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企業が把握しておくべきプライバシーに配慮した障害者の確認方法

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

個人情報の取扱いについては、情報の漏洩等がないよう企業ごとにコンプライアンス対策が敷かれていることかと思います。なかでも、労働者の障害の有無や程度といったセンシティブな情報については、情報の取得に際し、より一層の“配慮”が必要になってきます。

ここでは、厚生労働省が事業主のために策定した『プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン』の内容に沿って、障害者雇用にあたり、労働者から情報を取得する際の留意事項などを中心に解説していきます。

プライバシーに配慮した障害者の把握・確認のガイドライン

「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」が策定された背景には、障害者雇用促進法によって、事業主に対して“障害者雇用率”を報告する義務を課していることがあります。

この報告等にあたり、事業主には、対象障害者である労働者の人数や障害の種別・程度などを把握・確認する必要が生じます。そこで、労働者の情報、特に障害に関する情報について、個人情報保護法等の法令遵守を念頭に置きつつ、プライバシーに配慮する必要があるためガイドラインが定められました。

障害者雇用に関して障害者雇用促進法に定められているほかのルールや、“障害者雇用率”の計算方法などについて知りたい方は、以下のページをご覧ください。

障害者雇用促進法における相談体制の整備、苦情処理、紛争解決の援助
障害者の雇用率について

障害者を把握・確認する際の流れと方法

障害者を把握・確認するために、採用する段階で申出を受けるか、応募者本人に確認する方法があります。また、採用後に確認する方法もあります。

情報を入手するときには、本人の同意を得て、目的を明らかにしなければなりません。把握した障害者の情報は、定期的に更新します。更新する頻度は最低限にしましょう。

入手した個人情報は、労働者が退職する等した日から3年間は保存しなければなりません。情報を保管するときには、他の情報とは区別して管理する必要があります。

採用段階で障害者を把握・確認する場合

採用を決定する前から障害の有無を把握するタイミングとしては、次の2つのケースが考えられます。

  • 障害者専用求人から応募するなど、採用段階において応募者自身で障害があることを明示している。
  • 採用面接の際などに、事業主が応募者本人に障害があるかどうか確認する。

これらのうち、後者のケースについては、職業上特に把握の必要があるといえる場合、業務の目的の達成に障害の有無の把握が必要不可欠な場合に制限されます。また、そのような場合でも、障害の有無を把握する理由を提示したうえで本人に確認する必要があります。

なお、以下のページでは、障害者雇用における採用計画の立て方、募集、選考の方法など、【採用】にまつわる解説をご確認いただけます。ぜひこちらも併せてご覧ください。

障害者の採用

では、具体的に情報を把握するタイミングについて、次項でみてみましょう。

採用決定後の確認手続

採用段階で障害を把握している場合であっても、障害の申告を呼びかけるときには、社内全体に対して行うのが望ましいでしょう。ただし、個人に対して照会することが禁止されているわけではありません。

手続は、以下のように進めます。

利用目的の明示等

応募や面接の段階で、障害の存在を把握した者を採用することを決定した場合には、採用を決定した後で契約書等の書面やウェブ等に以下にあげる事項を明示し、本人の同意を得て情報を取得します。

情報を取り扱う者の人数を必要最小限にするため、この確認手続は、企業の人事管理部門等の中で障害者雇用にかかわる報告・申告等を担当する者から直接労働者本人に対して行うことが望ましいでしょう。

ただし、事業所が複数に分かれているケースでは、企業単位ではなく事業所単位で担当者を設定することもあります。

【本人に明示すべき事項】

  • 取得した情報の利用目的(障害者雇用状況の報告、障害者雇用納付金の申告、障害者雇用調整金・報奨金の申請等)
  • 利用目的の達成に必要な個人情報の内容
  • 原則、取得した個人情報を毎年度利用すること
  • 利用目的の達成に必要な範囲内で、障害等級の変更や精神障害者保健福祉手帳の有効期限などについて確認するケースがあること
  • 障害者手帳の返却、障害等級の変更があれば、その旨担当者まで申し出てほしいこと
  • 特例子会社または関係会社特例の認定を受けている場合、取得情報を親事業主に提供すること
  • 障害者本人への公的な支援策及び企業独自の支援策

本人の同意を得るに当たっての留意事項

企業が、労働者から障害にかかわる個人情報を偶然に得た場合等であっても、個人情報を利用するためには、きちんと同意を得る必要があります。

例えば、多くの記載事項があり、利用目的についての記載が簡単には見つけられない書面を本人に渡しただけでは、労働者は利用目的をきちんと理解できないと考えられます。

このような事態を防止すべく、企業は、本人に書面やウェブ等での確認を促すだけでなく、別途説明を行うといった配慮をしなければなりません。

家族への説明等

知的障害がある者などで、判断能力に不安がある場合、本人に利用目的等を理解してもらえるよう十分に説明することが求められるのはもちろんのこと、家族などにも説明が必要となるケースもあるでしょう。

特に、本人が成年被後見人(知的障害、精神障害等により判断能力が十分ではなく、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた者)である場合、本人だけでなく後見人にも利用目的等について説明し、同意を得る必要があります。

採用後に障害者を把握・確認する場合

採用後に障害者を把握・確認するためには、次の「原則」と「例外」を認識しておくようにしましょう。

原則:雇用している労働者全員に対して申告を呼びかける
例外:個人を特定して照会を行う

つまり、基本的には労働者全員を対象に呼びかけるべきだということです。
この「原則」と「例外」について、以下で解説します。

雇用している労働者全員に対して申告を呼びかける場合

採用後に障害を把握・確認を行う場合は、雇用する労働者全員に対するメール送信、書類の配布など、画一的な手段によって申告を呼びかける方法をとることが原則です。

このとき、業務命令として申告させるわけではないことを明示しましょう。また、公的支援や会社からの支援を受けられること等も併せて記載するようにしましょう。

適切な呼びかけ方法の例 不適切な呼びかけ方法の例
  • 社内LANの掲示板に掲載する、あるいはメールを一斉送信する(※労働者全員が社内LANを使える環境の整備が前提)。
  • 労働者全員に社内報等の文書を配布する。
  • 労働者全員が見る回覧板に記載する。
    ほか
  • 社内LANを使える労働者が限られている環境で、労働者全員にメールを一斉送信する。
  • 障害者が所属すると見込まれる部署等にのみ文書を配布する。
    ほか

個人を特定して照会を行うことができる場合

個人を特定して照会ができるのは、例外的な場合です。労働者自身が、障害者のためのサービスを利用したいと申し出たときには、個人に照会を行うことが可能です。

他方で、上司への個人的な相談や、社内の噂などを根拠に照会を行うことはできません。

照会ができる場合 照会ができない場合
  • 公的な職業リハビリテーションサービスを利用したいという申し出があったとき
  • 企業が行う障害者就労支援策を利用したいという申し出があったとき
  • 健康に関してなど、上司に個人的に相談した内容
  • 職場の上司やほかの労働者が抱いている印象及び職場でのうわさ
  • 企業内の診療所での診療結果
  • 健康診断の結果
  • 健康保険組合の診療報酬明細書

照会に当たっての留意事項

個人への照会を行うときにも、企業の担当者から直接照会することが望ましいです。その際には、以下にあげる内容を明示する必要があります。

  • 利用目的
  • 情報照会の対象となる労働者を特定した理由
  • 照会するに至った経緯

企業からの呼びかけや照会による回答を拒んだ場合には、繰り返ししつこく回答を迫ってはなりません。また、障害者手帳等を持っていないと回答した場合に、手帳の取得を強要することも禁止されています。

利用目的の明示の際に本人に伝える内容

個人を特定して情報照会を行った結果、その労働者が障害者手帳等を所持していることがわかり、かつ障害者雇用状況の報告等のためにその情報を活用することについて同意が得られた場合には、【本人に明示すべき事項】を提示したうえで必要な情報を確認します。

【本人に明示すべき事項】については、<利用目的の明示等>の項目を参考になさってください。

本人の同意を得るに当たっての留意事項

主な留意事項は<採用段階で障害者を把握・確認する場合>と同様です。

なお、労働者からの自主的な情報提供があった際にも、本人の意図とは違うことにその情報を利用することはできません。そのため、次にあげるケースでは、照会を行う根拠としては不適切とみなされるおそれがありますので、個別の状況に応じて慎重に対応しなければなりません。

  • 所得税の障害者控除の資料として提出された書類
  • 病欠や休職に際し提出された診断書
  • 健康保険への傷病手当金の請求にあたり、事業主が証明を行ったこと

把握・確認した情報の更新

障害者雇用状況の報告など、年度ごとに報告・申告が必要なものがあるため、事業主は、労働者の障害に関する情報を把握・確認した後も、障害の程度の変化・障害等級の変更等、情報に変更があるときには、更新が必要になります。

今度は、この情報の更新についての留意事項をみていきましょう。

把握・確認した情報の利用・更新に当たっての留意事項

毎年度の利用に当たって

障害の程度や等級などに変化がなければ、事業主が把握・確認した情報を次年度以降も活用することに関して、事前に本人の同意を得ておきましょう。

ただし、精神障害者保健福祉手帳の有効期限は2年間であり、また、身体障害者の障害者手帳には再認定が条件となっているケースがあるため、把握・確認した手帳の有効期限が過ぎた後に、手帳の返却または更新がなされているかどうかを注意して確認する必要があります。

更新の頻度

手帳の有効期限や障害の程度等の情報に変更がないか確認を行う頻度は、障害者雇用状況の報告等を行う際など、必要最小限に留めます。

更新の際に本人に伝達すべき事項

一度事業主が把握・確認した障害者の情報を更新するために、必要な確認を行う場合、当該障害者には、『なんのために確認するのか(理由)』、『どのようなきっかけで確認するに至ったのか(経緯)』を明確に伝える必要があります。

本人からの申出による変更手続

障害に関する情報の変更があった場合には、事業主からの確認のみならず、障害のある労働者が自ら事業主や担当者に申し出るよう働きかけると同時に、その旨申し出るための手続についてあらかじめ周知する必要があります。

利用停止等

労働者本人から、次にあげる理由によって各種届出、申請をするために情報を活用しないで欲しいと求められた場合には、その主張の内容が適正であれば、情報の利用を停止しなければなりません。

  • 障害者雇用状況の報告等以外の目的で情報が利用されている
  • 当該労働者の障害に関する情報が、不正な方法で入手されたものである
  • 第三者へ情報提供がなされたことについて、当該労働者の同意がない

把握・確認に当たっての禁忌事項

労働者の障害に関する把握・確認に際し、罰則や損害賠償の対象となり得る禁忌事項としては、次のようなものがあげられます。

  • 利用目的の達成のために不必要な情報の取得
  • 労働者本人の意思に反する障害があることの申告、あるいは障害者手帳の取得の強要
  • 障害があることの申告、あるいは障害者手帳の取得を拒否したことによる解雇などの不利益取扱い
  • 正当な根拠が認められない場合の、特定の個人からの情報収集
  • 障害者雇用状況の報告等の担当者が労働者の障害に関する問い合わせをした際に、産業医等医療関係者及び企業内で労働者の健康情報を取り扱う者が行う、本人の同意を得ない情報の提供

把握・確認した情報の処理・保管の具体的な手順

障害者の個人情報を把握、確認したときには、次のような手順で保管します。

  1. 安全管理措置等を行う
  2. 苦情処理体制を整える

これらの手順について、以下で解説します。

①安全管理措置等を行う

保存措置

事業所ごとに、ある労働者に障害があることを明らかにする書類を備え置き、その書類は当該労働者の死亡・退職・解雇の日から3年間保存します。また、これらの書類と併せて障害者雇用状況の報告書等が漏洩することがないよう、情報を安全に管理するために必要な措置を講じる必要があります。

情報管理者の守秘義務等

個人情報の保存において、以下のような措置を講じる必要があります。

  • 情報管理者の範囲を必要最小限に留め、その範囲について労働者にわかるよう明確にする
  • 個人情報保護法の取扱いに関する企業の内部規程(情報管理者の守秘義務の規定等)を整備する
    ほか

他の情報とは区別して保管

労働者の“障害”についての情報は、とりわけセンシティブな内容であるため、各種届出などの手続や、労務管理のために情報の取得が必要な者以外の目に触れないよう、ほかの個人情報とは別に保管すべきでしょう。

把握・確認した情報の他事利用

障害者雇用状況の報告などに活用するために事業主が把握・確認した情報を、本人の同意なく、ほかの意図で利用することは禁止されています。ほかの意図で利用したい場合には、個別に同意を得る必要があります。

②苦情処理体制を整える

事業主が把握・確認した情報の取扱いについて寄せられた、苦情の処理を担当する者を明確にし、マニュアルの作成や研修の実施などによって、適切かつ迅速な苦情処理ができるような体制の整備に取り組みましょう。

苦情処理の窓口は、産業医、保健師などの衛生管理者や、そのほかの労働者の健康管理に関する業務に携わる者と連携し、必要に応じた適切な対応ができるようにしておくことが望ましいでしょう。

処理・保管に当たっての禁忌事項

事業主が取得した後の障害に関する情報について処理・保管を行う際には、以下の2点にあたる行為がないよう注意しなければなりません。

  • 本人の同意を得ない利用目的以外での情報の活用
  • 障害があることの申告や、情報の開示・訂正・利用停止などを求めたことを理由とする解雇などの不利益取扱い
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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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