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在宅勤務を労働協約により一度認めた場合に、後でオフィス勤務に変更する方法について

事例内容 相談事例
労働 労働条件の不利益変更
労働組合・団体交渉 労働協約
その他 その他
担当した事務所 ALG 東京法律事務所

事案の概要

現在、一昨年に締結した労働組合と締結した労働協約に従って在宅勤務を行っています。

ところが、海外に所在する本社から日本法人に対して、来年から週5日のオフィス勤務が必須との連絡があり、社員に対して、在宅勤務を廃止する旨のメッセージが出されました。これを受けて、社員の間でも混乱が生まれ、日本法人の在籍者が在宅勤務を継続できるのかという質問がありました。

すんなり組合が労働協約の変更に同意するとは思えないのですが、仮に同意を得られた場合には、在宅勤務を廃止できると理解していいのでしょうか?

弁護士方針・弁護士対応

  • ①在宅勤務が労働協約により認められている現状から、オフィス勤務へと転換することが、労働条件の不利益変更に該当するかどうか、
  • ②該当するとしたら、組合との間の労働協約等により有効に変更ができるかという点が、主に問題になると考えられます。

まず一点目についてですが、不利益変更に該当するかどうかは、形式的に判断されるものであるため、在宅勤務が認められていた状況から、オフィス勤務に一本化するという変更は、労働協約上、会社側の都合でオフィス勤務に切り替えられる旨が定められている場合は別ですが、社員側の勤務場所の選択肢を無くすものであるため、不利益変更に該当する可能性が高く、原則として、労働条件の不利益変更は禁止されているため(労働契約法9条)、現在、本社から出されているメッセージ形式の業務命令のみでは、労働条件の不利益変更と実現することはできないと考えられます。

次に、二点目についてですが、現在、労働組合との間で、在宅勤務を認める内容の労働協約を締結されているとのことからすると、 就業規則を変更したとしても、組合との労働協約が優先されることから、就業規則の変更という方法では解決できないものと考えられます(労働契約法13条)。

なお、労働協約は、事業場の4分の3以上に適用されるに至った場合には、他の同種労働者(組合員以外の労働者など)にもその効力が及ぶものとされており(労働組合法17条)、在宅勤務の適用対象となっている従業員(すなわち、在宅勤務をを廃止される対象従業員)が、事業場の4分の3以上の労働者となっている場合には、変更後の労働協約による変更の効力が及ぶと考えられます。

また、労働協約が労働組合との合意により不利益に変更された場合の効力については、組合員については労働組合の目的を逸脱しない限りは変更の効力が及ぶほか、 組合員以外の労働者などについては、適用することが著しく不合理であるといった事情がない限り、いずれも有効に労働条件を変更することが可能と考えられています(最判平成8年3月26日判決、最判平成9年3月27日判決)。

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