試用期間とは|解雇や期間の延長、注意点などを解説

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
試用期間は、本採用前に労働者の能力や適性を見極めるための重要な期間です。ただし、雇用契約は正式に成立しているため、単なる“お試し期間”と考えるのはリスクが大きいといえます。
また、試用期間中に能力不足などが発覚しても、必ず解雇や本採用拒否が認められるわけではありません。
本記事では、試用期間の目的や長さの目安、試用期間中の労働条件、解雇や本採用拒否する際の注意点などについて解説していきます。
目次
試用期間とは
試用期間とは、本採用の前に労働者の適性や能力、スキルなどを評価するための期間です。
会社は、書類選考や面接だけで求職者の適性をしっかりと見極めることが難しいため、試用期間中の働きぶりをみて、「本採用しても問題ないか」を判断することとなります。
試用期間を設ける場合は、就業規則や雇用契約書に以下のようなルールを明示しておく必要があります。
- 試用期間の長さや目的
- 試用期間中の労働条件
- 契約終了や解雇に関する手続き
会社は、試用期間を上手く活用することで、「ミスマッチの防止」や「早期離職の防止」といった効果が期待できます。また、会社は、試用期間中に労働者の適性を確認できるため、本採用後の配置(配属)を決めやすくなるメリットもあります。
試用期間と研修期間の違い
試用期間と似たものに「研修期間」、「仮採用」、「見習期間」、「トライアル雇用」、「インターン」があります。それぞれの違いについて、下表にまとめたのでご覧ください。
| 試用期間 | 会社が労働者を本採用するかどうか検討する期間 |
|---|---|
| 研修期間 | 採用するか否かに関係なく、業務を行うために必要なスキルや知識を身に付けるための教育期間 |
| 仮採用 | 試用期間と同じような意味又は内定や内々定を受けている等の意味で用いられる |
| 見習期間 | 研修期間とほぼ同じような意味で用いられる |
| トライアル雇用 | ハローワーク等が紹介した求職者の適性や能力を見極めるための期間であり、基本的には3ヶ月間を試用期間として定めて雇用すること |
| インターン | 学生等が社会経験や業界研究の目的で行う就業体験 |
試用期間の長さ
試用期間の長さについて、法律上の定めはありません。そのため、会社は試用期間の長さを独自に設定することができます。一般的には、入社後3~6ヶ月を試用期間とするケースが多いですが、業種や採用基準によって試用期間の長さを変えることもあります。
例えば、
- 中途採用で一定のスキルが見込まれる者 → 即戦力とするため、試用期間を短くする
- 新卒採用や高度な知識・技術を要する職種 → 能力を十分見極めるため、試用期間を長くする
などと適切な期間を定めることが重要です。
試用期間が短すぎると、労働者の適性を見誤り、本採用しても早期離職や生産性低下を招くおそれがあります。
一方、試用期間は労働者にとって不安定な雇用形態なので、1年を超えるような長期の試用期間は「公序良俗違反」にあたり無効と判断される可能性があります。
試用期間は延長できるのか
試用期間の延長は可能ですが、以下の3つを満たす必要があります。
- 労働契約や就業規則に“試用期間の延長に関する規定”(延長の可能性及び期間)がある
- 延長を必要とする客観的かつ合理的な理由がある
- 試用期間の延長について労働者本人が同意している
たとえ労働者の同意を得ても、試用期間を延長すべき明確な理由・根拠がない場合は“延長が無効”と判断される可能性が高いです。
試用期間の延長が認められやすいケースとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 病気やケガ、長期の入院により、出勤日数が少なかった
- 遅刻や早退が多い
- 経歴や保有資格を詐称していた
- 協調性に欠ける
これらのケースでは、試用期間を1~2ヶ月延長して“様子見する”のが一般的です。延長期間中に勤務態度などが改善されれば、労使双方にとって大きなメリットとなります。
また、安易な“本採用拒否”は不当解雇とみなされ、労働トラブルに発展するおそれもあるため注意しましょう。
試用期間中の待遇や労働条件
試用期間中の待遇や労働条件は、本採用後と同じ内容とするのが基本です。
労働者の同意があれば、本採用後と異なる労働条件を適用することも可能ですが、著しく不利な条件を提示すると“違法”と判断されるおそれがあるため注意しましょう。
また、試用期間中でも労働基準法は適用されるため、残業代の支払いや労働時間の管理などは適切に行わなければなりません。
試用期間中の労働条件を別途定める場合、求人票や労働条件通知書にその内容を明記する必要があります。次項からは、試用期間中の給与、賞与、残業、有給休暇、社会保険の取り扱いについて解説していきます。
給与
試用期間中でも、働いた分の給与は全額支払う必要があります。試用期間中は本採用前の段階ですが、正式な雇用契約に基づいて勤務しているため、当然に給与の支払い義務が発生します。
例えば、「試用期間中は見習い期間とみなし、無給とする」といった規定は認められません。
ただし、労働者との合意があれば、試用期間中の給与を本採用後よりも低く定めることは可能です。最低賃金を下回らない範囲で、適正額を提示するようにしましょう。
最低賃金については、以下のページで詳しく解説しています。
賞与
賞与の支払いは法律上の義務ではないため、支給しなくても問題ありません。
ただし、就業規則に賞与の支給に関する規定があり、本採用後の労働者には規定通り支払われているようなケースでは、試用期間中は支給対象外となる旨を明示しなければなりません。
具体的には、労働契約や就業規則において、「試用期間中の労働者には賞与は支給しない」などの規定を設ける必要があります。
賞与について詳しく知りたい方は、以下のページを併せてご覧ください。
残業
試用期間中の労働者でも、36協定を締結していれば残業を命じることは可能です。仮に残業が発生した場合、労働基準法や賃金規程の定めに従い適切な残業代を支給しなければなりません。
例えば、法定労働時間を超えて働いた場合、通常の1.25倍の割増賃金の支払い義務が生じます(労基法37条)。
試用期間中のみ「残業代を支給しない」「法定以下の割増賃金率とする」といった規定は認められません。
有給休暇
試用期間中でも、有給休暇の付与が必要なケースがあります。労働基準法39条では、以下の労働者に対して有給休暇を付与することが義務付けられています。
雇入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者
つまり、試用期間が6ヶ月より長く、6ヶ月経過時点での出勤率が8割以上の者については、試用期間中であっても有給休暇を付与する必要があります。
年次有給休暇のルールについては、以下のページで詳しく解説しています。
社会保険
試用期間中の労働者についても、雇用契約が成立している以上、一定の要件を満たす場合は社会保険に加入させる義務があります。
社会保険の加入義務に違反した場合、行政から加入指導を受け、悪質な場合は拘禁刑や罰金刑が科される可能性もあります。
| 社会保険の種類 | 加入要件 |
|---|---|
| 健康保険、厚生年金保険 |
|
| 雇用保険 |
|
| 労災保険 | 基本的に全員加入 |
試用期間は契約社員やパート・アルバイト・派遣にも適用できるのか
試用期間は、正社員だけでなく、パート・アルバイトといった非正規社員にも適用できます。
ただし、派遣社員の試用期間は基本的に認められないため注意が必要です。
労働者派遣法では、派遣先が派遣社員を選定することを原則禁止しています。そのため、試用期間のような“お試し期間”は違法とみなされる可能性が高いです。
また、契約社員などの“有期雇用労働者”については、試用期間を設けないのが一般的です。
有期契約の場合、契約期間中の解雇は“原則不可”とされています。そのため、仮に試用期間によって能力不足が判明しても、本採用拒否は認められない可能性が高いです。
有期雇用労働者の能力や適性を確認したいのであれば、最初の契約期間を3ヶ月~6ヶ月程度にしておくのが良いでしょう。
試用期間における解雇・本採用拒否はできるのか
試用期間中の解雇は、通常の労働者(正社員)の解雇と比べて認められやすい傾向があります。これは、試用期間が労働者の適性を確認するための“試験的な雇用期間”と考えられているためです。
ただし、試用期間中であっても労働者を解雇するには「客観的で合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です。例えば、以下のようなケースでは試用期間中の解雇が認められる可能性があります。
- 著しい能力不足により業務遂行がほぼ不可能
- 無断欠勤を繰り返すなどの勤怠不良
- 重大な経歴詐称
- 保有資格の虚偽申告(業務上必須なもの)
これらに該当する場合も、まずは注意や指導を十分行い、一向に改善がみられない場合に解雇を検討するのが適切です。
なお、試用期間満了時の解雇については、会社都合で本採用を行わないことから「本採用拒否」「本採用見送り」などと呼ばれることもあります。
本採用拒否における注意点は、以下のページでも詳しく解説しています。
試用期間中の労働契約
試用期間中も労働契約は成立しているため、正社員として採用した場合は、基本的には“正規雇用扱い”となります。
ただし、試用期間中の労働契約は「解約権留保付労働契約」と考えられているため、期間満了時の解雇(本採用見送り)が通常よりも認められやすい傾向があります。
〈解約権留保付労働契約〉
本採用が適当ではないと判断した場合に備え、会社が雇用契約を解約する権利を留保している契約
つまり、試用期間中に著しい能力不足や勤務態度の悪さなどが判明した場合、会社の判断で雇用契約の解約(解除)を申し出ることが可能です。通常の労働契約に比べ、解約権の行使が広く認められているといえます。
試用期間中の能力不足を理由に解雇できるか
試用期間中であっても、能力不足を理由とする解雇には厳しい制限が設けられています。
労働契約法16条では、解雇に「客観的合理性」と「社会的相当性」が認められない場合、当該解雇は無効とすると定められています。
つまり、能力不足の程度などから、誰がみても解雇はやむを得ないと判断できるような事情が必要です。例えば、以下のようなケースでは試用期間中の解雇が認められる可能性があります。
- 注意や指導を繰り返しても一向に能力不足が改善しない
- 簡単なミスを何度も繰り返す
- 重大なミスを犯し、会社に多大な損害を与えた
- 幹部社員として採用したが、マネジメント能力が著しく低かった
試用期間でも解雇予告・解雇予告手当が必要
労働者を解雇する場合、解雇日の30日前までに「解雇予告」を行うことが義務付けられています。解雇予告ができない場合、30日以上分の平均賃金に相当する「解雇予告手当」を支払わなければなりません(労基法20条)。
試用期間中の労働者については、入社後14日以内であれば、解雇予告や解雇予告手当の支払いが不要とされています(労基法21条本文、同条4号)。よって、解雇予告期間を空けずに即日解雇することも可能です。
一方、入社から14日が経過している場合、通常とおり「解雇予告」または「解雇予告手当の支払い」を行ったうえで解雇する必要があります。
いずれにせよ、解雇が認められるには「客観的かつ合理的な理由」が必要なので、解雇の妥当性は慎重に判断することが重要です。
解雇予告の詳細は、以下のページで解説しています。
試用期間中に退職の申し出があった場合の対応
試用期間中でも、退職の申し出から2週間が経過すると退職の効力が生じます。そのため、労働者からの退職の申し出を拒否することは基本的にできません。
また、就業規則で「退職の申し出は退職希望日の1ヶ月前までに行うこと」などと定めているケースもありますが、法律上申し出から2週間後には退職が成立するため注意が必要です。
反対に、試用期間中の労働者から「今日で退職したい」という申し出があっても、即日の退職を認める必要はありません。
また、試用期間中に労働者側から退職を申し出た場合は、労働者の「自己都合退職」となります。
退職や解雇のポイントについては、以下のページで解説しています。
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この記事の監修

- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある
