労働者派遣法の改正について~派遣労働者の待遇向上 後編~ニューズレター 2013.5.vol.10

Ⅰ.はじめに

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護に関する法律(以下、「派遣法」といいます。)に関する説明の第3回として、今回も引き続き、派遣労働者の待遇向上についてご説明したいと思います。

Ⅱ.マージン率等の情報提供

派遣法改正により、派遣元会社は、インターネットやパンフレット、事業所における書類の備付等の手段により、①労働者派遣に関する料金額と派遣労働者の賃金額の差額の派遣料金に占める割合(マージン率)、②派遣労働者数、③派遣先の数、④教育訓練に関する事項等につき、情報を提供する義務が課されることになりました。また、これ以外にも、労働省令では、労働者派遣に関する料金額の平均額、派遣労働者の賃金額の平均額、その他参考となると認められる事項を提供すべきとされています。情報を提供する対象としては、派遣労働者(となり得る者)、派遣先(となり得る者)が挙げられます。

マージン率については、毎事業年度終了後に、毎事業年度毎に算定したものを提供することになります。また、マージン率は、企業体全体で出すのではなく、事業所ごとに算定することになります。もっとも、ある事業所が他の事業所と収益等の区別なく一体的な経営を行っている場合には、当該事業所と他の事業を一体のものとして算定することになります。

マージン率の算定方法については、以下の計算式に基づき求めることになります。

マージン率

なお、マージン率は、高ければ高いほど労働者からの評価が高いと思われがちですが、その他福利厚生や教育訓練に関する事項充実している企業は、経費の関係から、必ずしもマージン率が高いわけではありません。そのため、福利厚生等を充実させているような場合は、労働者等に対して、福利厚生等をしっかりとアピールすることも重要です。

Ⅲ.派遣契約の解除と雇用の確保

次に、派遣契約が中途解除された場合に、派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置について、規定が新設されました。

派遣元においては、派遣契約締結時に、労働契約が解除された場合に、新たな就業機会の確保、休業手当等の支払いに要する費用の負担等の雇用の安定を図るために必要な措置を定めなければなりません。なお、契約時にこれを定めず、また手続きを行わなかった場合には、許可の取消しや事業停止命令の対象となりますのでご注意ください。

一方、派遣先においても、派遣先の都合によって派遣契約を解除する場合には、雇用の安定を図るために必要な措置を講じなければなりません。派遣先において講じなければならない措置としては、派遣先や関連会社、他企業における就業先の確保、確保ができないときの損害賠償(解雇予告手当等相当額以上の額の支払い)、派遣元に対する事前の解除申入れ、派遣元からの求めによる解除理由の明示が挙げられます。

Ⅳ.無期雇用労働者か否かの通知義務

派遣元は、労働者派遣をしようとするときは、従前より氏名や就業条件等について、派遣先に対して通知する義務がありましたが、今回の改正では、これに加え、派遣労働者が無期雇用なのか有期雇用なのかを派遣先に対して通知する義務が定められました。これは、派遣先に3年間を超えて派遣労働者が派遣され、その後雇い入れようとした場合に、派遣先が当該派遣労働者と労働契約を締結する義務があること、その例外として、無期雇用の通知を受けた場合には3年を超えても契約締結の義務が発生しないこと(派遣法40条の5)から、派遣先にとって無期雇用かどうかが重要となるため、派遣元から派遣先に対する通知を義務化したものです。

これを通知しない場合あるいは虚偽の通知をした場合には、30万円以下の罰金に処せられ、また、許可の取消しや事業停止命令の対象となりますのでご注意ください。

Ⅴ.派遣料金額の明示義務

そして、派遣法改正による新設規定として、派遣元は、派遣労働者の雇入れ時、労働者派遣をしようとするとき、派遣料金額の変更時の3つの場合に、派遣労働者に対し、派遣料金額を明示する義務が課されるようになりました。

派遣料金額は、上記Ⅱのマージン率算定において使用した「労働者派遣に関する料金額の平均額」を用いることになります。上記Ⅱのマージン率算定において導き出される平均額は1日(8時間)のものになりますが、その単位さえ明示されていれば、時間額、日額、月額、年額のいずれでも構わないとされています。

また、明示の方法としては、書面の交付、電子メール、ファクシミリのいずれかの方法によらなければなりません。

なお、明示しない場合には、許可の取消し及び事業停止命令等の対象となりますので、ご注意ください。

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