事例内容 | 相談事例 |
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雇用 | 普通解雇 |
問題社員 | 能力不足 |
担当した事務所 | ALG 東京法律事務所 |
概要
新卒採用をした社員が、試用期間後1年ほど経過した段階で、各部門から能力不足を指摘されるようになりました。新卒社員を能力不足により解雇する場合、どのような点に注意すべきでしょうか。
弁護士方針・弁護士対応
能力不足を理由とする解雇が有効となるためには、最低限、パフォーマンス不足の程度が、雇用関係の継続が困難と言えるほど重大なものである必要があります。パフォーマンス不足が軽微な場合には、解雇が有効という結論には至りません(この点、一つひとつのミスは重大とはいえなくとも、総合的に見たときに、重大といえればよいとはされています。)
次に、能力の評価期間を慎重に確保する必要があります。
今回、新卒採用ですので、中途採用の場合と比べ、裁判所は、能力の評価期間が長めに必要と考える傾向があります。新卒の場合、新卒社員が最初は仕事ができないのは当然であり、会社が十分な研修や教育を行ったのか、また、当該社員の適性を活かすポジションが会社内に無いかどうか検討を尽くしたかという点についても厳しく見る傾向があります。
そのため、パフォーマンス不足の程度にもよりますが、相当程度の能力の評価期間が必要と考えられ、当該期間中に、会社が十分な研修や教育を実施し、パフォーマンスの不足面について注意・指導により改善の対象を認識させつつ、改善の機会を丁寧に与えたにもかかわらず、十分な改善が見られなかったことを、証拠・資料から説明可能な状態にする必要があります。
新卒社員の試用期間中の解雇が有効になった事例として、信用組合の新卒社員が、新人研修の中で、借入申込書や各種契約書の取扱いについて研修を受け、演習をしたところ、研修どおりの対応ができず、研修を受ける態度にも問題があったほか、現金等を預かった際に交付する受取証に誤った金額を記載したり、定期預金について顧客の依頼とは異なる処理をしたりするなど、基本的な業務についてミスを繰り返した事例があります。
この事例からは、「誰であっても、業務指示どおりの作業ができるはずの基本的な業務について、ミスを繰り返している」という要素が確認できます。
その他、新卒採用で入社した社員の解雇について争われた裁判例を分析すると、パフォーマンス不足により解雇する場合、以下のような点を抑える必要があると考えられます。
・業務指示に違反している場合、業務指示違反である旨を伝え、本人に認識可能性を与えていること(業務指示違反をしているという状態だけでは十分と言えず、会社が業務指示違反状態であることを本人に伝えて、明確に認識させていることが必要となります。)
・注意指導の際、業績改善がされないときには解雇の可能性があることを伝えていること
・他の部門への配置を検討したこと(裁判例の中には、パフォーマンス不足がある程度認められる社員についても、ある時期に一定の業績を上げている事実があると、他に適性のあるポジションがあったと判断し、解雇を無効とする裁判例があります。)
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