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役職定年制度の導入

事例内容 解決事例
雇用 同一労働同一賃金 定年
担当した事務所 ALG 東京法律事務所

事案の概要

依頼者は、会社の維持・持続に伴う社員の高齢化、ひいては社員の給与(人件費)の上昇を抑えたいと考えていました。そこで、社員が55歳になった段階で就任中の役職を外し、その分給与を減額させる役職定年制度の導入を検討していました。

しかし、役職定年制度として具体的にどの程度給与を減額させることが可能なのか、減額させるにあたってどのような点に注意すべきか、就業規則等にどのように規定すればいいのか、といった適法な役職定年制度の導入方法について、他社事例を調べても結論が出なかったため、弊所にご相談いただき、就業規則の改定についてご依頼いただきました。

弁護士方針・弁護士対応

前提として、役職定年そのものを規制する法制度は現時点ではありません。しかし、依頼者では55歳の役職定年を前提に、60歳に定年を迎えることになります。60歳定年を迎えると、多くの会社が採用している1年間の有期雇用契約(いわゆる契約社員)への転換が実施され、その結果、「同一労働同一賃金の原則」という法規制(正社員と非正規社員との差別的取扱いに関する規制)が及びます。

つまり、55歳役職定年時にはまだ「同一労働同一賃金の原則」が適用されませんが、60歳定年後の継続雇用を行う際に、同原則への違反につながるような内容で役職定年制度を導入してしまわないよう、注意をする必要があります。

そこで、定年時の給与減額について最高裁が判断を示した名古屋自動車事件(令和5年7月20日最高裁判決)を意識して役職定年制度を設計する必要がありました。 最高裁が示した給与減額が正当化される根拠は、「正社員時と異なり、それまで就いていた役職から外れてそれ以上昇進することがない」といった「当該社員の役割や働き方が減ること・軽くなること」にあります。

本件においても最高裁が示した給与減額の正当化根拠を意識して、依頼者における給与の性格(どのようなときに給与が増額されるのか、減額されるのか)を分析したうえで、依頼者の人事制度・給与制度に合わせたオーダーメイドの就業規則改定を行う必要がありました。

結果

役職定年の給与減額を(定年時にも)正当なものとするため、役職定年者については、それまでに就いていた役職において評価の基礎となっていた異動や昇降格、昇降給の対象から除外する規定を盛り込みました。この規定により、それまで社員の能力や功績を基に社員を評価して昇降格・昇降給を行っていたところ、役職定年者についてはそのような評価を行わないこととなります。

つまり、「本人の職務遂行能力を理由に昇給・減額しない」ということを明記することで、(語弊を恐れずに言えば)「あなたの能力は現状発揮されているものを評価し、今後は将来に向けた期待を含まれないことになるため、その分給与を減らします」という給与減額の正当性を打ち出すことができます。

依頼者には、以上の内容を踏まえた改定就業規則を納品し、最高裁判決を踏まえた給与減額の正当性について詳細な補足説明を併せて行い、依頼者の適法な役職定年制度の導入をサポートさせていただきました。

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