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欠勤控除とは|違法となるケース、給与明細への記載など

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

欠勤控除とは、簡単に言えば、働かなかった時間の分だけ賃金を差し引かれる制度です。
控除される賃金の計算方法はいくつかありますが、1ヶ月の賃金と働くはずだった時間から「1時間あたりの賃金」を算出し、働かなかった時間に相当する賃金を計算するのが一般的です。

この記事では、欠勤控除の概要や取り扱い等について解説します。

欠勤控除とは

欠勤控除とは、労働者が病気等によって会社を休んだ場合、支払う予定であった給与から、欠勤した分を差し引く制度です。

欠勤控除は、「ノーワーク・ノーペイの原則」によります。この原則は、労働者による労働の提供がなければ、労働者には、賃金を請求する権利は生じず、会社は給与を支払う義務がないという考え方です。

基本的にこの原則が適用されるのは、労働者に原因がある場合です。また、自然災害等、労働者と会社のいずれにも責任がない場合も適用されます。

一方、会社が原因で労働者が出勤できないような場合には、会社は、給与を支払う義務を負います。

欠勤控除と減給の違い

欠勤控除 使用者と労働者間の労働契約の内容による。
減給 懲戒処分の一つであり、労働基準法の制限のもと、一定の期間に一定の割合で給与を減らす。

欠勤控除は、労働者が働いていない分の賃金を控除することです。満額の賃金からはマイナスとなりますが、働かなかったために賃金を減らされたのであって、労働者が会社から罰を受けたわけではありません。

一方で、減給は、労働者が会社の秩序に違反したことに対する制裁です。そのため、決められた時間に不足しないように働いたとしても、一定期間は賃金の一部が差し引かれます。

就業規則への規程について

欠勤控除に関しては、労働基準法等に明記されていないため、欠勤控除についての規定を就業規則に定めておく必要があります。
また、記載する際には、欠勤控除に該当するケースや、欠勤控除の計算方法等についても記載すると良いでしょう。

欠勤控除を行うことができる上限日数は、特に明確には定められていません。出勤日数より欠勤が多くなると、欠勤控除ではなく、日割り計算をして給与を支払う、といった対応も可能になるのでその旨を就業規則に明記しておくと良いでしょう。

欠勤控除の計算方法

欠勤控除の計算方法として、次のものが考えられます。

  • ①年平均の所定労働日数から日給を計算し、欠勤控除する方法
  • ②該当月の所定労働日数から欠勤1日あたりの控除額を計算し、欠勤控除をする方法
  • ③年の暦日数から欠勤控除額を算出する方法
  • ④毎月の暦日数から日給を計算し、欠勤控除をする方法

①の方法では、1ヶ月欠勤すると給与がマイナスになるおそれがありますが、違法ではありません。ただし、従業員には丁寧に説明するべきでしょう。

遅刻や早退の賃金控除についても、年平均の所定労働日数や該当月の所定労働日数から1日あたりの賃金を計算し、それによって分単位の賃金を計算して差し引きます。

欠勤控除の計算方法に関しては、下記のページにて詳しく解説していますのでご覧ください。

欠勤控除の計算方法

給与明細への欠勤控除の反映方法

欠勤控除について給与明細に記載するときには、欠勤日数や遅刻、早退の数を「勤怠項目」に記載します。
なお、給与明細には、一般的に次の項目が設けられています。

勤怠項目 勤務日数や就労時間などを記載する
支給項目 基本給や通勤手当などを記載する
控除項目 社会保険料や所得税、住民税などを記載する

給与体系における欠勤控除の取り扱い

給与体系は、会社によって異なります。では、給与体系によって、欠勤控除の取り扱いに違いはあるのでしょうか?
これについては、下の表で説明するのでご覧ください。

完全月給制 基本的には、欠勤があっても月給は減らないため、欠勤控除できないことが多い。
日給月給制 1日単位で給与を積み上げて1ヶ月の賃金とするため、欠勤した日の給与は欠勤控除できる。
日給制 勤務した日数に応じて給与が支払われるため、欠勤控除できない。
時間給制 勤務した時間数に応じて給与が支払われるため、欠勤控除できない。
年俸制 1年単位で給与が決められるため、年間の所定労働日数から1日あたりの給与を計算し、欠勤控除できる。
歩合給制 成果に対して給与や報酬が支払われるため、歩合給からは欠勤控除できない。基本給部分があれば、そこからは欠勤控除できる。

欠勤控除が適用されないケース

欠勤控除が適用されないケースとして、次のものが挙げられます。

  • ①休職・休業期間
  • ②年次有給休暇

休職・休業期間

実際には、休職や育児休業中の労働者に対する給与を支給しない会社が多く、基本的に欠勤控除の対象となりません。

また、設備の故障など会社都合による休業においても、欠勤控除の対象外となります。
会社側は、会社都合による休業の場合には、労働者に休業手当として平均賃金の6割以上を支払う必要があります。

休職、休業等にまつわる詳細は、下記の各ページをご覧ください。

育児・介護休業
休職制度
女性従業員の労働

年次有給休暇

年次有給休暇は、労働者が申請することにより、取得できる休暇であり、労働義務が免除されます。そのため、欠勤控除の対象にはなりません。したがって、会社は年次有給休暇を取得した労働者に対して、就業規則に基づき給与を支払います。

詳しい年次有給休暇については、下記のページをご覧ください。

休暇・有給休暇

違法となる欠勤控除の取り扱い

欠勤控除は、基本的に欠勤や遅刻、早退で働くことができなかった分を賃金から控除するため、それ以上の時間分を控除するのは違法です。

例えば、5分の遅刻について30分に相当する賃金を差し引く行為や、数分の遅刻を3回したことについて1日分の賃金を差し引く行為などは違法となります。

また、遅刻や早退などについて、その時間に相当する賃金を差し引く旨は、就業規則に明記しておくのが望ましいでしょう。

退職後の欠勤控除について

給与の支給方法が前払い等になっている場合には、労働者が退職するタイミングによっては欠勤控除を行う必要が生じます。
既に退職していても、欠勤控除に相当する賃金について、返金を請求することが可能です。

退職について詳しく知りたい方は、下記のページをご覧ください。

退職及び解雇

欠勤控除に関する裁判例

【東京地方裁判所 昭和41年3月31日判決、東洋オーチス・エレベーター賃金請求事件】

この事案は、原告らがストライキを行い就労しなかった日があり、被告会社はその分を欠勤として賞与を減額したため、減額分の支払いを求めた訴訟です。

なお、労使間では賞与協定が締結されており、欠勤1日につき賞与の150分の1を控除すると定められていました。

裁判所は、「欠勤」について、労働者が就労の義務を負うにもかかわらず就労しなかった場合を指すと考えられるため、本件の「欠勤」にはストライキを含むと解釈するのが自然だとしました。

そして、労使間における賃金協定は、とくに不合理な内容ではないとして、原告らの請求を棄却しました。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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