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未成年・年少者の労働条件について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

未成年者・成人と比べて未成熟である年少者(満18歳未満の者)には、労働基準法やその他の法令に、さまざまな保護規定が設けられています。そのため、未成年者・年少者を労働者として雇用する際には、労働条件においても、多くの制限が存在します。

ここでは、未成年者・年少者を雇用する際、使用者が知っておかなければならない労働条件について解説します。

未成年・年少者雇用時の労働条件について

未成年者・年少者の雇用や労働条件に関しては、労働基準法その他の法令上に特別の保護規定が存在し、使用者はそれらを遵守しなければなりません。例えば、年少者は変形労働時間制やフレックスタイム制、36協定による時間外・休日労働の適用が廃除されたり、危険有害業務や坑内労働への就業が禁止されていたりします。

しかし、法令に保護規定がない労働条件に関しては、労働基準法に則り、成人労働者と同様に扱う必要があります。例えば、「賃金は本人に直接支払わなければならない」と定めている賃金規定等がこれにあたります。

未成年・年少者を雇用する際は、特別の保護規定があるのか、あるいは保護規定がなく成人労働者と同様に扱うのか、使用者は把握しておかなければなりません。

なお、「未成年者」、「年少者」の定義や、未成年者、年少者雇用全般の概要については、以下のページで解説しています。ぜひご一読ください。

未成年・年少者雇用

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未成年の労働条件における制限

満18歳以上の未成年者に関しては、満18歳未満の年少者のような就業制限はありません。深夜労働(午後10時から午前5時までの労働)も、割増賃金の支払い規定があるのみです。

ただし、満18歳以上でも、高校生の場合、学校の許可を得ているか、学業に支障は出ていないかなど、注意する必要があります。

満18歳以上の未成年者の深夜労働に関しては、以下のページで詳しく解説しています。ご参照ください。

満18歳以上の未成年者は深夜労働が可能か

未成年の労働契約締結の保護

親権者、後見人は、未成年者に代わって労働契約を締結してはいけません(労基法58条1項)。これは、本人の意思に反する労働から未成年者を保護するための規定です。この規定により、未成年者を雇用する際は、使用者は本人と労働契約を結ばなければなりません(ただし、法定代理人の同意は必要です)。

なお、未成年者との労働契約締結については以下のページで詳しく解説していますので、ご参照ください。

未成年・年少者との労働契約

年少者雇用時の労働条件における制限について

年少者を雇用する際、その労働条件には制限があり、労働基準法その他の法令でいくつかの就業制限が設けられており、使用者はそれを遵守しなければなりません。

以下、年少者雇用の際の労働条件を解説します。

年少者における時間外・休日の制限

使用者は、労働者を1週間で40時間以上労働させてはならず(労基法32条1項)、また、1週間に1日、あるいは4週間で4日以上の休日を与えなければなりません(労基法35条)。この規定に関して、成人労働者ならば、36協定を締結すれば40時間以上、また休日に労働させることが可能ですが、年少者の場合、36協定の締結によっても、原則として時間外労働・休日労働をさせることはできません(労基法60条)。

変形労働時間制適用の制限

年少者の労働者には、原則として変形労働時間制は適用されません(労基法60条1項)。変形労働時間制とは、1ヶ月を期間の単位として、4週間で平均を出したときに週あたりの労働時間が40時間を超えていなければよいという制度です(労基法32条の2)(なお、6ヶ月、1年を単位とすることもできます)。

また、年少者にはフレックスタイム制は適用されません(労基法60条)。フレックスタイム制とは、一定期間において定められた時間数を労働すれば、労働者が始業・終業時刻を自由に決められるという制度です(労基法32条の3)。

このように、年少者には、原則として変形労働時間制及びフレックスタイム制は適用されません。

年少者の労働時間の特例

原則として、年少者に変形労働時間制を適用することはできませんが、労働基準法60条3項に例外が定められています。

まず、1週間で通算した労働時間が40時間を超えない範囲で、1週間のうち、ある1日の労働時間を4時間以内にすれば、ほかの1日の労働時間を10時間までの範囲で延長することができます。つまり、1週間を単位とした変形労働時間制ということになります。

次に、労働時間が1週間で48時間、1日で8時間を超えなければ、1ヶ月以内の変形労働時間制、または1年以内の期間の変形労働時間制の適用が可能です。

深夜労働の制限

年少者の深夜労働(午後10時~午前5時の労働)に関しては、満18歳未満の者にさせてはならないと定められています(労基法61条1項)。また、満13歳以上で義務教育を終了していない者については、深夜労働の時間帯は午後8時~午前5時とされています。

未成年者、年少者の深夜労働に関しては以下のページで詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。

未成年・年少者雇用の深夜労働について

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危険有害業務の制限

年少者は成人に比べて肉体的にも精神的にも未成熟であり、技術もまた未熟であるため、安全・衛生上特別の保護が必要とされており、使用者に対して年少者を危険有害業務に就かせることを禁止しています(労基法62条)。

具体的には、運転中の機械・動力電動装置の危険な部分の掃除や検査、ベルト・ロープの取付けや取外し、動力によるクレーンの運転、毒劇薬・毒劇物等を取扱う業務、その他、厚生労働省令で定める危険な業務、重量物を取扱う業務などです。

禁止業務は厚生労働省令のほか年少者労働基準規則で定められており、50種ほどが挙げられています。以下で、概要を解説します。

重量物を取扱う業務の制限

年少者を、重量物を扱う業務に就かせることは禁止されています(労基法62条1項、年少則8条)。この「重量物」の定義は、年齢、性別、作業の種類によって、以下の表のように分けられています。

年齢・性別 断続作業(kg) 継続作業(kg)
16歳未満の女性 12kg 8kg
16歳以上18歳未満の女性 25kg 15kg
16歳未満の男性 15kg 10kg
16歳以上18歳未満の男性 30kg 20kg

安全上の有害な業務の制限

年少者を危険な、つまり安全上有害な業務に就かせることも禁止されています(労基法62条2項 、年少則8条)。「安全上有害な業務」は、年少者労働基準規則8条に列挙されています。例えば、ボイラーを取扱う業務、クレーンを運転する業務、土砂崩壊のおそれがある場所での業務、爆発・発火・引火のおそれがあるものを取扱う業務などが挙げられています。

衛生上有害な業務の制限

年少者を衛生上有害な業務に就かせることも禁止されています(労基法62条2項)。「衛生上有害な業務」は、年少者労働規則基準8条に列挙されています。例えば、水銀・砒素・塩酸・硝酸等の有害物を取り扱う業務、ラジウム放射線・エックス線などの有害放射線にさらされる業務、異常気圧下における業務などが挙げられています。

福祉上有害な業務の制限

年少者を福祉上有害な業務に就かせることも禁止されています(労基法62条2項)。「福祉上有害な業務」も、年少者労働規則8条に列挙されています。例えば、焼却・清掃・と殺の業務、監獄・精神病院における業務、酒席に仕える業務、遊興的接客業での業務などが挙げられています。遊興的接客業とは、慰安快楽を伴うもので、カフェ・バー・ダンスホールでの接客等のことをいいます。

坑内労働の禁止

年少者に坑内労働をさせることも禁止されています(労基法63条)。「坑内労働」とは、地下における鉱山の採掘、トンネル工事などのことをいいます。

未成年・年少者雇用の労働契約について

これまで説明してきたように、年少者を雇用する際には、使用者は労働基準法やその他の法令などに設けられている、さまざまな制限を考慮しなければなりません。違反すれば、罰金や懲役に処せられるおそれもありますので、規定や制限をしっかりと知っておくようにしましょう。

未成年者・年少者を雇用する際の労働契約に関しては、以下のページで解説しています。ぜひご一読ください。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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