監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
これまでの高年齢者雇用安定法では、65歳まで労働者の雇用を確保する義務を課していました。こちらの更なる改正が行われ、令和3年(2021年)4月1日以降、事業主には労働者が70歳まで就業できるように努める義務が課されることになりました。
そこで、本稿では、この改正により事業主に努力義務が課された「70歳までの就業確保」の概要、改正された背景、努力義務が課される事業主の範囲、努力義務に違反した場合のデメリット、その具体的内容などについて、解説します。
目次
- 1 高年齢者雇用安定法改正により「70歳までの就業確保」が努力義務に!
- 2 高年齢者就業確保措置の具体的な内容とは?
- 3 高年齢者就業確保措置を講じる際の注意点
- 4 改正による再就職援助措置・多数離職届への影響
- 5 高年齢者雇用安定法改正に向けて企業が対応すべきこと
- 6 高年齢者の就業確保を促進する事業主への助成金
- 7 「高年齢者雇用安定法改正」への対応でお困りなら弁護士にお任せください。
- 8 高年齢者雇用安定法の改正内容に関するよくある質問
- 8.1 高年齢者就業確保措置を段階的に実施することは認められますか?
- 8.2 継続雇用制度と創業支援等措置について、対象者を限定する基準を設けてもいいですか?
- 8.3 高年齢者就業確保措置を複数講じることは問題ないですか?
- 8.4 高年齢者雇用安定法における「社会貢献事業」とはどのような事業を指しますか?
- 8.5 シルバー人材センターや再就職のマッチングを行う機関への登録は、就業確保措置を講じたことになりますか?
- 8.6 65歳に達する労働者が当分の間いない場合でも、高年齢者就業確保措置を講ずる必要がありますか?
- 8.7 創業支援等措置を講じるためには、どのような手続きを踏む必要があるのでしょうか?
- 8.8 労働者側が継続雇用に合意しなかった場合、会社は努力義務違反になってしまいますか?
- 8.9 65歳以上の継続雇用先として認められる企業とはどのような企業ですか?
- 8.10 労働者の職種・雇用形態によって、就業確保措置の内容を区別することは認められますか?
高年齢者雇用安定法改正により「70歳までの就業確保」が努力義務に!
高年齢者雇用安定法の改正によって、事業主に対して、これまで65歳までの「雇用」確保「義務」に加え、70歳までの「就業」確保「努力」義務が課されることになりました。ここで、言われる「就業」確保とは、どういった内容なのか、これまでの「雇用」確保と何が違うのか、また、「努力」義務とはどういうことなのか、まずは、法律が改正された背景から掘り下げてみましょう。
なお、高齢者雇用に関する概要は以下のページを参考になさってください。
高年齢者雇用安定法が改正された背景
厚生労働省の広報によれば、これまでの改正による65歳までの雇用確保義務が年金の引き上げを目的として行われてきたのに対し、今回の改正は、これまでの少子高齢化がさらに急速に進行してく一方、現状において65歳以上の男女について、その身体機能の若返りが確認されおり、全体の約2割が「働けるうちいつまでも」、また約4割が65歳を超えて、就業することを希望しているとの統計があることから、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分発揮できるよう、その活躍の場を整備することが重要とされたため、とされています。
そのため、今回の改正では、事業主に65歳から70歳までの雇用確保義務を課すのではなく、雇用以外の働く機会を含める就業機会の確保について、あくまで努力義務を課すことが、その内容とされています。
高年齢者就業確保措置の対象となる事業主
70歳未満の定年制度や継続雇用制度を導入している事業主が対象となります(高年齢者雇用安定法10条の2)。
そもそも「努力義務」とは?違反すると罰則はあるのか?
今回の改正による高年齢者就業確保措置は、あくまで努力義務として規定されていますので(高年齢者雇用安定法10条の2)、この措置を必ず行う義務は対象事業主にはありません。従って、65歳までの雇用確保義務違反の場合おける公共職業安定所(ハローワーク)の指導や勧告書の発出、勧告に従わない場合の企業名の公表といったペナルティが対象事業主に課されることはありません。
高年齢者就業確保措置の具体的な内容とは?
高年齢者雇用安定法は、前述の事業主に対し、自ら雇用する労働者の安定した雇用や就業を65歳から70歳まで確保する手段として、以下のような措置を定めています(高年齢者雇用安定法10条の2)。
- ①65歳から70歳までの定年の引き上げ
- ②定年制の廃止
- ③65歳以上70歳までの継続雇用制度
- ④65歳以上70歳までの従業員について継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
- ⑤65歳以上70歳までの従業員について以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
なお、70歳までとありますが、この年齢まで必ず就業確保措置を講じることを求めるものではありません。68歳までの定年引き上げや継続雇用制度の導入でも構いません。また、70歳を超えて就業確保措置を講じることを禁ずるものでもありません。70歳までを目標として就業確保措置を講じる努力を事業主に求める趣旨であるに過ぎません。
また、④や⑤の措置は、法律では、合わせて創業支援等措置と名付けています。この創業支援等措置を講じる場合には①~③の措置を講じる努力義務は免除されます。ただし、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は労働組合の同意が必要となります。そのような労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者の同意を一定の手続きで得る必要があります(このような労働組合や労働者の代表者を、本稿では「過半数労働組合等」といいます)。もっとも、厚生労働省は、①~⑤のいずれの措置を講じるか、③~⑤について対象となる労働者に限定を加える場合も、労使間で十分協議を行い、過半数労働組合等の同意を得るなどの手続きを行うことを勧めています。
それぞれの措置の詳しい内容については、以下をご覧ください。
①70歳までの定年引き上げ
就業確保努力義務には、事業主者が雇用を確保する努力義務と雇用以外の方法で働く機会を確保する義務が規定されています。
このうち、事業主者が、従業員を継続して70歳まで継続雇用することをあらかじめ約束するという意味で、70歳まで定年を引き上げる努力義務が、就業確保努力義務の一つとして規定されています。定年の引き上げ措置については、改正前の高年齢者雇用安定法でも、65歳までの雇用確保義務の一つの方法として規定されてきました。今回は、あくまで、70歳まで定年を引き上げる努力義務を課すものに過ぎません。
この努力義務は、一定の職務の従業員に対しては、就業規則などにより一律に設けることができる措置ですが、原則として、事業主者は、従業員に対して、これまで通りの労働条件を継続することが前提となります。
定年の引き上げについての詳しい内容や留意点については、以下のページをご参照ください。
②定年制の廃止
定年制の廃止は、70歳までの定年引き上げをさらに一歩進めて、いっそ定年を廃止してしまうというものです。この定年の廃止も、これまでの65歳までの雇用確保義務の措置の一つとして規定されていたもので、今回の高年齢者雇用安定法の改正では、70歳までの定年の引き上げ措置とならんで、定年の廃止の努力義務を課すものに過ぎません。
ただし、一旦定年を廃止してしまうと、合理的な理由なしに、従業員を解雇するなどの措置が難しくなりますので、定年廃止を導入するかどうかは、非常に慎重な検討を要すると言えます。
定年制廃止についての詳しい内容や留意点については、以下のページをご参照ください。
③70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
継続雇用制度も、これまでの雇用確保措置として65歳までと規定されていたものと同じで、70歳まで拡大されたものです。もっとも、65歳までの場合と異なり、事業主者や事業主者の特殊関係事業主(グループ会社)での継続雇用だけでなく、他の事業主の下での継続雇用措置も認められています。例えば、派遣会社等での継続雇用措置を図った場合も、70歳までの継続雇用措置を確保したものとみなされることになります。
継続雇用措置は、再雇用や勤務延長制度となりますので、個別の対応が可能となりますし、再雇用などの場合は労働条件を個々の高齢者の状況に応じて見直して、柔軟に対応することができます。
継続雇用制度の詳しい内容や留意点については、以下のページをご参照ください。
無期転換ルールに関する特例について
同じ事業主との間で、有期労働契約が通算で5年を超えて繰り返し更新された場合に、労働者の申込により、その有期労働契約は、無期労働契約に転換します(労契法18条1項)。これを無期転換ルールと呼んでいます。
無期転換ルールは、定年後に引き続き雇用している有期契約労働者についても、同様に適用されます。 この点、適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主(特殊関係事業主を含む)の下では、定年後に引き続いて雇用される期間は無期転換申込権が発生しないとの特例措置があります(有期雇用特別措置法(平成27年4月1日施行))。
もっとも、今回の改正法で定められた70歳までの継続雇用制度では、事業主及び特殊関係事業主以外の他の事業主の下での継続雇用制度も認められることになりました。しかし、特殊関係事業主以外の他の事業主で継続雇用される場合には、特例の対象とはならず、無期転換申込権が発生しますので、ご注意ください。
④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
この制度は、継続雇用制度と異なり、雇用によらない措置となります。
65歳以上の労働者である高年齢者が新たに事業を開始する場合に、その高年齢者かその方が起業のために設立した法人(創業高年齢者等)との間で、事業主が創業高年齢者等に金銭を支払う委託契約その他の契約を締結する制度です(高年齢者雇用安定法10条の2第2項1号、厚生労働省省令第180号により改正された施行規則(昭和46年労働省令第24号)4条の7)。
もっとも、この委託契約その他に基づいて創業高年齢者等が行う業務内容や支払われる金銭に関する事業等の詳細については、事業主はこれら詳細に関する計画を作成したうえ、労使で協議を行い、過半数労働組合等の同意を得る必要があります(同法10条の2、施行規則(昭和46年労働省令第24号)4条の5及び4条の6)。
⑤70歳まで継続的に一部の事業に従事できる制度の導入
この制度も、雇用によらない措置となります。
70歳まで継続的に業務委託契約を結ぶ制度と違って、65歳以上の高年齢者が自分で新たに事業を開始する必要はありません。その代わり、事業主又は事業主が委託、出資などをする団体が取り仕切る「社会貢献事業」に高年齢者が従事できるようにする制度です。
事業主が自ら行う場合、事業主はその社会貢献活動に従事する高年齢者との間で、金銭を支払う委託契約その他の契約を締結する必要があります。
他方、事業主が委託、出資などをする団体が行う場合、高年齢者はその団体と委託契約その他の契約を結ぶことになります。くわえて事業主は、その団体との間で、その団体が当該高年齢者に社会貢献事業に従事する機会を提供することを約束する契約を締結しておく必要があります(高年齢者雇用安定法10条の2第2項2号)。
ここでいう「社会貢献事業」とは、厚生労働省によれば、不特定多数の人々の利益になることを目的とした事業であり、何がこれに該当するかは、事業の性質や内容などを勘案して個別的に判断される、と説明されています。
高年齢者就業確保措置を講じる際の注意点
今回の改正による高年齢者数業確保措置を事業主が導入するにあたっては、特に、70歳までの継続雇用制度(③)の場合や創業支援等措置(④⑤)の場合について、注意しなければならないポイントがあります。以下、それぞれについてみていきましょう。
継続雇用制度(③)を導入する場合
65歳までの継続雇用制度の場合は、事業主か事業主の親会社、子会社その他関係会社などの特殊関係事業主での継続雇用のみが認められていますが、65歳以上70歳までの継続雇用制度の場合は、特殊関係事業主以外の他の事業主で継続雇用することも認められています(高年齢者雇用安定法10条の2第3項)。
なお、継続雇用制度を導入する場合は、有期労働契約が通算で5年を超えて繰り返し更新された場合に、労働者の申込により、無期労働契約に転換することができる無期転換申込権が発生します。この無期転換申込権については、事業主や特殊関係事業主が継続雇用をした場合は、65歳までの継続雇用制度の場合と同じく、適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主又は特殊関係事業主であれば、無期転換申込権が発生しない特例が適用されます。しかし、特殊関係事業主以外の他事業主で継続雇用した場合は、この特例の適用はありませんので、注意が必要となります。
創業支援等措置(④⑤)を導入する場合
創業支援等措置を導入する事業主は、改正法により定められた創業支援等措置に関する計画を作成し、労働者の過半数を代表する労働組合、又はそのような労働組合がない場合は労働者の過半数の代表者(以下、両者を「過半数労働組合等」といいます。)から、計画について同意を得る必要があります。さもなければ、70歳までの定年引き上げ(①)、定年の廃止(②)、又は70歳までの継続雇用制度(③)のいずれかを導入する努力義務は免除されません(高年齢者雇用安定法10条の2第1項)。
なお、厚生労働省によれば、上記の①~③のいずれかの制度を導入するのと並行して創業支援等措置も導入する場合、事業主はすでに雇用の措置により努力義務を達成したことになるので、創業支援等措置に関して過半数労働組合等からの同意を得る必要はないと説明されていますが、他方で、高年齢者雇用安定法の趣旨を考えると、両方の措置をする場合でも同意を得ることが望ましいとされてます。
改正による再就職援助措置・多数離職届への影響
これまで、高年齢者等が解雇等で離職する場合、事業主には一定の再就職支援措置を図る努力義務が課されており、一つの事業所内で1ヶ月に5人以上の離職者が出た際には、その人数や離職者の情報等をハローワークに届け出なければならないとする“多数離職届の提出”の義務も課されていました。
この義務は、70歳までの就業確保措置により当該高年齢者等の雇用や就業が確保された場合、65歳以上の高年齢者等が解雇等を理由として離職する際にも、事業主には同様の義務が課されます。
詳しくは、以下のページをご参照ください。
高年齢者雇用安定法改正に向けて企業が対応すべきこと
今回の改正による高年齢者就業確保措置は、あくまで努力義務ですので、企業は必ずこの措置を講じる義務はありませんが、講じる場合に企業が行わなければならないことはどのようなことがあるか、以下にみていきましょう。
就業確保措置の選択
これまでみてきた高年齢者就業確保措置の5つのうち、いずれの措置を取るかについては、労使間で十分に協議のうえ、事業主が高年齢者のニーズに応じるかたちの措置を取ることが望ましいとされています。そのため、どの措置を適用するかについては、個々の高年齢者に聴き取った希望を十分に尊重して決定する必要があります。
さらに、70歳までの創業支援等措置(④⑤)を取る場合は、過半数労働組合等と協議を行い、その同意を得なければなりません。70歳までの継続雇用措置や創業支援等措置の対象者を限定する基準を設ける場合は、その内容は原則として労使に委ねられるものですので、企業に望まれるのは、過半数労働組合等と十分に協議をしたうえで同意を得ることといえるでしょう。
就業規則の変更
常時10人以上の従業員を使用する事業主は、法定の事項について就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出ることとされており、その法定の事項について変更した場合についても同様とされています(労基法89条)。定年の引き上げ又は廃止、継続雇用制度の延長などの措置や創業支援等措置を講じる場合、法定事項の「退職に関する事項(同法89条3号)」等に該当しますので、就業規則の作成義務がある事業主は、その変更を行い、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
労働条件・勤務形態等の見直し
70歳まで高年齢者に就業機会を確保するとしても、65歳以上の高年齢者については、個々の高年齢者の体力等の事情に合わせて、これまでの労働条件や勤務内容を緩和させていく必要があります。雇用措置や創業支援等措置により、高年齢者を業務に従事させるにあたっては、決して、個々の高年齢者の体力などを無視して、無理な業務に従事させないような配慮が事業主には求められます。
高年齢者の就業確保を促進する事業主への助成金
65歳以上への定年引き上げ、定年の廃止、66歳以上の継続雇用措置の導入については、これらは努力義務であるものの、導入した企業には、助成金を受け取ることができる制度が用意されています。
高年齢者の雇用に関しては、上記のほかにも、さまざまな助成金が用意されています。
詳しくは、以下のページをご参照ください。
「高年齢者雇用安定法改正」への対応でお困りなら弁護士にお任せください。
今回の改正で、70歳までの就業機会確保のための制度を検討されている事業主におかれては、その制度の導入にあたり、労使協議、就業規則の変更など、法令に遵守した手続きを行う必要があります。また、労使協議や就業規則で変更する内容は、事業主が恣意的に特定の高年齢者を排除したり、他の労働関連法令や公序良俗に反したりするものは認められません。従って、法令に遵守した適切な就業確保のための制度を導入するにあたっては、労働法に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
高年齢者雇用安定法の改正内容に関するよくある質問
高年齢者就業確保措置を段階的に実施することは認められますか?
-
段階的に実施することも可能です。従って、例えば、67歳までの定年引上げや継続雇用制度を導入しても構いません(厚生労働省・高年齢者雇用安定法Q&A)。
継続雇用制度と創業支援等措置について、対象者を限定する基準を設けてもいいですか?
-
本改正によるこれら措置の導入は努力義務ですから、対象者を限定する基準を設けることも可能です。
但し、厚生労働省の指針(高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針)によれば、対象基準の策定に当たっては、原則として、従業員の過半数を代表する労働組合か労働組合がない場合は従業員の過半数を代表する者(過半数労働組合等)の同意を得ることが望ましいとされています。
また、同じく同指針によれば、過半数労働組合等の同意を得たものであっても、事業者が恣意的に高年齢者を排除するなど、今回改正された高年齢者雇用安定法の趣旨や、他の労働関係法令に反する内容、又は公序良俗に反する内容は、認められないとされています。
高年齢者就業確保措置を複数講じることは問題ないですか?
-
複数の措置を組み合わせることにより65歳から70歳までの就業機会を確保することも可能です。高年齢者雇用安定法は、複数の措置を講じることについて禁じる規定は特にありません。
高年齢者雇用安定法における「社会貢献事業」とはどのような事業を指しますか?
-
厚生労働省の指針によれば、「社会貢献事業」とは、不特定多数の利益の増進に寄与することを目的とする事業とされ、そのような内容の事業に該当するか否かは、事業の性質や内容等を勘案して個別に判断される、と説明されています。
シルバー人材センターや再就職のマッチングを行う機関への登録は、就業確保措置を講じたことになりますか?
-
本改正の高年齢者就業確保措置のうち創業支援等措置は、70歳まで継続的に高年齢者が就業できるよう、業務内容や高年齢者に支払う金銭等を含め事業内容について計画し、過半数労働組合等の同意を得て導入をする必要があります。
ところが、シルバー人材センターや再就職のマッチング機関への登録は、それだけでは高年齢者の就業先が決まるわけではなく、業務内容や支払われる金銭等、計画に記載するべき事項が確定しません。従って、創業支援等措置の導入に必要な手続きを履行することができないため、高年齢者就業確保措置を行ったとは認められません(厚生労働省・高年齢者雇用安定法Q&A)。
65歳に達する労働者が当分の間いない場合でも、高年齢者就業確保措置を講ずる必要がありますか?
-
高年齢者雇用措置と同じように、全ての事業主に対して一律に適用される努力義務ですので、当分の間、65歳以上の労働者がいない場合でも、高年齢者就業確保措置を講じるよう努めることが必要と考えられています(厚生労働省・高年齢者雇用安定法Q&A)。
創業支援等措置を講じるためには、どのような手続きを踏む必要があるのでしょうか?
-
創業支援等措置を実施する場合には、創業支援等措置に関する計画を厚生労働省が定める項目について作成し、その計画について過半数労働組合等の同意を得なければなりません(高年齢者安定雇用法施行規則4条の5第1項)。
その後、同意を得たら、就業規則の場合と同じ要領で、各事業所の労働者に周知しなければなりません(同施行規則4条の5第3項)。
なお、厚生労働省が定める創業支援等措置に関する計画の項目は以下の通りです。
- ①高年齢者就業確保措置のうち、創業支援等措置を講ずる理由
- ②高年齢者が従事する業務の内容に関する事項
- ③高年齢者に支払う金銭に関する事項
- ④契約を締結する頻度に関する事項
- ⑤契約に係る納品に関する事項
- ⑥契約の変更に関する事項
- ⑦契約の終了に関する事項(契約の解除事由を含む)
- ⑧諸経費の取扱いに関する事項
- ⑨安全及び衛生に関する事項
- ⑩災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
- ⑪社会貢献事業を実施する法人その他の団体に関する事項
- ⑫①~⑪のほか、創業支援等措置の対象となる労働者の全てに適用される事項
(以上、施行規則4条の5第2項)
労働者側が継続雇用に合意しなかった場合、会社は努力義務違反になってしまいますか?
-
今回の改正法で努力義務が課されているのは、あくまで希望する高年齢者が70歳まで働ける制度の導入です。そのため、合理的な範囲で事業主が就業条件を提示していれば、労働者が条件等について同意せず、継続雇用措置を拒否した場合でも、努力義務違反にはならないでしょう(厚生労働省・高年齢者雇用安定法Q&A)。
65歳以上の継続雇用先として認められる企業とはどのような企業ですか?
-
今回の改正法による65歳以上の継続雇用制度では、以下の①②に加え、③で継続雇用することも認められます(高年齢者雇用安定法改正法10条の2第3項)。
- ①65歳まで雇用していた事業主
- ②①の特殊関係事業主
- ③特殊関係事業主以外の他の事業主
例えば、派遣会社であっても、厚生労働省によれば、いわゆる常用型派遣(派遣事業者が常時雇用している労働者の中から派遣を行うこと)のような高年齢者の雇用が確保されている場合であれば、認められると説明されています(厚生労働省・高年齢者雇用安定法Q&A)。
労働者の職種・雇用形態によって、就業確保措置の内容を区別することは認められますか?
-
職種・雇用形態が異なれば、定年制を含めて、同じ労働条件である必要はありませんから、労働者の職種・雇用形態によって、就業確保措置の内容を区別することも認められると考えらます。
ただし、改正法に定められた就業確保措置をどのような対象者に講じるかについては、労使間で十分協議して、事業者毎の実情に応じて決定することが望ましいとされています(厚生労働省・高年齢者雇用安定法Q&A)。
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執筆弁護士
- 弁護士法人ALG&Associates バンコクオフィス所長 弁護士川村 励
この記事の監修
- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある