法定休日とは|法定外休日との違いや割増賃金などについて

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
「法定休日」とは、労働基準法で定められた最低限の休日をいいます。「法定休日」とそれ以外の休日(法定外休日)では、法的に大きな違いがあります。
使用者は、「法定休日」と「法定外休日」の違いや、休日出勤や振替休日を取得した場合の割増賃金などについてしっかりと把握しておかなければなりません。
このページでは、使用者が知っておくべき「休日」の性質の違いや就業規則への規定例、法律で定められた休日を与えなかった場合の罰則などについて解説していきます。
目次
法定休日とは
法定休日とは、労働基準法35条に定められた、会社が労働者に必ず与えなければならない休日をいいます。1年間の休日数に法的なルールはありませんが、「法定休日」は、以下のいずれかの頻度で付与することが義務付けられています。
- 毎週少なくとも1日
- 4週間のうちに4日(変形休日制)
法定休日は、「1週間に1日」の休日が原則ですが、週休制の採用が難しい場合には、「4週間に4日以上」の休日とする変形休日制を採用することも認められています(労基法35条)。
例えば、毎週1日以上の休日を与えていれば、連続勤務日数は12日が上限となりますが、変形休日制を採用している会社では、13日以上の連続勤務が可能になります。
法定外休日(所定休日)との違い
「法定外休日」とは、就業規則などによって定められた、法定休日以外の休日をいいます。
「法定休日」と区別するために、「所定休日」と呼ぶ企業もあります。
「法定休日」は労基法で定められた最低ラインの休日であるため、就業規則などによって、これを超える数の休日を与えることも可能です。実際、土日の週休2日制を採用し、土曜日を「法定外休日」、日曜日を「法定休日」としている企業が多く見受けられます。
労働者にとって、どちらも同じ休みのように感じるかもしれませんが、「法定外休日」であるか「法定休日」であるかによって、割増賃金に大きな違いが生じます。
「法定休日」の労働には休日労働に対する割増賃金(35%以上)が発生しますが、「法定外休日」の労働には発生しません。
法定外休日(所定休日) | 使用者が、法律の定めによらず、労働者に対して独自に与える休日 |
---|---|
法定休日 | 労働基準法によって、労働者に与えることが義務づけられている休日 |
法定休日における出勤について(休日出勤)
法定休日に出勤すること(休日出勤)は休日労働にあたるため、割増賃金を支払わなければなりません。
会社が労働者に休日出勤を行わせるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 休日出勤(法定休日の出勤に限ります)を可能にする36協定を締結し、労働基準監督署長に届け出ていること。
- 就業規則等に「休日出勤を命じる場合がある」と定め、周知していること。
36協定の締結
法定休日に働かせるには、36協定を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。
36協定とは、法定労働時間や法定休日を超えて働かせる場合に、使用者と労働者の過半数代表者(又は労働者の過半数で組織する労働組合)の間で取り決める協定をいいます。
36協定では、休日労働について、以下の事項を定める必要があります。
- 休日労働をさせることができる労働者の範囲
- 休日労働をさせることができるケース
- 休日労働の上限日数
- 休日労働の始業・終業時刻など
ただし、36協定は休日労働をさせても罰せられないという免罰効果を与えるにすぎません。実際に休日労働させるには、36協定だけでなく、労働契約において休日労働義務を定めて、会社と労働者で合意する必要があります。
36協定について詳しく知りたい方は、以下のページをご参照下さい。
割増賃金の支払い
法定休日と法定外休日とでは、割増賃金の計算方法が異なります。
【法定休日の労働】
法定休日(日曜日など)に働かせた場合は、使用者は通常の賃金に対して、35%以上の割増賃金の支払いが必要となります。しかし、法定休日にはそもそも時間外労働の考えがないことから、法定休日に1日8時間を超えて働いても、割増率は35%以上のままです。
【法定外休日の労働】
法定外休日(土曜日など)の労働は休日労働にあたらないため、割増賃金は発生しません。
そのため、法定外休日に所定労働時間を超えて働いたとしても、法定内残業として、通常の賃金を残業代として支払えば問題ありません。
ただし、法定外休日に1日8時間を超えるなど、法定労働時間を超えて働かせた場合は、時間外労働となるため、25%以上の割増賃金が発生します。
割増賃金や時間外労働について詳しく知りたい方は、以下の各ページをご覧ください。
振替休日・代休の取得
振替休日とは、事前に労働日と法定休日を入れ替えることで、労働日から法定休日になった日のことです。例えば、日曜日が法定休日だった場合、火曜日と日曜日を入れ替えると、火曜日が法定休日になります。
この場合、振替休日に代わって労働日になった日(日曜日)に関しては、その日に働いても休日労働の割増賃金は発生せず、通常の賃金を支払うことで足ります。
振替休日を定めておけば、法定休日に働かせる場合でも、休日労働の割増賃金の支払が必要ないというメリットがあります。
一方、代休とは、法定休日に働いた労働者に対して、労働日後に与えられる代わりの休日をいいます。
振替休日と違って、法定休日の労働について休日労働の割増賃金の支払いが必要となります。
振替休日 | ●所定の休日とほかの労働の義務がある日を「事前に」入れ替えるもの ●出勤日の労働は「休日労働」にはあたらないため、割増賃金は発生しない |
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代休 | ●休日に出勤した代償として「事後に」ほかの労働日を休みにするもの ●出勤日の労働は「休日労働」にあたるため、割増賃金が発生する |
振替休日について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
法定休日に関する就業規則の規定
労働基準法では、法定休日の特定までは求められていないと解されています。つまり、就業規則に休日規定を定める際に、法定休日を特定するかどうかは、各会社の裁量に委ねられていると考えて良いでしょう。
ただし、法定休日と所定休日とでは、割増賃金の扱いや、計算の際の利率が異なります。例えば、土曜日・日曜日の週休2日制の事業場では、どちらの曜日に対する労働を休日労働の割増賃金として算定し、あるいは時間外労働として算定すべきかを判断する基準がないため、労使間トラブルの火種となるおそれがあります。
対策として、就業規則等において、法定休日を特定しておくことをお勧めします。
就業規則の規定例
労基法は、週1日または4週4日の休日を求めているだけで、法定休日の特定を使用者に義務付けていません。そのため、1週間や1ヶ月の中でいつを法定休日とするかについては、会社ごとに自由に定めることが可能です。
なお、休日の規定は、就業規則の絶対的必要記載事項であるため、就業規則に必ず記載し、労働者に周知しなければなりません。
例えば、週1回の法定休日をとる「原則休日制」の就業規則の規定例として、以下が挙げられます。
就業規則
(休日)第●条
以下の日を休日とする。休日の中で、法定休日は毎週の日曜日である。
- ①日曜日
- ②土曜日
- ③国民の祝日(日曜日であった場合には翌日)
- ④年末年始(12月29日から1月3日まで)
- ⑤夏季(8月13日から8月15日まで)
- ⑥そのほか会社が指定した日
なお、労働時間を月・年単位で調整する変形労働時間制では、4週8休の「変形休日制」をとることが通例です。
変形休日制を就業規則に定める場合には、以下のように記載し、月の起算日を指定しておくことが望ましいでしょう。
「法定休日は月の初日を起算日とする4週間における最後の4日の休日とする」
就業規則については、以下のページで詳しく解説していますのでご覧ください。
法定休日の変更手続き
法定休日を特定している場合であっても、就業規則に定めておくことにより、法定休日を変更して休日割増賃金が発生しないようにすることが可能です。
法定休日を変更するためには、以下の手続きが必要です。
- 就業規則によって法定休日を特定する。
- 法定休日に出勤した場合、法定休日を所定休日に振り替えることが可能であることを就業規則に定める。
- 就業規則を労働者に周知する。
ただし、法定休日や所定休日に出勤する労働者が多い会社については、労働者の不満が高まるリスクを抑えるために、所定休日についても、自主的に35%の割増賃金を支給することも一案として考えられます。
就業規則で法定休日を定めていない場合の特定方法
就業規則等で法定休日を特定していない場合の法定休日の特定方法について、法律上のルールはありませんが、「暦週(日曜日から土曜日までの7日間)のうち、最後にくる休日」を法定休日とする考え方が通例です。
つまり、土曜日・日曜日を休日と定める事業場であれば土曜日が法定休日、変形休日制の事業場等であればより土曜日に近い休日が法定休日となります。
この点、就業規則等で1週間の始期を日曜日以外の曜日と定めている場合には、法定休日にあたる曜日が変わります。また、裁判では、勤務の状況や慣習等から、ほかの曜日を法定休日とすることが適切と判断されるケースもあります。
もっとも、法定休日と法定外休日では割増賃金率が異なります。法定休日を特定しないと、割増賃金の計算など実務で不都合が生じます。厚生労働省も法定休日の特定を奨励しているため、就業規則などに「法定休日をいつにするのか」明記しておくのが望ましいでしょう。
【就業規則等で法定休日を特定していないときに週1日を法定休日とする場合】
日曜から土曜を1週間として、最も後ろに位置する休日が法定休日、それ以外の休日が法定外休日
【4週間を通じて4日を法定休日とする場合】
4週間のうち、最も後ろに位置する4日間の休日が法定休日、それ以外の休日が法定外休日
法定休日に関するその他のルール
日曜日・祝日は法定休日になるか
日曜日や祝日が必ずしも法定休日になるとは限りません。
法律では、週1日または4週4日のルール以外は定められていないため、どの休日を法定休日にするかは、会社が独自に決められるからです。就業規則で曜日を特定することもできますし、曜日を特定しないことでも問題ありません。
実際は土日休みを採用する企業が一般的で、土曜日を所定休日、日曜日を法定休日としているパターンが多いです。一方、飲食店など接客業では、平日に法定休日を設ける傾向にあります。
なお、年末年始の休日も同じように、会社の任意で定めることが可能です。ただし、年末年始の特定の曜日が法定休日に指定されている場合は、その日を法定休日として扱う必要があります。
アルバイトやパートにも法定休日はあるか
アルバイトやパート、派遣社員にも、正社員と同じく法定休日はあります。
法定休日の有り無しに雇用形態は関係ないため、例えば4時間という短い労働時間であっても、週1日または4週4日の法定休日を超えて、アルバイト等を働かせると違法になります。
また、法定休日にアルバイト等が休日出勤した場合には、35%以上の休日労働の割増賃金の支払いが必要です。
シフト制の法定休日はどうなるか
飲食店や工場などに多いシフト制や交代勤務の場合、法定休日が特定されていないことが多々あります。これは勤務体系上、決まった曜日に休暇が取れないからです。
このような場合は、毎月シフトを組んで労働日と休日を個人ごとに決め、法定休日はその後の勤務実績から、あとで確定させるのが通例です。週1日または4週4日の法定休日が確保できていれば、シフト内の所定休日に出勤させても、休日労働の割増賃金の支払いは必要ありません。
ただし、シフト制であっても、会社が法定休日をあらかじめ設けている場合は、その日に出勤すれば、休日割増賃金の支払いが必要となります。
法定休日は有給休暇にできるか
法定休日に有給休暇を取得することはできません。
年次有給休暇は本来労働の義務がある日に労働が免除され、賃金が支払われる制度です。
これに対し、法定休日はそもそも労働する義務のない日で、賃金も支払われません。
そのため、本来労働義務のなかった法定休日に有給休暇をとるということはできません。
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この記事の監修
- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある