未成年の深夜労働における制限や罰則など注意すべきこと
監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
未成年者・年少者は、就労に際してさまざまな特別の保護の対象となります。深夜労働(深夜業)についても、成人の労働者とは異なる扱いが求められます。未成年者・年少者を雇用する際には、使用者はこれらについて知っておかなければなりません。
このページでは、未成年者、年少者の深夜労働について詳しく解説します。
目次
年少者の深夜労働の制限
労働基準法では、午後10時から午前5時までの労働を「深夜労働(深夜業)」としており、原則として18歳未満の年少者をこの時間帯に労働させることはできません(労基法61条1項)。ただし、厚生労働大臣の許可を得た場合、地域又は期間を限ることにより、深夜労働の時間帯を午後11時から午前6時とすることができます(労基法61条2項)。
また、深夜労働禁止規定には例外があります。これについては後述します。
なお、例外的に労働が許容されている満13歳以上の「児童」については、原則、深夜労働は午後8時から午前5時までとなります。
深夜労働の割増賃金
労働基準法37条4項では、深夜労働について、使用者は25%以上の割増賃金を支払わなければならないと定めています。年少者を例外的に深夜労働に使用する場合でも、この割増賃金に関する規定は適用されますので、留意しなければなりません。
例外的に深夜労働に従事できる場合
満16歳以上の男性を交替制で使用する場合
労働基準法61条1項の但書では、「交替制によって使用する満16歳以上の男性」については深夜労働をさせることが認められています。「交替制」とは、「同一労働者が一定期日ごとに昼間勤務と夜間勤務とに交代につく勤務の態様をいう(昭和23年7月5日基発971号)」とされています。この交替制が例外とされているのは、深夜労働による疲労が、昼間勤務によって回復されるという予想によります。
行政官庁の許可により交代制で働く場合
労働基準法61条3項では、交替制で労働させる事業については、行政官庁(労働基準監督署)の許可を得て、午後10時30分まで未成年者を使用することができると定めています。この交替制で労働させる事業とは、個別の労働者に交替制を適用するのではなく、事業そのものが二交替や三交替制をとっているものを指します。
なお、厚生労働大臣の許可を得て深夜労働の時間帯を午後11時から午前6時までとしている場合、交替制の労働においては午前5時30分から使用することができるとしています。
災害等により臨時の必要がある場合
労働基準法33条1項は、災害その他の非常事由によって臨時の必要がある場合、行政官庁の許可を得て、労働者に労働時間の延長や休日労働をさせることができると定めています。また、労働基準法61条4項では、この労働基準法33条1項による臨時の必要がある労働については、深夜労働の制限を適用しないとしています。つまり、例えば災害などによって被害を受けた事業場を復旧・清掃するなどの必要があるときには、行政官庁の許可を得て年少者の深夜労働が認められる場合があります。
農林水産業、保健衛生業等
労働基準法61条4項、同法別表第一では、農林、畜産・水産業、病院・保健衛生業及び電話通信業務についてはその業務の性質上、年少者の深夜労働禁止規定が適用除外とされています。ただし、この場合も深夜労働は法定時間外労働として扱わなければならず、使用者は25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
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違反した場合の罰則
労働基準法119条は、年少者に対する深夜労働の制限に違反した場合、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処すると定めています。年少者を例外的に深夜労働させる場合には、労働基準法による定めに違反しないよう、細心の注意を払う必要があります。
満18歳以上の未成年者は深夜労働が可能か
満18歳以上の未成年者は「年少者」とはみなされませんので、労働基準法による深夜労働の制限を受けません。よって、高校生でも18歳に達した者ならば、法令上は深夜労働に従事させることが可能になります。ただし、その場合には注意が必要です。学生の本分は学業ですので、日中の授業等に支障が出ないように配慮しなければなりません。また、法令での定めはありませんが、高校生を深夜労働に従事させる場合、トラブルを避けるためにも、学校及び親権者の許可を事前に得ることが望ましいでしょう。
深夜以外の労働時間
未成年者、年少者が就労可能な労働時間に関しては、深夜労働以外にも、時間外・休日労働など、労働基準法により制限が設けられています。
詳しくは以下のページで解説していますので、ぜひご一読ください。
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この記事の監修
- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある