対策していますか?無期転換ルールニューズレター 2016.10.特別号掲載

労働契約法の一部を改正する法律(平成24年8月10日公布)により、継続して5年にわたり雇用された有期雇用労働者は、本人の希望があれば無期雇用労働者に転換できるという「無期転換ルール」が定められました(無期転換ルールは、平成25年4月1日施行)。企業としては、これに対応するために人事管理を整備し、これに基づき就業規則を変更する等の対応をする必要があります。

ある調査によれば、労働契約法が改正された事実自体についての認知は進んでいるものの、改正された内容を知らないと回答した企業が4割を超えているなど、企業における対応はまだまだ進んでいるとはいえない状況です。

しかし、2年後である平成30年度には、無期転換の申込みが本格化することになりますので、対応のために残された時間は必ずしも十分ではありません。

我が国では、これまで、無期雇用労働者は、いわゆる「正社員」、有期雇用労働者は、いわゆる「非正社員」として区分され、それに応じた人事管理がなされてきました。しかし、無期転換ルールは、この我が国の伝統的な人事管理に変更を迫るものであり、決して軽視することはできないものです。

改正法の3つのルール

  • 1.無期労働契約への転換(18条)
    有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールです。

  • 2.「雇止め法理」の法定化(19条)
    最高裁判例で確立した「雇止め法理」が、そのままの内容で法律に規定されました。一定の場合には、使用者による雇止めが認められないことになるルールです。

  • 3.不合理な労働条件の禁止(20条)
    有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることを禁止するルールです。

施行期日

2:平成24年8月10日(公布日)

1、3:平成25年4月1日 → 平成30年度から本格化

※パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託など職場での名称にかかわらず、有期契約で働く人であれば、新しいルールの対象となります。なお、派遣社員は、派遣元と締結される労働契約が対象となります。

企業における留意点

第一に、原則として、「非正社員」から無期転換ルールに基づき、無期雇用労働者に転換した社員に相応する社員の区分を作る必要が生じます(以下では、この社員の区分を「無期転換社員」と呼びます。)。

第二に、この「無期転換社員」に対して、どのような人事管理を適用するかを検討しておく必要があります。

すなわち、無期転換後は、既存の正社員と同一の労働条件を適用するのか、あるいは、「正社員」とは異なる、職務の範囲、勤務地、労働時間等の限定をした「無期転換社員」用の地位を新設するのか、するのであればどのような条件とするのか等を検討し、就業規則等を整えておく必要があります。

企業における人材のニーズは、すべての企業に画一的なものではなく、その企業が描いている将来的なビジョンによってまったく異なるでしょう。それぞれの企業が自らの事業計画等の将来的なビジョンを踏まえ、どこに、どのような区分の社員を、どの程度配置するのかを決定する必要があると思われます。当然、このような人材配置計画を前提に、「無期転換社員」に係る人事管理制度を設計する必要があるため、これは、一朝一夕に整えられるものではありません。

なお、厚生労働省では、働き方の柔軟化を進めワーク・ライフ・バランスを実現するため、また、無期転換ルールにより「無期転換社員」となった社員の受け皿とするために、勤務地や労働時間等に限定のある正社員である「多様な正社員」制度の採用を推薦しており、参考に値します。(制度詳細は厚生労働省HPをご参照ください。)

一方で、そもそも、問題のある「非正社員」にこのまま無期転換権を与えてもよいものかどうか、無期転換権を取得される前に、雇用契約を終了させておく必要はないのか、雇止め等をしておく必要はないのか、これから有期雇用労働者を採用する際に注意しておくべきことはないのかといった観点からの検討も重要です。

いずれにしても、この “無期転換ルール”、決して軽視されるべきものではないと思われます。直前になって混乱することのないように、早めに弁護士に相談しておくことをお薦めいたします。

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