022年に行われた法改正の内容をおさらいしたうえで、2023年と2024年の法改正内容と会社が取り組むべき対応について解説していきます。ぜひ参考になさって下さい。

働き方改革の必要性

働き方改革とは、労働者が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で選択できる社会を実現すための改革のことをいいます。

日本は現在、少子高齢化による労働力人口の減少や、育児と仕事との両立など働く方々のニーズの多様化等の課題に直面しています。
このような中、投資や技術革新による労働生産性の向上や就業機会の拡大、労働者が能力を十分に発揮できる環境作りなどが求められています。

働き方改革は、これらの課題の解決のために設けられた国が主導する取り組みです。
具体的には、2019年4月より「働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」が順次施行されています。

働き方改革についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

働き方改革とは

働き方改革の改正事項と施行日

前述のとおり、2019年4月より「働き方改革関連法」が順次施行されています。

働き方改革関連法とは、働き方改革に伴う「労働関連の法律の改正の総称」のことをいい、労働条件の改善や、多様な働き方の選択を推進することが目的とされています。

働き方改革により改正された法律として、主に以下のものが挙げられます。

  • 労働基準法
  • 労働時間等設定改善法
  • 労働安全衛生法
  • パートタイム・有期雇用労働法
  • 労働者派遣法
  • じん肺法

それぞれの法律の主な改正事項と施行日を下表にまとめましたので、ご確認ください。

なお、各法律によって施行日が異なることに注意が必要です。また、大企業と中小企業でも施行日に違いがあります。これは、中小企業は制度の見直しに時間がかかることから、一定の猶予措置が設けられているためです。

働き方改革の主な改正事項と施行日
関連法 改正事項 施行日
労働基準法 年5日の年次有給休暇の取得義務化 2019年4月1日
フレックスタイム制の清算期間の延長 2019年4月1日
高度プロフェッショナル制度の導入 2019年4月1日
時間外労働の上限規制
※適用猶予・除外の事業・業務あり
2019年4月1日 (大企業)
2020年4月1日(中小企業)
2024年4月1日(建設事業、自動車運転者、医師など
月60時間超の残業に対する割増賃金率50%に引き上げ 2020年4月1日(大企業)
2023年4月1日(中小企業)
労働時間等設定改善法 勤務時間インターバル制度促進の努力義務化 2019年4月1日
労働安全衛生法 産業医・産業保健機能の強化 2019年4月1日
長時間労働者に対する面接指導等の強化 2019年4月1日
パートタイム・有期雇用労働法 雇用形態にかかわらない公平な待遇の確保(同一労働・同一賃金) 2020年4月1日(大企業)
2021年4月1日(中小企業)
労働者派遣法 「派遣先均等・均衡方式」「労使協定方式」のいずれかの待遇決定方式の採用の義務化 2020年4月1日
派遣先から派遣元への比較対象労働者の待遇に関する情報の提供義務化 2020年4月1日
派遣元から派遣社員への待遇等に関する説明義務化 2020年4月1日
じん肺法 健康情報の取扱ルールの明確化・適正化 2019年4月1日

中小企業の定義

中小企業の定義は業種ごとに異なり、「資本金または出資の総額」と「従業員数」に応じて、下表のとおり区分されています。このうちいずれかを満たせば、中小企業に該当することになります。

なお、下表の数字は事業場単位ではなく、会社単位のものとなります。

業種 中小企業者(下記のいずれかを満たしている)
資本金または出資の総額 従業員数
製造業、建設業、運輸業、その他の業種 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5000万円以下 100人以下
小売業 5000万円以下 50人以下

上記表による定義にあてはまらない企業は、すべて大企業とみなされ、働き方改革関連法の中小企業への猶予は適用されません。

なお、「従業員」とは、常時使用する労働者をいいます。そのため、欠員などにより臨時的に雇用した者はカウントする必要がありません。一方、パートやアルバイトであっても、継続的に雇用している者は「従業員数」に含める必要があります。

【働き方改革】2019~2022年の主な改正内容

働き方改革に伴い、2019年~2022年に改正された事項は、主に以下の3つです。

     
  • ①年5日の年次有給休暇の取得義務化
  • ②時間外労働の上限規制
  • ③雇用形態にかかわらない公平な待遇の確保

以下で一つずつ見ていきましょう。

年5日の年次有給休暇の取得義務化

2019年4月から、すべての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、1年以内に5日の年次有給休暇を時季を指定して取得させることが義務付けられました(労基法39条7項)。

対象労働者は正社員だけでなく、パートやアルバイトなどの非正規社員や管理監督者も含まれます。
また、企業は従業員ごとに「年次有給休暇管理簿」を作成し、3年間保存する必要があります。

なお、年次有給休暇に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項にあたるため、時季指定の方法や、時季指定の対象となる従業員の範囲等について、就業規則に規定しておかなければなりません(同法89条)。

有給休暇の取得義務と就業規則への規定に違反すると、30万以下の罰金が科されるおそれがあるため、注意が必要です(同法120条)。

時間外労働の上限規制

大企業では2019年4月、中小企業では2020年4月から、時間外労働に罰則付きの上限規制が設けられるようになりました。従来の36協定では、時間外労働の上限に法的拘束力がなく、特別条項付36協定を結べば、事実上無制限の残業が可能でした。

しかし、法改正により、特別条項を結んだとしても、時間外労働に制限がかかるようになりました。
上限規制の内容は以下のとおりです。

(通常の36協定を結んだ場合)
原則として月45時間・年360時間

(繁忙期など特別事情がある場合の特別条項付36協定を結んだ場合)
・時間外労働:年720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計:月100時間未満、2~6ヶ月平均がいずれも月80時間以内
・時間外労働の⽉45時間超え:年6ヶ月まで

上記に違反した使用者には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰⾦が科される場合があります。
なお、2024年4月から、適用が猶予・除外されていた建設事業や自動車運転の業務、医師等にも、時間外労働の上限規制が適用される予定です。

雇用形態にかかわらない公平な待遇の確保

同じ会社で同じ仕事をする労働者は、正社員、非正規社員に関わらず、同一の賃金を支給する、という考え方が「同一労働同一賃金」です。

この実現のため、「パートタイム・有期雇用労働法」と「労働者派遣法」が改正され、大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月から、正社員と非正規社員(契約社員、パート・アルバイト、派遣社員等)間の不合理な待遇差が禁止されています。

事業主が同一労働・同一賃金を導入する際にとるべき対策は、主に以下のとおりです。

不合理な待遇差の解消

正社員と非正規社員間で、給与、各種手当、福利厚生等の待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されます。よって、両者の待遇差が働き方や役割に見合ったものであるか確認が必要です。待遇差の合理性に疑義がある場合は、改善措置を講じましょう。

待遇差の説明義務の強化への対応

労働者は、正社員と非正規社員間の待遇差の内容や理由について、事業主に説明を求めることが可能であり、事業主は説明する義務を有します。待遇差が不合理ではない理由を説明できるよう、文書に記載し整理しておくことが必要です。

【働き方改革】2023年4月1日施行予定の改正内容

2023年4月より、中小企業においても、月60時間超えの時間外労働を行った場合には、割増率50%以上の割増賃金を支払うことが義務付けられました。

これまで、本規定は大企業のみに適用され、中小企業については猶予されていました。しかし、本改正により、中小企業も対象となり、残業が60時間を超えた分の割増率は25%→50%へと変更されました。

このルールに違反した場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があるため、注意が必要です(労基法)。

【中小企業】月60時間超の時間外労働の割増賃金率の引き上げ

1ヶ月の時間外労働(1日8時間・1週40時間を超える労働時間)
60時間以下 60時間超
大企業 25% 50%
中小企業 25% 25% → 50%

上表のとおり、中小企業においても、1ヶ月の時間外労働(1日8時間、週40時間を超える労働時間)が60時間以下の場合は25%の割増賃金、60時間を超えた場合は、50%の割増賃金を支払わなければなりません。

例えば、計算例をあげてみましょう。

(例)70時間の時間外労働、時給1600円

従業員が70時間の時間外労働を行なった場合は、60時間までは25%、残りの10時間については、50%の割増賃金が適用されることになります。

・60時間分の賃金=1600円×60時間×1.25=12万円
・10時間分の賃金=1600円×10時間×1.5=2万4000円

よって、70時間の時間外労働に対して支払うべき割増賃金は、14万4000円となります。

検討すべきポイント

割増賃金率の引き上げに伴い、中小企業がとるべき対策として、主に以下のものが挙げられます。

  • 人件費増加を防ぐため、残業を削減するよう努める。
    勤怠管理システム等のITツールを活用し、労働時間を常に可視化した上で、時間外労働が多い時期や部門を特定する。その上で、業務量の見直しや必要業務の精査、業務のマニュアル化、残業の申請制導入、長時間労働を行う従業員に対する指導などを行います。
  • 代替休暇を付与する。
    長時間労働を行った従業員の健康を守るため、月60時間超えの時間外労働の割増賃金(25%の引き上げ分)の代わりとして、有給の代替休暇を付与します。
  • 就業規則の変更
    月60時間超えの時間外労働時間に対する割増賃金率を「50%未満」と規定している中小企業は、就業規則を変更する必要があります。

中小企業における時間外労働の割増賃金率や、割増賃金の具体的な計算方法について知りたい方は、以下の各ページをご覧ください。

2023年からの中小企業の割増賃金率
割増賃金の計算方法

【働き方改革】2024年4月1日施行予定の改正内容

2024年4月1日から、建設事業や自動車運転の業務、医師など、適用が猶予・除外されていた事業・業務についても、一部特例つきで、前述の時間外労働の上限規制が導入される予定です。

これらの上限を超える時間外労働を行わせた使用者には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される場合があります(労基法141条)。

【建設業・運送業・医師】時間外労働の上限規制

以下の事業・業務については、「罰則付きの時間外労働の上限規制」の適用が5年間猶予されていました。

  • 建設事業
  • 自動車運転の業務
  • 医師
  • 鹿児島、沖縄県における砂糖製造業

しかしながら、2024年4月1日からは、上記の事業・業務についても、一部特例つきで、時間外労働の上限規制が適用されます。事業や業務ごとの規制内容を、下表にまとめましたのでご確認ください。

建設事業
  • 災害時における復旧及び復興の事業を除き、上限規制がすべて適用される。
  • 災害時における復旧及び復興の事業には、時間外・休日労働の合計は「月100時間未満」「2~6ヶ月平均80時間以内」とする規制は適用されない。
  • 将来的には一般則の適用を目指す。
自動車運転の業務(ドライバー)
  • 特別条項付36協定を締結する場合の時間外労働の上限を「年960時間」とする。
  • 時間外・休日労働の合計は「月100時間未満」「2~6ヶ月平均80時間以内」とする規制は適用されない。
  • 時間外労働の「⽉45時間超えは年6ヶ月まで」の規制は適用されない。
  • 将来的には一般則の適用を目指す。
医師
  • 特別条項付36協定を締結する場合の時間外・休日労働の上限を「年1860時間」とする。
  • 時間外・休日労働の合計を「月100時間未満」「2~6ヶ月平均80時間以内」とする規制は適用されない。
  • 時間外労働の「月45時間超えは年6ヶ月まで」の規制は適用されない。
  • 追加的健康確保措置(面接指導、労働時間の短縮、宿直の回数の減少等)を講じる。
鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業
  • 上限規制がすべて適用される。
  • 猶予期間中も、時間外・休日労働の合計は「月100時間未満」「2~6ヶ月平均80時間以内」とする規制以外は、適用される。

なお、「新技術・新商品等の研究開発業務」については、特殊性が存在するという理由から、引き続き、上限規制は適用されません。ただし、1週間あたり40時間を超えて労働した時間が月100時間を超えた労働者に対して、医師の面接指導を行うことが、罰則付きで義務づけられています。

面接指導に基づき、必要に応じて、勤務場所や業務内容の変更、代替休暇の付与といった健康確保措置を講じる必要があります。

検討すべきポイント

2024年の時間外労働の上限規制の導入により、各事業や業務において見直すべきポイントとして、以下のようなものが挙げられます。

(建設事業)
長時間労働は建設業が抱える課題の一つです。残業を削減するためには、「週休2日制の導入」「各発注者の特性を踏まえた適正な工期設定・施行時期の平準化の推進」「工事現場のICT化による生産性の向上」などの措置を講じるのが望ましいでしょう。

(自動車運転の業務)
ドライバーの給与や労働時間等の労働条件を改善し、働き手を確保することが必要です。また、ドライバーの拘束時間の多くを占める荷待ち時間・積み込み作業時間の削減や、ITの活用による作業の効率化を図るのが望ましいでしょう。

(医師)
医師の長時間労働の原因は人手不足だけでなく、患者への説明対応や診断書等の書類作成にとられる時間が大きいという事情が挙げられます。残業を削減するには、医師でなくともできる業務を洗い出し、適切な分業体制をとる等勤務体制の見直しが求められます。

時間が労働の上限規制については、以下のページでも解説しています。あわせてご覧ください。

時間外労働の上限規制

働き方改革での裁量労働制の適用範囲拡充について

当初の働き方改革法案では、裁量労働制の適用範囲拡充も注目の一つとされていました。
これまで裁量労働制の対象業務は「専門型」と「企画型」のみでしたが、営業職などにも拡大することが議論の対象とされました。

しかし、労働時間に関する実態調査の集計不備や分析の誤りが発覚したことや、長時間労働を助長するといった懸念等を踏まえ、働き方改革での実施は見送られることとなりました。

なお、厚生労働省は、新たに「システム開発業務」を裁量労働制の適用対象に加えることを、2023年1月に表明しています。日程は未定ですが、2024年にも企業からの届け出ごとに適用されるかどうかが決定される予定です。法改正は行わず、現行法の再解釈と運用見直しで実現する見通しです。

裁量労働制の詳細については、以下のページをご覧ください。

裁量労働制の仕組みとメリット・デメリット
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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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